著者
坂本 彬 井上 博之 中川 致之
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.326-330, 2012 (Released:2013-10-08)

(1)日本国内で市販されている世界各地で生産された紅茶12銘柄を購入し,その化学成分などを分析,測定した。12銘柄はスリランカ4,インド3,中国2,日本1である。(2)タンニン,カテキン類8項目,没食子酸,テアフラビン類4項目,L-グルタミン酸,L-テアニン,γ-アミノ酪酸,遊離糖類3項目の含有量は変動が極めて大きかった。グルタミン酸,テアニン,また総アミノ酸については並級煎茶に匹敵する量を含む銘柄もあった。またγ-アミノ酪酸を60mg%以上含む銘柄もあったが発酵過程で増加したものであるかは判別できなかった。(3)4種のテアフラビンを個別に定量した結果,テアフラビン-3,3'-di-0-ガレートが最も多く,ついでテアフラビン-3-0-ガレート,次ぎに遊離のテアフラビンでテアフラビン-3'-0-ガレートが最も少なかった。また,テアフラビン合計値と赤色彩度を示す表色値aの間に相関が認められた。(4)遊離の糖類のうち,蔗糖,ブドウ糖,果糖,麦芽糖を分析したが麦芽糖は含まれず,検出された3種のうち蔗糖,ブドウ糖が多く,糖類合計として平均1.6%であった。(5)紅茶に含まれる有機酸のうち,シュウ酸を分析した。12銘柄平均含有量は0.54%であったが,シュウ酸特有のエグ味として影響する量ではないように思われた。(6)pHは緑茶同様にほぼ一定範囲に収まり,ほぼ5.00~5.4の範囲であった。
著者
相馬 裕樹 細田 智弘 伊藤 守 永江 真也 古橋 和謙 坂本 光男 野﨑 博之 清水 英明 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.500-506, 2020

<p>新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって,入院病床の確保が逼迫する問題となっている. 指定感染症であるCOVID-19 は,一定の基準に則って入退院の決定がなされており,入院期間は長期にわたる.大型クルーズ船によるCOVID-19 集団感染事例において,当院では軽症者を含む11 例のCOVID-19 感染症症例を経験したため,臨床経過から重症化因子と入院期間の延長に関わる因子を考察した.重症度は中国CDC の分類を用いて決定した.11 例の年齢中央値は62 歳,男性4 例・女性7 例で,軽症(mild)が 7 例,中等症(severe)が4 例,重症(critical)が0 例であった.発症から軽快の基準を満たすまでの日数の中央値は,中等症例13 日・軽症例7 日であった.発症からPCR の陰性化が確認できるまでの日数の中央値は,中等症例16 日・軽症例14 日であった.発症から退院までの日数は,中等症例22.5 日・軽症例16 日であった.COVID-19 症例は軽快した後も一部の症例でPCR 検査の陽性が継続し,入院期間の長期化の一因と考えられた.また,中等症例と軽症例を比較すると,中等症例は軽症例に比して入院時の血清フェリチンや血清アミロイドA 蛋白が高い傾向があった.COVID-19 症例の増加による病床数の確保が必要な状況においては,軽症例や入院後に軽快した症例の自宅・宿泊療養が検討される.また経過中に重症化する症例を適切に判別する方法を確立し,治療や二次感染防止のための入院・退院基準に反映することが必要であると考える.</p>
著者
野波 寛 坂本 剛 大友 章司 田代 豊 青木 俊明
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2103, (Released:2021-11-11)
参考文献数
35
被引用文献数
4

当事者の優位的正当化とは,NIMBY問題の構造を持つ公共施設の立地に関する決定権をめぐって,人々が当事者(地元住民など)に他のアクター(行政など)よりも優位的な決定権を承認する傾向と定義される。これは,当該施設に対する当事者の拒否の連鎖を生むことで,社会の共貧化をもたらす。優位的正当化の背景には,マキシミン原理と道徳判断の影響が考えられる。地層処分場を例として,集団(内集団ないし外集団)と当事者(統計的人数ないし特定個人)による2×2の実験を行った。内集団のみならずマキシミン原理が作動しない外集団でも,当事者の優位的正当化が示された。この傾向は,内集団において当事者が特定個人として呈示された場合に,より顕著であった。また,個人志向の道徳判断から当事者の正当性に対するパスは内集団で顕著であった。NIMBY問題に対する道徳研究からのアプローチには,今後の理論的な展開可能性が期待できる。
著者
齋藤 佳敬 内山 数貴 坂本 達彦 山﨑 浩二郎 久保田 康生 武隈 洋 小松 嘉人 菅原 満
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.8, pp.1023-1030, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)
参考文献数
23
被引用文献数
2

Denosumab is a fully monoclonal antibody against the receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand (RANKL), and prevents skeletal-related events by bone metastasis. Hypocalcemia is the most typical adverse effect of denosumab use. We have developed a management system for the more efficient and safer management of denosumab administration, and evaluated pharmaceutical interventions for the better control of hypocalcemia. All pharmaceutical interventions in the system from April 2016 to March 2020 were retrospectively evaluated. We have also assessed the incidence of hypocalcemia in 158 patients who were administered denosumab for six months or more in the period. A total of 282 pharmaceutical interventions (7.0% of the total administration) were conducted. The most conducted intervention was regarding hypocalcemia, which involved the suspension of the injection and/or the increase of calcium and vitamin D supplement with 65% adoption and 17% temporary treatment suspensions. Other interventions were about hypercalcemia, request of laboratory examination and ordering supplements, dental consultation, and poor renal function. A total of 199 interventions (70.6%) were adopted, with 33 administrations suspended. The frequency of hypocalcemia was 27.8% with just one patient having grade 2 hypocalcemia, suggesting that there were no severe cases. Moreover, hypocalcemia was significantly normalized following pharmaceutical intervention and/or handling by physicians (p=0.02) according to the system. Conversely, the normalization rate in hypercalcemia did not differ according to the countermeasures. In conclusion, pharmaceutical interventions according to our management system benefit safe denosumab treatment, especially in severe hypocalcemia prevention.
著者
松島 憲一 坂本 奈々 澤田 純平 藤原 亜沙美 牧内 和隆 根本 和洋 南 峰夫
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 = Journal of the Faculty of Agriculture, Shinshu University (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.25-37, 2015-03

信州大学は環境教育の一環として環境教育海外研修を毎年実施しており,2014年には3月1日より3月11日までの11日間に4名の学生をネパールに派遣し,首都カトマンズおよびダウラギリ県ムスタン郡マルファ村において調査ならびに研修を実施した。本報では本研修において訪問した,環境に優しい電気自動車による乗り合いタクシー(サファ・テンプー)の運営会社Nepal Electric Vehicle Industry社およびバイオブリケットの普及を通じ環境問題と貧困問題の改善を進める団体Centre for Energy and Environment Nepalに対して実施した聞き取り調査の結果を報告する。また,トリブバン大学理工学部環境科学科において実施した学生交流においてディスカッションされた内容,さらには滞在中に実施した環境意識調査(アンケート調査)の結果もあわせて報告する。
著者
高木 康夫 坂本 佳直美 中道 亮 佐藤 隆
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.77-86, 2020-03-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
16

The simulation results of the heat medium control and management of A-CAES plant (Adiabatic Compressed Air Energy Storage) are presented. For the study, the dynamic model of the A-CAES plant with liquid heat medium as heat storage is constructed in order to analyze charge-discharge cycle efficiency dependency on actual operating conditions. Various heat management systems for a CAES are proposed. Among the systems, heat medium circulating system is the most feasible solution. The heat management and storage is very important for the A-CAES plant, because about half of the energy is recovered through heat insulation and heat management. Dynamic plant efficiency analysis is also crucial because the dynamic properties of the plant influences on the efficiency. The model consists of the heat exchangers, the heat storages, the air storage and an ideal compressor and expander models. The heat transfer characteristics of the heat exchanger are tested by the experimental setup because the heat exchanger performance is the most important factor for the system efficiency. The plant scale and the heat loss influence on the charge-discharge efficiencies are shown through the simulations.
著者
坂本 稔 小林 謙一 尾嵜 大真 中村 俊夫
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
no.16, pp.91-94, 2005-03

第17回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム平成16(2004)年度報告 Proceedings of the 17th symposiumon Researches Using the Tandetron AMS System at Nagoya University in 2004\日時:平成17 (2005)年1月24日(月)、25日(火) 会場:名古屋大学シンポジオン Date:January 24th and 25th, 2005 Place:Nagoya University Symposion Hall
著者
坂本 達則 菊地 正弘 中川 隆之 大森 孝一
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.147-150, 2020 (Released:2020-11-28)
参考文献数
6

耳管や破裂孔の周辺構造の内視鏡下局所解剖を明らかにするために,骨標本の観察およびカデバダイセクションを行った。破裂孔は蝶形骨,側頭骨,後頭骨に囲まれた不整形の穴である。内視鏡下に上顎洞後壁を除去すると,翼口蓋窩で顎動脈の分枝を確認できる。蝶形骨前壁の骨膜を切開すると,翼突管,正円孔を確認できる。蝶形骨の翼状突起基部・内側・外側翼突板を削開すると耳管軟骨が露出される。耳管軟骨は耳管溝と破裂孔を充填する線維軟骨に強固に癒着している。内視鏡で手術操作を行うとき,翼突管および破裂孔よりも尾側での操作を維持することで内頸動脈・海綿静脈洞の露出・損傷を防ぐことが出来ると考えられた。
著者
坂本 晃一
出版者
日本福祉教育・ボランティア学習学会
雑誌
日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 (ISSN:24324086)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.136-145, 2017

小学5年生の総合的な学習の時間(全12時間)として行った、人権課題「同和問題」を扱った授業実践。本校のある墨田区は、同和問題(皮革産業)などの地域の重点課題への理解推進のため、人権尊重教育に力を入れてきた。本校は、東京都教育委員会による「人権尊重教育推進校」の指定を受け、「東京都人権教育プログラム」に基づいて研究してきた。この人権尊重教育実践では、福祉教育で最も大切とされる「差別の心」の変容というアプローチを中心に分析していく。3年生で学習した「皮革産業」を発展させ、5年生はと畜・解体を行う「食肉市場」を取り上げた。単元の前半では、多くの児童が食肉市場で働く人々について「残酷で怖い人」というイメージを持ったが、単元の後半では、従業員の方から話を聞き、食肉市場に対する差別的な手紙について考える授業を通して「大切な仕事。自分の心の中にも差別の心があった。相手を正しく知ることが大切」と気付くことができた。
著者
五十嵐 庸 中村 果歩 坂本 廣司 長岡 功
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.29-33, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
15

ヒト軟骨培養細胞株における,オートファジーマーカー分子の発現に対するグルコサミン(glucosamine,GlcN)の効果を検討した.その結果,LC3-IIやbeclin-1などの発現が,GlcNにより有意に増加することが明らかとなった.また,同時にサーチュイン(sirtuin,SIRT)1遺伝子の発現も,GlcNにより有意に増加した.さらに,GlcN添加によるLC3-IIの発現増加が,SIRT1阻害剤であるEX527で阻害された.さらに,mammalian target of rapamycin(mTOR)の関与を検討するために,mTORの標的分子であるS6 キナーゼ(S6 kinase,S6K)のリン酸化を調べたところ,S6Kのリン酸化に対してGlcNは影響しないことが明らかとなった.そこで,mTORを介さずにオートファジーを負に制御するp53のアセチル化状態を検討したところ,p53のアセチル化がGlcNによって有意に減少することが明らかとなった.なお,SIRT1は脱アセチル化酵素としてp53を脱アセチル化し不活性化することが知られている.以上の結果より,GlcNは軟骨細胞においてSIRTタンパク質の発現を亢進し,その標的分子であるp53を脱アセチル化し不活性化することによって,オートファジーを誘導するというメカニズムが考えられた.
著者
坂本 晶子 福井 彩華 山脇 真里
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.665-668, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
2

バストは重力により,たわむように変形し,上部の皮膚が伸ばされるという負荷を受けている.「重力に負けないバストケアBra」は,カップ内部に中央付近が本体と分離するシートを持つ構造であり,シートは立位時だけでなく,日常生活で主に着崩れの原因となる前屈時にも対応して機能 する.立位時は,皮膚伸長を抑制して微小重力環境下に近いひずみのない自然なバスト形状に整え,前屈時にはシートの着圧バランスが変わることでバスト形状変化を抑制し,日常生活における重力の影響を軽減することが可能である.
著者
吉岡 邦彦 青木 啓介 坂本 英雄 久留 優子 小澤 祐 小池 慎 伊関 亮
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.254-257, 2020

<p> 術式によらず, 熟練した手術チーム (術者, 助手, 麻酔科, および看護師等手術室スタッフ) を固定して手術を施行する事で安全性が高まることは周知の事実である. ロボット支援手術も同様で, 術者のみのSolo Surgeryではなく, 短時間で安全な手術を目指すには術者の技量はもとより優秀な手術チームが必要であり, その中でも助手は最も重要な役割を担う. ロボット支援手術において, 助手の技量・経験の多寡が手術成績に影響するか否かは議論が分かれるが, 術者が熟練者であれば助手の技量によらず周術期アウトカムが大きく損なわれることはない. しかし, 助手の技量が拙い場合, 手術時間は有意に長くなり周術期合併症の発生につながる可能性がある. また, 特に勃起神経温存術や拡大リンパ節郭清等の高度な技術を要する手術操作では術者が術式を微妙に変えることを余儀なくされることで, 長期的にはデメリットを受ける症例の存在が危惧される. 一方, 術者が導入期の場合, 助手の技量は周術期成績のみならず機能温存や癌制御全般に影響する可能性がある.</p><p> ロボット支援手術における助手は, 術者の快適な手術操作のサポートのみならず, 執刀医から離れている患者側の安全管理, および機械操作の責任者かつ手術室のムードメーカーとしての役割を持つ. 術前の準備として, 助手は術者と同等の手術解剖の知識と, 目指す術式の詳細を理解すべく, 術者と共通の文献やDVDを用いてイメージトレーニングに励むべきである. 術直前には, 術者と手術各ステップにおける詳細な打ち合わせを行うとともに, ダビンチ<sup>TM</sup>機械操作の基本的事項を再確認する必要がある. 自施設で実機を用いた訓練が不可能な場合はトレーニング施設を活用する. また看護師, ME等手術室スタッフとも患者入室から退室までの手術の流れを共有し, 術中に孤立しがちな術者と手術室スタッフとの橋渡しをするチームの要たる自覚を持つことが肝要である. 特に導入期には, 助手の操作は手術成績に影響するという意識を持って手術に臨むべく準備を怠らない事が重要である.</p>