著者
福田 武司 堀池 寛 高田 孝 鈴木 幸子 上出 英樹 木村 暢之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-05-31

液体ナトリウムの分光透過率に関する予備的な知見に基づき、液体ナトリウム中に真空紫外光を効率的に分散する追跡元素を添加して、誘導放射光の2次元輝度分布画像を観測することにより、液体ナトリウム内部における2次元の流れ場を高分解能で可視化する技術の開発を実施した。従来の誘導ラマン光源よりも極めて大きな放射スペクトル輝度が得られるアルゴンのエキシマ分子を電子ビームで励起する方式の光源を採用するとともに、トロイダル形状を持つ回折格子型2次元イメージング分光計測装置で追跡元素であるグラファイト粒子のスペクトル計測を行った。その結果、液体ナトリウムの高精度速度場計測実現に係わる展望を得ることが出来た。
著者
松村 勝弘 川越 恭二 井澤 裕司 平田 純一 富田 知嗣 澤邉 紀生 村山 嘉彦 荒川 宜三 豊原 紀彦 荒井 正治 八村 廣三郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

(研究・教育システム)われわれは,立命館大学において.経済・経営・理工の学部横断的な研究・教育システムづくりの一環として,ファイナンス・インスティテュートを設置し,一昨年来その研究教育システムの開発に取り組んできた。これは,現代企業に突きつけられている複雑な課題を文理総合型の新たな仕組みの中で,その解決策を発見できないかと考えたからである。このような取り組みは,学際的な研究教育の仕組み作りを必要とした。(データ・ベース)そこで,ファイナンス分野での研究・教育をすすめるために,現存のマクロ・データ,株価データ,企業財務データなどのデータを総合的に分析するための研究・教育用ソフトウェアを,バックグラウンドを異にする研究者の協力共同のもとで,開発した。と同時に,別途資金により日経クイック社の協力を得て新たなデータ・ダウンロードのためのもう一つの仕組みも完成させ,これも併用している。これらは学生初学者用ウェッブ・ページ版と中級上級用バッチ処理版およびアクセス対応版の三本立てでデータベースへのアクセスをする仕組みを完成させるとともに日経クイック版とあわせ,これらの研究・教育の両面からの利用を進めてきた。それぞれ一長一短がある。今後もこれらの改善すすめる予定である。ここで最大の問題は,環境その他日進月歩でできあがったものがすぐに陳腐化してしまうことである。そこで,科研以外の資金も活用しつつ,かつ日経クイック,大和SBをはじめとする資金力のある外部機関との共同の取り組みでこれに対応しようとしている。(教育プログラム)教育プログラムとしては,2000年度開講の『金融市場分析実習』の内容となるものを共同して研究し,これを教育に活用したが,なお改善の余地があると考え,現在さらに改善しテキストにしようとしている。その第一の内容は,証券アナリスト資格要件の一つとして,財務分析,の学習が課されており,これを含んで,実際のアナリスト業務を行うにあたっての素養としての企業分析の実習を内容とする。第二は,ファイナンシャル・エコノミクスに基づいた金融市場分析を内容とする。これについては,別途大和SBが開発したPoet-SBを活用した教育を進めてきている。これらについても一定その成果を別途冊子にまとめた。(研究プログラム)現在,まずはこれまでの研究を基礎に,前者を内容とするテキスト作りを進めている。これと並行して,日本の金融システムと企業財務戦略に関する研究を深めるという作業を行っている。成果の刊行はすでに終えたものの他,なお継続中のものもあるが,これまでの成果をさしあたり別途冊子にまとめた。
著者
斉藤 隆 多根 彰子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012

T細胞の活性化は、副刺激シグナルによって正に負に制御されている。特に負の制御は、活性化が過剰になり自己免疫疾患にならないようにフィードバック制御として重要な役割を果たす。抑制受容体として重要なPD-1によるT細胞活性化のダイナミックな抑制制御のメカニズムを解析した。T細胞活性化は、TCRミクロクラスターによって誘導されることを明らかにしてきたが、抑制受容体PD-1は、T細胞活性化に伴ってTCRミクロクラスターと共存し、TCRがcSMACを作ると、PD-1もCD28と同様にcSMAC(CD310w領域)に集結した。PD-1は活性化に伴ってリン酸化され、SHP2をリクルートしてTCRミクロクラスターに集結したTCR直下のシグナル分子の脱リン酸化を誘導した。PD-1による活性化抑制がTCRミクロクラスターに共存することが必須かを解析するために、細胞外領域の長さを変えた種々のPD1変異分子を作製発現させて、その局在と機能を解析した。細胞外領域の大きな分子は、TCRミクロクラスターとも共存できず、SHP-2をリクルートせず抑制活性を持たなかったのにたいして、Igドメインが2つまでの小さな分子では、ミクロクラスターに存在しSHP-2をリクルートして、活性化抑制を示した。このPD-1ミクロクラスターを介した活性化抑制を、より生理的条件下で誘導されているか、を解析した。抗原ペプチドにて頻回免疫したマウスのT細胞は、PD1を高発現し、抗原刺激への反応が抑制されたアナジー状態にある。PD-L1存在下で刺激するとPD-1はTCRミクロクラスターに局在し、SHP-2をリクルートして活性化抑制をするが、抗PD-L1抗体でブロックすると、ミクロクラスター局在も抑制活性も見られなくなった。これらより、PD-1は活性化にともなってダイナミックに動態し、PD-1がミクロクラスターに存在することによってSHP2を介して、PD-1によるT細胞活性化の抑制制御に重要であることが判明した。
著者
山極 壽一 村山 美穂 湯本 貴和 井上 英治 藤田 志歩
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アフリカの熱帯雨林に共存するゴリラとチンパンジーのコミュニティ構造を低地と高地で調査して比較分析した結果、標高の違いにより、ゴリラは集団サイズや構成、集団同士の関係、個体の集団への出入り、コミュニケーション、個体の成長速度に、チンパンジーは集団のサイズ、遊動域の大きさ、個体の分散に違いがあることが判明した。また、同所的に生息するゴリラとチンパンジーの間には、個体の分散の仕方、個体の集団への出入り、コミュニケーション、攻撃性、ストレス、繁殖戦略、生活史に大きな違いがみられ、それらの違いが食性の大きく重複する両種が互いに出会いを避け、競合や敵対的交渉を抑えるように働いていることが示唆された。
著者
狩俣 恵一 西岡 敏 小嶋 賀代子 真下 厚 又吉 光邦 照屋 誠 田場 裕規 浦本 寛史 原田 信之 又吉 光邦
出版者
沖縄国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

昔話・伝説・歌謡・芸能は、言葉による伝達の他に、音声・表情・ゼスチャーなどが伴う。特に、口頭伝承が豊かな沖縄の伝統文化は、身体表現による伝達の割合が大きい。しかし、伝承の〈時〉と〈場〉の変化とともに、伝統的な〈様式〉と〈精神性〉は変容してきた。なかでも、古典音楽の琉歌や古典芸能は、近代演劇の影響を受けて、〈声〉〈音〉〈身体〉は大きく変容した。したがって、琉歌・組踊・古典舞踊の琉球王朝文化については、琉球士族の言葉と身体様式、その精神性に焦点をあてて研究を進めた。
著者
服部 順昭 原田 寿郎 安藤 恵介
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

スラブCO2レーザでスギのラミナに直径2 mm以下の貫通孔が出力1 kW、パルス幅0.1秒であけられたこと、孔からの難燃薬剤浸透性能に応じたパターンでレーザインサイジングを行ったスギラミナには薬剤がむら無く注入できたこと、荷重支持部のスギ無処理集成材を難燃薬剤を所定量注入した燃え止まり部となるスギラミナで覆い、表面を無処理のスギラミナで覆った集成材が耐火1時間の加熱試験に合格し、別途国土交通大臣から建築基準法上の認定を受けたこと、同じ構成のスギCLTでも耐火1時間の性能が確認できたこと、その耐火集成材が都内の防火地域に建設の木造3階建て飲食店舗に採用されたことが期間内に得た成果である。
著者
山岸 智子 鎌田 繁 酒井 啓子 富田 健次 保坂 修司 飯塚 正人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、これまでのステレオタイプ的なシーア派観はもとより、シーア派が「問題化」する構造を解明するために、構築主義的な観点を導入し、シーア派の哲学思想・宗教実践・社会集団化のコンテクストを分析することを課題とした。研究分担者・研究協力者が会合を持って、これまでの研究を振り返り、自らの研究の取り組みについて議論したのみならず、英国・イラン・アメリカ・アラブ首長国連邦・レバノンから一線級の研究者を招聘して意見交換をし、交流の道を開き、こちらからも10カ国以上に赴いて資料収集・現地調査・研究発表などを行った。こうして得た成果は多岐にわたるが、以下のようにまとめられるだろう。1.多様性:さまざまな例が示され、シーア派とはいっても、その集団としてのありようや位置づけが多様であることが、明らかになった。それは、立場の違い(サラフィーヤ主義者とシーア派信徒)や国・地域の違いのみならず、一つの地域・家族でも状況の変化によるシーア派アイデンティティに変化があることが分かった。2.新しい学問的アプローチ:思想研究に歴史的観点を導入する、「人」という観点から思想の展開や指導者の条件を見直す、思想の中のモチーフの見直し、などアプローチや観点を変えることで、新たな知見を得た。3.ローカルとグローバルのインターフェース:宗派として国民国家のなかに位置づけられる際にも、国際的な力学や国家を越えるネットワークが関連すること、宗派の絆のグローバルな経済活動への活用、信徒や学者の国を越えた移動の実際、などが明らかとなった。4.これまでの研究の空白を埋める:そしてシーア派としての制度・知の再生産にかかわるイスラーム法学者のありさまや教育の実態、宗教的慣行など、十分に解明されてこなかったピックも本研究で考察の対象となり、さまざまな発見があった。
著者
出澤 正徳 施 衛富
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の最終目標は、錯視現象を心理学的プローブとして、人間の視覚システムの3次元空間知覚メカニズムを探り、その数理的モデルを構成し、視覚メカニズムの解明に貢献することである。特に、視覚刺激が運動する場合についての新しい錯視現象を探索し、従来には全く予想できなかった新しい現象が見出された。相関をもって運動する複数物体が群としての運動と群内での相対運動として知覚される現象が見出され、剛体条件や軌道条件等、脳内の表現をより単純化する表現単純化原理の作用を推測させる。また、両眼立体視において斑点状視覚刺激を運動させたとき、静止時には全く知覚できない視覚刺激の運動とは異なった表面構造の運動(構成的運動)が知覚される現象が見出された。新たに見出されたパントマイム効果では3種類(全面支持、背面支持、側面支持)の手がかりが考えられ、体積的な透明知覚に側面支持手がかりが不可欠であること、また、従来の多層ランダムドットステレオグラムにおける透明視とは本質的に異なるものであることが確かめられた。さらに、視覚刺激を、互いに異なる複数の構造間を遷移するように運動させたときに錯視対象の分離・融合とその遷移におけるヒステリシス現象が見出され、定量的な計測によってその存在が確認された。水平方向に運動する2群のランダムドットパターンの奥行き関係が異なって知覚されるというこれまでの知見では全く説明できない現象が見出された。さらに、ランダムドットステレオグラムで両眼非対応部に存在するドットが手前側に知覚され、それが物理的に可能な配置であることが証明された。これはこの分野の研究者間で信じられていた仮説(両眼非対応領域は背景の深さに知覚される)を覆す新しい発見である。これら、本研究において新たに見出された動的錯視現象の背後には、さらに多くの未知の現象が隠されており、視覚システムにおける空間知覚メカニズムを解明において有力な手がかりとなるものと期待される。
著者
西村 欣也 三浦 徹 岸田 治 道前 洋史 北野 准
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北海道の固有種であるエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、捕食者生物、餌生物、同種幼生の存在に呼応して生態学的機能を有する表現型可塑性を示す。そのため、進化生態学、発生生物学を融合する研究の優れたモデル生物である。本研究では、エゾサンショウウオ幼生が捕食者生物存在下、餌生物存在下で可塑的に発現される形態変化について、幾何学的形態解析法を用いて定量的に明らかにし、その分子発生学的メカニズムを調べる出発点として形態変化と関連するゲノム情報の探索を行った。さらに、生息域全域を網羅する5地域集団間で、表現型可塑性に伴う形態変化の反応規範と、遺伝マーカーの変異を調べた。
著者
山口 喜雄 藤澤 英昭 柴田 和豊 天形 健 春日 明夫 福本 謹一 永守 基樹 新関 伸也
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

(1)本邦初の美術教育文献WEB サイト(http://www.ae-archiving.jp/)を構築し、英日対訳を含む日本美術教育主要文献解題442 件を同Web サイト上に公開した。(2)11年間の論文12件(うち査読付論文9)を本科研報告書I『20世紀後半の日本美術科教科書研究 山口喜雄著 (1998‐2008)【日英対訳】』(全333 頁)にまとめ、〈第32 回InSEA 国際美術教育学会世界大会2008 in 大阪〉にて400 部、国内外関係機関や諸学会等にて600 部を頒布した。(3)欧米における著名美術館の教育担当者に対する面談調査を行った。合衆国のシカゴ美術館とメトロポリタン美術館、イタリアのピッティ宮殿美術館とバチカン美術館、フランスのルーブル美術館、スペインのピカソ美術館、 イギリスのコートールド協会美術館、オランダの国立ゴッホ美術館等々を対象とし、英日対訳の報告文を本科研報告書IIに記載した。(4)前記の欧米 美術館の面談調査報告を含む「美術教育文献アーカイビングの十年の進展」、「美術教育文献実践報告・研究論文ライティングリサーチ」15 件等々をまとめた 本科研報告書II『美術教育のアーカイビング&ライティングリサーチ2011【英日対訳】』(全198頁)を刊行、配布した。
著者
大谷 毅 高寺 政行 森川 英明 乾 滋 徃住 彰文 柳田 佳子 宮武 恵子 矢野 海児 濱田 州博 池田 和子 鈴木 美和子 鈴木 明 正田 康博 上條 正義 松村 嘉之 菅原 正博 藤本 隆宏 肖 文陵 高橋 正人 韓 載香 金 キョンオク 李 宏偉 佐野 希美子 NAKANISHI-DERAT Emi 雑賀 静
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本のファッション衣料の国際プレゼンスが低い原因は、国境を超えた着用者への製品の提案力の欠如にあった。日本のmodelismeは良好だがstylisme(ことに一次設計)は脆弱だ。スタイルの代替案想起・期待・選択作業は、設計者に対し、グローバルな着用者の行動空間に関する知見を求める。これはまた事業者の決定の価値前提の問題に関係する。大規模なファッション事業者の官僚組織が生み出す「逆機能」とも密接に係る。単にブランドの問題だけではなく、事業規模・裁量・ルーチン・経営資源配分に関わることが判明した。製品展示を半年以上前倒しするテキスタイル設計過程は、衣服デザイナーの決定前提の一部を説明していた。
著者
伊沢 紘生 小林 幹夫 木村 光伸 西邨 顕達 土谷 彰男 竹原 明秀 CESAR Barbos CARLOS Mejia
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

離合集散型で父系という、サル類では他にアフリカの類人猿チンパンジーとボノボでしか見られないユニークな杜会構造をもつクモザルについて、南米コロンビア国マカレナ地域の熱帯雨林に設営した調査地で、3年間継続調査を行った。その調査は、隣接する4群のサルをハビチュエーションし、完壁に個体識別した上で、複数の研究者による4群の同時観察と、各群について複数のパーティを対象とした複数の研究者による同時観察という画期的な方法を用いて行われ、離合集散の実態が把握された。同時に、その適応的意味を問う上で重要な、主要食物であるクワ科イチヂク属、ヤシ科オエノカルプス属の植物のフェノロジー調査も3年間継続した。また、クモザルの全食物リストを完成、それらの植物を中心とした森林の構造や動態、クモザルの種子散布についても継続調査を行った。その結果、1.森林の果実生産量の季節変化と離合集散するパーティのあり方、2.そのべースになる個体関係とは、3.群れの行動域内でのオスとメスの利用地域の差異とその意味、4.行動域の境界域におけるオスのパトロール行動とオス間の特異的親和性、5.離合集散に介在するロング・コールの頻度と機能、6.群間の抗争的関係、7.父系構造を支える群間でのメスの移出入とメスの性成熟や出産との関係、8.サラオ(塩場)利用の季節性とそこでの特異なグルーピングの意味など、これまで未知だった多大な成果を上げることができた。また、9.クモザルが上記ヤシ科やイチヂク属の植物の種子散布に功罪両面で決定的に関わっている実態、10.新しく形成された砂州の森林生成メカニズムとクモザルの行動域拡張、1l.優占樹種のパッチ構造とパーティのあり方の関係、12.森林構造とパーティの移動ルートや泊り場の関係なども解明され、離合集散性の適応的意味を正面から問える豊富なデータを収集することができた。
著者
前迫 孝憲 内海 成治 松河 秀哉 西端 律子 小池 敏英 吉冨 友恭 今井 亜湖 シルバ セシリア 重田 勝介 森川 治 森 秀樹 西森 年寿 奥林 泰一郎 中澤 明子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

教育用地域情報基盤としての5GHz帯無線アクセスシステム(包括免許を得て運用)や光ファイバ通信網(地域学校のクラウドコンピューティング・システムによる広域支援等)、衛星通信網(JAXA 超高速インターネット衛星「きずな」を活用したeラーニング実験等)と、それらを相互接続した教育情報基盤の検証や高精細HD 映像による遠隔映像対話環境「超鏡」の開発、特別支援や地域教材におけるネットワークや情報技術の活用を試みた。
著者
川口 衞 千葉 義尚 阿部 優 吉田 長行 立道 郁生
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究業績をまとめると以下の通りである。A.並進振り子原理に基づく免震システムの有効性を検証した(1)振り子免震の免震効果は上下動の影響をほとんど受けない。上下動と水平動を分離して設計できるのは,免震システムとして大きなメリットがある(2)振り子によって実現される長周期免震システムに必要とされる減衰は,軽微なもので充分である(3)「並進振り子型免震装置」を応用した免震床の実施例の挙動を実験的に明らかにした(4)並進振り子の支点間距離を利用した,免震周期のコントロールに関する知見を得た。また,この性質を利用し,かつ支持構造物の回転運動を生じない「対称2点吊り振り子型免震構造」を考案した(5)地震時に質量偏心がもたらすねじれ振動め影響を明らかにしたB.転動振り子の原理に基づく免震システム(パドル免震)の有効性を検証した(1)「パドル免震」を提案した。「パドル免震」は免震層の高さを長周期免震の場合でも可変にできることが極めて有利な点である。(2)パドル免震の模型実験を行ない,所定の免震効果が得られることを確認した(3)パドル免震装置の実用化検討の基礎として発生する応力分布を解析により把握できた(4)パドル柱自身の質量が免震効果に及ぼす影響を振動実験などにより明らかにした(5)この時,パドル免震装置自体の形状を工夫することによって,目的とする固有周期を得られることを確認したC.振り子免震の適用による空間構造の長周期免震の効果を検証した(1)球殻の薄肉ドームの支持部に,振り子免震を設けた場合について効果を検討した。この結果,屋根の応答を下部構造の剛性に関らず,地表入力波形の応答スペクトルで推定することが可能であること,トラス材軸力など多くの部材で長期応力を支配応力とできる可能性を示した。(2)さらに,パドル免震の原理の効果的な応用として,円形ドームの円周方向のみに復元力を有し,半径方向には拘束のない一方向免震の有効性が確認できた。
著者
池野 旬 島田 周平 辻村 英之 池上 甲一 上田 元 武内 進一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究計画では、タンザニア北部高地のキリマンジャロ・コーヒー産地を中心的な調査対象地域とした。国際的・国内的な要因によるコーヒー生産者価格の下落という近年の状況に対して、地域全体を統合するような広域の地域経済圏の形態での対応は発見できなかった。地理的分断、居住する民族集団の相違、行政的区分、農産物流通組織の相違等の要因によって、同地域は4〜5の山地-平地という組み合わせの下位地域に細分され、それぞれが別個にコーヒー価格の下落に対応している。メル山地域においては近隣都市の野菜・乳製品等の需要増大に応じて、中核的なコーヒー栽培地域において作目転換・畜産重視という変化が見られた。キリマンジャロ山地域には複数の下位地域区分が存在するが、コーヒーの差別化・流通改革をめざす地域、平地部でのトウモロコシ・米生産を重視する地域等の対応の差が見られた。また、北パレ山塊においては、建設ブームによって山麓にある都市部で人口増大が著しいのに対して、コーヒー産地である山間部では過疎化が進行しつつあることが明らかになった。比較対照のためにとりあげたルワンダ、エチオピアでは、タンザニア北部高地では見られない対応が行われていた。ルワンダにおいては、コーヒー産地は最も人口稠密であり、また有利な換金作物を栽培できる地域であるために、ルワンダの他地域では見られない分益小作制が発生しつつあった。また、エチオピアにおいては協同組合がフェアトレードやオーガニック・コーヒーという差別化に巧みに対応し、民間業者と互してコーヒー流通を担い続けていた。両国の事例は東アフリカにおけるコーヒー経済の存在形態の違いを浮き彫りにしており、本研究計画のめざした比較研究の必要性が改めて確認された。
著者
北 泰行 土肥 寿文 藤岡 弘道
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

希少金属の使用減に役立つ環境調和型新反応や反応剤を開発し、持続可能な手法として有用物質の合成へと応用した。さらに超原子価ヨウ素反応剤を用いるメタル触媒フリー酸化的カップリング反応を、申請者らが培ったヨウ素や硫黄、さらに酸素(オキソニウム)などの性質を利用した合成法と組み合わせ、天然物やその類縁体、機能性分子などの合成研究を展開することで、創薬研究や物質化学の発展に資する有用な手法とした。
著者
西藤 清秀 青柳 泰介 吉村 和昭 樋口 隆康 中橋 孝博 篠田 謙一 濱崎 一志 宮下 佐江子 豊岡 卓之 石井 香代子 石川 慎治 中橋 孝博 濱崎 一志 篠田 謙一 吉村 和久 宮下 佐江子 花里 利一 佐藤 亜聖 石川 慎治 後藤 完二 佐々木 玉季 吉村 和久 星 英司 鈴井 恭介 アサド カーレッド アサド ワーリッド
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

パルミラ遺跡北墓地129-b号家屋墓の発掘調査を通してパルミラ古代墓制の変遷が理解できつつある。この墓にローマ人が関与する可能性も碑文から読み取れる。この調査には3次元計測システムを活用し、倒壊していた家屋墓の復元も試み、一部視覚化が出来ている。この墓の倒壊に関わる重要な要因として地震の痕跡を墓周辺で検出した。さらにパルミラ滅亡後に1歳未満の乳児が129-b号墓周辺に故意的に埋葬されている事実も確認している。
著者
木股 文昭 伊藤 武男 田部井 隆雄 小川 康雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

2007年から頻繁に、インドネシアのスマトラ北部のアチェ州において、GPS観測とMT観測を実施し、2004年スマトラ超巨大地震の地震時の地殻変動と地震後の地殻変動、およびスマトラ断層周辺における地殻変動と比抵抗構造を検出・推定した。地震時の変動としてインド洋沿岸部で3mの南西方向への水平変動を、地震後の変動として同様に南西方向へ最大80cmに及ぶ水平変動と50cmに達する隆起を観測した。これらの変動から、2004年スマトラ地震の滑り分布を推定すると、主たる滑りが浅部ではプレート境界から上部に分岐した上部スラスト断層で発生していると推定された。これはニアス島において観測された1mに達する大きな隆起運動とよく一致する。また、地震後に観測された余効変動、とりわけアチェ州のインド洋沿岸で観測される隆起から、沿岸近くのプレート境界深部でafter slipが地震後に進行していると推定される。年間10cmを超える地殻変動のなかに、スマトラ断層の滑りに起因すると考える変動が見つかった。余効変動を簡単にモデル化で除去し断層での滑りを推定すると、アチェ州北部で深さ13kmあたりが固着し、浅部でクリープ運動が推定された。また断層周辺では低非抵抗域がMT観測から推定され、断層周辺で破壊が進行していることが明らかになった。
著者
片山 裕 白石 隆 清水 展 中野 聡 リヴェラ テマリオ アビナーレス パトリシオ
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

2007年4月から2010年3月の3年間に及ぶ海外学術調査であり、フィリピンにおいてマルコス政権の独裁体制に参加したテクノクラートへの聴き取り調査と、当時の資料を発掘・データベース化を行った。インタビューは、合計16名を対象に、延べ36回にわたって実施された。インタビューは映像・音声・文書の形で、デジタル化された発掘資料(シックスト・ロハス文書、アーマンド・ファベリア文書)とともにフィリピン大学付属図書館で保管され、しかるべき時期に一般に公開される。
著者
永井 義雄 関口 正司 下川 潔 山内 友三郎 有江 大介 音無 通広 姫野 順一
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

3年間にわたる本研究の最大の目標の1つは、功利(公益)主義の古典原典、それも出来れば未刊の草稿に遡って研究を拡大、深化させ、その成果を国際的に問うことであった。幸い、ベンサム草稿のマイクロ・フィルムを一括購入出来、ロンドン以外でこれを持つのは、日本が最初ということになった。永井、音無、有江、深貝、堀田、桜井、市岡、近藤、立川らは、これによって研究をすすめ、前6名は、その成果を第5回国際功利(公益)主義学会(ニューオーリンズ、1997年3月)で発表した。その後、研究協力を仰いだ坂井、奥野、児玉らがこの線にそって新たに研究を開始している。他方、いま1つの目標は、実践道徳として今日生きている功利(公益)主義が理論的、実践的にいかに機能しているかを確認し、今後さらに人類の福祉と地球環境の保護のために功利(公益)主義をいかに理論的、実践的に展開していくべきかを、考察することであった。この点でも、もちろん、国際交流は必要であって、山内は、オーストラリア国立大のシンガー教授と連携しつつ、生命倫理の問題で研究を深め、樫(研究協力者)もシンガー教授の著書を翻訳して、この面での功利(公益)主義的思考の意義を広めた。理論面では、永井、有江、深貝の3名は、1996年9月、ロンドン大学において、バリー教授の著書(Brain Barry,Justice as impartiality)をめぐっての、日英合同研究会に参加し、それぞれおよそ、1時間半の質疑応答をおこなった。これには、バリー教授自身が参加したのみならず、ローゼン教授、スコフィールド、ケリ-、クリスプ各博士など、約15名がイギリス側から討議に参加し、日本側には他5名が参加した。こうした研究会活動の結果、およそ、国際学会における日本からの発信については、国際的に一定の評価を受け、日英合同研究会の基礎も、一応固まったように思える。若手の研究者も、現れつつあり、今後の一層の理論的、実践的展開が期待される。1998年7月、待望の日本功利(公益)主義学会が旗揚げ出来るようになったのも、3年にわたる本研究補助があり、そのお蔭で研究会を継続できたからである。