著者
大西 裕 品田 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 高橋 百合子 稲継 裕昭 遠藤 貢 川中 豪 浅羽 祐樹 河村 和徳 仙石 学 福島 淑彦 玉井 亮子 建林 正彦 松本 俊太 湯淺 墾道
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、選挙ガバナンスが民主政治に与える影響を、比較政治学的に解明しようとするものである。本研究は、国際比較と日本国内の自治体間比較を通じて、選挙管理という研究上の大きな空白を埋める。調査結果、常識的見解と異なる二つのことが明らかになった。第1に、選挙の公平性、公正性は、国際的に推奨される選挙管理機関の独立性のみでは達成できず、より複雑な扱いが必要である。第2に、日本では選挙管理委員会の業務は画一的で公平、校正であると考えられてきたが、委員会や事務局の構成のあり方によって大きく左右される。それゆえ、市区町村によってバリエーションが発生している。
著者
荒井 紀一郎
出版者
中央大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、選挙における「雪崩現象」のメカニズムを実験によって明らかにすることであった。実験の結果、多くの有権者は自分が少数派になる危険性を認識すると、それまで有していた政策選好とは異なっても多数派に従う傾向にあり、選挙を繰り返すことで、「選挙に勝つ」こと自体が有権者の投票目的になる可能性があることが示された。このことは、定期的に選挙を行うという現代の選挙民主主義システム自体が、「雪崩現象」を引き起こしやすくさせるメカニズムを有していることを示唆している。
著者
坂田 奈々絵
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

シュジェールの文書についての読解をすすめると同時に、シュジェールや同時代人たちの祭儀とそれにまつわる装飾観について、当時の資料を参照し、研究を進めた。加えてビザンツから擬ディオニュシオス文書がどのような形でパリへと伝播したのかという点について、主に翻訳史と祭儀における聖歌について着目した研究を行い、それを早稲田大学の中世ルネッサンス研究所にて発表した(6月)。またシュジェール研究の現在の世界的状況についてのまとめを、西洋中世学会にてポスター発表し(同月)、意見交換や幅広い交流の場を得た。8月から9月にかけて、イル=ド=フランス及びノルマンディ地方のゴシック建築群、またクリュニー修道院をはじめとしたブルゴーニュ地方のロマネスク-ゴシック過渡期における修道院建築/思想についての実地調査を行った。またそれと並行して、先の「祭儀」と「装飾」の関係性を中心とし、パリにて資料収集を行った。同時に、先年度に教父研究会にて発表した、サンドニ修道院における擬ディオニュシオス文書の受容とシュジェールのテキスト分析について資料等で補完し、雑誌『パトリスティカ』にて発表した。また12月には教父研究会・上智大学共生学研究会が共催する三日間にわたるシンポジウム「闇-超越と認識」の企画、運営をおこなった。3月には彼の同時代人であるクレルヴォーのベルナルドゥスの「清貧」に対する思想との対比について、単に「財貨」の問題だけではなく、そこには「祭儀」をそのようなものとして見るかについての違いがあったのではないか、と仮定し、原典と補助的な先行研究に基づいた研究を進めた。その結果については、美学会東部会にて発表、意見交換を行った。
著者
相澤 伸依
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年も昨年に引き続きミシェル・フーコーの方法論についての研究を進めた。特に、言語行為論に関する文献を読み進めた。また、フーコーとカントをつなぐテーマである啓蒙についての研究も進めた。カントの歴史哲学と啓蒙論は、フーコーが自身の方法を練り上げる上で強く意識していた事柄である。というのも、フーコーは自身の研究を現代における「批判哲学」と位置づけ、自己創出のプロセスとして系譜学を構想しているからである。哲学における自己創出という問題は晩年のフーコーの研究テーマでもあり、2008年に出版された講義録Gouvernement de soi et des autresでパーレシア概念の研究という形で展開されている。そこで、カントの歴史哲学について概観するとともに、フーコーの前述講義録に依拠しつつ、フーコーと啓蒙について研究会で発表した(社会哲学研究会)。フーコー研究と平行して、セックスの哲学についての研究も行っている。英米圏で展開されているPhilosophy of sexは、「性的」とはどういうことかといった原理的問いから売買春やセクシュアル・ハラスメントのような応用倫理学的な問いまで含んだ興味深い領域であるが、日本での受容はさほど進んでいない。そこで、本年はセックスの価値に関する研究や売春合法化論をめぐる議論の検討などを行い、発表した(京都生命倫理研究会)。
著者
箱田 徹
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究はミシェル・フーコー(1926-1984)の1960年代後半から1970年代にかけての著作を分析し、不連続性や差異を強調する独自の方法論が明確化される過程を論じた。とくにフーコーが言説分析にかかわる諸概念を実践の問題系に位置づけたことに着目し、この時期以降のフーコー思想にとって政治的主体性の問いが重要性を占めていくことを指摘した。また一連の思索の展開が「六八年五月」と深い関わりがあることも示した。
著者
水田 正史
出版者
大阪商業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

第1次世界大戦勃発時におけるイラン支配の態様はイギリスとロシアで異なっていた。第1次世界大戦中、イランでは幾度も政権交代が行なわれたが、それらの多くにおいて、諸外国による関与が見られた。イギリスがアラビア半島につくらせようとしていた国家は、その資金的中核としての銀行を必要としていた。1917年、ロシアで三月革命が起こり、ロシア軍がイランから撤退した。
著者
高橋 晋一
出版者
弘前大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

函館の華僑社会は現在32世帯からなっているが、国内の他の華僑社会に比べると規模が小さい。華僑は多くの場合、移住地においてチャイナタウンを形成し、そこに集住する傾向にあるが(例えば横浜や長崎)、函館の場合、華僑はチャイナタウンを形成せず、市内全域に分散して居住している。これは華僑の人数が少なかったこと、函館華僑のほとんどが行商を主な業とする福建省福清県の出身者であったことなどによるものであろう。現在、函館華僑が出身地である中国本土からもたらした伝統的な文化は大きく変化している-すなわち日本化の一途をたどっている。現在、函館華僑社会において行われている主な中国の伝統行事としては、4月の清明節、関帝の誕生祭(6月)、8月の中元節がある。清明節および中元節には、中国人墓地に集まって祖先供養の儀礼を行い、その後みんなで会食をする。これらの行事は華僑一世を中心に行われており、二世・三世といった若い世代の人は関心が薄く、参加率はあまり高くない。また儀礼は僧侶を呼んで仏教式に行うなど、儀礼内容の日本化が著しい。かろうじて紙銭を焼く風習、参拝方法などに中国方式をとどめている。このように伝統文化を失いつつある函館華僑社会では、「中国人」としてのエスニック・アイデンティティは特に若い世代で急激に薄れている。一世の人達は、中国語を話し、大陸に里返りするなど、中国とのつながりを失っていないが、二世、三世になると大きく価値観が違う。例えば一世は、華僑同志結婚するのが望ましいと考えているが、二世、三世ではそのような意識は低い。伝統行事も次第に形式化しつつある。このような世代間のギャップを超えて自分達の文化を改めて見直し、継承・創造していく道を見いだすことが、今後の函館華僑社会の大きな課題となっていくるものと思われる。
著者
米田 信子 永原 陽子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東ヘレロ語コミュニティにおける現地調査で収集したデータをもとに,声調,テンス・アスペクト・ムードの体系,複文の構造を中心にヘレロ語の記述研究を行った。その成果は論文および国内外の学会や研究会で発表した。また国際共同研究については,2010 年度に Lutz Marten 氏(ロンドン大学)とヘレロ語の共同研究を開始したほか,最終年度には英国から 2 名のバントゥ諸語研究者を招聘し,これまでの成果発表と共同研究の展開を目的とした国際バントゥ諸語ワークショップを大阪で開催した。継続的な国際共同研究へ展開させる十分な土台ができたものと思われる。
著者
木村 至聖
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、1974年に閉山した海底炭鉱・長崎市端島(通称:軍艦島)を事例として、文化遺産を地域社会の生活環境を維持するために積極的に活用しつつ、その価値をめぐる開かれた議論の可能性を探求することである。本年度は、1)初年度の成果の発表、2)継続フィールド調査、3)博士論文執筆に向けての理論的な発展を行なった。特に2009年は、1月に軍艦島を構成資産とする「九州・山口の近代化産業遺産群」がユネスコの世界遺産の暫定リストに掲載され、4月には長崎市が上陸観光を解禁するなど、軍艦島を取り巻く大きな状況の変化がみられた。そこで今年度は市役所、および軍艦島観光ガイドを行なうNPOへの聞き取りを重点的に行ない、上陸観光ツアー参加者に関するデータや最新の情報を入手した。また、これと並行して、端島(軍艦島)出身者への聞き取りも行なった。以上の調査研究を通して明らかになったのは、1)近年の産業遺産としての軍艦島の再発見・再評価の気運をうけての長崎市による上陸観光への環境の整備の一方で、2)軍艦島の保存・活用の具体的取り組みについては、主にNPOやツアーを取り扱う民間旅行会社、地元の業者によって担われていること、3)その取り組みは、元住民のなかでも比較的若い世代の人々や周辺地域の住民による活動が中心であり、元住民でも炭鉱で働いた本人などの関わりはイギリスなどの同種の事例と比較すると弱いことがわかった。こうした現状把握は、軍艦島が「観光資源」として活用されていくなかで、それがいかに意味づけられ、その意味が今後どのように展開・変化しうるのかを考える上で非常に重要である。本研究は、その一端を明らかにしたという点で、大きな成果を挙げたと言える。
著者
石崎 一樹
出版者
奈良大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度の活動として、John Wesley Harding氏へのインタビューを行うとともに、平成21年度に行ったOne Ring Zeroなどへの調査と合わせて研究成果を発表する準備を進めた。またUSインディーズ音楽の日本における発表元であるレコードレーベルのMoorWorksから発表されたOne Ring Zero、The Mountain Goatsなど、高い文学性が認められるアーティストの作品の解説、歌詞の対訳を行った。さらに本研究の発展的目標である文学の「翻案」に関わる研究の成果として、映画女優ジーン・セバーグの評伝(『ジーン・セバーグ』)を出版すると同時に、本研究成果発表予定の出版社との打ち合わせ、さらに音楽業界雑誌による一般読者、音楽リスナー向けの成果発表について、音楽ライター・編集者らとの交渉を進めた。本研究では"Lit Rock"なる未だ不分明な音楽ジャンルについて文学の側から定義を試みた。その結果、文学性を抱えることで知的な雰囲気を演出するインディーズ系音楽が若者の知的欲求を満たす教養主義的ツールとして機能していること、The Decemberistsなど大衆市場でも受け入れられるバンドがインディーズ系音楽から出現していること、文学の作家とコラボレートしつつ音楽作品を作成するOne Ring Zeroなどのアーティストが存在していることなどが明らかになった。いくつかの補助的調査とその集約整理を経て、平成23年度から25年度にかけて論文や図書、また一般読者向けの雑誌などを通じ成果を発表していく予定である。
著者
望月 哲男 越野 剛 後藤 正憲 鈴木 正美 鳥山 祐介 長縄 宣博 中村 唯史 沼野 充義 野町 素己 松里 公孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ヴォルガ地域の文化的な様態を、各流域の民族・宗教文化的特徴、および中世期から現代までの複雑な歴史的経緯を踏まえて整理し、包括的文化圏としてのヴォルガ地域像を解明した。ヴォルガ河の表象にみられる多義性・多面性とその変遷を、18世紀以降の文芸の諸ジャンルにおいて検討し、その特徴や文化的機能を分析した。近現代の宗教・文化思想を題材に、東西文化論におけるヴォルガ地域の特徴と機能を整理した。
著者
本郷 均
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

フランスの現象学者メルロ=ポンティの遺稿草稿(『眼と精神』の下書きやメモ類、およびゲシタルト派の芸術心理学者アルンハイムの読書メモ、『見えるものと見えないもの』関連の未刊草稿など)の調査を行った。また、晩年のメルロ=ポンティの他の芸術に関する考察に対して取っていたスタンスを、メルロ=ポンティ自身の前期の「セザンヌの懐疑」における考え方と比較・考察し、かつミシェル・アンリという哲学者の芸術論とを比較することなどを通して、メルロ=ポンティの後期存在論構想に対して、「芸術」が果たしている役割が根本的であることが確認された。
著者
金子 元久 矢野 眞和 小林 雅之 藤村 正司 小方 直幸 山本 清 濱中 淳子 阿曽沼 明裕 矢野 眞和 小林 雅之 濱中 淳子 小方 直幸 濱中 義隆 大多和 直樹 阿曽沼 明裕 両角 亜希子 佐藤 香 島 一則 橋本 鉱市 苑 復傑 藤墳 智一 藤原 正司 伊藤 彰浩 米澤 彰純 浦田 広朗 加藤 毅 吉川 裕美子 中村 高康 山本 清
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、1)日本の高等教育についての基礎的なデータを大規模調査によって蓄積し、その分析をおこない、2)それをもとに各国の高等教育との比較分析を行うとともに、3)その基礎にたって、日本の高等教育の課題を明らかにすること、を目的とした。とくに大規模調査については、(1)高校生調査(高校3年生4000人を、その後5年間にわたり追跡)、(2)大学生調査(127大学、約4万8千人の大学生について学習行動を調査)、(3)社会人調査(9千事業所、2万5千人に大学教育の経験、評価を調査)、(4)大学教員調査(回答者数約5千人)、(5)大学職員調査(回答者数、約6千人)、を行い、それをデータベース化した。
著者
松尾 智晶
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

就職活動を組織間協働と捉え、大学組織と企業組織が学生というリソースをやり取りするダイナミズムを捉える本研究においては、平成21年度の研究結果より各大学のキャリアセンターが対内外への情報提供及び調整機能を果たすことが明らかとなった。平成22年度の研究成果として、大学の機能拡充は大学教育の在り方自体の見直し経緯の一環として行われており、その方向性は学士教育の質保証に沿うことが明らかとなったものの、課題として1)教育と研究の重点配分が大学経営の方針によって大いに異なり一般化が困難、2)組織間協働の機能を果たす機関としてキャリアセンターを研究対象としたが実態は継続性・専門性の不足と責任範囲の不明確さ等により期待される役割を十分に果たせていないことが明らかとなった。
著者
高田 節子 田村 典子 塚原 浩子
出版者
広島県立保健福祉短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

田淵まさ代は日本の近代看護の黎明期にあって、大正10(1920)年英国ロンドンで開催された第2回国際公衆衛生看護講習会に参加した。大正9年赤十字社連盟第一回総会で、各国赤十字社の事業の1つに公衆衛生看護婦養成が決議され、各国から講習生を派遣し第1回は既に前年に開かれている。第1回は期日の切迫の為派遣は見送られたが、第2回講習会には女学校時代から英語の学習研鑚を積み英語力に堪能なまさ代が選ばれた。帰国後まさ代は講習会での学習とヨーロッパ各地の施設で見聞した看護事情を報告書にまとめ、いくつかの提言をしている。なかでも英語教育の必要性に関する提言は内地留学制度導入の契機となり、その制度で何人もの国際的に活躍した看護婦が生まれた。まさ代はまた救護看護婦や社会看護婦の養成に従事した。パリで事故に遭われた北白川宮妃殿下の看護に選ばれて派遣された。またシベリア派遣救護班の婦長としても活躍し、こうした功績に対して昭和12(1937)年ナイチンゲール記章が授与された。
著者
山本 秀一
出版者
和歌山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

長距離サイクリングにおける自転車の最適走行計画に関する2つの数学モデルを比較検討した.検討するのは,疲労度最小化走行計画モデルと,出力最小化走行計画モデルである.いずれものモデルとも,自転車の乗り手の属性,自転車の種類,道路勾配を考慮して,目的を最適化する走行計画を選択する.理論分析と数値シミュレーションによって, 2つのモデルと最適走行計画の分析を行った.
著者
澤田 肇 五十嵐 太郎 北山 研二 栗田 啓子 南 明日香
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

パリがどのようにフランスの、そしてヨーロッパの首都としての外観と機能とイメージを形成していったのかを多角的に問うことが、本研究の目的である。シンポジウムや研究会における発表と議論の過程で、自らにふさわしいイメージを自己増殖していくかのような都市風景を構築するパリのダイナミズムが、複数の異なる専門分野からのアプローチを組み合わせることで一層浮き彫りになることを確認できた。
著者
高井 正成 西村 剛 米田 穣 鈴木 淳 江木 直子 近藤 信太郎 内藤 宗孝 名取 真人 姉崎 智子 三枝 春生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ミャンマー中新世末~前期更新世の地層から、複数のオナガザル科化石を発見し、さらに共産する動物相の解析を進めてミャンマーの新生代後半の哺乳動物相の変遷を明らかにした。また東ユーラシア各地(中国南部の広西壮族自治区、台湾南部の左鎮、シベリア南部のトランスバイカル地域、中央アジアのタジキスタンなど)の新生代後半の地層から見つかっていた霊長類化石の再検討を行い、その系統的位置に関する議論を行った。
著者
速水 敏彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は自伝的記憶がその中に含まれる感情を介して動機づけにどのような影響を与えるかを明らかにすることである。自伝的記憶の内容は何らかの具体的経験であり、その認知としての過去の具体的経験が今後の行動をどのように動機づけるかを検討しようとするものである。3つの調査的研究が実施された。研究1は女子大学生のスポーツについての自伝的記憶と動機づけが、続く研究2ではスポーツ振興会に所属して現在もスポーツに励む(動機づけの高い)人と特にそのような会に所属しない看護婦のスポーツについての自伝的記憶が比較された。さらに研究3では大学生を対象にして英語学習についての自伝的記憶と現在の英語学習への動機づけの関係が検討された。現在スポーツをしている社会人は学生時代以降の自伝的記憶が多かったが他の群では学生時代の自伝的記憶が多かった。また英語学習に関しては学校外の出来事に関する自伝的記憶が意外に多いことがわかった。いずれの研究でも自伝的記憶の内容は正の経験として成功経験、正の対人関係、フロー経験、負の経験として失敗経験、負の対人経験、怪我・危険な経験の6つに分類された。正の経験の多くが正の感情を、負の経験の多くが負の感情を伴っており、正の経験は現在のその行動の動機づけを高めていたが、負の経験は必ずしも動機づけを低減させているわけではなかった。
著者
岡田 知子 後藤 隆太郎 重村 力 石丸 紀興 河野 泰治
出版者
西日本工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

復興計画策定にあたり、以下の3点に配慮するべきであることが明らかになった。(1)被災者の自立(自力での住宅再建と生業再建。そのための支援が必要である。)(2)地域社会の持続(地域コミュニティを大切にした復興を図ると共に、コミュニティ形成に深くかかわってきた生活空間構造を反映した計画)(3)伝統文化の継承(時間をかけて築いてきた街並みや景観、風景、信仰、祭り、暮らしのあり方などの価値を再認識し評価し継承する。)