著者
須川 亜紀子 清水 知子 田中 東子 岩下 朋世 川村 覚文 筒井 晴香
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究では「2.5次元文化」(マンガ、アニメ、ゲームなどの2次元の虚構世界を、人間の身体を通じて3次元の現実に顕在化する文化実践―2.5次元舞台、声優/キャラクターコンサート、コスプレ等)とファンの共同体構築に関する調査を行った。これまで①現実・虚構・情報世界を経験することによりファンは「生産消費者」としてコンテンツに参加し、大きな影響を与えていること、②ファンは、「推す、好き」という「嗜好」によって接続され、「親密な他者」として共同体間の自由移動をしながら「弱い紐帯」を生成していること、③キャラクターと演じ手の重なりやズレを楽しむ「ごっこ遊び」の快楽が生まれることが析出された。
著者
瀧澤 一騎
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では運動トレーニングによる体力向上が,アルコール分解能を高めることを実験的に検討した.日常的に運動習慣のない被験者を対象に,12週間にわたるトレーニングを行った.その前後で体力テストを行い,トレーニング効果とアルコール分解能を測定した.初年度は有酸素性トレーニングについて検討し,次年度は筋力トレーニングについて検討した.結果として,有酸素性トレーニングによってアルコール分解能は向上しなかったが,筋力トレーニングによってアルコール分解能が向上した.故に,筋肥大を伴うようなトレーニングはアルコール分解能を向上させるといえる.
著者
佐々木 毅 福元 健太郎 中北 浩爾 谷口 将紀 成田 憲彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1 1996年度に引き続き、政治改革に関する一次資料を収集・複写し、目録を作成した。本年度は、とくに国会審議関係の資料、第八次選挙制度審議会関係の資料、マスコミ関係の資料、および政治改革推進協議会(民間政治臨調)関係の資料を充実させることができた。その結果、昨年度以来収集した資料は約1000点に達した。これらの資料は、現在「政治改革ア-カイヴ」として東京大学法学部研究室内に暫定的に保管してある、今後、最終的な収納先および公開方法について検討する予定である。2 上記ア-カイヴを主たる素材として、政治改革に関する政治過程の分析を行うための「政治改革研究会」が、研究分担者・および8名の研究協力者(飯尾潤、岩井奉信、野中尚人、岩崎健久、濱口金也、内山融、岩崎正洋、川人貞史の各氏、順不同)を得て組織された。具体的な研究項目は、竹下〜海部内閣・宮澤内閣・細川内閣の時系列的部分と、自民党・野党・政治改革推進協議会・労働界・マスコミ・選挙制度・政治資金および腐敗防止などのテーマ別部分からなり、それぞれの項目について論文が提出されている。3 研究会の成果を社会化するため、『政治改革の記録(仮称)』編集委員会を断続的に開催し、1998年秋の公刊を目指して作業が進められている。現在は出版社との調整、提出済み論文の検討作業、および掲載資料の編集・インタビュー調査の準備を行っているところである。
著者
馬場 基 中川 正樹 久留島 典子 高田 智和 耒代 誠仁 山本 和明 山田 太造 笹原 宏之 大山 航 中村 覚 渡辺 晃宏 桑田 訓也 山本 祥隆 高田 祐一 星野 安治 上椙 英之 畑野 吉則
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

国際的な歴史的文字の連携検索実現のため、「IIIFに基づく歴史的文字研究資源情報と公開の指針」および「オープンデータに関する仕様」(第一版)を、連携各機関(奈良文化財研究所・東京大学史料編纂所・国文学研究資料館・国立国語研究所・京都大学人文学研究所・台湾中央研究院歴史語言研究所)と共同で策定・公表し、機関間連携体制の中核を形成した。また、上記「指針」「仕様」に基づく、機関連携検索ポータルサイト「史的文字データベース連携システム」の実証試験版(奈文研・編纂所・国文研連携)を令和2年3月に公開。令和2年10月には、台湾中研院・国文研・京大人文研のデータを加えて、多言語(英語・繁体中国語・簡体中国語・韓国語)にて本公開を開始した(https://mojiportal.nabunken.go.jp/)。なお、連携・サイト公開は、国内および台湾メディアで報道された。木簡情報の研究資源化として、既存の木簡文字画像(約10万文字)をIIIF形式に変換した。また、IIIF用の文字画像切出ツールを開発し、新規に約15,000文字(延べ)のデータを作成した。過年度と合わせて合計約115,000文字の研究資源化を実現した。文字に関する知識の集積作業として、木簡文字観察記録シートを約50,000文字(延べ)作成した。なお、同シートによる分析が、中国簡牘・韓国木簡にも有効であることが確認されたことを踏まえ、東アジア各地の簡牘・木簡文字の観察作業も実施した。国際共同研究・学際研究として、令和1年9月に、東アジア木簡に関する国際学会を共催した(北京)。当初、国際学会の開催は、研究計画後半での実施を予定していたが、本研究遂行にあたっての共同研究等の中で、学会共催の呼びかけを受け、予定を繰り上げて国際学会を共催した。また、人文情報学の国内シンポジウム等において、IIIF連携等本研究の成果を報告した。
著者
菱沼 昭 小飼 貴彦
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

胚内の間葉系細胞に発現する HMGA2 は腫瘍細胞の分化マーカーとして注目されている。我々の多種の甲状腺腫瘍での発現の検討から、HMGA2 の悪性腫瘍での選択的な発現が示された。また、分化型甲状腺癌である濾胞癌は、しばしばその診断に困難を伴うが、術後組織のHMGA2免疫染色の結果が確定診断や予後予測に応用できる可能性が示唆された。一方、甲状腺癌培養細胞モデルを用いたトランスクリプトーム解析から、発癌を促進する変異サイログロブリンが、HMGA2 の発現を介して数種の細胞増殖関連遺伝子を誘導するという当初の仮説を裏付ける結果を得ることが出来た。
著者
黒崎 直子
出版者
千葉工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、血液中にあるエイズウイルス(HIV-1)が宿主であるヒトの死後、どの程度の期間感染力を有しているのかを検証し、また血液の死後変化(変性や腐敗)がその感染力の維持にどのように影響するのかを明らかにすることである。本年度は、温度条件や保存期間を複数のパターンに設定してHIV感染者の血液を保存し、溶血や変性を起こした血液中において、ウイルス感染が可能であるかについて検証した。具体的には、3種類の温度条件下(4℃,室温(22℃〜23℃),37℃)で保存したエイズウイルス感染血液中のウイルスタンパク質(HIV-1_<gag>p24)を経時的に定量した。その結果、室温保存の血中のウイルスタンパク質量は20日間増加しなかったが、37℃で保存した血中では1日目で一度増加するが、その後減少した。しかし、4℃で保存した血中では15日間に渡ってウイルスタンパク質量が増加し、その後20日目で減少した。つぎにウイルス感染血液を新鮮血液(ウイルス非感染血液)と接触(共培養)させて、新鮮血液にウイルスを感染させる二次感染モデルを作成し、保存血液からも二次感染が成立するか検討した。その結果、3種類の温度条件下で感染9日目までウイルスRNAが検出された。4℃で保存したウイルス感染血液は13日目でもウイルスRNAが検出された。以上のことから、ウイルス感染血液は複数の温度条件で保存された場合でも、感染能力を維持されることを示唆している。血液検体に存在するウイルス量により、本研究で行った保存期間より長期間感染能力を維持していることが考えられるので、司法解剖などの死後日数の経過した死体を解剖する際にもウイルス感染の危険性を十分注意する必要があると考えられる。
著者
吉田 倫子
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は観光を糸口として文化財のバリアフリー整備にどこまで踏み込んでいるかを明らかにするものである。バリアフリー整備状況は城郭の地理的条件だけでなく,管理者の意向によって異なっている。観光施設としての満足度とバリアフリー整備の意識には関連があることもわかった。年齢や性別も影響している。また,管理者はバリアフリー整備を必要する方と直接対話することで,制度上困難な整備でも仮設で対応しようとする意向があることがわかった。若い世代がそうした配慮に好意的であり,歴史的価値の認識にも影響しないことから,可能な限りのバリアフリー整備を検討していくことが必要である。
著者
安原 隆雄 黒住 和彦 亀田 雅博 菱川 朋人 佐々木 達也
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒト間葉系幹細胞由来多能性幹細胞を用いて、凍結保存の状態から溶解し直接移植する群とカプセル化細胞移植する群に分けて治療効果を検討する。対象とするのは一過性中大脳動脈閉塞モデルラットであり、行動学的評価・組織学的評価を中心に行う。うつ様症状に対する治療効果も重要な評価項目とする。虚血の程度をエコーにより確認し、血流遮断時の虚血負荷、運動機能、うつ様症状、組織学的評価(脳梗塞体積、炎症性変化、神経新生の程度等)を個体ごとに確認し解析する。過去に、脳梗塞モデル動物で直接移植とカプセル化移植の比較を行ったことはなく、細胞治療の意義・作用機序の解明に迫る研究である。
著者
小澤 英実
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

アメリカ文化における「恐怖の表象」をフェミニズム理論から検証するという研究テーマに即し、本年度はバーミンガム大学で開催されたアメリカン・スタディーズ国際カンファレンスにて、ハリウッドのホラー映画に関する口頭発表を行い、同内容を論文として同学会ジャーナルに掲載した。本内容は、日本の恐怖映画のリメイク作品群を事例に、日米の文化的・地政学的な差異が諸作品と日米の観客に与えている影響を検証し、ホラー映画に登場する幽霊・モンスターの身体と、演劇・舞踊の身体との接合点を指摘したもので、身体を軸にジャンルを横断した表象研究の必然性を主張した。また本年度はとりわけ、身体がもっとも先鋭的に焦点化される舞台芸術の研究に力点を置き、サム・シェパードのゴシック演劇『埋められた子供』論を雑誌『アメリカ演劇』に、演劇における身体と映画や漫画における身体との比較・考察を雑誌『舞台芸術』に発表し、恐怖の表象研究の汎用可能性および文化研究の横断可能性を示したほか、東京国際演劇祭「アメリカ現代戯曲シリーズ」にて上演された女性の死とセクシュアリティをテーマとしたトリスタ・ボールドウィンの戯曲『DOE-雌鹿-』を翻訳し、現代アメリカ演劇ないしアメリカ社会の最新動向を紹介した。その他の口頭発表として、秋にバイセクシュアリティ研究の重要文献マジョリー・ガーバー『Vice Versa』の討論会に報告者のひとりとして出席し、フェミニズム/セクシュアリティ研究を巡る課題について討議を行った。
著者
木村 勢津 田邉 隆 楠 俊明
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

男女各6名の児童を対象に3年間歌声と話声の変化を記録し、音声解析(音響解析)した結果、女児において第3フォルマントの位置が(24kHz表示で)、ソプラノ系が10kHz以上、アルト系が9kHz以下に位置し、将来の声種を判定する上で有用な観点となりうることを示した。また変声期前後の歌唱指導として、広い音域を滑らかに歌唱できる発声法を習得するために、地声と裏声の歌い分けに加え、地声と裏声の混合発声やポルタメントを用いた発声が有効であることを示した。
著者
小布施 祈恵子
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では1970年代に独自の布教方法によって多数の日本人信者を獲得されたとされる日本イスラム教団の活動内容を解明し、日本イスラーム受容史における同教団の活動の位置を検討した。その結果、同教団の活動にはイスラームの土着化・日本化と呼べる要素も見られるものの、教団設立者が「大先生」と呼ばれ「癒し」の役割を担っていたこと、教団が集団入信式など大規模な儀式を重視していたこと、ムスリムであることより教団への帰属意識が強調されていたことなどの点からむしろ同教団は「新宗教」として位置づけることができるのではないかとの結論に至った。
著者
山下 俊一 鈴木 啓司 光武 範吏 サエンコ ウラジミール 大津留 晶
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

正常ヒト甲状腺初代培養細胞から多分化能幹細胞様細胞を誘導することに成功した。詳細な検討から、甲状腺細胞のリプログラミングや上皮-間葉転換が、発癌時の癌幹細胞の発生に関与している可能性が示唆された。甲状腺癌発症関連遺伝子のひとつと考えられているFOXE1の、癌組織における発現パターンの変化も明らかにした。また、日本人症例でFOXE1、NKX2-1近傍のSNPsが甲状腺癌発症と関連することを明らかにし、これは本邦にとって重要な結果である。さらに、分子標的剤Imatinib が、従来の化学療法・放射線治療時のNF-kappaB活性上昇を抑制することを見出し、予後不良な甲状腺未分化癌の新規治療法となることが期待された。
著者
阪下 裕美
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

歯周病は歯周組織破壊を伴う慢性炎症性疾患であり、従来の原因除去療法のみでは失われた歯周組織を再生させることはできず、安全で有効性の高い歯周組織再生療法の確立が今も求められています。そこで本研究では、皮膚や心臓などの損傷組織に骨髄由来platelet derived growth factor receptor a発現(PDGFRa+)細胞を動員して組織再生を促進するDNA結合タンパクhighly mobility group box 1 (HMGB1)ペプチドに着目し、同分子による歯周組織再生増強効果を検討します。さらに、歯周組織再生に関与する細胞を同定し、歯周組織再生機序の解明を目指します。
著者
大谷 奨
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、いわゆる新構想大学(兵庫教育大学、上越教育大学、鳴門教育大学、長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学、鹿屋体育大学)がそれぞれどのような経緯で設置されたのか、その過程について地方議会の会議録、地元新聞などの分析を通じて検討した。従前の国立高専や国立医大に比べると露骨ではなかったものの、誘致運動は引き続き、土地の提供、社会インフラの整備といった少なくない地元負担を伴いつつ展開されたこと、その際新構想大学の理念についての精査はなされず、国立高等教育機関を望むメンタリティが結果的に、全国に新構想大学を散在・定着させることにつながったことを明らかにした。
著者
藤井 博英 山本 春江 角濱 春美 村松 仁 中村 恵子 坂井 郁恵 田崎 博一
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

現代医療には、「やまい」を持った時に生じる不安や苦悩への対処ケアが不足していると言われている。青森県地方では、それをシャーマンが補完している実態がある。本研究の目的は、シャーマンのもたらす"癒し"の実態から看護実践に還元できる内容を抽出することである。そこで、いたこのA氏に対して相談内容や、役割についてインタビューを行った。利用者は、病気治療にかぎらず、ふりかかった不幸や災いなど人生の問題場面に幅広く相談していた。それらの相談にイタコは、"口寄せ"により対処し、問題の因果応報を判断して、指示的に関わり行動化させることで"癒し"をもたらしていた。さらに、シャーマンを訪れた経験のある外来患者に対して、シャーマンがもたらす"癒し"について半構成的インタビューを行った。その結果、「対処方法を教えて欲しい」「原因が霊的なたたり、障りでないか判断して欲しい」と望み、「めどが立つ(見通し)」「前向きになれる」「やる気になる」「腹をくくる」などの心情の変化を体験していた。患者の「前向きになれる」「やる気になる」など、力を蓄え、発揮させるというエンパワーメントが行われていた。また、これらに関わる外来看護師に"癒し"について半構成的インタビューを行った。その結果、患者が「癒される」感情を<ホッとする><安らぎ><安心><和む><リラックス>などと捉えており、この対応として<傾聴的な態度><患者に寄せる関心><自己(患者)の存在の承認><その人らしい日常生活が送れるサポート>など行っていた。シャーマンの"癒し"は、ある程度行動を強制することにより「力を与える」方向に、一方ナースは、患者の心情を受け入れ保障する方向に関わっており、患者の必要としている"癒し"は、その両者を含んでいるのではないかと考えられる。
著者
福本 学 木野 康志 鈴木 正敏 山城 秀昭
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

福島第一原発事故の被災動物臓器アーカイブを構築し、以下の結果を得た。事故後2年経過し、ほぼ放射性セシウムのみが検出され、全臓器であった。ウシ血中の酸化ストレス関連因子は内部被ばく線量率と相関を示した。末梢血リンパ球のDNA二本鎖切断数は多かったが、線量とは無関係であった。ウシ精子に形成異常を認めなかった。地表を這い、γ、β線両方の被ばくが大きいアカネズミでは、精子形成の細胞回転が亢進しているが成熟精子に異常を認めなかった。野生ニホンザル骨髄は低形成傾向だが、抹消血球に異常を認めなかった。著変は認めないもののサルの内部被ばく線量率は現在も高く、生物影響を知るための詳細な観察継続が必要である。
著者
吉田 唯
出版者
東大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

神代文字は、江戸時代から近現代まで一部の信奉者によって古代の文字(漢字伝来以前の日本固有の文字)であると信じられており、神代文字に関する書籍についても、非学術的なものが大半を占める。本研究課題は、近世の偽作である神代文字資料に着目することで近世以降の学問史、宗教史、あるいは政治史のなかで神代文字を捉え直し、それが昭和戦時期に興隆を見せた思想的背景を明らかにすることを目的としている。
著者
山崎 大輔
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Mg2+トランスポーターとして働くCNNM4が腸管上皮の恒常性を制御する仕組みを明らかにするため、CNNM4欠損マウスの大腸よりクリプトを回収し、in vitroでの三次元培養を行った。回収したクリプトの大きさを比較したところ、CNNM4欠損マウスのクリプトは野生型マウスのものより小さかった。回収前の腸管組織ではクリプトの大きさに違いが見られないことから、CNNM4欠損マウスのクリプトは回収時の衝撃により崩れて小さくなったと考えられ、組織構造に何らかの変化が生じていることが示唆される。野生型マウスより回収したクリプトをマトリゲルの中に包埋すると、開いていた一端が次第に閉じて4時間後には球状のスフェロイドとなった。しかしCNNM4欠損マウスのクリプトの場合は、マトリゲルに包埋してから1時間後には多くのクリプトがすでにスフェロイド構造をとっていた。これらの培養を続けたところ、CNNM4欠損マウス由来のスフェロイドは、野生型マウス由来のそれと比較して有意に成長する速度が大きかった。また同数のクリプトを播種した場合、CNNM4欠損マウス由来のクリプトからは野生型マウス由来のそれと比較してより多くのスフェロイドが形成された。これらの結果から、CNNM4欠損マウス由来のクリプトにはスフェロイドを形成する能力を有する増殖性の未分化な細胞が多く含まれている可能性が考えられた。そこでクリプトをトリプシン処理することにより単一の細胞へと分離させ、個々の細胞がもつスフェロイドを形成する能力を調べたところ、CNNM4欠損マウスのクリプト野生型マウスのそれと比較してより多くのスフェロイドを形成する能力をもつ細胞が含まれていることがわかった。以上の結果からCNNM4は腸管上皮における多分化能を有する細胞の数を制御している可能性が示唆された。
著者
百々 幸雄 土肥 直美 近藤 修
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.奄美諸島住人の頭蓋140例、沖縄本島122例、先島諸島63例について、計測的、非計測的特徴を調査した。2.顔面平坦度計測の結果から、沖縄本島人が予想以上に顔面が平坦であることが明らかになった。3.沖縄本島人の顔面の平坦性は渡来系弥生人、古墳人とほぼ同様で、顔面の立体的なアイヌや縄文人とは著しく異なっていた。4.したがって、従来の伝統的計測法による結果のみをもって、琉球・アイヌ同系説を議論することがいかに危険であるかを指摘した。5.頭蓋の非計測的特徴の出現パターンも、沖縄、奄美諸島人はアイヌや縄文人と明らかに異なり、むしろ本土の日本人や中国人と近いことが明らかになった。6.我々の今回の結果だけから、琉球・アイヌ同系説を否定してしまうのもまだデータ不足と思われ、例数がまだ100例に満たない先島諸島を中心に、今後も調査を継続することで共同研究者と意見が一致した。