著者
星野 太佑
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、乳酸が骨格筋ミトコンドリア増殖を引き起こすのか、摘出筋を用いた実験系とC2C12筋管細胞の電気刺激の系で検証した。その結果、摘出筋に対する10mM乳酸刺激は、ミトコンドリアの新生を抑制した。しかし、この時乳酸添加24時間後では、培地中の乳酸濃度が25mMを超えており、非生理学的な高い乳酸濃度であった。電気刺激による乳酸濃度の増加は、C2C12筋管細胞のPGC-1alphaのmRNA量を増加させた。以上の結果から、筋収縮に伴うような乳酸濃度の増加は、転写制御を介してミトコンドリアの新生を引き起こす可能性を示唆した。今後、乳酸濃度の濃度応答性の違いをさらに検証する必要がある。
著者
小原 雄治 加藤 和人 川嶋 実苗 豊田 敦 鈴木 穣 三井 純 林 哲也 時野 隆至 黒川 顕 中村 保一 野口 英樹 高木 利久 岩崎 渉 森下 真一 浅井 潔 笠原 雅弘 伊藤 武彦 山田 拓司 小椋 義俊 久原 哲 高橋 弘喜 瀬々 潤 榊原 康文
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動では、支援課題の公募を行い、領域外有識者による審査委員会により選考し、支援を行った。経費上限設定など多くの採択ができるように努めた結果、応募188件、採択93件(採択率49.5%)となった。支援の成果として2017年度に54報の論文発表がなされた。②大規模配列解析拠点ネットワーク支援活動においては、最先端技術を提供するためにそれらの整備や高度化を進めた。遺伝研拠点では染色体の端から端までの連続した配列完成を目指して、ロングリードシーケンサー(PacBio Sequel)、長鎖DNA試料調製技術、さらに1分子ゲノムマッピングシステム(Irysシステム)の最適化を進め、実際の試料に応用した。東大柏拠点では、1細胞解析技術を整備し支援に供するとともに、Nanopore MinIONを用いた一連の要素技術開発を進めた。九大拠点では微生物ゲノムのNGS解析最適化を進めた。札幌医大拠点ではLiquid Biopsyによる体細胞における低頻度変異検出技術開発を進めた。③高度情報解析支援ネットワーク活動では、支援から浮かび上がった課題を解決するソフトウェアの開発を進めた。支援で特に活用されたものは、真核2倍体用denovoハプロタイプアセンブラPlatanus2(東工大)、染色体大規模構造変異高精度検出アルゴリズムCOSMOS、変異解析結果の信頼性を評価するソフトウェアEAGLE(以上、産総研)、エクソン・イントロン境界におけるスプライソソーム結合頻度の解析パイプライン(東大)、であった。また、CLIP-seqデータの解析パイプライン、高速オルソログ同定プログラムSonicParanoid、ロングリード向けアラインメントツールminialign(以上、東大)は今後の活用が予想される。高度化等の成果として48報の論文発表がなされた。
著者
堀田 尚徳
出版者
広島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

我が国の刑事手続では、起訴前段階において、身体拘束された被疑者及び弁護人が捜査機関側の有する身体拘束の根拠となった資料の内容をほとんど知ることができない。その結果、身体拘束から被疑者を解放するための諸制度を十分に活用できていないという問題がある。これに対して、アメリカでは、予備審問において身体拘束の根拠となった資料が開示される。この予備審問は、日本の勾留理由開示制度の制定過程に一定の影響を与えたと考えられる。そこで、予備審問に関する議論から示唆を得ることにより、勾留理由開示制度を、起訴前段階において被疑者及び弁護人が身体拘束の根拠となった資料の内容を知る手段として位置付ける解釈論を提示する。
著者
中村 政明 坂本 峰至 蜂谷 紀之 村田 顕也
出版者
国立水俣病総合研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

我々は、成人のMeHg曝露による健康影響を調査した。被験者は、日本の伝統的な捕鯨の発祥地の太地町の住民194人。毛髪水銀濃度の幾何平均が14.9μg/gで、鯨肉摂取量と有意に相関したことから、太地町住民が鯨肉摂取によるMeHg高曝露群であることが示唆された。毛髪水銀濃度と神経所見の間に有意な相関はなかった。また、MRSで、感覚野と小脳のNAA/ Cr比が正常だったことから、明らかな神経細胞の減少がないことが示唆された。全血水銀とSe濃度の有意な正の相関がみられ、全血水銀/Seモル比は1以下だった。これらの所見は、充分なSe摂取がMeHg曝露の有害影響がなかった原因の1つである可能性を示唆した。
著者
山田 良広
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

法医学における歯の有効性は硬組織としての保存性の高さに起因する個人識別における役割である。従来は歯の解剖学的形態による個人識別への応用が主であったが、最近の遺伝子工学の発展がDNA分析の可能性を広げ、歯学においても、歯に含まれるDNAを利用することで新しい個人組織への情報源としての歯の可能性を示唆した。本研究は、鑑定試料として嘱託を受けた歯を想定し、実験室で各種条件下におかれていた歯からDNAを抽出、歯髄由来DNAの法医DNA鑑定における応用の可能性を研究目的とした。平成8年度は、歯髄が変性消失している歯からの有効なDNA抽出法として、髄腔壁を含む象牙質切片からDNAを抽出しそれをキレックススピンカラムを用いて精製した結果、PCR反応において良好な増幅が可能であった歯髄由来DNAを得ることができた。平成9年度は、精製された歯髄由来DNAをテンプレートとして用い、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のDループをPCR法により増幅しその多型領域の塩基配列を決定するmtDNAダイレクトシーケンス法への応用、さらに広く法医DNA鑑定で用いられているDIS80、HLADQα領域を増幅するプライマー、TH01などShort Tandem Repeat領域を増幅するプライマーをそれぞれ用いたPCR法へ応用したところ、対照とした新鮮血由来DNAをテンプレートとした結果と同等の結果を示した。身元不明死体や損壊の著しい死体で歯が唯一の身元確認の決めてになることは衆知のことである。従来の形態を主とした個人識別にDNA分析を応用することは今後不可欠になると思われ、歯由来DNAがその個人のDNAとしてDNA鑑定に用いることが可能であるといった今回の研究実績はその根拠となると思われる。
著者
鈴木 朋美
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-26

前年度に引き続き、ベトナム中部サーフィン文化の甕棺資料の実測図化と遺物編年の作成を目標に据え、トゥアティエンフエ省、ビンディン省、フーイェン省、コントゥム省、クァンナム省ホイアン市・ディエンバン県にて資料調査を行い、コンテクストの確認と報告資料の補完を行った。まず、昨年度の成果を元に、トゥーボン川流域に属す遺跡とフォーン川流域に属す遺跡の土器の比較を行い、器種構成の違いや型式的差異を指摘し、2つの遺跡間に生じる差異は地理的要因だけではなく時間差も含まれているという見解に至った。ビンディン省では、未接合資料を実測することで報告書では指摘されていなかった有肩甕棺から有稜深鉢形甕棺の型式変化を観察できた。さらに、ホイアンではゴーマーヴォイ遺跡で多数を占める卵形甕棺とサーフィン文化の甕棺の典型的形態ともいわれる長胴甕棺の中間の型式と思しきハウサーI遺跡の甕棺を確認できた。これにより、現在までのサーフィン文化の編年の細分化が可能となり、自身が行った甕棺の形態分類における時間的差異と地域的差異を整理できた。以上より、サーフィン文化の広域編年に関して、1)サーフィン文化の甕棺の形態は地域ごとに独自の変化をたどる2)トゥーボン川流域では、ゴーマーヴォイ遺跡の主要な形態である卵形甕棺から、ハウサーI遺跡・タックビック遺跡の長胴化した甕棺、そしてアンバン遺跡・ビンイェン遺跡の長胴甕棺という変化が主要な甕棺の変化である、という見解に至った。
著者
溝口 佑爾
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

2012年度は、前年度に引き続き、これまでの研究のアウトプットを続けると同時に、これまでの理論的研究で得られた洞察を、巨大災害後の復興支援プロジェクトへと直接生かしつつ、その成果を残すための地盤作りに取り組んだ。2010年度に築いたルーマン社会システム理論の時間論的、そしてメディア論的な拡張を、2011年3月11日に起きた東日本大震災を受けて立ち上げた被災地支援活動「思い出サルベージ」プロジェクトにおいて実践していった。同プロジェクトは、宮城県亘理郡山元町において津波に飲まれて持ち主不明となった写真約70万枚を、洗浄・デジタル化・データベース化して持ち主へと届けることを目的とした支援活動である。申請者は、同プロジェクトの立ち上げ人兼現代表として、宮城県亘理郡山元町における被災写真救済活動の実質的な指導およびフィールドワークを続けてきた。また、山元町以外の被災写真救済活動(沿岸部の各被災自治体)についても、技術指導、ネットワーキングに勤めながら、フィールドワークを行った。その実践的な成果の一部は、研究発表1.および学会発表1.~4.としてアウトプットしてきた。また、アウトリーチ活動として、山元町内の各教育機関及び各地の大学、また市民に向けた学問的なコミュニケーションの場へと積極的に還元してきた。本研究は、当初の計画に比べ、理論よりも実践的な還元に重きを置くものとなった。しかし、そのことは、理論的な洞察が実践的な還元へと直結するという意味で、理論的研究たる本研究の意義を示す結果であると言えるだろう。現在も続く復興支援活動「思い出サルベージ」において活かされているのは、本研究が築いたルーマン社会システム理論の時間論的・メディア論的拡張である。もちろん、限られた時間の中で震災というイレギュラーな事態を受けたことで、やり残した課題は多いといえるだろう。一番大きな課題は、実践から理論への逆方向の還元である。再びの理論化による社会学理論への還元については、来年度以降の日本学術振興会特別研究員PDとして実施する研究での課題とする所存である。PDにおける研究は、実践的なフィールドワークから得られる洞察を、拡張されたルーマンメディア理論を手がかりにして、現代の社会学理論へと還元するものとなる見通しである。また、採用の初年度より着手している、アジアにおける「圧縮された近代」の計量的な検討もさらに発展させ、その成果を発表する機会を得た(学会発表(国内)5.&学会発表(海外)1.)。近代化のスピードに着目するこの研究は、社会学のカギとなる概念の一つである近代化のバリエーションを計量的に考察することで、当該研究であるルーマン社会システム理論の時間論的・メディア論的拡張の、応用的な側面を補うものとして位置づけられるものである。今年度は、タイのチュラロンコーン大学での研究会において、東アジアにおける家族観に対する高学歴化の影響に対して、非儒教圏にも通じる視座を獲得することができた。
著者
森田 美佐
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、働く女性のみならず、男性も子どもも“幸せ”になる職場の女性活躍は、どうすれば実現するのかを、個人と家族の生活の質向上を目指す家政学とジェンダーの視点から、明らかにすることである。女性活躍をめぐる先行研究では、女性の離職率の低下、女性の仕事と家庭の両立を可能にする働き方の改革、女性管理職の登用等は、企業の組織の活性化はもちろん、生産性の向上などに利点があることが指摘されている。その結果、実際にそのような施策を打ち出し、女性を積極的に採用・登用する企業も増加している。研究としても、女性がキャリア形成に意欲的になれる雇用管理の在り方や、女性が昇進を望むような職場環境づくりに何が必要か等に関心をもつものが散見される。しかし日本の働く男女の意識や行動を見る限り、職場における女性活躍推進の数々の施策は、女性の労働者としての人権や、職業生活と家庭生活の充実を保障する環境づくりに向っているとは言い難い。加えて男性も、仕事のみならず、家庭や地域の中で活躍できる環境が形成されているのかどうか、疑問が残る。働く女性も男性も、ワークライフバランスの重要性を指摘されながらも、実際は、「仕事を取るか、家庭生活を取るか」の二者択一の状況の中で生活を営んでいると言わざるをえない。家庭生活を重視する労働者が、労働市場では周縁的な位置づけに留まる社会とは、家庭責任を重視すれば、男女が〝平等”に労働市場の中で二流の労働者として扱われる社会に過ぎないのではないか。これは職場と家庭の男女共同参画の実現、男女労働者の人間らしい働き方と暮らし、そして子どもが親のケアを受ける権利を保障しない。
著者
村田 真理子 山下 成人 川西 正祐
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

がんの化学予防に用いられることの多い抗酸化物質についてヒト遺伝子損傷性により安全性を評価した。種々の抗酸化物質を用いて単離DNAあるいは細胞内DNAに対する損傷性を検討した。ヒト培養細胞に抗酸化物質を添加し、一定時間後に細胞からDNAを抽出し、パルスフィールドゲル電気泳動法により細胞のDNA損傷性を検討した。その結果、ビタミンA、レチナール、α-トコフェロールおよびケルセチンでは細胞内DNA損傷が検出された。また、酸化的DNA損傷の指標である8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)生成量を電気化学検出器付HPLCにて定量したところ、細胞内8-OH-dG生成量はビタミンA、レチナールおよびN-アセチルシステインの添加で有意な増加が認められた。単離DNAに対するDNA損傷性の検討では、抗酸化物質と^<32>Pでラベルしたヒトがん抑制遺伝子p53のDNA断片と金属イオン存在下で反応させ、電気泳動を行いオートラジオグラムを得た。その結果、ビタミンA、レチナール、α-トコフェロール、ケルセチンおよびN-アセチルシステインは銅(II)イオン存在下で塩基特異性を有するDNA損傷を来すことが明らかとなった。このDNA損傷は,カタラーゼあるいは銅(I)イオンの特異的キレート剤であるバソキュプロインにより抑制されたことから、過酸化水素および銅(I)イオンの関与が考えられた。また、同様の実験条件で8-OH-dGの増加を確かめた。以上の結果より、抗酸化物質は酸化抑制作用のみならず、ある条件下では酸化促進作用を示し、DNA損傷性を有することが明らかとなった。これらの酸化的DNA損傷が発がん過程のイニシエーションとプロモーションに関与する可能性があり、抗酸化剤の予防的投与の危険性が示された。第一次予防の重要性に鑑み、安全性を十分検討した上で、がんの化学予防に抗酸化物質を適用することが望まれる。
著者
隅田 英一郎 山本 博史 山本 博史 パウル ミヒャエル
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

構文、換言の利用、多言語向き形態素解析等、翻訳の高度化を行い、翻訳品質評価に基づく言語間距離を計算する方式を提案した。「英語話者の学習時間」は、フランス語などは短く、アラビア語、中国語、日本語は長いことは提案距離で説明できる。しかし、後者の3言語の「学習時間」は同じであり、英語との距離差では説明できない。より精緻な距離の創出が今後の課題である。また、副産物として21言語の全組合せ420通りの翻訳システムを構築した。
著者
齋藤 崇徳
出版者
独立行政法人大学改革支援・学位授与機構
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

第一に、新宗教系大学が設置された理由のパターンを見出した。それは教師養成と区別された信者への教育、宗教団体が深く関わる社会活動のための専門的職業教育、信者への教育と区別された学術研究である。第二に、組織・制度における多様性を明らかにした。目的規程、教学組織とカリキュラム、管理組織、財政的支援のそれぞれにおいて教団と高等教育との関係は多様であった。第三に、新宗教における宗教専門職の特質を明らかにした。その養成の制度は宗教専門職のあり方にたいし強く影響し、さらに専門職のあり方は、当該宗教団体の社会的性格、すなわち宗教団体がどのように社会と関係しているのかということを規定するということである。
著者
大川 一毅 嶌田 敏行 大野 賢一
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、大学の価値を新たな側面から認識する成果指標の策定とそれを活用した大学評価の模索探究を研究目的とする。これにあたっては学生の保護者を主たる構成員として組織し、大学の教育事業援助や学生支援を目的として活動を行う大学教育後援会を研究対象に設定し、その事業や活動を明らかにする。その上で、これらの実績を「信用」という成果指標に置き換えて大学の評価要素とすることを試み、各大学で援用可能な新たな大学評価の形態と指標を提案する。
著者
渡辺 恵子
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、国立大学事務職員のキャリア形成の在り方とモチベーションを明らかにすることにより、今後の人材育成につながる示唆を得ることを目的とする。具体的には、次の2つの研究を行う。1.特定の大学で採用された職員のキャリアツリーを作成し、昇進構造を明らかにする。2.生え抜き職員を対象にインタビューや質問紙調査を行うことなどにより、それらの職員のモチベーションの内容や、能力発揮状況や能力開発とモチベーションとの関連などを分析する。
著者
戸村 理
出版者
國學院大學
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では近現代日本における大学学長職の地位・役割・動態について、歴史社会学的に考察する。具体的には近現代日本の学長職に関する政策及び機関内での地位と役割の変遷を、経営と教学の点から考察する。そしてどのような人物が学長職にあったのか、個人属性とキャリアパスに注目し、分析期間内における学長職の動態を明らかにする。学長職の大学経営に関する言説分析も行うことで、大学学長職の日本的構造を解明する。