著者
福田 賢一郎 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二 村上 雅彦 小林 洋一 中島 靖浩 中村 元保 香月 姿乃 鈴木 恵輔 井上 元 柿 佑樹 前田 敦雄 加藤 晶人
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.58-68, 2020

患者に対する医療安全の確保は感染管理とともに病院における危機管理の骨格である.さらに病院評価としても院内の医療安全システムの構築が求められている.近年では予期せぬ院内急変への対応だけではなく,院内急変の予防に向けた取り組み(RRS:Rapid Response System)が注目されている.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では緊急性に応じて院内急変プロトコールがいくつか存在する. RRS導入前における予期せぬ院内急変について,特に緊急性の最も高い緊急コード事例(コードブルー事例)について検討を行った.方法:2014年4月から2018年3月までの4年間にコードブルーの要請があった症例129例を対象として解析を行った.院内急変のうち入院患者は41.0%であり,その他が外来患者や患者家族・職員であった.平均年齢は63.6歳であった.心肺停止症例は26.4%であり,平均年齢は71.2歳であった.心肺停止症例の82.4%は入院患者であった.発生頻度は入院1,000人当たり4.36人であった.心肺停止患者のうち44%で蘇生に成功したが,神経機能が急変前まで改善した例は全心肺停止症例の20.6%のみであった.心拍再開までの時間が短い症例で神経機能予後は良好であった.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では院内心肺停止の発生頻度は過去の報告よりは少ない傾向にあったが,今後の院内急変対応の課題としては院内心停止患者の救命率をより向上させること,さらには院内心停止発生率をさらに低下させるためRRSの導入を含めたシステムの構築が必要である.院内発生の心肺停止症例でも予後不良例は依然として存在している.したがって,院内急変あるいは院内心肺停止を予防することが将来的な病院の医療安全の確保の方策として極めて重要である.
著者
安野 浩一朗 岩塚 雄大 西畑 剛 古牧 大樹 森屋 陽一 伊野 同
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_90-I_95, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災は,今まで築き上げてきた構造物の設計における考え方や手法などの妥当性を根底から改める必要性を投げかけられるものであった.これまでは,一定の想定設計値に対する安全性を確保することのみを対象に構造物を設計してきたが,外力が想定を越えた場合の構造物の変形に関する知見は殆ど蓄積されておらず,それらに関する知見の構築は今後の重要な課題と考えられる.本研究では,外洋護岸に設置された消波ブロック群に着目した水理模型実験を行い,設計津波を越えた津波外力場におけるブロック群の大規模被災の形態,そのメカニズムや想定される周辺への影響などについて基礎的な知見を得ることを目的とした.
著者
工藤 雅樹 樋口 知志 熊田 亮介 辻 秀人 榎森 進 甘粕 健 村越 潔
出版者
福島大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

(1) この研究を推進するために岩手県岩手郡岩手町の横田館遺跡と西根町の子飼沢山遺跡、暮坪遺跡の発掘調査を実施した。その結果横田館遺跡は周囲に多重の土塁をめぐらすこと、発掘した2基の竪穴住居の構造や集落全体の構造から、常時居住した集落ではなく、13世紀以後の防御性の高い集落であろうとの結論を得た。子飼沢山遺跡は海抜500メートルを越える高地の尾根上に存在する。大型と小型の竪穴住居各1基を発掘調査し、土師器、多量の鉄器、炭化した穀物粒などが出土した。遺跡の年代は土師器の形態から10世紀後半ころと考えられる。暮坪遺跡は海抜430メートルの暮坪山の頂上一帯に広がる遺跡で、集落の主要部は堀と土手に囲まれている。住居跡二基を発掘した結果、集落は大形と小形の二つのタイプがあることが確認された。遺跡の年代は出土した土師器から考えて10世紀後半ころのものである。(2) 実地踏査の結果によれば、東北北部には学界に知られていない多くの平安時代高地性集落が存在する。それらは立地や構造などによりa,平地との比高差数十メートル以上の高地に立地し、特に濠や土塁などを持たないもの、b,丘陵の突端部に存在し、基部が濠で切断されているもの、c,周囲に濠や土塁をめぐらすもの、などに大別される。また年代ではそしてこのような特徴を有する集落は、低地に立地し、濠や土塁を有しない一般の集落とはことなる、きわめて防御的色彩の濃い集落であると考えられる。平安時代高地性集落の研究をさらに推進できることで、北海道のチャシとの関係も明らかとなるであろうし、防御的色彩の濃い集落を生み出した古代蝦夷社会の性格にもせまることができるであろう。
著者
大森弁吉郎 編
出版者
一成舎
巻号頁・発行日
vol.初、3、5編, 1882
著者
猪股 亮介 小森 大輔 風間 聡 峠 嘉哉
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2018

都市が気象に及ぼす影響の1つとして降水の変化が挙げられており,都市部において,周辺地域と降水現象が異なる事が指摘されてきた.藤部らを初めとした既往研究において,統計的なアプローチから都市部における降水現象の解析が行われてきたが,それらは日本国内において約1/17km(個/km2)に整備されたアメダス定点観測所において観測されたデータを使用したため,空間的な代表性に課題が残る.そこで本研究では,大阪市を対象に,雨量レーダによる面的観測とアメダス定点観測を合成した,23年間(1993~2015年)という長期間のレーダアメダス解析降水量を用い,都市部と周辺地域における降水の空間偏差とその経年変化を統計的なアプローチから明らかにする事を研究目的とした.本研究における対象地域を日本三大都市圏の1つである大阪府大阪市の都市部とその周辺地域とした.また本研究における降水解析に用いる降水指標として,降水量(1時間降水量(mm)),降水頻度(1時間降水量≧1mmの時間数),本降りの雨の頻度(1時間降水量≧5mmの時間数)の3つを定義した.その結果次の様な知見が得られた.1)都市部の西部において,降水量・降水頻度・本降りの雨の頻度が,特に正午~午後の時間帯において周辺地域より大きかった.2)都市部の北西部において降水量・降水頻度が周辺地域と比較して大きくなる傾向が経年的に強化された.3) 都市部の南西部において降水量・降水頻度が周辺地域と比較して大きかった傾向が,経年的に弱められた.都市の西側に湾が存在する地域において,偏西風の風上側である西側の降水量・降水頻度・本降りの雨の頻度が大きくなる傾向は本研究において得られた新たな知見である.また,都市の北西部において午後の時間帯に降水頻度の空間偏差が大きくなる傾向が存在することは,本研究で空間代表性の高いレーダアメダス解析降水量データを用いる事で明らかになった新しい知見である.また,都市部の異なる部分において周辺地域よりも降水量が大きい傾向,小さい傾向が経年的に拡大される事は本研究において都市部を5kmの解像度で解析した事により得られた新たな知見である.この様に,本研究における解析で都市が気象に及ぼす影響が都市内部において異なる事が明らかになった.
著者
桃沢 幸秀 寺田 節 佐藤 文夫 菊水 健史 武内 ゆかり 楠瀬 良 森 裕司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.945-950, 2007-09-25
参考文献数
26
被引用文献数
1 18

ウマの不安傾向を理解することは、騎乗者にとっても獣医師にとっても重要である。本研究では、被験馬をよく知る管理者が気質評価アンケートに回答することで得られた不安傾向スコアと、行動実験から得られた結果とを比較し、不安傾向と関連が深い行動指標を探索した。各馬を新奇環境に導入後、ビニール紐を介して壁に繋留し、管理者が傍にいる状態で2分間観察したのち管理者が離れウマ単独の状態で更に2分間観察した。その結果、単独にされることで多くの観察データが変化したが、アンケート調査により不安傾向が高いと評価された個体ほど、心拍反応が高くビニール紐切断までの潜時は短かった。こうした傾向はメスでより顕著に観察された。以上のことから、新奇環境に単独でおかれた際の心拍数と切断潜時は不安傾向の指標として有効であることが示された。また行動実験と気質評価を組み合わせることで、他の気質項目についてもより信頼性の高い評価を行える可能性が示された。
著者
野原 博人 和田 一郎 森本 信也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.293-309, 2018-03-19 (Released:2018-04-06)
参考文献数
17

本研究では, Engeström, Y.による「拡張的学習(Expansive Learning)」を理科授業デザインの視点として援用し, 主体的・対話的で深い学びを通した子どもの科学概念構築に関わる変化の様態について, 形成的アセスメントの要素とその関連性を視点として分析した。その内実と関連づけた上で, 主体的・対話的で深い学びの評価について, Sawyer, R.K.による「深い理解」を規準とした。科学概念の構築を図るための「道具」の変換過程をⅠ〜Ⅴと措定し, 小学校第4学年の水の温まり方についての授業デザインの分析を行った。分析した結果, 以下の諸点が明らかとなった。(1)「拡張的学習による理科授業デザイン」が具現されていくことで, 知識としての「道具」が主体的・対話的で深い学びによって構築されていった。(2)主体的・対話的で深い学びによって構築された知識としての「道具」は, Ⅰ〜Ⅴの段階を通して, 「深い理解」の具現化として, 質的変換が図られた。(3)「深い学び」と「学習における主体性・協働性」は表裏一体化して機能する。
著者
森田 秋子 小林 修二 濱中 康治 三吉 佐和子 飯島 節
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.708-711, 2005-11-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
6

脳血管障害発症後早期に半側空間無視 (unilateral spatial neglect 以下USN) を呈し, その後机上検査および行動観察において所見が認められなくなった患者の長期経過を追った. 症例1は61歳男性, 3年前の右被殻出血後に左USNが出現したが, その後机上検査および行動観察にてUSNは出現しなくなり自宅へ退院した. しかし, 百人一首遊びあるいは電動車椅子操作などのストレスのかかる場面で, 左USNが再び出現した. 症例2は62歳男性, 初回の右被殻出血後に左USNが出現したが, 退院時には机上検査, 行動所見ともに所見は認められなかった. 6年後あらたに右片麻痺をきたし, 大脳左半球の脳梗塞が疑われた. 再発作直後は両方向への注意低下を認めたが, 徐々に左USNが明らかに認められるようになった. 症例3は70歳男性, 64歳時に右被殻梗塞発症後早期に左USNが出現したが, その後机上検査でも行動所見でも認められなくなり自宅退院した. 6年後ADLと知的レベルの全般的な低下を来たし, 検査の結果左USNが再び検出された.3例では, 発症早期に机上検査と行動所見において明らかな左USNが認められたが, その後所見は出現しなくなった. しかし, 新規課題あるいは難易度の高い課題, 疲労時, 反対側に出現した脳梗塞などによりUSNが再び出現した.USNは, USNそのものの重症度, 患者の課題遂行能力および環境要因, の3つの要素の相対的な関係において出現様式が規定されるものと考えられた. 一度は検出できなくなったUSNが, 全般的注意機能の低下や環境変化などにともなって再び出現する場合があることは, 高齢者においてとくに注意すべきである.
著者
増田 秀樹 深尾 奈央 小林 里穂 蜂須賀 祥子 森 紀之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.200-210, 2017
被引用文献数
1

<p>官能評価(試験1,2)により,刺激的な香味が軽減された液状ウィンターセイボリーエキス(WSL)の用量(0.25g ; カルバクロール(CAR)含有量 : 0.075mg,チモール(THY)含有量 : 0.015mg)とWSLの濃度(0.25% ; CAR濃度 : 0.75ppm,THY濃度 : 0.15ppm)を決定した.次いで,試験1,2で定めた用量と濃度のWSL含有飲料(DK1) 100mLの摂取試験を行なった(試験3).その結果,上肢(手首,手指),下肢(足首,足指)の体表温低下が有意に抑制され,首の体表温が有意に上昇した.さらに,口腔·咽頭内での刺激が体温変化に関与しているかどうか明らかにするため,ウィンターセイボリーエキス粉末(WSP)(80mg ; CAR含有量 : 0.075mg,THY含有量 : 0.015mg)のカプセル(CP)摂取試験を行なった結果,上肢のみに有意な体表温低下抑制効果がみられた(試験4).次いで,口腔内刺激の強弱を決定する因子となるCAR,THY濃度が重要であるのか明らかにするため,試験3と同用量のWSLを含有し,希釈媒体量を100mLから20mLに低減することでCAR,THY濃度をDK1の5倍に高めたWSL含有飲料(DK2)の摂取試験を行った(試験5).その結果,DK2摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 額,首に有意な体表温上昇 ; 鼓膜温(深部温)の有意な上昇)は,DK1摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 首に有意な体表温上昇)に比べ体温に影響がみられる部位が増加した.DK1摂取群とCP摂取群の比較,DK1摂取群とDK2摂取群の比較から,体温変化に,CAR,THYによる口腔·咽頭内の神経刺激が関与していることが示唆された.本結果から,ウィンターセイボリーが手軽に飲用し得る冷え抑制効果素材として有用なことが分かった.さらに,体温変化をもたらす同様な成分についても,口腔·咽頭内刺激を利用することにより,効果が増強される可能性があると考えられる.</p>

1 0 0 0 OA 禅門法語集

著者
森大狂 編
出版者
光融館
巻号頁・発行日
vol.続, 1896
著者
中森 泰三 一澤 圭 Pham Hoang Nguyen-Due 寺嶋 芳江
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.11-18, 2020

秋田県において菌類の子実体から得られた<i>Ceratophysella mediolobata</i> Nakamori, sp. nov. を記載した.また,沖縄県から本邦初記録となる<i>Ceratophysella liguladorsi</i> (Lee, 1974) が菌類の子実体から得られた. これらの2 種および<i>Ceratophysella tergilobata</i> (Cassagnau, 1954) は腹部第5 節に突起をもつ点で類似するが,<i>C</i>. <i>tergilobata</i> は他の2 種と上顎外片に1 本の副片毛をもつ点で区別でき(他の2 種は2 本),<i>C</i>. <i>mediolobata</i> sp. nov. は<i>C</i>. <i>liguladorsi</i> と腹部第4 節背面の後列の第3 毛を欠く点で区別できる(<i>C</i>. <i>liguladorsi</i> は第3 毛をもつ).DNAバーコードによる同定を可能にするために,<i>C</i>. <i>mediolobata</i> sp. nov. および<i>C</i>. <i>liguladorsi</i> のミトコンドリアのチトクロームC オキシダーゼサブユニットI 遺伝子および16S リボソームRNA 遺伝子の一部分の塩基配列を決定した.
著者
江木 盛時 黒田 泰弘 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 小谷 穣治 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 志馬 伸朗 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 谷口 巧 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 鶴田 良介 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 土井 研人 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 土井 松幸 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 中田 孝明 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 中根 正樹 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 藤島 清太郎 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 小倉 裕司 細川 直登 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 升田 好樹 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 松嶋 麻子 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 矢田部 智昭 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 安宅 一晃 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井上 茂亮 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 射場 敏明 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 垣花 泰之 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 川崎 達也 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 久志本 成樹 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, 2020
被引用文献数
2

<p>日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。</p>