著者
堀内 匡 加藤 聡 山崎 真克
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,認識対象の古文書文字の字種数を限定したうえで,認識部を大分類部と細分類部に分けた階層的な識別器を用いた高精度の古文書文字認識を実現した.さらに,古文書文字認識の応用として,高精度の認識手法を用いて,初心者が読解困難な文字に対する読みの候補文字を複数個提示することにより古文書読解を支援するシステムを構築した.
著者
辻井 潤一 米澤 明憲 田浦 健次朗 宮尾 祐介 松崎 拓也 狩野 芳伸 大田 朋子 SAETRE Rune 柴田 剛志 三輪 誠 PYYSALO SAMPO Mikael 金 進東 SAGAE Kenji SAGAE T. Alicia 王 向莉 綱川 隆司 原 忠義
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、文解析研究で成功してきた手法、すなわち、巨大な文書集合を使った機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、言語処理技術にブレークスルーをもたらすことを目標として研究を遂行した。この結果、(1)言語理論に基づく深い文解析の高速で高耐性なシステムの開発、(2)意味・知識処理のための大規模付記コーパス(GENIAコーパス)の構築と公開、(3)深い文解析の結果を用いた固有名、事象認識などの意味・知識処理手法の開発、(4)大規模なテキスト集合の意味・知識処理を行うためのクラウド処理用ソフトウェアシステムの開発、において世界水準の成果を上げた。(2)で構築されたGENIAコーパスは、生命科学分野でのテキストマイニング研究のための標準データ(Gold Standard)として、国際コンペティション(BioNLP09、BioNLP11)の訓練・テスト用のデータとして、採用された。また、(1)の研究成果と機械学習とを組み合わせた(3)の成果は、これらのコンペティションで高い成績を収めている。また、(1)と(4)の成果により、Medlineの論文抄録データベース(2千万件、2億超の文)からの事象認識と固有名認識を数日で完了できることを実証した。その成果は、意味処理に基づく知的な文献検索システム(MEDIE)として公開されている。
著者
神屋 郁子
出版者
九州産業大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

クラウドコンピューティングの普及により,計算機システムの処理能力を向上することが可能となった.しかし,クラウドコンピューティングを利用して向上可能なのは計算能力など局所的な処理能力のみであり,ネットワーク性能の向上は困難である.本研究では,複数のクラウドを組み合わせて利用可能な,サーバ広域分散配置システムを提案する.これによりネットワーク性能の向上を実現する.本研究では複数のクラウドにまたがるオートスケール機能を実現する.サーバの増設時期およびサーバの増設場所は,本研究で提案するクラウド選択ポリシーに基づき決定する.
著者
小寺 彰 伊藤 一頼 塚原 弓 玉田 大 林 美香
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本プロジェクトは、現代国際法学において流布し国家責任条文草案でも前提とされている、あらゆる義務違反は責任を生じさせるという「一般法としての国家責任法」を観念し得るのかという問題に、歴史的・分野横断的観点から迫ってきた。本年度は、プロジェクトの集大成として、国家責任法の歴史、実定法としての国家責任法の評価に関わる報告及び総括を行う研究会を行った。第一に、「第一次大戦以前の国際法・国際法学における『責任』―国際法における国家責任法成立」と題する報告が行われ、19世紀以前には、正戦論において戦争の正当原因の一つとして賠償義務の存在が想定されていたこと、また、正戦論を前提としなくとも、慣習法たる責任法が戦争回避の手段として否定されていたわけではないことが確認され、国際法の国家責任法が成立したのは19世紀後半以降であるという従来の理解に修正を迫ることが出来た。また、19世紀の学説、実行共に、その適用対象を外国人損害に限定していたわけではなく、そうした観念は、むしろ戦間期に成立した可能性が指摘された。第二に、「国際法における緊急避難の考察」と題する報告が行われ、国家責任条文草案成立以前の実行における緊急避難法理には、権利として存在する「自衛型」と義務違反の存在を否定する「不可抗力型」のものが存在し、一般法を志向し二次規範として機能する条文草案上の緊急避難とは異なり、事案に応じて一次規範のレベルで機能していたことが指摘された。本プロジェクトによって、「一般法としての国家責任法」という観念が歴史的に一貫して採用されてきたわけではないこと、また、「責任」の意味や効果も個別の分野によって変わりうることが浮き彫りにされたことが大きな成果と言える。このことは、一般法としての国家責任法を想定すること自体検証を要することを意味し、条文草案の評価及び国家責任法の解釈論に大きな影響を与えるものである。
著者
垂水 浩幸 林 敏浩
出版者
香川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、棋譜と局面単位のデータの組合せで構築される将棋データベースを開発して公開運用し、評価することが目的である。以下の成果を得た。(1)棋譜と局面の両方を基礎データとするデータベースとそれにアクセスするためのAPIを開発した。(2) データベースのコンテンツ収集を行い、2700万局面を超えるものになった。(3) 応用例として将棋感想戦支援システムを開発した。(4) 開発物について性能面と使いやすさの面から評価した。概ね妥当な評価が得られているが、より簡素で使いやすいものにしていくためさらに今後改善が必要である。(5) これらについて国内外で10回の発表を行った。
著者
平井 松午 溝口 常俊 出田 和久 南出 眞助 小野寺 淳 立岡 裕士 礒永 和貴 鳴海 邦匡 田中 耕市 渡辺 誠 水田 義一 野積 正吉 渡辺 理絵 塚本 章宏 安里 進
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、各地に所蔵される近世後期に作成された実測図もしくは実測図系絵図の作成法とその記載内容・精度の比較検討を行い、その上で近世実測図を用いたGIS 解析法の確立を目指したものである。その結果、徳島藩・金沢藩・鳥取藩では藩領全域をカバーする測量図がそれぞれ独自の手法によって作成されていたこと,また近世後期の城下絵図についても測量精度が向上して,これらの測量絵図が GIS 分析に適した古地図であると判断した。
著者
岩谷 素顕
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では、(1)紫~赤色LED作製技術(2) Moth-eye構造という光制御技術(3)レーザ剥離(4) Ag-Pd-Cu(APC)合金高反射率電極(5)透明電極(6)多層膜反射鏡(7)超高正孔濃度p型GaInN等の基盤技術を確立した。また、これらの技術を適用することによって新しいデバイスの実現を進めた。
著者
木村 真三 三浦 善憲 高辻 俊宏 三宅 晋司 佐藤 斉 遠藤 暁 中野 正博
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

チェルノブイリ原発事故発生から30年後の被災地域において、一年間にわたってホールボディカウンタによる住民の内部被ばく調査、陰膳法による食事調査を行い、関連を分析。内部被ばく調査では、予備調査で最大23,788Bq/body, 本調査で最大7,437Bq/bodyの放射能が確認され、冬季は高く、夏季は低い傾向がみられた。食事調査では、年間合計で1,446サンプルを分析。森林由来のキノコ、ベリー類や牛乳で高い放射能が確認され、最大は乾燥キノコで24,257Bq/kgであった。30年経過時点でも食事から放射性物質を取り込んでいる実態が明らかになり、食生活の観点から被ばく予防を行う必要性が確認された。
著者
長尾 桓 渡辺 建詞 冨川 伸二 三田 勲司 井上 純雄 杉本 久之
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

移植医療が現在直面する問題の1つにドナーの不足がある。すでに欧米ではドナー臓器の不足から移植を受けられないまま待機中に死亡してしまう患者が数多く出ている。この問題を解決する方策の1つとして異種移植、すなわちヒト以外からヒトへの移植が追究されている。しかし異種移植における免疫学的障害は大きく未だ動物実験の域を出ないのが現状である。今回の研究では大動物を用いて異種移植を行い、その長期生存を目指した。異種移植における免疫学的障害の最も大きいものは自然抗体の存在であり、その制御を如何に行うかが移植の成否にかかわる。筆者らは自ら開発した新しい吸着剤PC-1による自然抗体の吸着除去を試みたが、PC-1の吸着特異性に問題があり本法による抗体除去は困難であった。ついで既に確立した抗体除去法である血漿交換を行ったが、肝移植のような侵襲の大きい手術の前後に血漿交換を行うことは動物の循環動態を著しく悪化させ生存を難しくした。今後は吸着療法、血漿交換、免疫抑制剤の組合せによるより副作用が少なく、より効率のよい併用療法の検討が必要であろう。
著者
太田 純貴
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成22年度の主な研究業績は、フィールドワーク、口頭発表と論文、翻訳の三点である。フィールドワークは、採用一年次に予定していたナム・ジュン・パイクアートセンター(ソウル、韓国)での調査及び、メディアアートのフェスティヴァルである「メディアシティ・ソウル」(ソウル、韓国)、光州ビエンナーレ(光州、韓国)への参加である。ナム・ジュン・パイクアートセンターでは、メディアアート、ヴィデオアートの祖とされるパイクの作品の調査を行った。上記のフェスティヴァルに関してはメディアアート作品の分析及び、カタログなど文献資料の収集も合わせて行った。これらのフィールドワークの研究成果は、最先端の動向(作品と理論)の把握、芸術作品(主にパイク)の調査である。帰国後には京都大学でアウトリーチ活動として、これらの報告会を行った。口頭発表と論文では、ヴィデオアートと同時代の歴史的社会的文脈との関わりを分析した。具体的にはヴィデオアートとドラッグカルチャーとの関連性について議論を行った。特にLSDがもたらした感覚や意識の変容が、ヴィデオアートにおいても表象され、その際に生じるのが共感覚的な感性的体験ではないかということを、具体的にはリンダ・ベングリスの作品分析を通して、口頭発表および論文による理論的考察を行った。翻訳は、メディア考古学に関する英語論文と、英語で執筆された思想事典の項目のいくつかを担当した。前者は、書籍に収蔵されることが決定しており、日本では紹介の薄いメディア考古学という手法を導入するための端緒となる論文になると思われる。後者は、事典という性質上、哲学、美学など様々な理論的なアプローチを行うための基礎的な資料となることが考えられる。
著者
真野 弘明
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

ランカマキリは花に類似した姿をした擬態昆虫である。これまでに我々は、ランカマキリの体色を生成する色素分子としてキサントマチンを同定した。しかし、キサントマチン自体は昆虫において広く存在する色素であり、これがどのようにして特有のピンク色を形成しているのかは不明であった。本研究の生化学的解析により、キサントマチンには実は3種類の類縁分子が存在し、その組成の違いによって異なる体色が生成されると示唆された。また、電子顕微鏡を用いた観察により、ランカマキリ体内においてはキサントマチン分子が特殊な細胞内構造を取っていることが明らかになった。これらのメカニズムによって特有の体色が生成されると考えられた。
著者
鈴木 康夫 岡 徹也 根路銘 国昭
出版者
静岡県立大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、インフルエンザウイルスの受容体をイメ-ジした広域性インフルエンザワクチン開発の基礎の確立目的としている。本年度は本研究の最終年度であることを鑑み、当該研究をまとめ結論を引き出すことを考慮した。今年度は、昨年度に引き続以下の成果が得られた。(1)インフルエンザウイルスレセプタ-糖鎖を簡便かつ高感度で検索する新しい方法を開発した。(2)最も病原性が高く抗原変異による流行を続けているA型インフルエンザウイルスの全ての亜型(H1ーH13)のヘマグルチニン遺伝子の塩基配列、アミノ酸配列を決定することが出来た。また、同時に各ヘマグルチニン亜型が認識するレセプタ-糖鎖を明らかにした。これにより用いた全てのA型ウイルスヘマグルチニン亜型のレセプタ-シアロ糖鎖の認識は、ヘマグルチニンの変異とは関係なくNeuAcα2,3(6)Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4Glcβ1ー(ガングリオシドシアリルパラグロボシドが持つ糖鎖)をレセプタ-として最も強く認識することを初めて明らかにした(Virology,in press)。(3)上記共通のレセプタ-糖鎖に対するモノクロ-ナル抗体(NS24)の作成に成功した。天然および化学合成ガングリオシド誘導体を用いて調べた結果、本抗体は上記の糖鎖のみと反応し、極めて特異性の高い抗体であった(J.Biochem.,109,354ー360,1991)。(4)NS24によりインフルエンザウイルスの赤血球膜レセプタ-への吸着は効果目に阻害されることが解った。この結果からNS24はA型ウイルス共通のレセプタ-シアロ糖鎖を認識する抗体であることが判明した。(4)さらにNS24に対する抗イデイオタイプ抗体を産生するハイブリド-マの作成を試み、いくつかの抗ウイルス活性を持つクロ-ンを得ることに成功した。この結果はNS24が広域インフルエンザワクチンとして応用可能であることを示すものであり、ウイルス受容体をイメ-ジした広域性ワクチンの開発が可能であることを実証できたと考えられる。
著者
五條堀 孝 根路銘 国昭 森山 英明 溝上 雅史 星野 洪郎 下遠野 邦忠 森山 悦子
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1988

AIDS(後天性免疫不全症候群)ウイルスに対して、「総合的視野に立った有効な合成ワクチンの作成を目標とし、その研究開発のための方法論の確立を目指した試験的研究を行うこと」を目的として、相互に関連はしているものの分野的には非常に異なった4つの研究分野(「塩基配列デ-タの分子進化学的解析」、「ウイルス遺伝子の発現実験」、「X線による立体構造の解析」、「ワクチン効果試験」)の最先端技術をもつ研究者達が、有機結合的協力体制の下に研究サイクルを構築して、AIDSウイルスに対する合成ワクチン開発研究の方法論の確立を目指し、本研究は実施されてきた。1.五條堀・森山(悦)・林田は、HIVー1及びー2のenv領域アミノ酸配列デ-タより合成ワクチン開発の候補となるペプチド領域を同定し、さらにアミノ酸置換パタ-ンを推定した。2.溝上・折戸は、同定されたペプチド領域に対する合成ペプチドを作成し、これより抗血清の作成に成功した。3.星野は、HIV感染培養細胞での中和試験及びウイルス増殖抑制試験を行い、ウイルス増殖抑制に多少の有効性を確認した。また,日本人AIDS患者6名より単離されたHIVー1の塩基配列を決定し、海外で単離されたHIVー1との系統関係の解析を行った。4.下遠野・丹生谷は、env遺伝子の大腸菌プラスミドPUC19を用いた大量発現系の研究を行った。5.森山(英)は、1本の合成ペプチドの結晶解析を行った。以上,昨年度に引き続き各研究サイクルの研究が着実に行われ、それぞれ成果を上げることができた。最終的に有効な合成ワクチン開発には至らなかったが、このような研究サイクルの継続が、合成ワクチン開発への有効な手段であるとの感触を得ることができた。
著者
角田 幸彦
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ルキニウス・アンナエウス・セネカ(紀元後1〜65)はローマ帝政期を自らの重々しい運命として生きた哲学者である。彼はローマ初代皇帝アウグヌトゥス、二代皇帝ティベリウス、第三代カリグラ、第四代クラウディウスそして第五代ネロの時代を生き、時代との対話において哲学した。この帝政期ローマは共和政期ローマとちがって、自由な言論政治は封ぜられていた。国家統治は宮廷の中でいわば密談でとりしきられていたのである。セネカは30歳あたりから雄弁力でローマ社会で認められ、かつ彼は哲学者としてもその深く鋭い発言で反響をまきおこした。しかし41歳のとき政治の争いにまきこまれてコルシカ島に流されてしまう。8年間に及ぶ追放生活が、しかしセネカの哲学を一層深くかつ温かいものにした。彼は苦しんでいる者、悲しんでいる者を慰めることに、その後哲学の中心を置くようになる。哲学の今日までの2500年の歴史の中で、セネカほど人間の弱さ、苦悩、悲嘆と向き合い、この姿勢で哲学を作っていた哲学者はいない。対話的に同じ次元に彼はいつも立って、行きづまっている者を元気づける。このセネカは、同時に、ローマ最大の悲劇詩人であった。ローマには意外であるが、悲劇の誕生のギリシア以上に大勢の悲劇詩人が出たのであるが、作品が完全な形で残ったのはセネカの作品のみである。それほど彼の作品はすぐれていた。そしてセネカはギリシア悲劇を徹底的に学びながら、それらの受け売り、模倣ではなく、ローマ人の心性を表現する悲劇を作ることに努力し、見事に成功した。本研究は哲学者セネカと悲劇作家セネカの緊張関係を、欧米の入手できる限りの研究書を読んで究明した。そして『ローマ帝政の哲人セネカの世界-哲学・政治・悲劇-』で成果を世に知らしめた。
著者
平岡 義範 西 英一郎
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2008

我々が作製したナルディライジン欠損マウス(NRDc-/-)は、寒冷環境下(4℃)での体温維持機構が破綻していた。寒冷環境下で適応熱産生を担っているのは、褐色脂肪組織(BAT)のミトコンドリア脱共役タンパク質(UCP1)である。寒冷負荷後のNRDc-/-のBATでは、UCP1の発現上昇が認められなかった。一方、NRDc-/-において熱放散が亢進していることを明らかにし、NRDc-/-における体温恒常性の破綻が、適応熱産生および熱放散抑制両者の障害によることを明らかにすることができた。
著者
中山 徹 大石 正 宮城 俊作 中林 浩 宮川 智子 前田 真子 白石 克孝
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.イギリスの緑地再生の試み、パートナーシップ型都市再生のあり方をコミュニティフォレストの事例を中心に考察してきた。採炭地・工場跡地で始まった事例は、地域再生の原動力となるが、コミュニティが主体的に組み立てる環境改善事業のなかで展開する、青少年の参加・学校での環境教育の展開・地場産業の育成・企業の環境保全への努力であることを証明した。中でもブラウンフィールドを多く保有する地域であるマージー・フォレストでは、環境面の向上のみでなく、経済面や観光面を含む幅広い観点からの森林の多機能性に着目し、様々な役割があることを評価し、基盤整備の一つとして捉えた計画が進められている。具体的事例からは、既存の林地の2倍以上に植林を増やし、連続した林地を形成すべく地域の3割近くを林地にする計画・予定が提案され、新たな植林の促進が主な取り組みであることがわかった。既に整備された場所についても新たな植林による更なる環境向上が計画されていることから、環境再生には時間と労力を要することを提示しているといえる。2.森林の再生と保全を趣旨とし、持続可能な地域発展と行政・企業・団体・住民のパートナーシップの形成、地域経済の活性化の目標を明確に示して事業が進められており、これら4つの条件のバランスがうまくとれているといえる。日本におけるエコツーリズムの事例は全国にあるものの、住民や地元企業の協力を得て、継続的に事業を行っていくことは容易ではない。パートナーシップを形成しやすい仕組みづくりを国として整え、点と点を結ぶ広域的な整備や長い眼で見た持続的な地域発展を考慮した事業展開が必要であろう。イギリスのように、地域住民の権利と責任の意識を根付かせるには、法的整備によるエコツーリズムの活性化と、住民の意識に自然環境や地域資源の保全と再生の重要性を訴えかける草の根的な活動を有機的に連携し実施して行くことが求められよう。
著者
波平 知之
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

合計141個体のウミヘビを採集し、胃内容物の有無を調査した結果、胃内容物をもつ個体はわずか5個体のみだった。胃内容物の大きさとウミヘビの餌生物の摂取量との関係について明らかにできなかったが、胃内容物の種類については、エラブウミヘビは主にベラ類やスズメダイ類を捕食し、アオマダラウミヘビとヒロオウミヘビはウツボ類を捕食する傾向にあった。これらの胃内容物に残存していた餌生物のCP含量はウツボ類が70-80%と高かったのに対し、ベラ類が52%と低かった。ウミヘビの種によって捕食する餌生物の違いならびに餌生物由来の栄養摂取量の違いが認められた。魚粉粉末の人工餌(CP60%)ならびに生餌(ヤマトミズンとヤエヤマギンポ)をin vivo消化試験に供した結果、人工餌と生餌のin vivo乾物消化率はそれぞれ64%と54%となった。エラブウミヘビの消化時間は餌の種類や乾物消化率の違いによる影響は認められず、強制給餌後2=3日以内に初回排泄が認められる傾向にあった。排泄糞尿中の尿酸含量は約5%となり、餌由来の見かけ上のカロリー利用率(見かけ上のカロリー内部保有率)は65%であった。絶食区(140日間絶食)と生餌給与区(45日間絶食、50日間生餌給与、45日間再絶食)におけるエラブウミヘビの体重の推移をモニタリングした結果、いずれの処理区ともに140日間で捕獲時体重から約20%単位まで体重が減少し続けた。しかし、生餌給餌区は2回の絶食時ともに体重が減少したものの、生餌給与によってその減少が止まり50日間体重を維持することができた。このことから、エラブウミヘビの維持に必要な一日当たりの乾物摂取量は0.6gDM(2.2gFW)であり、体重約400gのエラブウミヘビ(♂個体)における見かけ上の基礎代謝量は1.0(kcal/day)となった。エラブウミヘビの排泄糞中のバクテリア相について次世代シーケンサーを用いて16SrRNA領域における細菌相解析を実施した結果、Firmicutes, Proteobacteria,Actinobacteria, Fusobacteriaなどが検出され、中でもFimicutesが優占化する傾向にあった。
著者
越山 顕一朗
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

超音波作用下で細胞膜に働く張力の周期的な変化を再現する分子動力学シミュレーションコードを開発し,チャンネルタンパク質,コレステロール,イオンを含む脂質膜分子モデルに応用した.これより,張力変動下での, 脂質膜での孔構造の形成,チャネルタンパク質の不感受性,イオンの孔構造透過パターンの変化,コレステロール・リン脂質膜の相変化を明らかにした.さらにin vitro超音波ニューロモジュレーション(NM)実験装置を開発し,装置における音場制御がNMが生じるより正確な超音波条件を見積もる上で重要であることを指摘した.
著者
溝口 博
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は,実時間の動画像処理と音響信号処理とを融合させることにより,対象とする人の周りでのみ局所的に音のやりとりができる,新しい自然で非束縛型のヒューマンインタフェースを実現することにある.具体的には,「人の存在を認識」してその人に注意を向け,「聞き耳をたてる」形で音声を拾い,「耳元で語りかける」形で音を聴かせる技術の確立を目指す.今年度は,昨年度に続き「耳元で語りかける」技術に注力すると共に,「人の存在を認識」する技術にも着手した.「耳元で語りかける」技術に関しては,昨年度,直交2軸16台(8×2)スピーカー(SP)アレイを用いスポット状高音圧分布の生成に成功した.ただし,これは一カ所のみであった.この成果を踏まえて,今年度はSP128台(32×4)の大規模SPアレイを構築し,別内容音声の複数箇所同時送出に成功した.すなわち,同時に複数の人の耳元で「それぞれ別の内容を語りかける」ことを可能とした.「人の存在を認識」して注意を向ける技術に関しては,複数台のTVカメラと実時間顔追跡視覚とを組合せ,対象とする人が広い範囲で動いてもそれに追従してその人の位置座標を得ることに成功した.今年度の具体的内容は次のとおりである.1)128チャンネル大規模SPアレイの構築,2)これを用いた別内容音声の複数箇所同時送出実験,および3)複数台カメラと顔追跡視覚との組合せによる広範囲実時間顔追跡実験.1)と2)は「耳元で語りかける」技術の一環である.正方形状配置の128ch大規模SPアレイにより,別内容音声のサウンドスポットを4カ所同時に生成できた.一方,3)は「人の存在を認識」する技術の一環である.複数台カメラと実時間顔追跡視覚とを用いることで,対象人物が動いても,広い範囲でその人の顔を追跡,顔位置の情報を得ることができた.
著者
中島 皇 竹内 典之 酒井 徹朗 山中 典和 徳地 直子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

温帯のスギと広葉樹が混交する天然林において総合的な調査を開始した。森林の動態の解明を大きな目標として、森の動きと働きを明らかにするのがこの研究の目的である。今回は特に物質の動きに注目して、今後の研究の基礎固めを行った。12年間に3回の毎木調査を行ったことにより、集水域が約8haある天然林の大まかな動きが捉えられた。小径の広葉樹ではソヨゴ、リョウブの枯死が多く、ソヨゴは常緑であるため冬の積雪の影響を大きく受けて「幹裂け」の状態を示しているものが多く見られた。流出物調査では北米で報告されている量と同程度の値が観測され、渓流水質調査では過去の観測データと比較すると硝酸濃度の上昇傾向が見られるなど、新たな知見が得られた。他方で、いろいろなイベントが森の動きに大きく影響を及ぼしており、そのイベントが生じた直後でなければ、なかなか影響を顕著に見つけられないことも事実である。この点は流出水量・流出リター量・渓流水質においても同様で、イベント時の現象を詳細に捉え、解析することが、今後の大きな課題である。毎木(成長量・枯死量)、樹木位置図、流出水量、流出リター量、渓流水質などの調査はいずれも時間と労力を必要とするもので、多くの人の力が必要である。森林という人間などよりはるかに長寿命の生物と付き合うためには、長期的な戦略と長期的なデータに裏付けられた息の長い調査・研究が今後とも必要である。