著者
下田 好行 小松 幸廣 岩田 修一 四方 義啓 吉田 俊久 榊原 保志 岩田 修一 四方 義啓 榊原 保志 山崎 良雄 長谷川 榮 吉田 武男 黒澤 浩 永房 典之 赤池 幹 青木 照明 岸 正博 中村 幸一 岡島 伸行 熊木 徹
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

知識基盤社会を生きるために知識情報を熟考・評価し、表現・コミュニケーションしていく「キー・コンピテンシー」を育成する学習指導法の枠組みを開発した。また、この枠組みにそって授業実践を小学校と中学校で行った。その結果、この学習指導法の枠組みの有効性を確認することができた。
著者
長田 謙一 楠見 清 山口 祥平 後小路 雅弘 加藤 薫 三宅 晶子 吉見 俊哉 小林 真理 山本 和弘 鴻野 わか菜 木田 拓也 神野 真吾 藤川 哲 赤塚 若樹 久木元 拓
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来プロパガンダと芸術は、全体主義下のキッチュ対自律的芸術としてのモダニズムの対比図式のもとに考えられがちであった。しかし本研究は、両者の関係について以下の様な新たな認識を多面的に開いた:プロパガンダは、「ホワイト・プロパガンダ」をも視野に入れるならば、冷戦期以降の文化システムの中に東西問わず深く位置付いていき、芸術そのもののありようをも変容させる一要因となるに至った;より具体的に言えば、一方における世界各地の大型国際美術展に示されるグローバルなアートワールドと他方におけるクリエイティブ産業としてのコンテンツ産業振興に見られるように、現代社会の中で芸術/アートはプロパガンダ的要因と分かち難い形で展開している;それに対する対抗性格をも帯びた対抗プロパガンダ、アートプロジェクト、参加型アートなどをも含め、芸術・アートは、プロパガンダとの関係において深部からする変容を遂げつつあるのである。
著者
高橋 淳 中辻 憲夫 笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

我々は、2005年5月から再生医科学研究所で樹立されたヒトES細胞(KhES-1,-2,-3)の解析を行っている。これらの細胞株からもドーパミン産生ニューロンが誘導され、培地中にドーパミンを放出しうることを確認した。パーキンソン病モデルカニクイザルの線条体に移植を行ったところ、3頭中1頭で腫瘍形成が認められた。このケースでは、PETスキャンにおいて腫瘍部位に限局して糖代謝の亢進が確認され、細胞分裂を示すfluorothimidineの取り込み上昇も認められた。組織診断では、未分化細胞の増殖が限局的にみられたが、奇形種を裏付ける骨・軟骨、皮膚、筋肉、消化管などの形成は認められなかった。fluorothimidine陽性部位に一致して、ES細胞のマーカーであるOct3/4陽性細胞の集積が認められた。移植細胞の解析を行ったところ、分化誘導期間の違いにより、腫瘍形成がみられたケースでは移植細胞の中にES細胞が混入していたのに対し、腫瘍形成がなかった2頭ではES細胞の混入はみられなかった。つまり、移植細胞へのES細胞混入が腫瘍形成の原因であると考えられた。また、MRIやPETは腫瘍形成を確認する上で有用な手段であることが確認された。これらの結果は現在投稿準備中である。移植細胞による腫瘍形成について、我々はマウスES細胞と正常マウスを用いて検討を加え、分化誘導後に神経系細胞のみを選別して移植することによって腫瘍形成が抑えられることを明らかにした(Fukudaら)。これらの研究によって、安全で効果的なES細胞移植を行うためには、神経幹細胞の純化が必要であることが明らかとなった。現在はヒトES細胞の選別方法開発に取り組んでいる。
著者
高橋 淳 中辻 憲夫 笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

我々は、ES細胞由来神経系細胞移植によるパーキンソン病治療法の開発を目指して研究を進めているが、臨床応用を目指すにはヒトと同じ霊長類を用いた実験が必要不可欠である。そこで、カニクイザルES細胞から誘導したドーパミン産生神経をカニクイザルパーキンソン病モデル脳に移植し、行動解析を行った。カニクイザルES細胞をPA6という間質細胞の上で約2週間培養すると、ほとんどの細胞が神経幹細胞様になる。この細胞をsphere法で培養しFGF2とFGF20を加えると、全体の約半数がニューロン、その4分の1がドパミン神経に分化するようになる。MPTPの静脈内投与でカニクイザルパーキンソン病モデルを作成し、その線状体にES細胞由来ドパミン産生神経(前駆細胞)を移植すると移植群においては徐々に神経脱落症状の改善がみられるようになり、移植後10週目に有意な改善が認められた。その後、F-dopaの取り込みをPETにて評価した。コントロール群においてはF-dopaの取り込みが低下しているのに対し、移植群においては有意な上昇がみられ、移植細胞がドーパミン神経として機能していることが確認された。PET後に脳切片の染色を行った。移植に先立ち細胞をBrdUでラベルしたが、移植群の線条体においてBrdU陽性細胞の生着がみとめられた。さらにTH陽性細胞やDAT陽性細胞も確認された。これらの多くはBrdUと共陽性であり、移植されたES細胞由来のドーパミン神経であると考えられた。また、腫瘍形成は認められなかった。カニクイザルES細胞から分化した中脳ドーパミン産生神経の移植によってカニクイザルパーキンソン病モデルの行動が改善したことは、同じ霊長類であるヒトにもこの方法が適応できる可能性を示唆する。ただし、実際の臨床応用の前には1年以上の長期経過観察によって、その効果と安全性の検証が行われなければならない。と同時に、ヒトES細胞からの中脳ドーパミン産生神経誘導とその移植実験が必要である。
著者
清水 英寿 萩尾 真人 吹谷 智 岡野 邦宏 宮崎 均 石塚 敏
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、腸内細菌代謝産物であるスカトールが、ラット個体、培養腸管細胞、培養肝ガン細胞、それぞれに与える影響について解析を行った。結果としてスカトールは、ラット個体においては、胆汁酸代謝の撹乱を誘発させ、肝臓や回腸での遺伝子発現、そして腸内細菌叢を変動させる事が明らかとなった。また、腸管細胞を用いた解析では、スカトールがAhRを介して細胞死を導く事が確認された。さらに培養肝ガン細胞では、スカトールはERKの活性化を介して細胞増殖を導く事が示唆された。以上の本研究結果から、腸内におけるスカトールの産生は、消化管機能の異常を誘発させ、さらに消化管疾患の発症・進展へも関与する可能性が示された。
著者
天野 要 岡野 大 土屋 卓也 緒方 秀教 杉原 正顕 遠藤 慶一
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

代用電荷法を適用し,非有界な多重連結領域から,(a)平行/共線スリット領域,(b)直線スリット領域,(c)円弧放射スリット領域,という正準スリット領域への数値等角写像の方法を提案し,その有効性を数値実験的に検証した.また,代用電荷法の性質を調べ,周期Stokes方程式に対する基本解法を提案した.これらの研究は理工学への応用上も重要である.本研究の主題に関連の深い特異積分方程式,悪条件連立1次方程式の数値解法についての基礎的研究も進められた.
著者
芦沢 真五 森 利枝 花田 真吾 米澤 彰純 太田 浩 関山 健 新見 有紀子 吉川 裕美子
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

29年度は研究会を連続しておこなった。11月18日(土)に実施した公開研究会では、文部科学省の進藤和澄国際企画室長(高等教育局高等教育企画課)に加えて、毛受敏浩(公益財団法人日本国際交流センター執行理事)、Chris Burgess(津田塾大学教授)、吉本圭一(九州大学主幹教授、第三段階教育研究センター長)の各氏による講演を行い、意見交換をおこなった。定住外国人、高度人材を受け入れていくプロセスに、NQFやFCEなどのシステムが整備されていく必要があることが提言された。12月7日(木)に実施したセミナーでは、「日本におけるFCE発展の可能性をさぐる」と題して、太田浩(一橋大学国際教育センター教授)、森利枝(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 研究開発部教授)両氏による講演を行い、12月5日に閣議決定で参加が決定した東京規約に関連して、FCEの運用にかかわる議論を深めた。さらに、3月には1週間にわたって欧州のFCE機関を訪問し、各国におけるFCEの運用と実務にかかわる調査をおこなった。まず、英国における外国成績評価(FCE)の公式な認証機関であるUK-NARICを訪問し、Cloud Bai-Yun (UK-NARIC 代表)をはじめ担当部門スタッフと面会した。FCEの実務、運用、評価ガイドライン、スタッフ職能開発などについて調査をおこなった。FCE評価実務とUK-NARICのリソースをどう活用しているかを分析した。次にアムステルダム自由大学を訪問し、入学審査部で外国成績をどのように判定しているかのヒアリングをおこなった。オランダにおけるFCE専門機関であるNUFFICを訪問し、NUFFICとしてのFCE業務、大学への情報提供のプロセス、他のFCE機関との国際連携、ワークショップ等の運営などの実情をヒアリングした。同様にドイツにおいてもFCE機関でのヒアリングを実施した。
著者
柳原 正治 植木 俊哉 明石 欽司 岩本 禎之 三牧 聖子 丸山 政己
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019年5月に『世界万国の平和を期して―安達峰一郎著作選』(研究代表者が編者)を出版した。公表された学術論文や随筆のみならず、外交官として書き記した口上書や調書や報告書、日露戦争の捕獲審検所評定官としての調査書や判決、国際連盟や万国国際法学会での報告書、常設国際司法裁判所所長としての報告書や命令・勧告的意見に対する反対意見などを一冊にまとめた、安達峰一郎の最初の著作集である。フランス語を主とする欧文著作(書簡を含む)も巻末に一括して掲載した(100頁あまり)。この著作集の出版によって、安達の業績が内外に一層広く知られることとなることが期待される。また、6月15日には東京で、安達峰一郎記念財団の主催で「よみがえる安達峰一郎―世界が称賛した国際人に学ぶ」という記念シンポジウムが開催された。200名近くの参加者を得て、安達の思想と行動が現在の混迷する国際社会にとって持つ意義について、熱心な討論が行われた。研究代表者が基調報告を務め、複数の研究分担者も個別報告を担当するとともに、パネルディスカッションにも参加した。また、国際法協会日本支部が主催して、2019年4月27日に「日本における国際法学の誕生」という共通テーマでの研究大会が行われた。研究分担者の三牧が「大戦間期の戦争違法化と安達峰一郎」というテーマで報告を行った。海外の史料館の一次史料の収集作業も引き続き行った。ベルギーの外交史料館で再度の一次史料の収集作業を行った。これまでほとんど知られていない、黒澤二郎関連の史料をかなりの数収集できた(“Correspondance politique Japon”や13.584など)。
著者
平井 浩文 一瀬 博文 長井 薫 亀井 一郎
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

世界中で蜂群崩壊症候群や人類に対する悪影響が危惧されている難分解性ネオニコチノイド系殺虫剤(NEOs)が白色腐朽菌により分解可能であるとともに毒性も除去可能であることが明らかとなった。また、本分解反応にはシトクロムP450が関与していることも突き止めた。さらにNEOsのピリジン環を資化可能な細菌を選抜し、白色腐朽菌との共培養を行ったところ、NEOsを効率的に分解可能であることが示唆された。
著者
内海 愛子 村井 吉敬 鎌田 真弓 加藤 めぐみ 飯笹 佐代子 田村 恵子 永田 由利子
出版者
大阪経済法科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

アラフラ海を中心とする海域に着目し、1)真珠やナマコ等の海洋資源をめぐって織りなされてきた人の移動の諸相を、戦争の影響や国際関係、特に日本、オーストラリア、インドネシア間の相互の関係を踏まえながら明らかにし、2)それを通じて、明治以降から現代にいたる、国家の枠組みからではとらえきれないこの地域の位置づけと意味を探るとともに、3)海域(交流史)研究の新たな展開に向けた論点と可能性を提示した。
著者
五十嵐 暁郎 田島 夏与 松本 康 石坂 浩一 藤林 泰 イ ヒョンジョン ユン イルソン 金 相準 李 国慶 武 玉江
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

都市空間の再編が進む日中韓の北東アジア3国の大都市について実証的、理論的な分析を行った。3国の状況について現地調査や、研究者に対するヒアリングを行って状況を把握した。理論的には、グローバル都市、居住者意識、コミュニティ、住民運動、市民参画、創造都市など、社会科学的分析視角によるアプローチを行った。シンポジウムなどを重ねることによって、こうして獲得した理解を検討し、この主題に関する分析をまとめた。この主題について社会科学的なアプローチは少なかったが、今後の展開にとって先駆的な研究を示すことができたと思う。
著者
越野 剛 田村 容子 村田 裕和 今井 昭夫 梅津 紀雄 杉村 安幾子 久野 量一 坂川 直也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

一年目は「前期社会主義」と「人の移動」、二年目は「後期社会主義」と「翻訳・翻案」、 三年目は「ポスト社会主義」と「ノスタルジー・記憶」をテーマにした研究会を国内で開催 する。各年度ごとに1名程度の海外の関連分野の専門家を招へいするほか、最終年度には日 本国内で国際シンポジウムを開催する。研究成果は国内外の学会で積極的に発表し、日本語および英語で論集として刊行する。
著者
吉川 裕之 八杉 利治 川名 敬 松本 光司 松本 光司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

現在の子宮頸癌予防ワクチンはHPV型特異的で、HPV16/18感染だけを予防するので、子宮頸癌罹患の減少は最大70%である。HPV型共通であるL2領域の複数のペプチドをL1とともに発現させ、すべての発癌性HPVによる子宮頸癌を予防可能なHPVワクチンとして開発した。今後、臨床試験が必要である。
著者
小関 武史 深貝 保則 玉田 敦子 坂本 貴志 武田 将明 松波 京子 川名 雄一郎 長尾 伸一 屋敷 二郎 福島 知己 福田 名津子 逸見 竜生 坂倉 裕治 隠岐 さや香 飯田 賢穂
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

18世紀西洋の啓蒙は、科学、技術から政治思想に至る広範な領域で、19世紀以後の知の原型を与えたと考えられてきた。また20世紀後半以後の「近代」批判に対しては、啓蒙の現代的意義が主張されてきた。他方近年の啓蒙研究は、膨大な資料の丹念な発掘と読解、あるいはデジタル化などの新技術に基づき、当時のテクストを時代の文脈の中に位置づけ、多様で複雑な知の在り方を明らかにしてきたが、現代思想における近代批判や啓蒙の再評価に応える統一的な像を提起するには至っていない。本研究は啓蒙研究の現段階の方法と成果を総合し、「浮動する知の境界」という視点から多方面の貴重資料の分析を行い、啓蒙の知の総合的な解釈を試みる。
著者
木下 政人 豊田 敦 家戸 敬太郎 吉浦 康寿 岸本 謙太 村上 悠 片山 貴士 鷲尾 洋平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

養殖魚の育種はほとんど行われていないのが現状である。伝統的な選抜育種法による育種は、長期間を要するという欠点があった。そこで、ゲノム編集法の一つであるCRISPR/Cas9を用いて、マダイとトラフグにおいてミオスタチン遺伝子を破壊することで筋肉増量品種作製を試みた。ミオスタチン遺伝子のエキソン1内の配列をターゲットを設定し、single guideRNAおよび Cas9 RNA を人工授精した1細胞期の受精卵にマイクロインジェクション法により導入した。その結果、いずれの魚種においても高効率でミオスタチン遺伝子破壊に成功し、筋肉量を増加した個体の作製に成功した。
著者
野々山 恵章 今井 耕輔
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

先天性免疫不全症である細網異形成症、GATA2欠損症、Wiskott-Aldrich症候群、Chediak-東症候群の患者由来iPS細胞を樹立した。これらの疾患由来iPS細胞の分化障害を、in vitro 分化系を用いて検討した。その結果、細網異形成症では血液前駆細胞の代謝障害があること、GATA2欠損症では造血幹細胞への分化障害があること、Wiskott-Aldrich症候群では血小板への分化障害があることを明らかにした。また、iPS細胞の遺伝子変異をゲノム編集により正常化して分化が正常化させ、RNA Seq.を行いmRNA発現が異なる遺伝子群を見出し、分化因子の同定に向けた実績をあげた。
著者
古久保 さくら 丸山 里美 高松 里江 須藤 八千代 山口 薫 茶園 敏美 小川 裕子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、1947~1997年に大阪府内に存在した婦人保護施設「生野学園」の50年間の記録・資料を主資料として研究を進めることにより、戦後日本の女性の貧困・困窮の実態について明らかにした。婦人保護施設は売春防止法により規定された施設であるが、その施設開設初期段階から家族のなかに居場所を失った多様な困難を抱える女性たちを受け入れ支援する場として存在したことが明らかになった。また、同時に「売春」と言われてきた行為について、性暴力・恋愛との連続性、言い換えれば客体化された被害者としての側面と主体化された行為者としての側面から概念を再検討する必要性も見えてきた。
著者
中村 政明 坂本 峰至 蜂谷 紀之 村田 顕也
出版者
国立水俣病総合研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

我々は、成人のMeHg曝露による健康影響を調査した。被験者は、日本の伝統的な捕鯨の発祥地の太地町の住民194人。毛髪水銀濃度の幾何平均が14.9μg/gで、鯨肉摂取量と有意に相関したことから、太地町住民が鯨肉摂取によるMeHg高曝露群であることが示唆された。毛髪水銀濃度と神経所見の間に有意な相関はなかった。また、MRSで、感覚野と小脳のNAA/ Cr比が正常だったことから、明らかな神経細胞の減少がないことが示唆された。全血水銀とSe濃度の有意な正の相関がみられ、全血水銀/Seモル比は1以下だった。これらの所見は、充分なSe摂取がMeHg曝露の有害影響がなかった原因の1つである可能性を示唆した。