著者
油布 佐和子 越智 康詞 紅林 伸幸 中澤 渉 川村 光 山田 真紀
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、今世紀に入って加速的に進行した新自由主義的な教育改革が教職に及ぼす影響を分析することを目的としている。15年間の時系列調査を分析した結果、教職観や役割認識などに変容が見られ、教師が「組織の一員としての教師」への志向性を強めていることが明らかになった。しかしながらこれを、新自由主義的な理念への賛同と解釈するのは妥当ではない。そうではなくて、外部に見えにくく理解されがたい<教師という仕事>を、新自由主義的教育改革が可視化する側面を持っていることによるものではないかと推測された。
著者
山口 弘純
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では地下街やビル屋内での人々の位置・行動情報を,特別な測距デバイスやインフラを必要とせず,高精度かつリアルタイムに推定する技術(位置行動推定技術)と,それに基づき位置情報サービスを提供するミドルウェアの設計開発を行った.スマートフォンが備える加速度センサー・ジャイロ,電子コンパスの情報を取得し,センサーデータを活用した位置推定技術を開発実装し,イベントスペースや商業施設等を含む様々なアプリケーションシナリオにおけるシミュレーション実験ならびに実証実験を実施することでその有効性を示した.
著者
綾部 恒雄 黒田 悦子 前川 啓治 森川 眞規雄 白石 さや 木村 和男 太田 和子 SIRI Gamage
出版者
城西国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

3年間の研究・調査の結果、次のような成果を得たと考える。(1)研究対象となった3ケ国の多文化主義は、"美しい"理念から出発したというよりも、国民国家統合上の政策として登場したものである。(2)3ケ国とも、元イギリスの植民地であり、民主主義と議会政治の伝統を受け継いでいる。(3)多文化主羲の台頭は、人権思想、反人種主義、文化相対主義思想の滲述と深く関わっている。(4)3ケ国の先住民(イヌイット、ネイティブ・アメリカン、アボリジニ)は多文化主義に反対している。(5)多文化主義の理念は、国民国家の統合を破壊する'危険'を、常にはらんでいる。(6)20世紀末から加速した、グローバライゼーシヨンは、英語の使用、アメリカ的価値組の普及をもたらし、結果として多文化主義思考を弱体化し、同化志向価値を助長する。(7)多文化主義が国民国家内で一定の成果をあげた場合でも、異文化間にみられるジェンダーの相違、宗教思想(例えば、キリスト教団におけるイスラム教徒)の違いをどのように扱うかという困難な問題が残されよう。(8)現在、世界各国で視察される多文化主義は、国民国家の枠を越えることはできない。
著者
干場 隆志 堀田 純一
出版者
山形大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

歯根膜細胞(PDL)、間葉系幹細胞(MSC)、および線維芽細胞(NHDF)より形成した脱細胞化マトリックスを作製した。脱細胞化前にはアクチンおよび細胞核が観察されたが、脱細胞化後には観察できなかったことから、細胞が除去できていることを確認できた。作製した脱細胞化マトリックス上にPDLは接着することができ、その接着はPDLが形成した脱細胞化マトリックス上で最も多かった。さらに、PDLの増殖性を評価したところ、脱細胞化マトリックス上でPDLは増殖できたが、PDLおよびMSCが形成した脱細胞化マトリックス上ではその増殖は抑制された。このように、歯根膜細胞のニッチェの生体外での再構築が期待できる。
著者
指宿 信 中島 宏 山田 直子 吉井 匡 稲田 隆司
出版者
成城大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

2016年6月に成立し3年以内の施行が予定されている我が国の「被疑者取調べ録音・録画制度」に関して、法解釈学や比較法的研究、心理学・社会学等の経験科学の見地から多面的実証的な研究を行った。その結果、被告人の法廷外の自白を記録した録画映像が判断者(裁判官ならびに裁判員)に影響を与える可能性が高く任意性や信用性の判断を歪めてしまうこと、また弁護人の立会いもなく適切な尋問技術を持たない取調官による尋問によって虚偽自白が生み出される危険性が高いこと等が明らかになった。そこで、取調べ映像を裁判員裁判で再生する際には、こうした危険を回避する法的制度的手当が不可欠であることを明らかにした。
著者
粟屋 利江 岩崎 稔 澤田 ゆかり 佐々木 孝弘 野本 京子 吉田 ゆり子 大川 正彦 臼井 佐知子 金 富子 米谷 匡史 左右田 直規 小田原 琳
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ジェンダーをめぐる支配と差別の構造が「家族親密圏」における暴力を通していかに現れるのかということを、アジアとヨーロッパ・アメリカという地域軸、伝統社会における近代化、植民地支配からポストコロニアル状況へという時間軸にそって分析した。その結果、各地域固有の社会的実践や権力関係に見られる〈暴力〉は、支配・被支配の結果であるばかりではなく、相互干渉、癒着、相乗作用の上に成立するものであることが判明した。
著者
小松 賢志 坂本 修一 小林 純也 松浦 伸也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本報告では、放射線感受性、染色体不安定性(ゲノム不安定性)ならびに高発がん性のヒト劣性遺伝病の責任蛋白が相同組換えの蛋白であることを示した。この事は、生命維持に根元的で有ると思われていた相同組換えが欠損してもヒトは生存可能であることを初めて報告しただけでなく、相同組換え異常がゲノム不安定性と高発がん性をもたらす可能性をヒト遺伝病で示した。また、NBS1の細胞内機能としては、相同組換えに必要と思われているMRE11ヌクレースと複合体を形成後に、ヒストンH2AXとの相互作用によりにMRE11をDNA二重鎖切断部位にリクルートする機構を明らかにした。その一方で、NBS1は日本人に多い早老症ワーナー症候群の蛋白WRNと相互作用することや、DNA鎖架橋剤に高感受性を示すヒト劣性遺伝病ファンコニー貧血の蛋白FANCと複合体を形成することを報告した。これら相互作用のDNA二重鎖切断修復における意味は不明であるが、細胞内では種々の蛋白による細胞内修復ネットワークによりゲノム安定化が保たれている。また、ナイミーヘン症候群ならび毛細血管拡張性運動失調症とMre11欠損遺伝病の毛細血管拡張性運動失調症類似疾患は似たような細胞学的特性を呈する。実際に、NBS1,MRE11,ATMはともに放射線照射後のチェックポイントに機能することが判明した。しかしながら、NBS1,MRE11は修復に必須であるが、ATMはそうでないことから、NBS1,MRE11,ATMの中で特にNBS1がチェックポイントと修復のシグナルの十字路になっていることが示された。
著者
立花 優
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

当執筆者の研究目的は、旧ソ連地域において現出した政治体制の事例研究としてアゼルバイジャンを取り上げ、政治体制の類型化をめぐる議論の流れをくみつつ、政治・経済の側面から多角的・実証的に検証することで、その安定性の要因を解明することである。本年度においては、これまでの研究成果を踏まえ、より広く比較の視座を取り入れること、データと現地情報の分析について再考すること、これまでの研究成果を集大成することを目標とした。本年度に得られた研究成果は次のとおりである。1)6月に開催された日本比較政治学会分科会E「非民主主義国における議会の機能」において、「旧ソ連諸国における支配政党を通じた議会統制」と題して報告を行った。この分科会は、権威主義体制が安定的に持続する要因を議会に注目して分析する企画であった。中国・中東の事例との比較を通じ、議会の政治的機能が制約される権威主義体制下であっても、議会が地域や社会層の個別利害を表出しうること、利害調整をめぐって議会と政府の間に利用や対立の関係が生まれうることを事例の分析から明らかにした。2)7月に開催された北海道中央ユーラシア研究会において、中央ユーラシア政治研究におけるコーカサスの状況について、自身の研究を概括しながら報告を行った。この報告で執筆者のこれまでの研究の全体像を説明するとともに、今後克服すべき課題について討論が行われた。3)3月に行われた東洋文庫現代イスラーム研究合同研究会において、大統領任期というトピックを取り上げ、中央アジア・アゼルバイジャンにおける大統領制の問題を報告した。執筆者が研究協力者として参加している中央アジア班からは他にカザフスタンの事例報告が行われ、報告の結果、大統領制と大統領権力の比較検討が同班における今後有望な研究課題として浮かび上がった。4)上記項目を踏まえ、博士学位論文の執筆作業を進めた。
著者
笹原 亮二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本年度の調査は、前年度までの調査成果を踏まえて、未調査の地域の祭や民俗芸能、及び補充調査の必要な地域の祭や民俗芸能について実施した。本年度新たに調査を行ったのは、岩手県の三陸海岸地方南部で行われている虎舞である。虎舞は宮古市域や釜石市域を中心に20ヶ所以上で行われている芸能である。虎舞は、文楽や歌舞伎で有名な国姓爺合戦に因んだもので、中国を舞台として和藤内の虎退治の話を仕組んだストーリーが演じられるものである。同様の内容を有する芸能は神奈川県三浦半島や瀬戸内地方にも若干見られるが、分布の密度は三陸地方のほうがはるかに濃い。また、三陸地方の虎舞の芸態や音楽が、他地域の虎舞よりも三陸や岩手に多数分布している剣舞や山伏神楽とむしろ共通性を感じさせる。三陸地方の虎舞の調査研究はそれほど進んでおらず、関連資料の蓄積があまり見られない。従って、どのようなかたちで現在の分布状況や芸態が掲載されたかは、今回の調査では明らかにすることができなかった。基本的なデータの集積が待たれる。補充調査としては、南九州の琉球人踊について調査を行った。本年度は、琉球人踊の分布が知られていたにも関わらず、昨年度まで調子をしていなかった種子島の琉球人踊について調査を行った。従来の研究では、鹿児島本土では琉球から島津家にやってくる使節に因んだ琉球人踊が行われているのに対し、種子島では一般の人々が江戸期から盛んに琉球と行き来してきたということがあり、そうした直接交渉に因んだ琉球人踊が行われているとされてきた。確かに、鹿児島本土とは異なるかたちで種子島の人々が琉球人に扮した踊が行われていたが、琉球の人々を写実的に真似たのではなく、鹿児島とは異なるかたちでではあるが、かなり変形した奇妙なかたちで琉球人の姿態を演じていた。直接的な琉球の人々との交渉が相当ありながら、何故こうした変形させて演じられているのか、興味を惹かれるところである。また、種子島では、北部の西之表市から南部の南種子町まで各地に琉球人踊に類するものが分布していて、内容は場所によってかなり違っていた。更に詳細な実態調査の必要性を感じた。本年度はそのほか、長崎地方の獅子浮流、佐賀地方の面浮流、伊勢地方の唐人踊と鯨船神事、沖縄地方の唐踊と獅子舞などに関する調査を実施し、関連資料を収集した。
著者
金崎 良三
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究の結果は、以下のように要約される。(1)スポーツを通じての人間関係の質的量的把握に基づいて作成した尺度によって対象者のスポーツ・コミットメントの測定を行ったが、男女ともコミットメントのレベルが高いほどスポーツとのかかわりが深い。したがって、本研究で用いたコミットメント尺度の有効性は検証された。(2)学校体育とスポーツ・コミットメントの関連については、性別、学歴別を問わず学校時代の体育授業の評価が高い者、体育授業に意欲的に取り組んだ者、体育授業で楽しい経験をした者、体育行事て活躍した者、体育行事で楽しい経験をした者および課外でのスポーツを実施した者ほど、スポーツ・コミットメントのレベルは高い。すなわち、学校での体育授業や体育行事の経験、課外スポーツ活動の経験は、卒業後のスポーツ・コミットメントの形成に影響を及ぼしていることが明らかになった。(3)男女の高卒者、大卒者ともに学校体育における経験は、卒業後のスポーツとのかかわりないしスポーツの継続化を規定する要因となっている。(4)生涯スポーツにつながる学校体育の在り方に関して、本研究の結果からいえることは、第1に体育授業のための場所・施設・用具などのハード面の条件を整備すること、第2に授業を行うクラスの人数が多すぎたりせず、生徒・学生の運動量が適切であること、第3に彼らの好きな運動やスポーツの種目がある程度実施できること、第4に教師は指導の仕方を工夫すること、第5に生徒・学生が意欲的に授業に取り組むように動機づけをし、楽しい経験を積ませること、第6に体育行事への参加の機会を増やし楽しい経験をさせること、第7に課外でのスポーツ活動を奨励することである。
著者
田村 俊作 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 齋藤 泰則 越塚 美加 河西 由美子 齋藤 誠一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

公共図書館の課題対応型サービスが定着するための条件を明確にすることを目的に各種調査を行い,以下の点を明らかにした。(1)サービスは複合的であり,重点の置き方は図書館により異なる。(2)図書館員はサービスの多様性を容認している一方,業務負担の増大に対して根強い抵抗がある。(3)従って,課題対応型のサービスに対する図書館員の理解と参加,および必要な技能の獲得が鍵となる。(4)また,関連組織との協働型の連携がサービス展開に効果的である。
著者
田崎 直美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、フランス第四共和政期(1946-58)の芸術音楽活動を国家による音楽政策との関連を考察する目的で、情報省管轄下で国内唯一の国営ラジオ局の音楽番組方針とその内容について調査を行なった。その結果、音楽監督の強力な主導のもとで、1)芸術音楽番組による国民啓蒙と教育、2)「メトリーズ」による児童合唱およびフランス音楽活動の振興、3)国際協調と並行したフランス音楽の栄光の強調、の実態を明らかにした。パリの「被占領からの解放」の記憶化はアメリカ亡命作曲家作品への高い評価の形で行われたこと、1950年頃までにドイツとの音楽交流を通じた親善の動きが出てきたこと、も明らかにした。
著者
新村 信雄
出版者
茨城大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

頭書テーマのモデルタンパク質としてDeath-associated protein kinase(DAPK)を選定1.(DAPK)の発現(1)宿主である大腸菌の使用コドンに従い最適化したDAPKリン酸化領域をコードするDNAをプラスミドベクターpET-20b(+)のNdel-Xholサイトにサブクローニングし、BL21(DE3)大腸菌株に形質転換し、大量培養する事によってDAPKを得た。(2)DAPKの精製はNi Sepharose FF担体を用いた金属アフィニティ精製とHiPrep Sephacryl S-100 HRを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで行った。2.DAPKのATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)の結晶育成(1)PEG1000、硫酸アンモニウム、硫酸リチウムの三条件を重点的に最適化し単結晶を得る事が出来た。(2)ATPアナログ物質としてアデニリル-イミド二リン酸(AMP-PNP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシンγチオ三リン酸(ATP-γS)を使用した。3.DAPKのATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)での水和水構造の違い。(1)DAPKのX線結晶構造解析:DAPKに結合しているATPアナログ物質は10個以上の水分子と水和構造を形成している。これらの水分子は良くオーダーされており、はっきりと観測する事が出来たと言えるだろう。しかしAMP-PNP及びATP-γSのγ-リン酸基はディスオーダーしており、確実な原子位置を特定出来ているとは言い難い。(2)DAPKの中性子結晶構造解析:中性子回折法での見かけの水和水構造はその運動状態を反映して、ブーメラン状、棒状、ボール状にそれぞれ見える。ATP結合状態とApo状態での水和水配向の自由度(エントロピー)の差に寄与るると考えられる。ATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)、非ATP結合タンパク質の水分子の構造を求め、3状態での構造の違いを比較し、ATPと水分子との相互作用を解明する。引き続き中性子結晶構造解析のための大型結晶育成実施中。
著者
堀江 重郎
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

Pkd^<-/->マウスにおいて、腎嚢胞形成に関する遺伝子群を包括的に解析する目的で腎嚢胞形成前の胎生14.5日における、野生型およびPkd^<-/->マウスの胎児腎からmRNAを抽出し、約3,000の遺伝子を含むDNAチップで発現遺伝子を検討した。野生型及びPkd^<-/->マウスの胎児腎で3倍以上mRNAの発現が異なった遺伝子は23みられた。Pkd^<-/->マウスで増加していた遺伝子にはPOLD1(DNA polymerase delta catalytic subunit-1)が認められた。Pkd^<-/->マウスで減少していた遺伝子では、apoptosis driving genesとしてのcaspase 1、7、11およびIL-1β、Trancscription factorsであるGATA2、Lbx 1、cell cycle related genesであるjun D1が認められた。以上の結果から腎嚢胞形成には、適切なアポトーシス装置が作動していないこと、細胞周期回転の亢進が関与していることが示唆された。
著者
新野 宏 柳瀬 亘 伊賀 啓太 栃本 英伍
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

竜巻を生ずる温帯低気圧や熱帯低気圧の構造と環境場を解明すると共に、熱帯低気圧に伴う竜巻の可能性の評価には環境場の空気の連行を考慮した対流有効位置エネルギーが有効であることを見出した。また、稠密な地上観測網やドップラーレーダー観測網等のデータの同化により、竜巻を生ずるスーパーセルの下層メソサイクロン(LMC)の位置の予測の改善が可能であり、竜巻の強度はLMCの鉛直渦度や下層の相対湿度と相関が良いこと、従って竜巻のリスクを予測する上でアンサンブル予報によりLMCに遭遇する確率分布を求めることが有望であることを示した。さらに、超高解像度再現実験により現実事例の竜巻の多重渦構造の再現に成功した。
著者
中崎 清彦 苅田 修一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

コンポスト原料中に含まれる油脂分の分解を促進する高速コンポスト化の研究過程で、油脂分が活発に分解されているときにアンモニア臭の発生が劇的に低減される。コンポスト化における窒素の収支を詳細に検討し、アンモニア臭の低減効果は油脂の分解中間体にアンモニアが中和されるためのではなく、油脂分解菌の菌体合成にアンモニアが使用されるためであることを確かめた。また、トリブチリンを含有するLBTR培地上で油脂分解微生物を計数したところ、油脂分解微生物はコンポスト化中盤以降に増殖し、アンモニア臭低減効果の発現とよく一致する結果が得られた。なお、LBTR培地上で優勢な好熱性細菌LT1株、およびLT4株を単離し同定した。さらに、微生物叢をDGGE解析装置で解析したところ、油脂分解菌LT1株、およびLT4株と協同して作用する微生物として、新たな微生物DOM-1の存在を確認するとともに、遺伝子の配列情報からDOM-1を同定した。DOM-1は油脂含有培地での生育が確認されず、現在まで純粋培養を確立するに至っていないが、油脂を含まず、アンモニア臭低減効果も見られないコンポスト化ではDOM-1が検出されないことから、DOM-1は油脂分解菌LT1株、およびLT4株との相互作用を及ぼしながら共存しているものと考えられた。また、油脂分解微生物、および油脂分解微生物と協同して働く微生物の初期濃度を高めるために、油脂が活発に分解されているコンポストの製品を種菌として返送したところ、油脂の分解を早めアンモニア臭低減にも効果があることを明らかにした。
著者
堀 元 秋田 次郎 三宅 充展 鴨池 治 芹澤 成弘 林山 泰久
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1)非家父長的利他性、すなわち、他者の判断基準を尊重した上で、他者が望ましい状態にあることを自らも望ましいとする他者への配慮、に由来する効用の相互依存関係の分析を非定常モデルへ拡張した。2)最適な自己資本比率規制を分析するために、自己資本比率が銀行収益に及ぼす効果を検討し、銀行の期待自己資本収益率と銀行の破綻確率の間にはトレードオフが存在することを証明した。3)アロンソ型離散土地市場モデルを分析し、競争均衡を計算するための有限アルゴリズムを導出した。4)地球温暖化問題に対処する「京都メカニズム」が京都議定書でとりまとめられたが、京都メカニズムには先進国と発展途上国の利害対立等、多くの問題が指摘されている。京都メカニズムの問題のうち特に争点となっているCDMについて分析を行った。5)環境を利用することから生じる総価値を補償的偏差および等価的偏差の概念で定式化し、総価値が利用価値および非利用価値の加法分離形で表現できることを示し、利用価値は、直接的利用価値および純間接的利用価値に分離可能であることを示した。6)制度・経済システムといったものに付随する「本質的な不確実性」は、伝統的なリスクによる分析を越えるものとして、ナイト流不確実性として捉えることが出来る。不確実性が高まれば留保価格が低下する、というこれまでのフレームワークでは説明できなかった主張を証明した。7)所有と経営が分離している企業とオーナーが経営上の意思決定を行うことの出来る企業を比較すると、役員に対して金銭的報酬を通じて株主の利益を追求するインセンティブが与えられているのは後者であるということを実証した。8)メカニズムに戦略的虚偽表明を防止するという条件を課した場合、純粋交換経済モデルにおいて、パレート効率性と最小消費保証条件の間にトレードオフが存在することを証明した。
著者
伊藤 章 小林 寛道 阿江 通良 飯干 明 藤井 範久 榎本 靖士 深代 千之 杉田 正明
出版者
大阪体育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

第11回世界陸上競技選手権大会(大阪,2007)に出場した各種種目の世界一流選手と日本選手の動作分析とタイム分析をおこなった.これらの分析結果とこれまで蓄積してきたデータとを比較し,今回出場した世界一流選手たちの技術の特徴を明らかにするとともに,日本選手の技術の長所や改善すべき点を洗い出すことが出来た.多くのデータを収集できた種目に関しては,記録との相関関係をもとに普遍的ともいえる合理的技術を示すことが出来た.
著者
長瀬 文昭 田中 靖郎 堂谷 忠靖 石田 学 紀伊 恒男 伊藤 真之 松岡 勝 柴崎 徳明 大橋 隆哉 国枝 秀世 田原 譲 北本 俊二 三原 建弘 田中 靖郎 CANIZARES C. RICKER G. 鶴 剛 粟木 久光 河合 誠之 吉田 篤正 SERLEMITSOS アール 林田 清 BREON S. 海老沢 研 VOLZ S.V. KELLEY R. HELFAND D. MCCAMMON D. 常深 博 牧島 一夫 満田 和久 村上 敏明 小山 勝二 山下 広順 小川原 嘉明 宮本 重徳 MUSHOTZKY R. 槇野 文命 HOLT S. 井上 一 SERLEMITSOS R. 川口 淳一郎 中川 道夫 藤本 光昭 長瀬 文昭 松尾 弘毅 上杉 邦憲 WANG B. FEIGELSON E. GRAFFAGNINO V. REYNOLDS C. 羽部 朝男 GEHRELS N. FABBIANO G. SERLEMITSOS RICKER G 山内 茂雄 池辺 靖
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

「あすか」(Astro-D)は、1993年2月に打ち上げれられ、わが国4番目のX線天文衛星となった。この衛星は0.5-10keVの広いエネルギー帯をカバーし、史上最高の感度でX線天体の撮影を行うと共に、世界で初めてX線CCDによる精密X線分光を行う高性能X線天文台である。「あすか」の性能はX線天文学を飛躍的に進めるものと国際的に注目されている、X線天体は極めて多岐に亘り、殆どあらゆる種類の天体がX線天文学の対象となっている。特に銀河系では中性子星やブラックホールのX線連星、超新星残骸等、銀河外では、銀河団、クェーサー等の活動銀河中心核、更に遠方からのX線背景放射が重要課題である。この衛星に搭載されている観測装置は日米共同で製作された。打ち上げ前には、装置の設計・製作・試験・較正・調整を、打ち上げ直後には装置の較正・調整を共同で行ってきた。さらに、定常観測に入ってからは、装置の性能の正確な把握や正しいデータ解析のツールの提供等でも共同で作業を行うとともに、その成果を最大限に挙げるために、観測計画の打ち合わせ、ソフトウエア開発、観測結果の処理、解析等の各過程で両国の研究者が協力して作業を行ってきた。これらの作業のための日米研究者の移動は、主に、本科学研究費によって行われた。これら日米協力に基づく「あすか」がもたらしたいくつかの成果を以下にまとめる。・「あすか」が打ち上がって40日もたたないうちに近傍銀河M81に発生したSN1993Jからは、ドイツのX線天文衛星ROSATとほぼ同時にX線を検出した。発生して1週間ほどの超新星からX線を検出したのは今回がはじめてである。・超新星の爆発で飛び散った物質が星間物質と衝突して光っている超新星残骸について、「あすか」のすぐれた分光特性による新しい学問的展開がひらかれている。・ガンマ線バーストと呼ばれる特異な現象の発生源をはじめて既知の天体との同定に成功し、この現象の原因の解明に大きな貢献をした。・われわれの銀河系の中心部や円盤部を満たす高温ガスからのX線の分光的研究が進み、従来の予想では理解し難い事実があきらかになりつつある。・楕円銀河、銀河群、銀河団といった宇宙の大きな構造物をとりまく高温ガスの分光学的研究が進み、これらのガス中の重元素量が一貫して少ないという、新しい考え方の導入を迫る事実があきらかになってきた。また、これらの構造物を構成する暗黒物質の分布や量についても新しい知見が得られつつある。・遠方の銀河団をつかった宇宙の大きさを決める研究も、「あすか」の広い波長範囲の分光を行える能力をつかって、着々と成果をあげつつある。・活動銀河の中心にある大質量ブラックホールのごく近傍からのものとおもわれる鉄の輝線構造をはじめて発見し、ブラックホール近傍での物質流につき貴重な情報をもたらしている。この中心核を取り巻く比較的遠方の物質や分布の物理状態についても「あすか」のすぐれた分光性能により新しい事実が次々と明らかになってきている。・宇宙X線背景放射の研究も、「あすか」の波長範囲の広さを利用して、宇宙のはて近い遠方の宇宙初期の原始天体を探る研究がはじまりつつある。以上のように、本科学研究費補助金の援助のもと、「あすか」を用いた日米の研究者による共同研究は大きな成果をあげている。