著者
塩見 美喜子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

申請者は、精神遅滞を最も高頻度に伴う遺伝性ヒト疾患である脆弱X症候群原因遺伝子FMR1の機能解析を続けてきた。その過程において、FMR1遺伝子が翻訳調節に関与するRNA結合蛋白質をコードすること、さらには、ショウジョウバエFMR1相同蛋白質がRNAi活性中心であるRISC複合体の構成因子Argonauteと結合する事を明らかにした。FMR1遺伝子の機能を探索する上で、RNAi経路に関する新知見を得ることは必須であると考え、RNAi機構分子メカニズムの解析を進めた。基盤(A)によってサポートされた3年間における成果は以下の通りである。ショウジョウバエで恒常的に発現するArgonaute蛋白質(AGO1とAGO2)がそれぞれsiRNA、miRNAと結合する事によって遺伝子発現抑制機構において標的RNA切断nuclease(Slicer)として働くことを分子レベルで明らかにした。ショウジョウバエ抽出液を用いて行うRNAiにはATPは不必要である事を明らかにした。AGO2がsiRNA duplexのunwinding因子であることを明らかにした(以上、Miyoshi et al. Genes & Dev 2005)。生殖細胞特異的に発現するArgonauteの機能に関して研究をすすめ、Piwi、Aub、AGO3がrasiRNAと結合する事によってレトロトランスポゾンの遺伝子発現を抑えること、つまり「ゲノムの品質管理機構」に機能的に寄与することを明らかにした。これらArgonauteの機能が生殖細胞の維持・形成に必須であることが示唆された(Saito et al. Genes & Dev 2006;Gunawardane et al. Science 2007)。ショウジョウバエrasiRNA生合成経路に関するモデルを提唱した(Gunawardane et al. Science 2007)。(成果抜粋)
著者
西村 浩一 高橋 修平 本山 秀明 小杉 健二 根本 征樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

風力発電と太陽光パネルを用いた吹雪計測システムの開発を試みた。低温風洞で出力特性等の検証後、国内は新潟県と北海道、国外ではフランスアルプスで性能試験を行った。2013年には南極の昭和基地近傍の氷床上で、約2カ月にわたる吹雪の自動観測に成功したほか、フランスと共同でアデリーランドの観測タワーで吹雪フラックスの鉛直分布を求めた。また英国と共同で砕氷船により南極海の棚氷を周回し、海塩エアロゾルの供給源としての吹雪の寄与の測定を行った。一方、メソスケール気象モデルWRFで南極氷床上における気象要素の時系列変化を求め、これに基づいて算出された吹雪量を2000年の南極みずほ基地での観測結果と比較した
著者
井上 克也 秋光 純 菊地 耕一 美藤 正樹 岸根 順一郎 戸川 欣彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究計画の目的である分子性・無機 Chiral 磁性体の物質設計・制御戦略を確立した。目的以外についても以下の項目が本研究により達成された。キラル無機磁性体 CrNb3S62 の単結晶におけるキラルらせん磁気秩序およびキラルスピンソリトン格子の実空間および逆空間観測に成功した。キラル源を含まないキラル分子磁性体の合成についても新しく発見した。
著者
冨田 宏 木下 健 山口 一 林 昌奎 川村 隆文 早稲田 卓爾
出版者
独立行政法人海上技術安全研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

海洋において突然出現する巨大波浪(Freak/Rogue Wave)は大型船舶や海洋構造物の重大損傷、中小船舶の喪失を引き起こす極めて危険な現象として近来世界的にその発生機構の解明や発生頻度の推定に関する研究が注目されている。本課題研究においては先ずフリーク波がどのような波として実海域に出現するのかについて既存のデータや海員等の実体験をもとにフリーク波の特異性について共同研究者ならびに関係者によって組織されたフリーク波研究会において引き続き定期的に議論を行い、共通認識を深めた。さらに当該期間中造船学会におけるオーガナイズドセッションをはじめ、フリーク波や関連現象に興味を有する数学、数理物理学、海洋学、船舶・海洋工学、土木工学等諸分野の研究者に呼びかけ、九州大学応用力学研究所においてシンポジウム「海洋巨大波の実態と成因の解明」を2回にわたって開催レ、異分野間の交流を深め研究の進捗に多大な刺激を与えた。得られた成果の一部は海外研究集会においても発表された。さらに、韓国におけるフリーク波研究プロジェクトグループ(MOERI)との交流の一環として、釜山で開催されたフリーク波の国際シンポジウムに参加し、研究代表者が招待講演を行った。それらの議論を踏まえて、2次元的な長い峰を持つ場合についてはうねり等に適用出来ると言われている非線形波動理論、就中、非線形シュレディンガー方程式を基礎とした理論的研究をさらに詳細に行い、そこでプラズマ物理学において現れるホモクリニックな解としてのBreatherと呼ばれる現象に着目し、これを水面波に応用することによってフリーク波の有力なモデルが得られることを明らかにした。この結果は船舶試験水槽における物理実験ならびに81E法を用いた数値シミュレーションによっても確認され、曳航模型船に対する波浪荷重の推定実験の入力データとして提供された。また当該方程式の差分法による数値計算を実行することによって、周期境界条件の下ではこの種のブリーク解が繰り返し現れFPUの回帰現象を示すことを確かめた。この結果からフリーク解が(1Dについては)KdVソリトンに類似の基本解であることが明らかとなった。より一般の方向性(2D)を有する巨大波についてはこの現象の発現が稀であることから十分多数の観測データを取得することが困難であるため、発生確率を正確に決定するには至らなかった。実用的に重要なこの課題を克服するためには実海域における人工衛星リモートセンシングから確認する必要があるためそれを可能とするデータ解析アルゴリズムの開発を引き続き行っている。さらに散乱データに大きな影響を与える要素である海上風とそれによる表面誘起流れの様子を子細に調べるためにCFD手法に基づく海面での大気一海洋相互作用シミュレーション計算を引き続き行っている。方向性を有する波列の研究は新しい科研費研究課題として取り組まれる予定である。この種のシミュレーションが本格化すれば100年来の海洋学の未解決な大課題である風波の発生機構にも解決を与えることが可能であると期待される。
著者
伊東 正一 稲本 志良 加古 敏之 山路 永司 石川 行弘 丸山 幸夫 加賀爪 優 茅原 紘
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究はアジアのコメ需要が減退しつつあり、このままでは生産縮小に追い込まれるという、アジア農業にとっては危機的状況が予想されることから、アジア各国及び世界のコメ需要、さらに、今後の見通しについて解析した。結論は下記の通りである。1.世界の一人当たりコメ消費量は2000年代は年平均0.6%の減少率で推移している2.この減少率が続くと世界の一人当たりコメ消費量は2050年には58.9kgに減少する(シナリオ1)3.この減少率が2倍(シナリオ2)及び3倍(シナリオ3)になると、2050年にはそれぞれ52.7kg、及び46.2kgにまで減少する4.世界のコメの総消費量は2050年においてシナリオ1,2,3ではそれぞれ5億3,500万t、4億7,900万t、4億1,800万tとなり、シナリオ3では現在の消費量から増加しない、ということになる5.シナリオ1の見通しは現在の減少率の維持という最も控え目な予測であるが、IRRI(国際稲作研究所)が2003年に見通したものはこれより7%多い(2025年の時点)ものとなっている。国際研究機関の過剰な予測が懸念される6.アジア各国におけるコメ消費動向に関する研究は日本を除いて非常に少なく、コメ消費減退の実情が理解されていない7.1960年代から現在までの間に、台湾の一人当たり消費量は160kgから50kgに激減し、日本も120kgから60kg余に半減した。中国では2000年代に入り、100kgのレベルから減少の速度を加速し、年2kgの減少を呈しているこうした減退しつつある世界のコメ需要に対し、コメの加工向け、飼料向けの利用開発が求められる。こうした動きはアジア全地域で取り組む必要があり、効果的な方法の一つとして、日本が発展途上国に提供しているODA予算に対しても、アジア向けのODAにはコメ消費拡大に向けたプログラムに援助するということもアジア地域の食料安全保障対策や国際食糧需給政策として重要である。
著者
外園 豊基 錦織 勤 佐藤 和彦 桑山 浩然 松浦 義則 藤木 久志
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は日本中世(12〜16世紀)を主たる対象とするが、時代を広くとって平安期から近世初頭(9〜17世紀前半)までを考察の範囲とした。「戦争と平和」の主たる内容を、戦争および災害とした。政治的な災害としての戦争と、自然的な災害としての飢饉などと異なるものであろうが、前近代においては不可分の関係にあったといえよう。まず、平安期〜近世初頭における戦争および災害に関する資料の網羅的収集を行うことを第一義とし、共同研究作業を通じて、それらのまとめを行った。具体的には、戦争および飢饉などの災害関連記事を収集し、それらを編年にまとめる作業をしたのちに、それを基に年表を作成した。それとともに共同研究作業として、調査を深化させるための報告会・研究会を通じて、いくつかの作業を並行して進めた。その一つとして、平安時代の戦争・災害関連記事について、『平安遺文』を用いてまとめ、年表の作成を行った。それとあわせて、本研究の主題である「日本中世における日損・水損・風損・虫損・飢饉・疫病に関する情報」年表を完成させた。これに研究分担者および研究協力者の研究成果をあわせて、研究成果報告書としてまとめた。また、動乱の時代といわれる南北朝期(14世紀)に関して、『大日本史料』(第6編)を検索し、戦争関連年表の作成を行ってきたが、完成間近の段階であり、かつ紙幅の関係で、研究成果報告書には反映することができなかった。さらに、近世初頭の関ヶ原の戦いにおける禁制を収集し、その内容・分布状況など考察することによって、民衆の戦争への関わり方を究明することに主眼をおいて考察を加えてきたが、これもまとめる段階までには到達できなかった。
著者
可知 直毅 平舘 俊太郎 川上 和人 吉田 勝彦 加藤 英寿 畑 憲治 郡 麻里 青山 夕貴子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

外来哺乳動物の攪乱の結果、生態系機能が消失した海洋島において、外来哺乳動物の駆除が生態系機能に及ぼす影響を評価し、駆除後の生態系の変化を予測するために、小笠原諸島をモデルとして、野外における実測データの解析と生態系モデルによる将来予測シミュレーションを実施した。シミュレーションの結果、ヤギとネズミを同時に駆除した方が植生や動物のバイオマスの回復効果が大きいことが明らかとなった。また、予測の精度を上げるために、環境の空間的不均質性を考慮する必要があることが示唆された。
著者
木暮 一啓 小川 浩史 砂村 倫成 河原林 裕 浜崎 恒二 常田 聡 西村 昌彦 浦川 秀敏 千浦 博 井上 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

近年の研究から、海洋の中心層には古細菌が広く分布することが分かってきた。1000m以深では、数的には原核生物のうちの半数近くを占めることが見出されてきたが、今のところ分離株が全くなく、その生態、系統、物質循環に対する寄与などについては殆ど未知の状況である。これらの環境は低温、高圧、貧栄養で特徴付けられるが、こうした環境は従来から知られていた古細菌の好熱性、好塩性、嫌気性などの性質からはずれがある。従ってこれらを非極限性の古細菌と呼ぶことにする。本研究はこの一群を中心とした古細菌に対する学際的研究である。本研究では様々な課題を扱ったが、最大の成果は外洋域中心層から複数の古細菌を分離し、その系統的位置づけおよび性情等についての検討を開始できたことである。これは我々の知る限り、世界で初めてのことである。さらに、それが系統的には好塩性の古細菌に近縁であることが分かったことから、非極限性古細菌群集の起源や古細菌の進化上の広がりなどについて新たな仮説を提示できる段階に至った。
著者
岡野 光夫 大和 雅之 菊池 明彦 横山 昌幸 秋山 義勝 清水 達也 KUSHIDA Ai 青柳 隆夫
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、温度変化に応答して水溶性を大きく変化させる温度応答性高分子のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)とその誘導体で修飾した温度応答性パターン化表面を、電子線重合法を用いて作製し、これら表面の物性解析と異なる細胞種を用いた共培養、ならびに共培養細胞シートの作製への応用可能性を追究した。今年度は、パターンサイズの異なるパターン化温度応答性表面を作製した。具体的には、電子線重合法によりPIPAAmであらかじめ修飾された表面に、疎水性モノマーのブチルメタクリレート(BMA)溶液を塗布、パターンサイズの異なるマスクを介して電子線照射し、パターン化温度応答性表面を調製した。このとき、パターンサイズが100μm程度では、照射電子線の潜り込み等によりパターンサイズがマスクに比して変化する可能性が示唆された。この手法で、温度制御により部位特異的に親水性/疎水性(細胞非接着性/接着性)を制御しうる表面が調製できた。これらの表面を用い、肝実質細胞と、血管内皮細胞のパターン化共培養系を構築した。さらに、培養皿表面全体が親水性を示す20℃ですべての細胞を、パターン化形状を維持したまま1枚のシートとして回収できた。次に、共培養による肝実質細胞機能の変化をみるために、肝実質細胞から産生されるアルブミンの定量、ならびにアンモニア代謝に伴う尿素合成能を解析した。パターン化共培養により、いずれの機能も肝実質細胞単独培養系に比して高い数値を示した。さらにパターンサイズが小さいほど機能亢進することが明らかとなった。このとき、より小さなパターン化共培養系で肝実質細胞の培養期間が延長できる点も明らかとなった。以上の結果は、肝実質細胞と内皮細胞シートとの重層化によって得られた知見とよく一致していたことから、細胞-細胞間の距離がきわめて重要な影響を与え、細胞機能の発現につながるものと考えられる。
著者
岡野 光夫 大和 雅之 清水 達也 中山 正道 秋山 義勝 原口 裕次 菊池 明彦 串田 愛
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)をポリスチレン表面にグラフトした温度応答性培養皿を利用した、細胞シート工学的手法をさらに発展させることを目的として、(1)種々の生理活性因子を温度応答性表面に固定化し、ウシ胎児血清(狂牛病等の異種感染を完全には否定できない)や患者自己血清(患者毎に生理活性が異なりうる)を必要としない温度応答性培養床を開発、さらに本技術を応用し(2)細胞増殖を加速化し、短期間で細胞シートを作成することにも成功した。具体的には、温度応答性培養皿表面に、生理活性物質が固定化可能な結合サイトを導入し、RGDのような生理活性ペプチドを導入することで無血清培養条件下での細胞シート回収に成功した。また、スペーサーを介してPHSRN(RDGのシナジー配列)とをRDGと共固定することで細胞接着性が向上し、共固定の細胞培養における有用性を明らかにした。(2)さらに、RGDとインスリンの共固定した表面で細胞培養を行うことで、液中にインスリンが存在するよりも、細胞増殖が加速され短期間に細胞シートが作製できることを明らかにした。生理活性物質の固定にはアビジン、ビオチンケミストリーの利用も有効であることを明らかにした。今後、既に臨床応用をおこなっている皮膚表皮細胞シート、角膜上皮細胞シートの他、臨床応用を目指している角膜内皮細胞シート、網膜色素上皮細胞シート、心筋細胞シート、肺胞細胞シート等、それぞれの細胞種に最適化した固定化する生理活性子の組み合わせ、各々の因子の濃度を検討中である。
著者
古瀬 充宏 友永 省三 安尾 しのぶ 安尾 しのぶ
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

L-トリプトファンの代謝産物であるキヌレン酸にストレス軽減効果が認められ、その効果はα7nACh受容体とNMDA受容体を介することが明らかになった。L-アスパラギン酸はNMDA受容体を、D-アスパラギン酸はNMDA受容体と他の受容体を介してストレス軽減に機能することが判明した。不安様行動に対し、L-セリンの単回ならびに長期投与が異なる反応を示すことを認めた。多動性を示す動物の脳では、L-チロシンがD-チロシンに変換されやすく、L-セリンが減少していることが判明し、アミノ酸栄養による改善の可能性が示唆された。
著者
遠藤 泰生 中野 勝郎 増井 志津代 荒木 純子 松原 宏之 橋川 健竜 肥後本 芳男 佐々木 弘通 森 丈夫 中野 由美子 久田 由佳子 金井 光太朗 CHAPLIN joyce CAPOZZOLA christopher GOODMAN david JAFFEE david HALL david
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「公民的要素」「政治的要素」「社会的要素」他の要素に市民権を分別しその成長を直線的に理解することに西欧の市民社会理解は特徴付けられる。しかし、19世紀前半のアメリカ合衆国における市民編成原理の歴史を理解するには、そのような枠組みは図式的すぎる。19世紀前半の合衆国における市民編成原理の追求は、領土の拡大と不断の移民の受け入れ、消費革命の浸透、奴隷制度の是非をめぐる論争などの問題に直面しながら行われた。本研究ではその歴史を、手稿請願、読書習慣、教会説教、大西洋世界における図像リテラシー他を媒体とする非公式の政治行為に携わる市民をも包摂する、巨視的視野から検討する。
著者
渡邊 良朗 山下 洋 河村 知彦 木村 伸吾 渡部 諭史 山下 洋 河村 知彦 木村 伸吾 渡部 諭史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、寒流域と暖流域という異なる海流系の影響を強く受ける沿岸海域生態系において、浅海資源の再生産がどのように行われ、再生産に人間がどのように関わることで、更新可能な生物資源として将来にわたって持続的利用が可能になるかを生態学的に明らかにし、それに基づいた資源の管理・増殖の新しい考え方と方法を提示した。
著者
石丸 隆 山口 征矢 小池 義夫 栗田 嘉宥 吉田 次郎 神田 穣太 田中 祐志 土屋 光太郎 北出 裕二郎 茂木 正人 堀本 奈穂 平譯 享 笠松 伸江
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

海鷹丸による,2回の南大洋インド洋海区における学際的な研究航海を実施した。生物関係では,陸棚から外洋における魚類の分布組成,中・深層における魚類や動物プランクトンの分布,動物プランクトンの分布変動と南極周極流周辺に形成されるフロントの位置との関係等を明らかにした。物理学分野ではケープダンレー沖において新たな南極底層水形成海域を発見し,深層水の分布とその変動,形成機構等に関する知見を得た。
著者
中川 理 石田 潤一郎 小野 芳朗 丸山 宏 青井 哲人 大田 省一 木方 十根 清水 重敦 砂本 文彦 谷川 竜一 中嶋 節子 中野 茂夫 松山 恵 本康 宏史 山口 敬太
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

わが国の都市空間は、明治維新から太平洋戦争時までの間に実施された各種の都市基盤整備の事業によって再編された。この研究は、近代におけるわが国の都市空間の変容を、その事業が計画・執行される仕組みを理解することで解明する。都市基盤整備の事業は、国家、地方行政、地権者、共同体、民間資本などが多様な関係を築き実施されていた。そして、その関係は、学知や技術による客観的評価に基づく、一元的な制度システム(仕組み)に回収されていくようになったことがわかった。
著者
小澤 正直 浜田 充 北島 雄一郎 西村 治道 Buscemi F.
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

【不確定性】ブランシアールの関係式を混合状態の任意の分解に適用する事で,混合状態に対する誤差擾乱関係を導く事ができる事を示し,2014年に本研究で導かれた,混合状態に対する誤差擾乱関係は最適な分解に対する誤差擾乱関係である事を示した。【相補性】測定過程が物理量の値を再現するのか,確率分布を再現するに過ぎないのかは未決着の問題であるが,定説では,Kochen-Specker の定理から測定は確率分布を再現するに過ぎないと考えられてきた。本研究では,定説に反して,任意の状態で確率分布を再現する事のできる2つの装置で同一の物理量を同時に測定するとそれらの測定値が常に一致することを示した。【情報理論的非局所性】量子通信路が他の通信路に分解可能であるための新しい必要十分条件を発見した。このような条件は,逆データ処理定理と呼ばれ,確率分布のマジョライゼーション順序を量子通信路に拡張している。【計算量理論的非局所性】量子対話型証明における検証者が多項式時間量子アルゴリズムを実行できることに加えて事後選択と呼ばれる能力を有する場合における検証能力を完全に特徴付けることに成功した。具体的には,このような量子対話型証明で検証可能な問題のクラスがPSPACEと一致することを示した。この成果はPSPACEという従来の計算量理論において重要な問題のクラスに対する新しい量子計算的特徴付けを与えるものである。【相対論的非局所性】非文脈依存的な隠れた変数の存在から導かれるKCBS不等式について研究し,非相対論的量子力学においてはすべての状態においてKCBS不等式が破れるわけではないのに対して,相対論的場の量子論においてKCBS不等式はすべての状態において破れるということを示した。【量子暗号】2014年発表のユニタリ演算子構成の定量的な限界式の一般化を行い,より広範囲の系に対して適用可能なものを提案した。
著者
関 達治 五十嵐 泰夫 冨田 房男 吉田 敏臣 駒形 和男 小崎 道雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

日本の発酵食品のルーツでもあり、食文化として文化の一端を担う東南アジアに特有の伝統的発酵食品に関する情報を、社会の発展に伴い失われる以前に調査収集し、情報を保存することを目的とした。また、東南アジアに広く分布する類似発酵食品の比較検討を通して、その共通性、地域特異性を明らかにし、生物工学的、食品工学的意義を明らかにし、各国の研究者と協力して国際学術論文として取りまとめることを目的とした。本年度は最終年であるため以下の調査研究を行った。1.カンボジアにおける伝統的発酵食品に関する調査カンボジアの伝統的発酵食品、特に糖質を原料とする発酵食品並びに魚を原料とする発酵食品について、生産現場を調査した。(関、冨田、五十嵐、小崎、駒形、飯野、S.Limtong、C.Wongkhaluang、S.Saono、P.T.Ho、T.L.Thuoc)2.収集資料整理と取り纏め前年度までに収集した東南アジア諸国(タイ、マレーシア、ベトナム、西インドネシア、フィリピン、ラオス、ミャンマー)および本年度実施のカンボジアにおける発酵食品に関する学術等資料を整理し、取りまとめ指針に従いデータベース化を行った。(関、小崎、駒形、飯野、岡田、中川、N.Lotong、S.Saono、C.Wongkhaluang、W.Yongmanitchai、S.Saono、P.T.Ho、T.L.Thuoc)
著者
柿木 隆介
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

種々の非侵襲的計測法を用いてヒトの脳内痛覚認知機構を明らかにすること、及び、基礎的研究によって得られた知見を元にして除痛治療を行う事を主要研究目的として、研究を行った。健常者を対象とした研究では、「こころの痛み」がなぜ起こるのか、鋭い痛みと鈍い痛みに対する脳反応の相違、などについて明らかにすることができた。臨床研究では、治療困難な痛みを持つ患者さんに対する脳外科的治療法の進歩に寄与する事ができた。
著者
野間 晴雄 森 隆男 高橋 誠一 木庭 元晴 伊東 理 荒武 賢一朗 岡 絵理子 永瀬 克己 朴 賛弼 中俣 均 平井 松午 山田 誠 山元 貴継 西岡 尚也 矢嶋 巌 松井 幸一 于 亜 チャン アイン トゥアン グエン ティ ハータイン チャン ティ マイ・ホア 水田 憲志 吉田 雄介 水谷 彰伸 元田 茂光 安原 美帆 堀内 千加 斎藤 鮎子 舟越 寿尚 茶谷 まりえ 林 泰寛 後藤 さとみ 海老原 翔太
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

東アジア世界に位置する歴史的地域としての東シナ海,日本海,黄海・渤海・中国東北地方,広義の琉球・ベトナム,朝鮮半島の5つの部分地域として,環東シナ海,環日本海沿岸域の相互の交流,衝突,融合,分立などを広義の文化交渉の実体としてとらえる。それが表象された「かたち」である建築,集落,土地システム,技術体系,信仰や儀礼,食文化等を,地理学,民俗建築学,歴史学・民俗学の学際的研究組織で,総合的かつ複眼的に研究することをめざす。いずれも,双方向の交流の実体と,その立地や分布を規定する環境的な側面が歴史生態として明らかになった。今後はこの視点を適用した論集や地域誌の刊行をめざしたい。
著者
梶 光一 高橋 裕史 吉田 剛司 宮木 雅美 鈴木 正嗣 齊藤 隆 松田 裕之 伊吾田 宏正 松浦 由紀子 上野 真由美 及川 真里亜 竹田 千尋 池田 敬 三ツ矢 綾子 竹下 和貴 吉澤 遼 石崎 真理 上原 裕世 東谷 宗光 今野 建志郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

洞爺湖中島のエゾシカ個体群は、2度の爆発的増加と崩壊を繰り返して、植生に不可逆的な変化をもたらせた。その後落葉に周年依存するようになり、2008-2012年の間、高い生息密度(45~59頭/km^2)を維持していた。落葉はかつての主要な餌であったササよりも栄養価は低いが、生命・体重の維持を可能とする代替餌として重要であり、栄養学的環境収容力の観点から高密度を維持することが可能な餌資源であることが明らかになった。