著者
山中 茂樹 北原 糸子 田並 尚恵 森 康俊
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

本研究は、今後30年以内に発生するだろうといわれる首都直下地震において発生する膨大な避難者たちの行動を予測するとともに、その対応策を考えるのが目的であった。ところが、2011年3月11日、東日本大震災が発生。加えて東京電力福島第1原発の事故で福島県民を中心に多くの強制避難・自主避難が生じた。そこで、同時進行している事象の実態把握と解析も進めた。3年間の成果として、住民票を移さずに避難した人達の在留登録制度の新設や避難元自治体と避難先自治体が避難住民の名簿を共有する避難者台帳の整備、広域避難者の支援に充てるファンドの創設など多くの政策・制度を提案した。
著者
杉山 あかし 神原 直幸
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

本研究の目的は、今日、世界的にも注目を集めている我が国「おたく文化」の文化社会学的分析を行ない、文化に関する社会学理論の再構築を行なうことである。具体的な研究対象はコミック同人誌即売会「コミックマーケット」(通称「コミケ」)である。このイベントは現在、東京、有明の国際展示場を借り切って夏と冬の年2回、3日間日程で催行されており、参加者は一日あたり15万人を超える。運営はボランティアによるものであり、世界最大規模の文化運動と呼ぶことができる。本研究では初年度(平成16年度)に以下の(1)〜(3)の3調査、そして平成17年度には(4)の調査を実施し、調査対象の巨大さに対応して、文化社会学分野でこれまでにない規模の、極めて膨大なデータを集積した。このデータについてその後の各年度において分析作業を行なってきた。(1)【サークル参加者質問紙調査】サークル参加者全数調査。得られた質問紙回答は37,620票。(2)【スタッフ参加者質問紙調査】コミックマーケットを運営するボランティア・スタッフに郵送法によって行なった質問紙調査。得られた質問紙回答は336票。(3)【スタッフ参加者グループ・インタビュー調査】コミックマーケットを運営するボランティア・スタッフに対して行なったグループ・インタビュー調査。6グループについて実施。テープ起こし字数、総計23万5千字。(4)【米澤嘉博氏インタビュー調査】コミックマーケット準備会代表、米澤嘉博氏への聞き取り調査。テープ起こし数、総計3万5千字。データ分析・検討の結果、大衆操作という観点から立論された大衆文化論、ならびに、反抗の契機として大衆文化を捉えるカルチュラル・スタディーズといった、これまでの文化理論のいずれもが適用できない、"中間文化的"な現代日本文の動態が明らかとなった。
著者
林 久美子 丹羽 伸介 池田 一穂 岡田 康志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18 (Released:2014-09-09)

真核細胞内では、細胞小器官はモータータンパク質キネシン、ダイニンによって輸送される。細胞小器官は様々な物質を含んでおり、細胞小器官の輸送によって生命活動の維持に必要な物質が細胞の隅々に行き渡る。細胞小器官にはミトコンドリア、メラニン色素顆粒、シナプス小胞などを含み、細胞小器官の輸送のメカニズム解明は医療や美容分野にとっても重要である。本研究では、非平衡確率過程模型の恒等式を細胞小器官の運動の解析に応用する事を目指している。H27年度は、ゼブラフィッシュの色素細胞内のメラノソーム輸送について進展があった。魚類は環境に応じて体表の色を変化させるが、この変化は色素細胞内のメラノソームがモータータンパク質に輸送され凝集または拡散することで生じる。この輸送に関連して、メラノソームが何個のモーターによって協同的に輸送されているか、を問題にした。ゼブラフィッシュのウロコから色素細胞を採取し、培養した。ホルモンを添加することで人工的にメラノソームを凝集させた。凝集時のメラノソームの運動を明視野観察で高速に録画し、運動のゆらぎを正確に測定することに成功した。このようにして得られたメラノソームのタイムコースを非平衡確率過程模型の恒等式を利用して解析した。この解析より、1つのメラノソームを輸送するモーターの力を測定することが可能になり、力分布から1つのメラノソームが複数のモータータンパク質に輸送されていることが示唆された。今後は力-速度関係から輸送メカニズムの詳細を調べたい。
著者
田代 聡 堀越 保則
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

放射線被ばくにより染色体異常がどのようなしくみで形成されるか、という本質的な疑問については、未だに未解明のままである。さらに、低線量被ばくでも、高線量被ばくと同じしくみによる染色体異常を形成するのか?などの疑問についても未だ明確な回答はない。我々は、紫外線レーザーを用いて放射線障害に特徴的なDNA二本鎖切断を誘導する紫外線マイクロ照射法を開発し、放射線誘発核内ドメインの形成制御機構の解明に取り組んできた。最近、従来の顕微鏡の数倍の解像度を持つ超解像顕微鏡が開発された。超解像顕微鏡に紫外線マイクロ照射法が可能な装備を備えた新しいシステムを用いることで、放射線誘発核内ドメインの超微細構造の解析が可能となる。また、次世代シーケンサーを用いることで、特定の染色体DNA領域の位置関係を分子細胞遺伝学的に解析することが可能となってきた。本研究では、超解像顕微鏡を用いた放射線誘発核内ドメインの動的構造解析を行ったところ、放射線照射細胞では代表的な放射線誘発核内ドメインとして知られているRAD51フォーカスの形が変わること、損傷ゲノムの一部はRAD51がもともと集積していた場所に移動すること、などを明らかにすることができた。また、生化学的アプローチでは、損傷シグナル因子ATMキナーゼによるクロマチン再構成因子複合体の活性制御により、損傷クロマチンへの適切なRAD51の結合を調節していることを明らかにした。さらに、RAD51タンパク質複合体に含まれる細胞核構造構築に関連する因子が、RAD51の機能制御を介して染色体異常形成の抑制に関与していることを明らかにし、論文発表している。さらに、本年度は染色体構造異常の形成に関与するクロマチン再構成因子複合体について、ATMキナーゼによる損傷依存的なリン酸化による活性制御を受ける構成因子を同定した。
著者
小田 裕昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

栄養・運動・睡眠は健康の要である。この3つの要素は生物時計という観点で見ると、統合的に制御できると考え、臓器間時計ネットワークの同調を介して代謝を正常化させて健康に結びつけるための分子的基盤を明らかにすることを目指す。現代社会では、肝臓時計の乱れによる代謝異常だけでなく、24時間社会による脳時計異常による睡眠障害、運動不足による筋肉時計異常による筋委縮など各臓器の異常が指摘されている。シフトワーカーに限らず仕事柄不規則な生活をせざるを得ない人では、3つの要素が乱れ(脱同調)、生活習慣病の罹患者が多い。そのため特に、摂食タイミングを生物時計のキー同調因子として、脳時計と肝臓時計、筋肉時計のネットワークの同調(脱同調)機構を明らかにする。まずは摂食リズム崩壊モデル動物を用いて、摂食リズムの崩壊が肝臓の時計遺伝子ならびに脂質代謝関連遺伝子の発現を異常にさせるメカニズムを検討した。これらの異常が転写レベルで起きているのか検討する目的で、成熟mRNAのプロセッシングを受ける前の新生mRNA量を測定することにより、転写速度とした。そうしたところ、ほとんどのmRNA量の変化は転写レベルで制御されていることが分かった。しかし、転写レベル以降の、たとえばmRNAの安定性によりリズムが形成される遺伝子もあることを見出した。これは、新しい概日リズムの制御機構である。それが食事によって影響を受けることは新しい知見である。筋肉の時計を見るために、生活不活動モデルラットを用いて筋肉時計と筋肉活動、筋萎縮の関係を調べた。この実験は、食事による筋肉時計へ与える影響を調べるための基礎的実験として行った。生活不活動モデルラットの筋肉は萎縮し、筋肉時計にも異常が生じることが分かった。さらに筋細胞の分化に関わる転写因子群が筋肉特異的な時計遺伝子として機能している可能性も分かった。
著者
山本 敏充 斎藤 成也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2012-04-24)

昨年度、日本人に特化した約68万個のSNP解析である「ジャポニカ・アレイ」を用いた受託解析へのゲノムワイドなSNP解析の変更が4月に承認された。そこで、東芝ヘルスケア社に、ハポン姓の人々のDNA試料の解析を委託したところ、10サンプル以上に解析に適するクオリティがないものが判明したので、それらのDNA試料の再抽出を依頼した。変更のため必要となった、スペインのアンダルシア地方の人々の対照DNA試料50サンプル、及びハポン姓の人々の再抽出サンプルを、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学ゲノム解析センターに5月に訪問し、入手した。最終的に6月にハポンDNA試料96サンプルを委託し、7月に解析データを入手した。それらのデータは、共同研究者である斉藤研究室で、データベースから入手したスペイン人などのSNPデータ(共通のSNPのみのデータ)と共に主成分分析などの解析が行われた。その間に、スペインの対照DNA試料を定量したが、量的に不足し、さらにクオリティも低かったので、再度入手を依頼し、8月末から開催された国際法医遺伝学会で受領することを約束した。しかし、現存試料は、それ以外はなく、残りのさらに質のよくなかった5サンプルのハポン姓サンプルのみを受領した。その後、2月末から解析センターを訪問し、新たに質のよい50サンプルを入手した。その間に、この解析アレイを開発した東北大学メディカル・バンクのデータバンク(ToMMo)に保存されているデータの活用についても検討したところ、了解を得た。そこで、東北大学のゲノム解析チームとの共同研究について、名古屋大学医学部倫理委員会に変更申請・承認後、11月に共同研究契約申請を行い、2月に契約が承認・締結された。従って、SNP解析変更、及びDNA試料の入手が困難を極めたので、本研究遂行のため、基金分を残し、1年期間延長の申請をし、承認された。
著者
杉浦 和子 水野 一晴 松田 素二 木津 祐子 池田 巧
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

1.ストックホルムの民族学博物館に所蔵されている資料を調査した(杉浦、松田、水野、木津、池田、協力:Håkan Wahlquist氏(ヘディン財団))。ヘディンの原資料(スケッチ、新聞記事のスクラップブック、フィールドノート、地図の下図など)の閲覧と複写、撮影を行った。京都大学所蔵のヘディンの絵画模写作品の原画の所在を確認し、現存するものについては、記入されたメモの筆跡を照合した。模写60点のうち、49点の原画を確認できた。2.チベット調査を行った(池田)。ラサ、シガツェ、ギャンツェでヘディンが踏査したルートの確認とスケッチした地点と事物を比定し、写真を撮影した。地形や風俗、建物等の現況調査ならびに民族誌・チベット史等に関する文献資料を閲覧・収集した。チベット寺院内陣の様子、寺院の中庭、建物、衣装の装具、武器などで、ヘディンの描いたものと同じあるいは同種のものを確認できた。3.ヘディンの京都滞在期間中の交遊資料の調査を行い、鹿子木孟郎夫人の日記や知人名簿、新聞記事を収集した(木津、杉浦)。鹿子木夫人の明治41年の日記に、鹿子木がヘディンの歓迎行事で案内役を務めたこと、模写に画学生たちが鹿子木の自宅に来たことが記されていることを確認できた。また、近代学術史・京都洋画史・チベット史・探検史などの関係文献の収集と整理を行った(松田、水野、木津、池田、杉浦、協力:平野重光(元京都市立美術館学芸部長))。4.ヘディンとチベットにかかわるシンポジウムおよび企画展の日程や内容を検討し、準備を進めた(全員)。
著者
本多 真 児玉 亨
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

眠気と脂質代謝:カルニチンの効果主観指標を用いたL-カルニチン過眠改善効果について、奏功基盤を動物での基礎検討と客観指標を用いた臨床研究で検討した。L-カルニチンは中枢・末梢ともにCPT1活性指標を改善させ、ドパミン系などの脳内の遺伝子発現や代謝産物を変化させ、実際に休息期特異的に睡眠の増加をもたらした。臨床研究と共通し睡眠段階遷移指標での睡眠安定化作用が示唆された。4割程度にL-カルニチン反応群が存在し、その判別法を検討した。
著者
伴 信太郎 西城 卓也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

本研究は慢性疲労症候群(以下CFS)患者に対して、『漢方治療と認知行動療法を融合した集学的な治療戦略を確立』するための研究である。漢方治療に関しては、CFS患者29人を対象に、「証」の推移と治療効果を検討した。初診時の主証は、虚証群13人、実証群16人で、虚証群の罹病期間は、実証群に比して長い傾向を示した。治療開始後3ヶ月間に、証の変化により処方を変更した者は、虚証群62%、実証群56%で、両群間に有意差はなかった。治療6ヶ月後のPSスコアは、両群とも初診時に比して有意に低い値を呈したが、両群間に有意差はなかった。しかし、治療6ヶ月後のPSスコアが治療目標の2以下になった者の割合は実証群で高い傾向を示した。治療の有効性は、虚証群77%、実証群75%で両群間に差は認めなかった。CFS患者の証は多様であり、弁証論治に基づいた漢方治療が有用であること、また、経過中に証が変化する場合も多く随証応変に基づく治療が必要であること、そして、初診時に実証を呈する者の方が、比較的短期間での漢方治療効果が期待できることが示唆された。「慢性疲労症候群のための認知行動療法」に関してはCFS患者13名(中断患者3名含む)を対象として検討した。結果、CFS患者は、「認知的特徴」、「行動的特徴」、「認知・行動意識化の程度」という3次元の軸によってタイプ分けできる可能性が示唆された。また、タイプに応じた認知行動療法は、CFS症状維持のメカニズムに対する患者の理解を促し統制感を高めていることも示された。これらの結果は、患者のタイプに応じた技法を選択適用するといった認知行動療法の弾力的実践と個別的適応の重要性を示唆していると考えられた。
著者
木村 真三 三浦 善憲 クマール サフー・サラタ 遠藤 暁
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

本研究では、経済的・政治的理由からチェルノブイリ汚染地域に取り残された住民の健康影響を調査するため環境放射能調査、食事調査、罹患率調査を行った。その結果、事故当時、土壌汚染レベルから空間線量率は350μSv/h~5μSv/hと推定された。内部被ばくの汚染ルートは、牛乳、キノコ、ベリー類であり、僅かではあるがパンも汚染源のひとつであった。また、これらの地域では汚染度の違いにより、汚染が高いほど妊婦の貧血が有意に上昇していることが確認された。
著者
富永 一登 川合 康三 釜谷 武志 浅見 洋二 和田 英信 緑川 英樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

『文選』の伝承から見た文学言語の型の形成と継承を追究するための基礎作業として、まず『文選』詩編(12巻分)の訳注作業を完成した。原稿作成は25年度内に完了したので、近々にこれを出版社から刊行し、広く社会に公表する予定である。また、『文選』所収の主な詩人の経歴や作品についてのコメントをまとめた。これも刊行予定の訳書に付載する。更に近年の『文選』研究の整理や唐代宋代の詩人への『文選』の影響についても、学術雑誌などに掲載し、著書としても刊行した。また、台湾大学の柯慶明・蔡瑜の両教授を招聘して『文選』の文学言語の継承に与えた影響について討論を行い、研究成果の国際的交流を行った。
著者
佐藤 努 廣吉 直樹 小暮 敏博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

28年度は、本研究の検討項目のうち、福島第一原子力発電所事故で環境中に放出されたセシウムを吸着・固定している粒子の性状や鉱物を明らかにし、汚染土壌からその鉱物フラクションを効率よく分離して土壌の減容化を可能とする分級方法の検討を継続した。その結果、以下のことが明らかとなった。①産地の異なる土壌からセシウムを固定化している粒子を分離し、高分解能透過型電子顕微鏡で詳細に観察したところ、放射性セシウムを多く含有している粒子は、鉱物の凝集態、有機物と鉱物の複合体、風化雲母片、ガラス質の球状物質に大別されることが明らかとなった。ただし、球状物質は土壌中に発見するのが困難なことから、全体への寄与は大きくないと考える。②濃集土壌粒子の内部を観察したところ、吸着・固定している鉱物は、バーミキュライト成分を含む風化雲母と鉄スメクタイトであり、多くは風化雲母であった。これらは、放射性セシウムを用いて、実際の放射性セシウム濃度と同じくらいの溶液で吸着実験をしても同様な結果が得られ、風化雲母が最も選択性が高く、風化雲母を排除して実験すると、鉄スメクタイトに選択濃縮することも判明した。③セシウムを多く含有している粒子中で風化雲母と鉄スメクタイトは、構成粗粒鉱物の周りに付着している「核岩タイプ」と細粒鉱物どうしが有機物とともに結合している「団粒タイプ」として存在していた。④上記の両タイプともに、高度に分級するためには、ターゲットとなる鉱物を剥離して分散することが重要であり、そのためにはポールミルや超音波等が有効であることが判明した。また、実汚染土壌を用いてそれらの最適分級条件を検討した。⑤高度に分級することによって、放射性セシウムが濃集している細粒部は集められるが、粗粒部分に残留する風化雲母は磁選によって効率的に回収できることが判明し、その最適分級条件を検討した。
著者
加藤 光裕 米谷 民明 大川 祐司 菊川 芳夫 風間 洋一 奥田 拓也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

加藤は、前年度までの研究を発展させ、massless高階スピンモードをもつ拡張された弦の場の理論を、Ramondセクターを持つ場合に拡げ、超対称性を一つ持つ場合の自由作用を構成した。米谷は、M理論の非摂動的定式化に向けてMatrix 理論の11次元時空共変性が明白な新しい定式化を提唱した。関連して南部力学のハミルトン・ヤコビ形式を提唱した。いずれも数十年来の未解決課題を前進させる成果である。風間は、N=4超対称ヤン・ミルズ理論のSU(2)セクターの3点関数に対して、モノドロミー関係式を用いることにより弱結合領域と強結合領域を同様の原理で扱う新しい方法を開発した。これにより強結合領域での解析性の理解を確立し、3点関数の完全な結果を得ることに成功した。大川は、Erler, 竹嵜氏との共同研究で、フェルミオンを記述する Ramond セクターを含み、A∞構造を持つ開いた超弦の場の理論の作用の構成に成功し、平成27年度に国友氏との共同研究で構成した作用と等価であることを示した。奥田は、2次元理論のdisorder型局所的演算子(vortex 演算子)の複数の定義と、0次元場と2次元場の結合による演算子の関係を発見し、それに基づいて演算子がなす環の基本関係式を導いた。菊川は、複素-有効作用をもつ格子模型の数値シミュレーション法について、フェルミオン行列式のゼロ点を境界にもつ複数のLefschetz thimbleの経路積分への寄与を有効的に取り組む手法の検証と開発に取り組んだ。
著者
水野 直樹 藤永 壮 宮本 正明 河 かおる 松田 利彦 LEE Sung Yup 庵逧 由香 洪 宗郁 金 慶南
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

日中戦争・アジア太平洋戦争期の植民地朝鮮の政治や社会・文化を理解するために必要な資料を国内外の図書館・文書館で調査・収集し、そのうち重要と認められる資料を選んでWEB上の資料集を作成した。これらのほとんどは、文書資料として残されているだけで、印刷されることがなかったため、一般市民のみならず研究者も閲覧・利用に不便をきたしていたものである。WEB上の資料集は、今後の歴史研究に利用でき、また広く歴史認識の共有にも役立つものとなっている。また植民地期とその直後に朝鮮に在住していた日本人の回想記・手記類についても、目次・著者略歴などのデータを整理してWEB上で提供することとした。
著者
成 元哲 牛島 佳代 松谷 満 阪口 祐介 永幡 幸司 守山 正樹 高木 竜輔 田中 美加
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2012-04-24)

本研究の目的は、原発事故が福島県中通りに居住する親子の生活と健康にどのような影響を与えているのかを明らかにし、必要な支援策を検討することにある。そのために、参与観察、聞き取り調査、調査票調査を通じで、原発事故後、中通り9市町村に暮らす親子は急激な生活変化を経験しており、それに適応できない母親は精神健康の低下を経験しており、それが子どもの問題行動につながっていることを明らかにした。親子への支援策は、経済的負担感と補償をめぐる不公平感を軽減し、放射能への対処をめぐる認識のずれを軽減する。また、保養・避難を選択できる環境にし、福島での子育て不安、健康不安を軽減することが必要である。
著者
今村 展隆 小熊 信夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

我々は、ウクライナのすべての州から診断依頼を受けた過去6年間(1995〜2001年)に、5,483名の患者(成人2,199名、子供3,284名)を調査した。中でもチェルノブイリ原子力発電所の事故当時、7.5〜25cGyの放射能を浴びたチェルノブイリ除染作業者のうち、144名に血液学的疾患が認められた。我々はまた、モノクローナル抗体を用いた,形態、細胞化学,免疫細胞化学および免疫型質解析によって、90名の患者に血液学的悪性疾患を認めた。その内訳は、急性リンパ性白血病4名、B細胞型の慢性リンパ性白血病(B-CLL)16名、B細胞性リンパ腫2名、多発性骨髄腫12名、その他の非ホジキン悪性リンパ腫7名、Sezary症候群2名、願粒リンパ球性白血病6名、急性骨髄性白血病15名、慢性骨髄性白血病8名、真性赤血球増加症1名、本態性血小板血症3名、および骨髄異形成症候群9名であった。血液学的悪性腫瘍患者の平均年齢は57.1±1.3歳で、男女別では男性のほうが多かった(84名;93.3%)。悪性でない血液疾患が8名(再生不良性貧血、溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病)に、また、骨髄の転移性癌が5名に認められた。造血機構の持続的障害(リンパ球増加症、好中球増加症、造血細胞の異形成変化)は、26名の患者で検出された。この患者グループについては、根本的な病因の性質を明らかにするため、最新の分子遺伝子解析法を用いてさらに詳しく調査する必要がある。6名の除染作業者については、明白な血液学的障害は認められなかった。血液学的悪性腫瘍の発生率は、血液以外の悪性腫瘍発生率および被爆しなかった患者の悪性腫瘍発生率と比較して高率である。我々の研究室で調査したチェルノブイリ除染作業者の集団では、造血組織およびリンパ系組織の主要な悪性疾患の形態をすべて登録し、その中では、慢性リンパ性白血病(19%)を含む慢性リンパ増殖性疾患が優位に多かった(57.4%)。慢性リンパ性白血病は、最近になるまで放射線に関連する白血病であるとは認識されていなかったため、この事実は特に重要である。こうした見解は原爆被爆者生存者の白血病発生率に関するデータに完全に基づいたものであった。一方、日本では古典的なB-CLLは珍しい形態の白血病であり、全白血病の5%に満たない。米国およびヨーロッパでは、B-CLLは成人で最も優勢な白血病形態のひとつである。除染作業者のうち16名のB-CLL患者に関する我々のデータと、Research Center of Radiation Medicineの血液診断所でB-CLL患者36名を観察したKlimenko教授のデータは、電離放射線への曝露はB-CLLのリスクを増加させないという一般に受け入れられた見解に疑問を投げているように考える。こうした一般的見解が優勢になると、除染作業者やウクライナおよびベラルーシの汚染地域に住む住民の間で、B-CLLの発生率が増加していることに関する疫学的データを無視する決定的要因になりかねないと考える。
著者
賞雅 寛而 石丸 隆 元田 慎一 波津久 達也 古谷 正裕
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

本基盤研究では、船舶及び海洋構造物を対象とした防食、特にSUS304ステンレス材料のすきま腐食の防止に必要な放射線誘起表面活性(RISA)のメカニズムの解明、すきま腐食に対する適切な皮膜の基礎開発及び、人工海水中のRISAの効果の確認を行い、以下の結果を得た。1)試験片に小型密封放射線源^<60>Coを密着させ、その裏面から照射されるγ線を利用した実験により、ステンレス鋼の不動態皮膜をより強固にすることで局部腐食の発生を抑制し、RISA防食法が放射線照射施設外においても応用できることがわかった。2)放射化試験片自らが発するγ線を利用した実験により、中・強放射化試験片では安定した不動態皮膜を保ち、厳しい腐食環境下でも耐食性が維持できることがわかった。3)腐食電位の卑化は密封放射線源の有無に対応しており、微弱放射線環境においてもRISA効果によりすきま腐食の抑制効果が得られる。4)SUS304鋼の腐食電位をカソード防食電位まで卑化させずとも、不動態皮膜を保持し、すきま腐食を防止することを確認した。5)放射化試験片自らが発する放射線を利用した実験により、66μGy/h以上の照射積算線量で安定した不動態皮膜を保ち、厳しい腐食環境下でも耐食性が維持できることを確認した。6)試験片の照射積算線量を変化させた場合、その積算線量の増加により防食効果が増大することを確認した。これまで防食亜鉛や防食塗料などの鉄鋼構造物腐食防止法の多くはいずれも海外先進国によって開発されており、船舶・海洋構造物の腐食制御技術は国外技術に依存しているが、この新しい船舶・海洋構造物の腐食制御方法は、エネルギー環境技術として、我が国の技術水準を向上させ世界に貢献する重要な手段になると期待される。
著者
北本 朝展 西村 陽子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

本年度はデジタル史料批判について、以下の3つの視点から研究を進めた。(1) デジタル史料批判の基盤構築:デジタル史料批判プラットフォーム(Digital Criticism Platform)の構築に向けて、2つの点からシステムに改良を加えた。第一に、写真と景観をマッチングする「メモリーグラフ」モバイルアプリについては、アプリを再設計して機能を大幅に向上させたバージョンをリリースするとともに、データ管理のための認証機能にGoogle Firebaseを導入した。第二に、データ蓄積を担うリポジトリに関しては、基盤となるソフトウェアDSpaceにも同じくGoogle Firebaseを認証機能として導入することで、モバイルアプリとの通信に同一の認証機能が利用できるようにした。そして、デジタル史料批判の理論的な枠組みについても、1件の招待論文にまとめて発表した。(2) デジタル史料批判の実践:シルクロード探検隊の中でも特にドイツ隊と英国隊が調査した史料に焦点を合わせ、シルクロード地域の遺跡照合に関する研究を進めた。そしてその成果を、1件の招待論文および1件の国際会議にまとめて発表した。(3) デジタル史料批判の拡大:提案する方法論の有効性を検証しより一般化するためには、様々なデータを対象に方法論の有効性と限界を検証しなければならない。そこで今年度は、華北交通写真のアーカイブを対象にデータの基礎的な整備を行った。華北交通とは第二次大戦前後に華北地方で交通事業を展開した企業であるが、この企業が残した数万枚の古写真を鉄道路線図と対応付けて解釈するという時空間的な写真の解釈に取り組み、その成果を華北交通写真に関するミュージアム展覧会に出展した。以上、デジタル史料批判プラットフォームというインフラストラクチャーの整備と、その上に今後の載せていく研究データの整備という、2つの側面から研究を並行して推進した。