著者
岩本 善行 澤田 東 阿部 大輝 澤田 康雄 大津 金光 吉永 努 馬場 敬信
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1663-1671, 1998-06-15
被引用文献数
5

本稿では,並列処理の性能に大きな影響を与えるメッセージパッシング処理を高速化するための,2つの手法を提案する.第一に,従来のソフトウェアによるOSで行っていたものを,よりハードウェアに近いファームウェアによって実現する方法と,第二に,これから到着するメッセージをプロセッサのアイドル時に予測して投機的に先行実行する受信メッセージ予測の手法である.これらの効果を実験的に調べるため,A?NETマルチコンピュータに実装し評価を行った.その結果,受信処理のファームウェア化により,アプリケーションによって最高で約6.3倍の高速化が達成され,また受信メッセージの予測によるメッセージ転送の高速化法では,1回の予測あたり80.7マシンサイクルの先行実行を行えることが明らかになり,その有効性が確認できた.Message passing significantly affects the performance of parallel processing programs.This paper proposes two methodologies for high performance message passing.The first method implements the message receiving function using firm-ware instead of conventional OS software.The second method predicts message receptions when a processor is idle,and executes,speculatively,the message reception process.We implemented and evaluated these methodologies on the A-NET multicomputer.The experimental results show that the speedup ratio for the first method is about 6.3 times and second method can achieve savings of approximately 80.7 machine-cycles per one prediction.
著者
金 尚均
出版者
西南学院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

「環境保護刑法の研究」の二年目にあたる本年度は、現代社会における刑法の機能・機能化との関連から、また、企業の通常の生産活動から生じる環境汚染との関連から、環境保護のための刑法のあり方や可能性について検討した。科学技術の発展による文明生活の発展と近代化の過程において、未知の危険とこれが人に与える脅威の潜在的可能性が高まっている。ここで焦点を当てられる「危険」とは、個人的法益ないし社会的法益としての「危険」を越えて、社会問題としての、常在する危険のことである。これは、危険のグローバル化とか、危険の社会化とも呼ばれることがありますこれに対処するため、刑法を機能的に理解する見解が有力化している。その現れの一つとして、法益保護のために処罰段階の前段階化・早期化の傾向がある。危険犯、とりわけ抽象的危険犯が多用化されている。ドイツにおいて環境汚染に対して刑法をもって規制されているが、その効果や執行状況が思わしくないということは、衆目の一致するところである。この原因の一つとして、近代刑法の処罰客体が「個人」であったことにある。これに対して、企業による大規模な環境汚染については、実務上また理論上も根本的な対策が執られてこなかった。近年では、企業を一つの有機的なシステムとして捉え、これに対して刑事的に問責する主張が行われている。これに加えて、企業に対する刑罰的制裁として企業に対する後見制度が提唱されている。処罰段階の前段階化の問題と関連させながら、これらの試みが、環境保護にとって有効なのか、また従来の刑法理論に抵触することなく、理論構成することができるのかなどについて、できる限り早期にまとめていきたいと考えている。
著者
金 彦志 韓 昌完 田中 敦士 Kim Eon-Ji Han chang-wan Tanaka Atsushi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.199-206, 2010-02

韓国では、2008年に「障害者等に関する特殊教育法」が全面的に制定され、特殊教育に関する大きな法的整備が行われた。その内容としては、3歳未満の障害のある乳幼児の教育の無償化、満3歳から17歳までの特殊教育対象者の義務教育の権利、特殊教育支援センターの設置・運営の見直し等である。これは、小・中学教育を中心とした今までの制度から、乳幼児および障害成人のための教育支援に対する規定に変化したものであり、国家および地方自治団体の特殊教育支援についての具体的な役割も提示された。本論文では、韓国における特殊教育に関する法的背景を紹介し、2008年行われた「特殊教育実態調査」を参考に韓国特殊教育の現状を概観し、また、障害児教育・保育についての実態と課題を検討した。
著者
園田 直子 日高 真吾 岡山 隆之 大谷 肇 増田 勝彦 青木 睦 近藤 正子 増田 勝彦 青木 睦 金山 正子 関 正純 村本 聡子 森田 恒之 大江 礼三郎
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

図書・文書資料に適用できる劣化度評価法のうち、ローリングテストはほぼ非破壊で実施でき、通常の物性試験では測定不可能なほど劣化の進んだ紙の劣化度評価に適用できる可能性を持つ。アコースティック・エミッションは最小限の破壊はあるものの、劣化度評価に有効である。極微量のサンプル量を必要とする熱分解分析法は劣化度評価だけでなく、これにより劣化機構の違いが解明できることが示唆された。紙の劣化度を考慮に入れながら強化処理法を検証した結果、セルロース誘導体による強化処理は状態の良い酸性紙に対する予防保存的措置として、ペーパースプリット法は対処療法という位置づけが明確になった。
著者
間々田 孝夫 水原 俊博 寺島 拓幸 廣瀬 毅士 朝倉 真粧美 呉 金海 野尻 洋平 遠藤 智世
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は東アジアを調査地域として、グローバル化する消費文化についてアメリカ型への画一化と非アメリカ的な多様化の実相を理論的、実証的に明らかにしようとするものである。2007~2008年度の期間、将来的な東アジアでの本格調査を見据えて東アジア地域の消費文化について文献の検討をとおした理論研究をおこなった。また、こうした理論研究をふまえて国内(首都圏)では大規模質問紙調査を実施して一定の成果をあげた。
著者
田中 きく代 阿河 雄二郎 竹中 興慈 横山 良 金澤 周作 佐保 吉一 田和 正孝 山 泰幸 鈴木 七美 中谷 功治 辻本 庸子 濱口 忠大 笠井 俊和
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、海域史の視点から18・19世紀に北大西洋に出現するワールドの構造に、文化的次元から切り込み、そこにみられた諸関係を全体として捉えるものである。海洋だけでなく、海と陸の境界の地域に、海からのまなざしを照射することで、そこに国家的な枠組みを超えた新たな共時性を映し出せるのではないか。また、海洋を渡る様々なネットワークや結節点に、境界域の小さな共同体を結びつけていくことも可能ではないか。このような着想で、共同の研究会を持ち、各々が現地調査に出た。また、最終年度に、新たなアトランティック・ヒストリーの可能性を模索する国際海洋シンポジウム「海洋ネットワークから捉える大西洋海域史」を開催した。なお、田中きく代、関西学院大学出版会、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)研究成果報告書『18・19世紀北大西洋海域における文化空間の解体と再生-「境界域」の視点から-』を、報告書として刊行している。
著者
奥村 治彦 内田 龍男 金子 節夫 下平 美文 内池 平樹 服部 励治 中西 洋一郎 山崎 映一 中本 正幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J92-C, no.8, pp.433-453, 2009-08-01

2002年には,金額ベースでは,FPD全体の市場がCRT市場を超え,特に成長が著しくFPDの活躍の場である携帯電話を中心としたモバイル市場はもとより,最近になって,CRTの最大市場であるテレビ受像機市場でも逆転現象が発生するまでにFPD市場が急成長してきた.このような中,本論文では,中心的な役割を果たしてきたCRTと,その主役を引き継ぐFPD(LCD,PDP,EL,FEDに分類)について,ここ40年のそれぞれの技術進化を振り返り,将来を展望する.
著者
玉浦 裕 阿部 正紀 北本 仁孝 金子 宏 長谷川 紀子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

集光太陽ビームをセラミックスに照射し1300-1600℃に急速加熱すると、特殊な反応中間体を経由し、空気酸素分圧下で酸素放出反応が進行することを世界で初めて明らかにし、この反応で生成したセラミックス還元体が水を分解(水素生成過程)することを見出した(特開2008-094636)。これを用いるソーラー水素生産の実用化に向け、ロータリー式太陽反応炉およびビームダウン式集光システムの開発を行った。
著者
金杉 友子 笠原 要 稲子 希望 天野 成昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.66, pp.119-124, 2002-07-15
被引用文献数
1

意味に関する言語処理技術の基盤となりうる概念辞書である"常識概念体系"を構築する第一歩として、人々の概念的な思考で共通して利用していると推定される基本的な語の集合("基本的語彙"と呼ぶ)を選定した.選定の対象としては学研国語大辞典(9万5千見出し語)を用い、選定の尺度として、心理実験により評定される単語の馴染み深さを表す単語属性である単語親密度を用いた.過去の研究において12歳児の理解語彙数の推測値が2万5千と報告されており、別の語彙数調査結果から、同数の語彙を成人の94%が知っていると推測される.そこで、基本的語彙数を2万5千程度と定めた.国語辞典の見出し語について、過去の単語親密度に関するデータベースに含まれていない3万3千語の追加の評定実験を行い、9万5千語から親密度が高い2万7千語を基本的語彙として実際に選定した.As the first step of constructing a dictionary of word concepts, the "Commonsense Concept Database," which will be a base for language processing technologies regarding meaning, we selected basic words which are supposed to be commonly used by Japanese adults. We selected the basic words from a Japanese dictionary in which the number of word entries is about 95,000. In a previous study, the size of the basic words which a Japanese child of twelve years knew was estimated to be 25,000. From the another recent psychological study estimating the number of the vocabulary in Japanese speakers, we were able to estimate that 25,000 of the Japanese basic words were known by 94% of Japanese adults. Therefore, we selected the number of basic words for Commonsense Concept Database to be 25,000. As a measure of selecting the basic word, we used word familiarity ratings. We did farther psychological experiments of rating familiarity of words in the Japanese dictionary which had not been listed in the word familiarity database previously published. Finally, we selected all words with a familiarity rating above five(between seven point scale) which gave us around 27,000 words out of the 95,000 entries of the dictionary.
著者
尾知 博 金城 繁徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.801-809, 1993-06-25

本論文は,FIR適応フィルタの係数更新ベクトルとして,離散コンサイン変換(DTC)の基底ベクトルを使用した新しい適応アルゴリズムを提案している.NタップFIR適応フィルタの平均2乗誤差曲面は,入力信号系列の自己相関行列と係数誤差ベクトルによる2次形式で表され,N次元超平面におけるだ円を表している.本論文では,まずこのだ円の主軸が,トプリッツ(Toeplitz)行列である自己相関行列Rの固有ベクトル方向と一致することを示す.ところで,トプリッツ行列Rの固有ベクトルはDTCの基底ベクトルで近似できることがよく知られている.そこで本論文では次に,この基底ベクトル方向に沿って係数更新を行う新しい適応アルゴリズムを提案する.提案算法は,原理的にN回の反復で適応フィルタの係数を収束させることができる.最後にシミュレーションにより,従来の学習同定法と比較して本論文で提案するアルゴリズムが高速に収束することを示す.また,付加雑音が存在する場合でも提案法が有効であることを示す.
著者
清水 かおり 高良剛 ロベルト 金城 俊昭 安慶 名洋克
出版者
沖縄県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

離島住民参加型の災害医療対策啓蒙活動として「命どぅ宝・ユイマールプロジェクト」に参加し、離島講習会の開催による離島住民への知識・技術提供を行った。3年間の沖縄県遠隔離島における講習会受講実績は約1,160名(19カ所28回)である。講習会の都度、指導者である保健医療従事者への学習会を実施し、各離島の特徴・対象者を考慮した指導内容、指導方法についての討議、およびフィードバックを行った。内容はプロジェクトのメーリングリスト上でも公開し共有した。平成19年9月には、この講習会を受講した離島住民3人によって、目の前で心肺停止に陥った同僚に対しAEDを用いた心肺蘇生法を実施して救命し、後遺症無く社会復帰を果たした。
著者
峯尾 仁 金澤 匠 森川 奈央 石田 京 近江 沙矢子 町田 絢香 野田 高弘 福島 道広 知地 英征
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of applied glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.203-209, 2008-10-20
被引用文献数
1

小腸と膵臓の消化酵素の適応について,異なる種類のデンプンを摂取させたラットで検討した.オスのSD系ラット(6週齢)に,トウモロコシデンプン,またはリン含量の異なる2種類のバレイショデンプンを含む3種類の飼料を摂取させた.小腸のスクラーゼ,マルターゼおよびラクターゼ活性と,膵臓のアミラーゼ活性の変化を飼料摂取後1,3,5週目に測定した.十二指腸のスクラーゼおよびマルターゼ活性は三つのデンプン群間で有意な差異を生じたが,ラクターゼ活性は差異を生じなかった.空腸と回腸の二糖類分解酵素と膵臓のアミラーゼ活性は,3群間で差異はなかった.以上のように,異なるタイプのデンプンに対する二糖類分解酵素の適応は,十二指腸でのみ局所的に生じ,それより下位の小腸部位では生じなかった.
著者
若林 敬子 聶 海松 馮 文猛 左 学金 周 海旺 周 大鳴 麻 国慶 李 強
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は中国人口問題についての社会学的実証調査研究であり、特に国策として位置づけられている"人口と環境"問題について、今回は、高齢化・社会保障・出生性比の視点から多角的なアプローチを行ってきた。都市(上海市、北京市)、農村(湖南、海南、内モンゴル)の5地区で本格的社会学的サンプリング調査、量的・質的調査をこれまでに行い、その問題点を総合的にあぶりだすことに成功した。また、その理論的・実証的な比較と総括をまとめあげ、中国の人口問題の社会学的研究の最新結果の公表・刊行した。
著者
田中 喜代次 奥野 純子 重松 良祐 大藏 倫博 鈴木 隆雄 金 憲経 鈴木 隆雄 金 憲経
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

要介護化予防を目的とした包括的指針作成において,1)下肢および上肢筋力,平衡性体力,歩行能力,移乗能力および日常生活動作の遂行度に基づく身体機能評価が望ましいこと,2)運動プログラムは体力差や年齢などを考慮し,教室において集団指導,小集団指導または個別指導を適宜選択し,さらに運動習慣化のために在宅運動プログラムの提供が必要であること,3)運動指導ボランティアとその活動を取り巻く自治体や関連団体との連携を強め,長期的活動形態を構築することが必要となることの3点が重要であると考えられた.今後はこれらの研究結果を踏まえ,要介護化予防事業をさらに発展させるために,実践的な検証を推し進めていきたい.
著者
金山 良春 根来 伸夫 岡村 幹夫
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

自然発症高血圧ラット(SHl)およびWKYラットの大動脈由来の培養血管手滑筋細胞(VSMC)を用いて,各種成長因子,血管作働物質を作用させた場合のcーmyc protoーoncogene(cーmyc)の発現の程度を比較し,Ca培抗薬やα_1ブロッカ-により抑制されるかどうかを検討した。SHR由来のVSMCは,胎児血清PDGF,EGF,アンギオランシンII,エンドセリンー1,エンドセリンー2,エンドセンリンー3の刺激に対してWKY由来のVSMCに対し有意に高いcーmycの発現を示した。しかし,TGFーβに対してはcーmycの発現の増強は示さなかった。一方,SHR由来のUSMCの種々の成長因子やアンギオテンシンII,エンドセリンなどの血管作働物質によるcーmycの増強それた発現はCa拮抗薬である,ニフェジピン,ジルチアゼムによりWKY由来のVSMCのcーmycの発現の程度に抑制された。また,α_1ブロッカ-である塩酸プナソシンによっても抑制されることを認めた。cーmycの発現にはCa^<++>とプティンキナ-ゼCが関与すると考えられているが細胞内Ca^<++>の動員に重要とされているイノシト-ル1.4,5ー3リン酸(IP_3)のアンギオテンテンIIに対する反応性をSHR由来のVSMCとWKYのそれとを比較したが、SHR由来のVSMCのIP_3反応はWKYの4ー5倍の反応を示した。このことよりSHR由来VSMCのcーmyc発現の増強の要因の一つはアレギオテンシンIIに対するIP_3反応の増強とそれに続く細胞内Ca^<++>の上昇の増強が関与している可能性が考えられた。