著者
石黒 直隆 猪島 康雄 松井 章 本郷 一美 佐々木 基樹
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2013-05-15)

絶滅した日本のオオカミ(エゾオオカミとニホンオオカミ)の分類学上の位置をミトコンドリア(mt)DNAのゲノム解析により明らかにし、両オオカミの起源と系譜を海外の考古資料から調査した。エゾオオカミは、大陸のオオカミと遺伝的に近く、ニホンオオカミとは大きく異なっていた。ロシアおよび中国の古代サンプル143検体を解析したが、ニホンオオカミのmtDNA配列に近い検体は検出できなかった。また、モンゴルのオオカミ8検体および国内の現生犬426検体を解析し、ニホンオオカミのmtDNAの残存を調査したが見つからなかった。これらの結果は、ニホンオオカミはオオカミ集団の中でもユニークな系統でることを示している。
著者
伴 信太郎 西城 卓也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

本研究は慢性疲労症候群(以下CFS)患者に対して、『漢方治療と認知行動療法を融合した集学的な治療戦略を確立』するための研究である。漢方治療に関しては、CFS患者29人を対象に、「証」の推移と治療効果を検討した。初診時の主証は、虚証群13人、実証群16人で、虚証群の罹病期間は、実証群に比して長い傾向を示した。治療開始後3ヶ月間に、証の変化により処方を変更した者は、虚証群62%、実証群56%で、両群間に有意差はなかった。治療6ヶ月後のPSスコアは、両群とも初診時に比して有意に低い値を呈したが、両群間に有意差はなかった。しかし、治療6ヶ月後のPSスコアが治療目標の2以下になった者の割合は実証群で高い傾向を示した。治療の有効性は、虚証群77%、実証群75%で両群間に差は認めなかった。CFS患者の証は多様であり、弁証論治に基づいた漢方治療が有用であること、また、経過中に証が変化する場合も多く随証応変に基づく治療が必要であること、そして、初診時に実証を呈する者の方が、比較的短期間での漢方治療効果が期待できることが示唆された。「慢性疲労症候群のための認知行動療法」に関してはCFS患者13名(中断患者3名含む)を対象として検討した。結果、CFS患者は、「認知的特徴」、「行動的特徴」、「認知・行動意識化の程度」という3次元の軸によってタイプ分けできる可能性が示唆された。また、タイプに応じた認知行動療法は、CFS症状維持のメカニズムに対する患者の理解を促し統制感を高めていることも示された。これらの結果は、患者のタイプに応じた技法を選択適用するといった認知行動療法の弾力的実践と個別的適応の重要性を示唆していると考えられた。
著者
木村 真三 三浦 善憲 クマール サフー・サラタ 遠藤 暁
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

本研究では、経済的・政治的理由からチェルノブイリ汚染地域に取り残された住民の健康影響を調査するため環境放射能調査、食事調査、罹患率調査を行った。その結果、事故当時、土壌汚染レベルから空間線量率は350μSv/h~5μSv/hと推定された。内部被ばくの汚染ルートは、牛乳、キノコ、ベリー類であり、僅かではあるがパンも汚染源のひとつであった。また、これらの地域では汚染度の違いにより、汚染が高いほど妊婦の貧血が有意に上昇していることが確認された。
著者
園山 繁樹 下山 真衣 濱口 佳和 松下 浩之 江口 めぐみ 酒井 貴庸 関口 雄一 奥村 真衣子 趙 成河
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

研究1「幼・小・中学校への質問紙調査」を平成28年度に実施し、結果の概要を平成29年9月開催の日本特殊教育学会第55回大会において発表した。結果の詳細については学術雑誌に投稿中である。選択性緘黙児の在籍率と学校での困難状況を明らかにした。研究2「選択性緘黙児童生徒の事例研究」を平成28年度に引き続き、研究代表者と研究分担者が教育相談室において実施し、2つの事例研究(中学1年、及び幼稚園年少)が「筑波大学発達臨床心理学研究」第29巻に掲載された。他の1事例研究(小学1年)については、日本特殊教育学会第55回大会において発表した。3事例とも刺激フェイディング法を中核としつつ、各事例の状態に応じて支援方法を工夫することで、一定の効果がもたらされた。研究3「選択性緘黙経験者に対する質問紙調査・面接調査」を実施し、データを収集し、現在分析中である。また関係する調査研究の結果をまとめ、「障害科学研究」第42巻に掲載された。研究4「先進的実践・研究の実地調査のまとめ」については、平成28年度に実施したカナダ・McMaster大学への訪問調査の結果をまとめ、「山梨障害児教育学研究紀要」第12号に掲載された。年長者に対する認知行動療法による支援、並びに、広範な地域における専門的支援の在り方をまとめた。その他、有病率に関する内外の先行研究をレビューし、「障害科学研究」第42巻に掲載された。先行研究における有病率は0.02~1.89%の範囲にあった。また、大学生における選択性緘黙への認識に関する調査を行い、「立正大学臨床心理学研究」第16巻に掲載された。
著者
佐藤 達哉 望月 昭 滝野 功 松見 淳子 下山 晴彦 小林 亮 松原 洋子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

平成19年度は最終年度にあたるため、これまでのまとめを行った。日本心理学会第71回大会においてワークショップ「欧米諸国における臨床心理学資格の実際とその歴史」(2007年9月18日)を開催し、その記録を『ヒューマンサービスリサーチ』NO 10「心理学の歴史に学ぶ」として刊行した。このワークショップは欧米における臨床心理学関連の資格について英仏独米の現地調査に基づいた結果をもとに議論したものであり、企画趣旨は以下の通りである。「資格は学問と社会をつなぐメディア(媒介)の一つである。日本の臨床心理学関連資格のあり方を相対化して考えるためには歴史研究と比較研究が必要である。このワークショップでは企画者が日本の臨床心理学史を簡単に紹介した後、欧米のいくつかの国を例にとって臨床心理学の資格の内容や成立の過程や訓練のカリキュラムについて検討していく。イギリスについて下山が、ドイツについて小林が、フランスについて滝野が、それぞれの国における現地調査をふまえて報告を行う。これらの報告を受け松見が、アメリカの資格の状況もふまえて、文化的視点に配慮し討論を行う。各国の歴史的文化的な背景が資格制度の成立にどのように影響しているのか、資格付与機関のあり方は社会によって異なっているのか、費用は誰が負担するのか、資格は社会に対してどのような機能を持っているのか、などについて差異と共通点を考えていく」。公刊した論文の執筆者とタイトルは下記の通り。小林亮「ドイツにおける心理療法士-資格制度とその活動状況」下山晴彦「イギリスの臨床心理学の歴史-日本との比較を通して」滝野功久「独自な主張をするフランス臨床心理学の歩み」松見淳子「欧米諸国における臨床心理学資格の実際とその歴史」。
著者
山中 茂樹 北原 糸子 田並 尚恵 森 康俊
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

本研究は、今後30年以内に発生するだろうといわれる首都直下地震において発生する膨大な避難者たちの行動を予測するとともに、その対応策を考えるのが目的であった。ところが、2011年3月11日、東日本大震災が発生。加えて東京電力福島第1原発の事故で福島県民を中心に多くの強制避難・自主避難が生じた。そこで、同時進行している事象の実態把握と解析も進めた。3年間の成果として、住民票を移さずに避難した人達の在留登録制度の新設や避難元自治体と避難先自治体が避難住民の名簿を共有する避難者台帳の整備、広域避難者の支援に充てるファンドの創設など多くの政策・制度を提案した。
著者
杉山 あかし 神原 直幸
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

本研究の目的は、今日、世界的にも注目を集めている我が国「おたく文化」の文化社会学的分析を行ない、文化に関する社会学理論の再構築を行なうことである。具体的な研究対象はコミック同人誌即売会「コミックマーケット」(通称「コミケ」)である。このイベントは現在、東京、有明の国際展示場を借り切って夏と冬の年2回、3日間日程で催行されており、参加者は一日あたり15万人を超える。運営はボランティアによるものであり、世界最大規模の文化運動と呼ぶことができる。本研究では初年度(平成16年度)に以下の(1)〜(3)の3調査、そして平成17年度には(4)の調査を実施し、調査対象の巨大さに対応して、文化社会学分野でこれまでにない規模の、極めて膨大なデータを集積した。このデータについてその後の各年度において分析作業を行なってきた。(1)【サークル参加者質問紙調査】サークル参加者全数調査。得られた質問紙回答は37,620票。(2)【スタッフ参加者質問紙調査】コミックマーケットを運営するボランティア・スタッフに郵送法によって行なった質問紙調査。得られた質問紙回答は336票。(3)【スタッフ参加者グループ・インタビュー調査】コミックマーケットを運営するボランティア・スタッフに対して行なったグループ・インタビュー調査。6グループについて実施。テープ起こし字数、総計23万5千字。(4)【米澤嘉博氏インタビュー調査】コミックマーケット準備会代表、米澤嘉博氏への聞き取り調査。テープ起こし数、総計3万5千字。データ分析・検討の結果、大衆操作という観点から立論された大衆文化論、ならびに、反抗の契機として大衆文化を捉えるカルチュラル・スタディーズといった、これまでの文化理論のいずれもが適用できない、"中間文化的"な現代日本文の動態が明らかとなった。
著者
林 久美子 丹羽 伸介 池田 一穂 岡田 康志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18 (Released:2014-09-09)

真核細胞内では、細胞小器官はモータータンパク質キネシン、ダイニンによって輸送される。細胞小器官は様々な物質を含んでおり、細胞小器官の輸送によって生命活動の維持に必要な物質が細胞の隅々に行き渡る。細胞小器官にはミトコンドリア、メラニン色素顆粒、シナプス小胞などを含み、細胞小器官の輸送のメカニズム解明は医療や美容分野にとっても重要である。本研究では、非平衡確率過程模型の恒等式を細胞小器官の運動の解析に応用する事を目指している。H27年度は、ゼブラフィッシュの色素細胞内のメラノソーム輸送について進展があった。魚類は環境に応じて体表の色を変化させるが、この変化は色素細胞内のメラノソームがモータータンパク質に輸送され凝集または拡散することで生じる。この輸送に関連して、メラノソームが何個のモーターによって協同的に輸送されているか、を問題にした。ゼブラフィッシュのウロコから色素細胞を採取し、培養した。ホルモンを添加することで人工的にメラノソームを凝集させた。凝集時のメラノソームの運動を明視野観察で高速に録画し、運動のゆらぎを正確に測定することに成功した。このようにして得られたメラノソームのタイムコースを非平衡確率過程模型の恒等式を利用して解析した。この解析より、1つのメラノソームを輸送するモーターの力を測定することが可能になり、力分布から1つのメラノソームが複数のモータータンパク質に輸送されていることが示唆された。今後は力-速度関係から輸送メカニズムの詳細を調べたい。
著者
田代 聡 堀越 保則
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

放射線被ばくにより染色体異常がどのようなしくみで形成されるか、という本質的な疑問については、未だに未解明のままである。さらに、低線量被ばくでも、高線量被ばくと同じしくみによる染色体異常を形成するのか?などの疑問についても未だ明確な回答はない。我々は、紫外線レーザーを用いて放射線障害に特徴的なDNA二本鎖切断を誘導する紫外線マイクロ照射法を開発し、放射線誘発核内ドメインの形成制御機構の解明に取り組んできた。最近、従来の顕微鏡の数倍の解像度を持つ超解像顕微鏡が開発された。超解像顕微鏡に紫外線マイクロ照射法が可能な装備を備えた新しいシステムを用いることで、放射線誘発核内ドメインの超微細構造の解析が可能となる。また、次世代シーケンサーを用いることで、特定の染色体DNA領域の位置関係を分子細胞遺伝学的に解析することが可能となってきた。本研究では、超解像顕微鏡を用いた放射線誘発核内ドメインの動的構造解析を行ったところ、放射線照射細胞では代表的な放射線誘発核内ドメインとして知られているRAD51フォーカスの形が変わること、損傷ゲノムの一部はRAD51がもともと集積していた場所に移動すること、などを明らかにすることができた。また、生化学的アプローチでは、損傷シグナル因子ATMキナーゼによるクロマチン再構成因子複合体の活性制御により、損傷クロマチンへの適切なRAD51の結合を調節していることを明らかにした。さらに、RAD51タンパク質複合体に含まれる細胞核構造構築に関連する因子が、RAD51の機能制御を介して染色体異常形成の抑制に関与していることを明らかにし、論文発表している。さらに、本年度は染色体構造異常の形成に関与するクロマチン再構成因子複合体について、ATMキナーゼによる損傷依存的なリン酸化による活性制御を受ける構成因子を同定した。
著者
小田 裕昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

栄養・運動・睡眠は健康の要である。この3つの要素は生物時計という観点で見ると、統合的に制御できると考え、臓器間時計ネットワークの同調を介して代謝を正常化させて健康に結びつけるための分子的基盤を明らかにすることを目指す。現代社会では、肝臓時計の乱れによる代謝異常だけでなく、24時間社会による脳時計異常による睡眠障害、運動不足による筋肉時計異常による筋委縮など各臓器の異常が指摘されている。シフトワーカーに限らず仕事柄不規則な生活をせざるを得ない人では、3つの要素が乱れ(脱同調)、生活習慣病の罹患者が多い。そのため特に、摂食タイミングを生物時計のキー同調因子として、脳時計と肝臓時計、筋肉時計のネットワークの同調(脱同調)機構を明らかにする。まずは摂食リズム崩壊モデル動物を用いて、摂食リズムの崩壊が肝臓の時計遺伝子ならびに脂質代謝関連遺伝子の発現を異常にさせるメカニズムを検討した。これらの異常が転写レベルで起きているのか検討する目的で、成熟mRNAのプロセッシングを受ける前の新生mRNA量を測定することにより、転写速度とした。そうしたところ、ほとんどのmRNA量の変化は転写レベルで制御されていることが分かった。しかし、転写レベル以降の、たとえばmRNAの安定性によりリズムが形成される遺伝子もあることを見出した。これは、新しい概日リズムの制御機構である。それが食事によって影響を受けることは新しい知見である。筋肉の時計を見るために、生活不活動モデルラットを用いて筋肉時計と筋肉活動、筋萎縮の関係を調べた。この実験は、食事による筋肉時計へ与える影響を調べるための基礎的実験として行った。生活不活動モデルラットの筋肉は萎縮し、筋肉時計にも異常が生じることが分かった。さらに筋細胞の分化に関わる転写因子群が筋肉特異的な時計遺伝子として機能している可能性も分かった。
著者
山本 敏充 斎藤 成也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2012-04-24)

昨年度、日本人に特化した約68万個のSNP解析である「ジャポニカ・アレイ」を用いた受託解析へのゲノムワイドなSNP解析の変更が4月に承認された。そこで、東芝ヘルスケア社に、ハポン姓の人々のDNA試料の解析を委託したところ、10サンプル以上に解析に適するクオリティがないものが判明したので、それらのDNA試料の再抽出を依頼した。変更のため必要となった、スペインのアンダルシア地方の人々の対照DNA試料50サンプル、及びハポン姓の人々の再抽出サンプルを、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学ゲノム解析センターに5月に訪問し、入手した。最終的に6月にハポンDNA試料96サンプルを委託し、7月に解析データを入手した。それらのデータは、共同研究者である斉藤研究室で、データベースから入手したスペイン人などのSNPデータ(共通のSNPのみのデータ)と共に主成分分析などの解析が行われた。その間に、スペインの対照DNA試料を定量したが、量的に不足し、さらにクオリティも低かったので、再度入手を依頼し、8月末から開催された国際法医遺伝学会で受領することを約束した。しかし、現存試料は、それ以外はなく、残りのさらに質のよくなかった5サンプルのハポン姓サンプルのみを受領した。その後、2月末から解析センターを訪問し、新たに質のよい50サンプルを入手した。その間に、この解析アレイを開発した東北大学メディカル・バンクのデータバンク(ToMMo)に保存されているデータの活用についても検討したところ、了解を得た。そこで、東北大学のゲノム解析チームとの共同研究について、名古屋大学医学部倫理委員会に変更申請・承認後、11月に共同研究契約申請を行い、2月に契約が承認・締結された。従って、SNP解析変更、及びDNA試料の入手が困難を極めたので、本研究遂行のため、基金分を残し、1年期間延長の申請をし、承認された。
著者
佐藤 努 廣吉 直樹 小暮 敏博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

28年度は、本研究の検討項目のうち、福島第一原子力発電所事故で環境中に放出されたセシウムを吸着・固定している粒子の性状や鉱物を明らかにし、汚染土壌からその鉱物フラクションを効率よく分離して土壌の減容化を可能とする分級方法の検討を継続した。その結果、以下のことが明らかとなった。①産地の異なる土壌からセシウムを固定化している粒子を分離し、高分解能透過型電子顕微鏡で詳細に観察したところ、放射性セシウムを多く含有している粒子は、鉱物の凝集態、有機物と鉱物の複合体、風化雲母片、ガラス質の球状物質に大別されることが明らかとなった。ただし、球状物質は土壌中に発見するのが困難なことから、全体への寄与は大きくないと考える。②濃集土壌粒子の内部を観察したところ、吸着・固定している鉱物は、バーミキュライト成分を含む風化雲母と鉄スメクタイトであり、多くは風化雲母であった。これらは、放射性セシウムを用いて、実際の放射性セシウム濃度と同じくらいの溶液で吸着実験をしても同様な結果が得られ、風化雲母が最も選択性が高く、風化雲母を排除して実験すると、鉄スメクタイトに選択濃縮することも判明した。③セシウムを多く含有している粒子中で風化雲母と鉄スメクタイトは、構成粗粒鉱物の周りに付着している「核岩タイプ」と細粒鉱物どうしが有機物とともに結合している「団粒タイプ」として存在していた。④上記の両タイプともに、高度に分級するためには、ターゲットとなる鉱物を剥離して分散することが重要であり、そのためにはポールミルや超音波等が有効であることが判明した。また、実汚染土壌を用いてそれらの最適分級条件を検討した。⑤高度に分級することによって、放射性セシウムが濃集している細粒部は集められるが、粗粒部分に残留する風化雲母は磁選によって効率的に回収できることが判明し、その最適分級条件を検討した。
著者
杉浦 和子 水野 一晴 松田 素二 木津 祐子 池田 巧
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

1.ストックホルムの民族学博物館に所蔵されている資料を調査した(杉浦、松田、水野、木津、池田、協力:Håkan Wahlquist氏(ヘディン財団))。ヘディンの原資料(スケッチ、新聞記事のスクラップブック、フィールドノート、地図の下図など)の閲覧と複写、撮影を行った。京都大学所蔵のヘディンの絵画模写作品の原画の所在を確認し、現存するものについては、記入されたメモの筆跡を照合した。模写60点のうち、49点の原画を確認できた。2.チベット調査を行った(池田)。ラサ、シガツェ、ギャンツェでヘディンが踏査したルートの確認とスケッチした地点と事物を比定し、写真を撮影した。地形や風俗、建物等の現況調査ならびに民族誌・チベット史等に関する文献資料を閲覧・収集した。チベット寺院内陣の様子、寺院の中庭、建物、衣装の装具、武器などで、ヘディンの描いたものと同じあるいは同種のものを確認できた。3.ヘディンの京都滞在期間中の交遊資料の調査を行い、鹿子木孟郎夫人の日記や知人名簿、新聞記事を収集した(木津、杉浦)。鹿子木夫人の明治41年の日記に、鹿子木がヘディンの歓迎行事で案内役を務めたこと、模写に画学生たちが鹿子木の自宅に来たことが記されていることを確認できた。また、近代学術史・京都洋画史・チベット史・探検史などの関係文献の収集と整理を行った(松田、水野、木津、池田、杉浦、協力:平野重光(元京都市立美術館学芸部長))。4.ヘディンとチベットにかかわるシンポジウムおよび企画展の日程や内容を検討し、準備を進めた(全員)。
著者
本多 真 児玉 亨
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

眠気と脂質代謝:カルニチンの効果主観指標を用いたL-カルニチン過眠改善効果について、奏功基盤を動物での基礎検討と客観指標を用いた臨床研究で検討した。L-カルニチンは中枢・末梢ともにCPT1活性指標を改善させ、ドパミン系などの脳内の遺伝子発現や代謝産物を変化させ、実際に休息期特異的に睡眠の増加をもたらした。臨床研究と共通し睡眠段階遷移指標での睡眠安定化作用が示唆された。4割程度にL-カルニチン反応群が存在し、その判別法を検討した。
著者
小谷 明 荒起 清 荒木 清
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

フィチン酸金属錯体の構造-特性の基本的性質を明らかにし,これまでに全く未解明なフィチン酸金属錯体の持つ特性が生体系でどのように利用されているかを解明した。1.フィチン酸と金属イオンとの相互作用これまでに得た金属錯体の存在種,その安定度定数,さらにその配位構造を説明できる統一的見解を得た。すなわち,生理的条件下では,リン酸間距離の大きなリン酸部位に金属が配位し,残る未配位のリン酸はプロトンがついてリン酸間水素結合により錯体全体が安定化する。2.フィチン酸加水分解酵素フィターゼ酵素活性の金属イオン依存性生理活性発現の源である受容体結合のモデルとして,近年解明されたフィチン酸加水分解酵素フィターゼを用い,各種金属イオン共存下でフィチン酸の加水分解反応速度を調べ,基質認識,反応活性について各種金属イオンの及ぼす役割について統一的見解を見出すことができた。結果的には金属錯体を基質とする酵素反応であることが明らかになり,金属酵素以外の金属基質という新しい世界を切り開くことができた。3.フィチン酸-金属錯体の生理活性フィチン酸ナトリウムを用いた研究から報告されている抗ガン活性について,各種金属錯体について抗ガン活性を調べ,生体内で金属錯体として生理活性が発現されていることを明らかにし,これまでに報告されているフィチン酸ナトリウムの抗ガン活性がカルシウム錯体の可能性が高いことを示した。安定度定数を用いたシミュレーションから生理活性種がCa2(フィチン酸)H3と示唆された。生理活性機構として,細胞内液の銅濃度ESR測定から,フィチン酸金属錯体の膜通過の容易性が示された。本研究で得られたフィチン酸金属錯体の知見は,フィチン酸の医薬品への応用のみならず,環境に無害な特性を有するフィターゼの農業,工業的応用など各種応用への基礎的知見を提供することがと期待される。
著者
桝井 文人 宮越 勝美 伊藤 毅志 山本 雅人 松原 仁 柳 等 竹川 佳成 河村 隆
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

今年度は,戦術要素の収集と解析および戦術推論手法の開発,デリバリーロボットおよびスウィーピング動作測定技術の精緻化に取り組んだ.以下,各項目別に報告する.(1)戦術要素の収集と解析においては,新たに日本選手権,ユニバーシアード選手権での開催試合情報を追加して分析を行い,チームショット率と得点の関係,ポジション別ショット率と得点の関係についての知見を得た.(2)人間判断要素の収集と解析においては,試合中に発生し得るストーン配置画像を提示し,状況に対する選択ショットとその思考過程を調査する認知心理学実験を実施した.また,戦略書に基づきデジタルカーリングAIにおける序盤定石の構築を行った.(3)ストーン挙動要素の収集においては,昨年度に開発した移動型ストーンロボットを用いて赤外線画像処理に基づくストーン動作解析手法の有用性を検証する評価実験を実施した.その結果,複数のカメラを用いることで一定範囲内の誤差で移動するストーンの位置測定が可能であることがわかった.氷上実験については,キャリブレーション用シートを氷上に設置する際に氷上に影響を与え得るという課題が顕在化したため実験は見送った.(4)戦術推論手法の開発では,ストーンの配置状態を離散化した座標で表現し,あるショットによって生成される結果に関する評価値の期待値によりショット選択を行う人工知能アルゴリズムを提案し,デジタルカーリング上で実現した.(5)デリバリーロボットの開発では,ロボットについては,カーリングストーンの滑走時の荷重分布測定を行った.(6)スウィーピング計測装置の開発では,スウィーピング計測については,カーリング場での実証実験結果に基づき測定性能の精緻化を進めた.
著者
早島 大祐 大田 壮一郎 衣川 仁 谷 徹也 坪井 剛 小原 嘉記 山田 徹
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

中世後期の都鄙関係の実態を分析するにあたり、この時期に台頭した守護の動向を押さえる作業は重要である。 しかし近年進められた守護所研究などにおいて、守護所の国支配の中心としての機能は低いと指摘されている。本研究ではこれまで全く注目されていなかった、守護が分国に創建した菩提寺(国菩提寺)の役割に注目することで、守護の分国支配の実態、ひいては分国と京のあいだの都鄙交通の実態を解明することが目的である。具体的には禅僧の移動や荘園の代官請などを通じて、京ともつながっていた国菩提寺の実態を明らかにし、守護 所研究の成果ともつきあわせることで、守護による分国支配が複合的に進展していたことが明らかになると予想されるだろう。最終年度にあたり本年度は、成果の集約にむけて、報告会などを中心に活動した。(1)最終の調査旅行を8月23~24日にかけて行った。調査地は北陸方面だった。(2)成果執筆会議を9月1~2日にかけて京都女子大学にて開催した。(3)さらに上記日程で報告できなかった関係者には、10月9日に報告を行った。(4)以上、([2)~(3)の報告と質疑を経て、最終報告会を12月26~27日に開催した。以上の検討を経た上で、『中近世武家創建禅院の研究』(仮題)を2019年度に刊行予定である。
著者
富永 一登 川合 康三 釜谷 武志 浅見 洋二 和田 英信 緑川 英樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

『文選』の伝承から見た文学言語の型の形成と継承を追究するための基礎作業として、まず『文選』詩編(12巻分)の訳注作業を完成した。原稿作成は25年度内に完了したので、近々にこれを出版社から刊行し、広く社会に公表する予定である。また、『文選』所収の主な詩人の経歴や作品についてのコメントをまとめた。これも刊行予定の訳書に付載する。更に近年の『文選』研究の整理や唐代宋代の詩人への『文選』の影響についても、学術雑誌などに掲載し、著書としても刊行した。また、台湾大学の柯慶明・蔡瑜の両教授を招聘して『文選』の文学言語の継承に与えた影響について討論を行い、研究成果の国際的交流を行った。