著者
渡辺 裕之 中村 和行 石川 歩未 李 振雨 足立 康則 鍋島 俊隆 杉浦 洋二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.133-138, 2021 (Released:2021-04-22)
参考文献数
28

【緒言】糖尿病を合併した終末期悪性リンパ腫患者の経口投与が困難な難治性悪心に対して,アセナピン舌下錠を使用し,悪心の改善ができたので報告する.【症例】78歳男性,糖尿病を併発するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者で右前頭葉,小脳に腫瘤や結節,周囲脳実質に浮腫が認められた.中枢浸潤が原因と考えられる悪心・嘔吐を繰り返し,経口投与はできなかったためメトクロプラミド,ハロペリドール,ヒドロキシジン注を併用したが,悪心のコントロールは困難であった.アセナピンは糖尿病患者にも使用可能で,制吐作用があるオランザピンと同じ多元受容体作用抗精神病薬に分類される.その作用機序から制吐作用が得られることを期待し,アセナピン舌下錠5 mg,1日1回就寝前の投与を開始した.アセナピン舌下錠の開始後,難治性悪心は著明に改善した.【考察】アセナピンは,難治性悪心に対する治療の有効な選択肢となる可能性がある.
著者
大坪 健太 春日 晃章 中野 貴博 小長谷 研二 杉浦 ひなの
出版者
日本教育医学会
雑誌
教育医学 (ISSN:02850990)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.121-129, 2020 (Released:2020-11-01)
参考文献数
34

The purpose of this study was to examine the academic difference due to the evaluation of the integrated type difference based on the degree of obesity. The subjects were 1269 elementary school 6th graders (648 boys and 621 girls) and 988 middle school 3rd graders (511 boys and 477 girls). The degree of obesity was calculated based on the standard weight for the subject’s sex, age, and height. We examined the difference in the average number of correct answers in the national school achievement test based on the degree of obesity using a one-way ANOVA. As a result of the analysis, the following findings were obtained. 1. Among elementary school students, there was a significant difference in academic ability among normal and obese children; the academic level of obese children was lower in both boys and girls. 2. There was no significant difference in academic ability between obese and normal middle school students. However, the academic achievement level of obese boys tended to be large and slightly lower than that of normal boys. These results suggest that establishing a healthy lifestyle and maintaining a standard weight contributes to the healthy development of cognitive function, including academic ability, in children.
著者
阿部 祐也 土井 香 柴田 正道 杉浦 明光 横尾 望 中田 浩一
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.603-608, 2015 (Released:2018-01-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2

高過給・高圧縮エンジンなどの高圧力場での火花放電形成における要求電圧上昇への対応技術として,放電形成メカニズムに基づいた2次電圧印加パターンによる要求電圧低減技術を開発。今回,様々なエンジン運転条件における要求電圧低減効果と着火性影響を検証した。
著者
杉浦 徹 櫻井 宏明 杉浦 令人 岩田 研二 木村 圭佑 坂本 己津恵 松本 隆史 金田 嘉清
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.623-626, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
19
被引用文献数
5 3

〔目的〕回復期リハビリテーション病棟における超高齢脳卒中患者の自宅退院に必要なADL条件を検討すること.〔対象〕85歳以上の脳卒中患者で,転帰先が自宅もしくは施設または療養病床である71名とした.〔方法〕自宅群(41名)と施設群(30名)の2群に分類し,これらの間で患者の基本的特性,退院時FIM得点を比較した.また,有意差の認められたFIM各合計点では,ロジスティック回帰分析とROC曲線からカットオフ値を算出した.〔結果〕自宅群と施設群の間で,年齢,発症から回復期入院までの期間,移動手段に有意な差が認められ,カットオフ値はFIM運動項目合計点で39点となった.〔結語〕新たなADL条件として,退院時FIM運動項目合計点が39点以下の場合,超高齢脳卒中患者の自宅退院は困難となる可能性がある.
著者
三村 春奈 伊藤 里恵 岡田 あゆみ 瀬戸 静恵 進藤 順治 杉浦 俊弘
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.125-128, 2013-12-19 (Released:2014-03-14)
参考文献数
12

北海道千歳市周辺で捕獲され,う蝕様病変のみられた54頭のアライグマについて,歯種ごとの発生調査と年齢査定を行った。う蝕様病変は,臼歯に集中し,特に後臼歯が重篤な状態であった。また,歯石の付着は49頭で観察され,う蝕様病変と同様に臼歯に集中していた。病変のみられた年齢の個体は,1.5歳未満と5.5歳以上で少なく2.5歳から4.5歳が約60%を占めていた。さらに,う蝕様病変の病態は加齢に伴い重症化する傾向がみられた。
著者
新村 浩一 大塚 雅之 松尾 隆史 杉浦 佑紀
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成29年度大会(高知)学術講演論文集 第1巻 給排水・衛生 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.73-76, 2017 (Released:2018-10-20)

限られた敷地でZEBを目指すためには、太陽光発電の効率を向上させることが有効である。一般的な太陽光パネルは、日射熱によるモジュールの温度上昇が、発電効率を低下させる。そこに、天然の蒸留水である雨水を散水し、冷却することが考えられる。本報では、そのシステム概要を提示し、長期間の実測評価を行った。
著者
内田 育恵 杉浦 彩子 中島 務 安藤 富士子 下方 浩史
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.222-227, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
21
被引用文献数
23

目的:我が国における高齢難聴者の現況を推計することを目的として,「国立長寿医療研究センター―老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」データを検討した.方法:NILS-LSA第6次調査(2008~2010年実施)より男性1,118名,女性1,076名の計2,194名を対象として,地域住民の粗率に近似すると考えられる5歳階級別難聴有病率を算出した(算定A).また,聴力に有害な作用をもたらす耳疾患と騒音職場就労を除外した算出も行った(算定B).総務省発表人口推計を用いて全国難聴有病者数を推計した.次に第1次調査(1997~2000年実施)時点で,除外項目と難聴定義に該当せず,かつ第6次調査にも参加した男性212名,女性253名の計465名を対象として,10年後の難聴発症率を解析した.結果:難聴有病率は65歳以上で急増していた.算定Aでは,男性の65~69歳,70~74歳,75~79歳,80歳以上の年齢群順に43.7%,51.1%,71.4%,84.3%で,女性では27.7%,41.8%,67.3%,73.3%といずれも高い有病率を示した.算定Bでは,同様の年齢群順に男性で37.9%,51.4%,64.3%,86.8%で,女性では26.5%,35.6%,61.4%,72.6%であった.全国の65歳以上の高齢難聴者の数は,算定Aでは1,655万3千人,算定Bでも1,569万9千人に上った.10年後の難聴発症率は,調査開始時年齢60~64歳群では32.5%,70~74歳群では62.5%と,年齢上昇に伴い高くなったが,依然聴力を良好に維持する高齢者が存在した.結論:高齢者の難聴有病率は高く,全国難聴有病者数推計から,加齢性難聴が日本の国民的課題であることが再確認された.また年を経ても聴力を良好に維持することが可能であると示唆された.
著者
田中 圭介 杉浦 義典
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.139-152, 2015 (Released:2018-06-19)
被引用文献数
3
著者
井上 舞 杉浦 勝明
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.e128-e133, 2022 (Released:2022-06-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

犬や猫の死亡時年齢や死亡原因を把握することは,健康診断の設定や健康増進の対策を立てるうえで有用な情報となりうる.著者らは全国の40病院の協力を得て,2020年4月1日~2021年8月31日までの間に死亡した2,133頭の犬及び猫の死亡状況についてのデータを基にコホート生命表を作成したところ,犬の平均寿命は13.6歳,猫の平均寿命は12.3歳であった.犬の死亡原因は腫瘍が18.4%と最も多く,循環器疾患が次いで17.4%,続いて泌尿器疾患が15.2%であり,猫での死亡原因は多い順に泌尿器疾患が29.4%,腫瘍が20.3%,循環器疾患が11.8%であった.死亡原因として多い疾患の影響を除いた平均寿命を算出した所,犬の腫瘍では0.6歳,循環器疾患では0.5歳,猫の泌尿器疾患では1.6歳,腫瘍では1.0歳平均寿命が延びると推計された.このような研究をもとに優先順位をつけて疾患対策を行うことで効率的な健康増進が可能になると考えられる.
著者
碓井 雅博 大川 真一郎 渡辺 千鶴子 上田 慶二 徳 文子 伊藤 雄二 杉浦 昌也
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.298-306, 1991-05-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

1954年RichmanおよびWolffは心電図上肢誘導で左脚ブロック型, 胸部誘導で右脚ブロック型を呈するものを“masquerading”bundle branch block (仮装脚ブロック) と呼んだ.我々は心電図上第I誘導で幅広いRと小さなSを, 第II, III誘導で深く幅広いSを有し, 胸部誘導にて完全右脚ブロックを示す当センターでの剖検例6例 (男4, 女2, 75~93歳) を対象として臨床病理学検討を行った.臨床所見では, 胸部X線上全例に心拡大を認め, 心電図上5例に1度房室ブロックを認めた.病理所見では, 心重量が350g以上の肥大心は5例であり, 陳旧性心筋梗塞を3例 (後壁2, 側壁1) に認めた.刺激伝導系所見では, 右脚と左脚前枝の二束障害を2例に, 右脚と左脚前枝, 同後枝の三束障害を2例に認め, 左脚前枝と同後枝の二束障害が1例であった.「仮装脚ブロック」の発生機序として, 1) 左脚の広範な障害, 2) 後側壁の心筋梗塞による修飾, 3) 著明な心肥大の影響が示唆された.
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.10, pp.159-178, 2017-03

本稿は、日本のレズビアンたちによる集合的な活動が発信したテクストを分析し、その主要な言説を跡づけようとするものである。1970年代から1980年代前半までのミニコミ誌が、1960年代に一般に流通した「レズビアンには男役(タチ)と女役(ネコ)がある」という言説へどのように介入したのかを中心に記述する。なお、本稿は、近代日本形成期(1910年代から1960年代まで)の「女性同性愛」の言説史を整理した拙稿(杉浦2015)の続編に位置づけられるものであり、レズビアン解放運動がさらなる盛り上がりを見せる1985年以降の言説分析へと橋渡しされるものである。
著者
杉浦 裕子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 鳴門教育大学 編 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.232-245, 2012

Thomas Blake Glover (1838-1911)is a Scottish trader who came to Japan at the end of the Edo period. He established Glover & Co. in Nagasaki and traded arms and ships with anti-Tokugawa clans, mainly with the Satsuma clan. He is often regarded as a supporter of the anti-Tokugawa samurai and as a contributor to the Meiji Restoration. Indeed, though Glover in later years contributed to the modernization of Japan in more peaceful ways, introducing shipbuilding docks, coal mining, railways, a mint, a brewery, and so on, the most prominent career in his life is that of "a merchant of death" in the very last days of the Tokugawa Shogunate. This essay examines the significance of his role at the end of the Edo period from the perspective of British diplomatic policy towards Japan in the 1860s and its rivalry with France. Throughout the 19th century, Great Britain had been the biggest empire among the great world powers. However, when Tokugawa Japan was forced to open the country to the world, neither Britain nor other western great powers had the intention to colonize Japan. They had learned that to plant colonies and to maintain them cost too much, and they also had spent much money on the Crimean War and other wars by the 1850s. What they wanted instead was the profit from free trade with Japan. Britain's diplomatic policy in particular was shifting to what is called "small Britain policy" during 1860s-70s, which promoted not colonization but free trade. After the 1880s, Britain and France resumed expansion of their colonies, mainly on the African continent. Therefore, Japan was lucky enough to escape the destiny of being colonized in spite of the disturbance of domestic politics, because the last days of the Tokugawa Shogunate in the 1860s were the very time of slackened foreign pressures. After Japanese ports were officially opened in 1859, Britain and other great powers' diplomacy with Japan was strongly united with their trade policy towards Japan, and the rivalry between Britain and France inevitably developed gradually. As trade policy can determine diplomatic policy, Britain and France began to take different attitudes towards the Tokugawa Shogunate in order to secure their own profit from commerce. France continuously supported Tokugawa because Japanese official trade with foreign countries was under the control of the Shogunate at that time, and France wanted to promote trade through strong ties with the Shogunate. On the other hand, Britain gradually distanced themselves from the Tokugawa Shogunate and showed understanding towards anti-Tokugawa clans, because Britain, as a promoter of free trade, found that those anti-Tokugawa clans also wanted free trade with foreign countries. Thomas Blake Glover, then an ambitious Scottish trader representing the British Empire, was the very man who did his illegal business with those anti-Tokugawa clans outside of Shogunate-control. Glover was such a wellknown and influential trader among anti-Tokugawa samurai that his significance was recognized by British Consul to Japan. Glover even arranged for Harry Parkes, the British Consul to Japan, to visit Satsuma, and this turned out to be a turning point for Parkes's policy. As a result, British diplomatic and trade policy with Japan won over that of France, and after the Meiji restoration, the modernization of Japan was carried out under the strong influence of Britain rather than France.
著者
熊谷 隆 杉浦 誠 千代延 大造 尾畑 伸明 市原 完治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1。本研究を遂行する中で、有限分岐的フラクタル上の確率過程についての新たな知見が得られた。P.c.f.self-similar setと呼ばれる自己相似性を持った有限分岐的フラクタルの上にレジスタンスメトリックという距離を入れたとき、この上の拡散過程の熱核(基本解)の精密な評価が一般に可能であるという結果である。これまでに、図形に強い対称性がある場合には熱核のアーロンソン型の評価が得られていたが、今回の研究により、一般にはアーロンソン型の評価は成り立たないことがわかり、さらにショーティストパスの挙動との関連が詳しく調べられた。この結果を熊谷は共著の論文にまとめ、J.London Math.Soc.に掲載予定である。2。インフィニット、ラミファイド(無限分岐的)フラクタルについては、ランダムシェルピンスキーカーペットに於ける拡散過程の熱核の研究を行い、サンプルとなるカーペットごとの熱核の詳しい評価が得られ、ランダムネスに強いエルゴード性の条件が課せられる時には、この評価からさらに確率1で成り立つ評価が導かれることが分かった。図形が高次元の場合、バーロー・バス達によるカップリングの方法を用いることによりハルナック不等式を証明することが議論の一つの鍵となった。この結果を熊谷は共著の論文にまとめ、投稿予定である。3。ユークリッド空間での現象とのつながり、特にホモジナイゼーションについては、楠岡氏との共同研究以来くりこみ不変な点の安定性が問題になっている。本研究の中で、海外の学会等で関連した研究を行っている研究者達と議論を行い彼等のプレプリントを読むことによりいくつかの新たな手法、視点を得ることが出来たが、それを我々の範疇に適応するには依然いくつかの技術的困難が残っている。これは今後の課題である。
著者
杉浦 亙
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.91-97, 2021-06-20 (Released:2021-07-26)
参考文献数
32

新興感染症を制圧するためには治療薬の開発が重要である.しかし新興感染症では,パンデミック発生時点では有効な治療薬は存在しないことが多い.このような状況下で先ず取られる治療薬の開発手段は既存薬の中から治療効果がある薬剤の探索 repurposing であり,この 1 年間様々な COVID-19 治療薬の候補が検討されてきた.その結果,抗ウイルス剤としては Ebola の治療薬として開発が進められていた remdesivir,サイトカインストームを抑えるための抗炎症薬としては dexamethasone の 2 剤が治療薬として承認された.いずれの薬剤も海外での臨床試験の結果に基づく承認である.我が国でも多くの候補薬が提唱され,臨床試験が進められてきたが,明確な結論が得られた試験は数少ない.その中の一つ喘息治療 ciclesonide の有効性と安全性を検証する単盲検無作為割付比較試験(Randomized clinical trial:RCT)では,目標症例数 90 例の登録完了に 181 日を要した. 一方で同時期に実施されていた,ciclesonide の「観察研究」では 180 日間でその 30 倍にも達する 3,000 人が登録されており,現場の医師にとって RCT に参加するハードルが高いことがわかる.要因は様々であろうが,RCT を実施するにあたって投入できる人的リソースの不足などが課題として挙げられよう.今回のパンデミックを教訓に,これらの課題を解決すべく,また次の新興感染症も見据えた RCT を支援する司令塔の役割を担う組織の設立が切望される.SARS-CoV-2 は感染を拡大しつつ,変異の選択と淘汰を経てヒトを宿主とするウイルスとしての姿を整えつつあるようであるが,ヒトとの共存関係が落ち着くまでには相当の時間を有するのであろうか.予防ワクチンが開発・実用化され,治療薬についても間違いなく研究開発が進展しており,COVID-19 の制御が可能となり,社会活動の再開ができる日はそう遠くないことを期待する.
著者
杉浦 滋子
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-27, 2015-03-31

『NHK 全国方言資料』第1-6 巻のデータの分析により、推量形に終助詞ガがつく場合の用法、断定形に終助詞ガがつく場合の用法を記述し、後者は前者から派生したと主張した。また、断定形にガがつく用例がある地点を地図化し、その結果から、断定形につくガはかつてより広く分布していたが、優勢な地域で他の終助詞が用いられることによって分布が狭くなったと考えられる。

3 0 0 0 OA 幾何学の帝国

著者
杉浦 芳夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.857-878, 1996-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
111
被引用文献数
1

本稿では,石川栄耀の生活圏構成論を手がかりにして,中心地理論の戦時中のわが国への伝播の可能性を検討した.石川は,外国の都市・地域計画論の影響を受けっつも,独自に生活圏構成論を考えっいたが,内務省技師・伊東五郎によってわが国へ紹介されたドイツ版生活圏シェーマは,石川のものと酷似しており,結果的に彼の説を補強することになった.ドイツ東方占領地の集落配置計画に用いられていたドイツ版生活圏シェーマのルーツが, Christallerが1941年に提案した,市場・行政・交通の3原理が同時に作用した場合の中心地立地シェーマにあったと判断されるたあ,中心地理論が示唆する集落配置の考えは,戦時中すでにわが国へ伝わっていたと結論づけられる.
著者
杉浦 淳吉 大沼 進 広瀬 幸雄
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.27-37, 2021-06-25 (Released:2021-06-30)
参考文献数
27

本研究では,論争のある社会問題について当事者の選好を参照しながら意思決定を行うことを通じて政策決定とその評価の熟慮のプロセスについて学ぶゲーミング・シミュレーションを開発した.ドイツのノイス市における路面電車に関する問題について取り上げた.ノイス市では,中心地の狭い通りを走る路面電車の路線について,市民の利便性の点から存続させるか,安全性などの点から撤去するかの論争があった.開発したゲームの実践において,参加者は,最初に路面電車の問題の背景について講義を受けた後,2~5名からなるグループごとに,2009年にノイス市で実施された社会調査をもとに作成された市民のプロフィールカード3名分を参照しながら6つある論点について優先順位をつけ,3つの選択肢(存続,単線化,撤去)から1つを選んだ.特定の価値だけでなく,市民全体の価値の意見分布に関する熟考を促すために,個々のプレーヤーの優先順位づけした論点がグループで選んだ選択肢と合致するほど得点は高くなるようにした.ゲーム後のディブリーフィングでは,各グループの選択と得点結果を実際のノイス市での政策決定と比較しながら議論した.振り返りの結果から,各自の優先順位と市民プロフィールをもとに議論し,市民全体の意見分布も加味して多様な価値をバランスよく取り入れることで利害対立を避けることができていたプレーヤーほど得点は高くなっていた.最後に,実際の当事者の意見を参照しながら意思決定を行う本ゲーミングの応用可能性について議論した.