著者
中村 宅雄 村上 弦
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.397-401, 2007-05-25

ヒトの僧帽筋は肩甲骨を安定させ,肩関節の運動や肩甲骨の運動に関与する重要な筋である.僧帽筋裏面を走行する静脈は,1)動脈に伴走しない静脈が存在し,2)静脈の合流点の数は動脈の分岐点の数の1.5倍に達し,3)さらに静脈弁が欠落している,という特徴がある.また上大静脈へ流れる経路とは別に側副路として外椎骨静脈叢へ流れる経路が存在することも特徴として挙げられる.下大静脈を通る静脈還流は,腹圧や胸腔内圧の影響を受けやすいため,静脈還流が滞った際には椎骨静脈叢が重要な役割を果たすと考えられる.僧帽筋の静脈の特徴的な形態は,椎骨静脈叢の流出路であると同時に側副路であるという体幹の静脈還流上の特殊な位置付けから説明できるものと考える.また,これらの特徴を踏まえたうえで,理学療法において肩こりに関与する僧帽筋への手技の見直しが必要であり,静脈還流を促す方向へのマッサージを行うことによって,肩こりの改善を図ることができるのではないかと考える.
著者
所 雄章 香川 知晶 西村 哲一 佐々木 周 村上 勝三 山田 弘明 持田 辰郎
出版者
中央大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

デカルトの『省察』のラテン語原典(「Meditationes de Prima Philosophia」)のー共同作業によるー包括的な研究、それがわれわれの目的であって、過去二回(昭和58ー60年度と昭和63年度と)の実験を承け、今回は「第五省察」(昨年度)と「第六省察」(本年度)とをその対象とした。彼のこの形而上学的主著についてわれわれは、(イ)字句の釈義を踏まえたテクストの正当的な読み方の探求、(ロ)それら二つの「省察」に含まれる本来的に哲学的な諸問題の問題論的究明、という二つの作業とを軸として、即テクスト的な研究を遂行した。先ず、「テクストの読み」という点について言えば、この作業は主として研究代表者が担当したが、その際、語句の釈義と併せて、『省察』の古典的な(duc du Luynesの)仏訳本は固よりのこと、近時公刊の英訳書や仏訳書における原テクストの(言うならば、新しい)読み方をも参照し、かつまた古版本ー1642年の初版本や1642年の二版本ーと現行のAdamーTannery版とのテクスト的異同も視野のうちに置いた。次に、「哲学的な諸問題の究明」という点について言うと、「第五省察」と「第六省察」とにおいては、「神存在の存在論的証明」と「デカルトの循環」と「<物心の実在的な区別>によるデカルト的<二元論>」と「<物心分離>的アスペクトと<物心結合>的アスペクトとのデカルト的<二元性論>」とが最も重要な問題であるが、それら四つを主要な対象とする究明の作業は、担当の研究分担者がその問題に係わる今日の代表的なデカルト史家幾人かの解釈を要約したリポ-トを元にして全員で討議し、全員のいわば最大公約数的なーあるいはむしろ、最小公倍数的なー見解を集約するという、そういう仕方で推進された。以上の二点を軸とする研究成果の委細は、テクストの即テクスト的な研究というわれわれの研究の性格上、「実験報告書」の閲読に俟つ。
著者
村上 民
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究 (ISSN:21896933)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.26-44, 2015 (Released:2016-08-15)
参考文献数
31

自由学園創立者である羽仁もと子、吉一は、創立初年の1921年から、当時自由画提唱者として、 また農民美術運動の推進者と注目されていた洋画家、山本鼎を美術科主任として招聘した。山本鼎 は、病に倒れる直前の1942年秋頃までの20年間、つまり彼の後半生を通じて自由学園の美術教育 に携わり、また羽仁夫妻の教育事業に深く関与した。本稿は、自由学園草創期から10年間の学園美 術の展開、そして自由学園工芸研究所設立にいたる過程を、羽仁もと子・吉一と山本鼎の協働の側 面から論じる。羽仁夫妻は、自由を基調とした教育をめざし、教育と社会改造を深く結び付けよう とする志向を持っていたが、山本の自由学園での教育実践は、それまでの山本の自由画運動や農民 美術運動を統合させた形で学園美術を方向づけ、自由学園教育が持っていた社会への拡張性を具体 的に推し進めた。山本鼎はまた、自由学園卒業生による自由学園工芸研究所の設立(1932年)にも 関わった。工芸研究所の設立は、生徒たちの、山本鼎からの自立過程でもあった。
著者
土山 玄 村上 征勝
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2012-CH-94, no.5, pp.1-8, 2012-05-19

古くから他作者説が論じられている『源氏物語』の終わりの 10 巻である「宇治十帖」について,主成分分析およびランダムフォレストといった多変量解析を行い,「宇治十帖」 の作者とそれ以外の諸巻の作者が同一であるかについて,計量的な側面から検討を加える.本研究では,語の使用頻度に対し分析を行い,その結果,「宇治十帖」 の他作者説を支持する積極的な根拠は得られなかった.
著者
荒川 歩 村上 幸史
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.85-97, 2006

We investigated why people own lucky charms. One hundred ninety-eight students answered our questionnaire. The results showed that ownership of lucky charms is not entirely related to the desire to connect to a transcendental power; people have lucky charms because they have received them as gifts from family and friends; family and friends give lucky charms when they cannot provide other forms of support directly; the gift of a charm is usually from an older person to a younger person; the relationship between the donor and the recipient affects the type of charm given. These results suggest that donors may give lucky charms to allay their anxiety, and that lucky charms act as a reminder of the donor's support of the recipient in times of trouble.
著者
村上 一博
出版者
明治大学法律研究所
雑誌
法律論叢 (ISSN:03895947)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.197-257, 2012-03-01
著者
村上 裕 大澤 啓志
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.187-198, 2008-11-30
被引用文献数
2

愛媛県中予地域において、水稲栽培型とトノサマガエル・ヌマガエルとの関係を調査した。現地調査は、2005年に130地点のカエル類分布調査を、2000〜2005年に水稲栽培型調査を実施した。過去の栽培型(1958年)については資料調査とし、地域別の栽培型ごとの面積と品種数を明らかにし、2000〜2005年は水稲栽培型で区分した地図を作成した。1958年と比較して2000〜2005年の平野部における水稲栽培型の多くが短期栽培に変化し、普通期栽培品種においても栽培期間の短期化が進行していた。これに対して山間部の水稲栽培型は品種の変遷はあるものの、栽培型や栽培期間に大きな変化は認められなかった。標高と栽培型との関係では、早期栽培は標高50m以上にほぼ均一に分布していたが、短期栽培は標高20m以下に集中傾向がみられた。トノサマガエルは22地点(生息確認率16.9%)、ヌマガエルは40地点(同30.8%)で生息確認が得られた。標高と両種の関係は、トノサマガエルが標高による明瞭な傾向を示さないのに対して、ヌマガエルは低地依存性があることが明らかになった。栽培型と両種の関係では、トノサマガエルは水稲栽培期間の短期化によって生息地域が減少することが明らかになった。一方、ヌマガエルの生息確率は水稲栽培期間の短期化には影響を受けていなかった。以上のことから、トノサマガエルは標高よりも栽培型に影響を受けるが、ヌマガエルは栽培型よりも標高に影響を受けることが明らかになった。短期栽培は、栽培期間が短いため、兼業農家においても取り組みやすい栽培型である一方、水田を二次的自然環境として利用しているカエル類、特にトノサマガエルの生息に負の影響を及ぼしていると考えられた。
著者
浅川 朋宏 川畑 秀伸 村上 学 木佐 健悟 大島 寿美子 寺下 貴美 小野寺 慧洲 大滝 純司
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.249-253, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
15

目的 : 財政破綻を機に医療資源の縮小を伴う医療の合理化に直面した住民の思いと, 新たな医療体制への住民の考え方を明らかにし, 医療の合理化において考慮すべき要素を探索する.方法 : 自治体の財政破綻に直面したX市の住民を対象に, 医療の合理化に対する思いと今後の医療のあり方への考え方の2点を質問し, 質的な分析を行った.結果 : 医療資源縮小を伴う医療の合理化への住民の思いと, 新たな医療体制への住民の考え方として「医療の合理化の進め方」, 「地域医療のあり方」, 「行政, 医療者の姿勢」の3つのテーマが抽出された.結論 : 医療の合理化おいて, 行政や医療機関が合理化の過程および内容に関して住民の意見を受け止め, 地域の歴史的背景や住民の心情を理解することが重要である.
著者
村上 征勝 今西 祐一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.774-782, 1999-03-15
参考文献数
5
被引用文献数
9 16

『源氏物語』は 我が国古典の最高峰であるばかりでなく その芸術性の高さゆえに諸外国にも広く翻訳され 古くから数多くの研究がなされてきた. しかしながら現時点においても なお研究課題は数多く存在し たとえば 複数作者説や成立過程等 依然として未解決のまま持ち越されているものも多い。本論文では 微妙な表現価値にかかわる助動詞を取り上げ その『源氏物語』における出現頻度を分析し その結果 巻の成立順序や 後半の10巻 いわゆる「宇治十帖」他作者説が生ずる理由等との関連の可能性について次の結果を得た。源氏物語は話の内容から3部に分けるのが通説となっているが (1) 源氏物語の第1部を構成する紫の上系17巻と玉鬘系16巻は別々に成立した可能性がある. その場合 玉鬘系の16巻は第2部の後に成立した可能性が高い. (2)「宇治十帖」とその前の11巻 (第2部および「匂宮三帖」)との間には助動詞の用い方に差が見られ この差が文体の違いの反映であるならば これが1宇治十帖」他作者説が生ずる原因の1つと考えられる。(3) 各巻の文章を会話文と地の文に分けた場合に 助動詞の用い方に差が出るのは地の文である.Genji Monogatari, the greatest accomplishment in Japanese classical literature, has been the subject of intensive studies for many centuries. In spite of these studies, there are a great number of unsolved problems concerning the time sequence of the writing of the 54 chapters and their author ship. The 54 chapters of the Genji Monogatari are divided into three distinctive parts. We analyzed auxiliary verbs used in these three parts and got the following results. (1) The two stories which constitute the first part may have been written at different times. Tamakazura story of the first part may have been written after the second part. (2) The apparent difference in the use of auxiliary verbs between Uji Jujo (Ten chapters of Uji) and the 11 chapters that precede them throw doubt upon the singular authorship of Genji Monogatari. (3) The differences in use of auxiliary verbs between chapters are irrelevant to the amount of conversation.
著者
村上 郁磨
出版者
学校法人久留米大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

[目的]本研究は、(1)大学事務職員独自のワークモチベーション尺度を作成し、その尺度を用いて職場のメンタルヘルスとの関係を調査すること、(2)3ヶ月間の運動介入が大学事務職員独自のワークモチベーション(以下WM)及び職場のメンタルヘルスに及ぼす影響を調べることを目的とした。[研究方法]アンケート調査にて個人的属性及び大学事務職員のWMを規定する要因を調査・分析し、大学事務職員独自のWM尺度(自己発信・他者からの評価・職務のやりがい・職業満足感・帰属意識・職場内人間関係:6因子23項目)を作成した。そして、「職場のメンタルヘルス測定尺度」(MHI-5)を独立変数、上記のWM尺度を従属変数として重回帰分析を行った。運動介入は男性事務職員20名を対象とし、歩数計を用いて実際の運動量を測定し、3ヶ月間(週2日:1回あたり速歩30分間)を行った。[研究結果]メンタルヘルス項目の「やりがい・達成感」はWM項目すべてに関係性が認められた。また、「疲労・消耗感」は、他者からの評価、職業満足感、帰属意識に関係性が認められ、さらに「社会関係の回避」は、職務のやりがい、職務満足感、職場内人間関係に関係性が認められた。また、3ヶ月間の運動介入の結果、メンタルヘルス項目の「勤労意欲の減退」、「疲労・消耗感」、「余裕・ゆとりのなさ」が改善し、大学事務職員のWM項目の職務満足感が向上した。これらの結果より、職場のメンタルヘルスが大学事務職員のワークモチベーションを部分的に予測することが明らかとなった。そして運動介入を実施することにより、職場におけるメンタルヘルスが改善され、大学事務職員のワークモチベーションが向上する可能性が示唆された。
著者
角 哲 大場 修 砂本 文彦 玉田 浩之 村上 しほり 長田 城治
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.86, no.780, pp.617-627, 2021 (Released:2021-02-28)
参考文献数
16

The purpose of this article is to clarify the construction process and features of Camp Crawford in Makomanai, Sapporo. It was named after Joseph Ury Crawford, advisor and U.S. railway engineer of the Hokkaido development commission (Kaitakushi). Upon the occupation of Japan, the general headquarters (GHQ) set the 9th corps, 8th army’s headquarters in Sapporo, chosen primarily because of Hokkaido’s location. Several notable cities in Japan were war damaged, hence had little facility stocks. Sapporo, on the other hand, was intact and had enough supplies. These were essential aspects in establishing the headquarters in Sapporo. GHQ ordered the Japanese government to construct 20,000 dependent housings (DH) in March 1946. This proved difficult because building materials were scarce, so some construction projects were stopped. However, deemed by the government as essential in the Cold War due to its strategic location, Camp Crawford’s construction continued and was erected quickly in Sapporo. GHQ appropriated the land of the Hokkaido Animal Husbandry Experimental Station Makomanai as the site. It was located south of Sapporo’s city center, about 4-6 kilometers away, upstream of Toyohira river. Jozankei railways was at the eastern side. These proved valuable to maintaining good living conditions and sanitation. Also, beneficial for swift construction. Private contractors organized a special union to construct the new camp. The union received the contract as a single unit. This approach was outstanding at that time since it can be recognized as the initial stages of a joint venture (JV) agreement. The JV was definitively established during the 1950’s in Japan. Construction was delayed but eventually completed as supply of building materials for this particular camp was a priority. 8th army head Eichelberger evaluated it as “too expensive.” Consider though, that the camp had several facilities and covered a vast plot of land. Also, the land area for one DH was the largest among all camps in Japan. The DH and troop housing (TH) were developed concurrently, a unique feature here since, typically in GHQ’s camps across Japan, these would be built separately. This camp’s site plan was influenced by topography and old facilities. TH and DH areas were situated in the eastern part of the site where it was dry and higher than the west. The service facilities were on the west amidst gently rolling terrain. TH was on the upper section of the site’s eastern part, laid out on a grid using the old farm road. Below it, the DH was arranged on curved roads, following GHQ standard. Several facilities were added, making the camp almost a small city. TH area had, among others, an office, PX, bakery, church, theater, clubs, library, gym, sports grounds, and golf link. DH area had detached and row houses using GHQ standards, except for the roof material. Instead, the roof was finished with sheet iron, characteristic of the cold region, and contributing to high costs. However, the GHQ used existing facilities and new buildings were simple. The camp was generally using excellent specifications when compared to Japanese buildings at that time. After derequisition, late 1950's, the site was transformed to the Japan Self-Defense Force Base and a prefectural residential area, Makomanai Danchi. The DH area was once used as Olympic village, the golf link for stadiums. Camp Crawford is the foundation of present residential suburbs.
著者
藤本 一眞 藤城 光弘 加藤 元嗣 樋口 和秀 岩切 龍一 坂本 長逸 内山 真一郎 柏木 厚典 小川 久雄 村上 和成 峯 徹哉 芳野 純治 木下 芳一 一瀬 雅夫 松井 敏幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.2075-2102, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
66
被引用文献数
7

日本消化器内視鏡学会は,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を作成した.従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであった.今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮してガイドラインを作成した.各ステートメントに関してはエビデンスレベルが低く推奨度が低いもの,エビデンスレベルと推奨度が食い違うものがあるのが現状である.
著者
村上 茂
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.34-36, 2016 (Released:2019-11-11)

さまざまな動物モデルを用いて、タウリンの抗肥 満作用が明らかにされてきた。タウリンの抗肥満作 用には、脂質代謝改善作用、抗炎症作用、ミトコン ドリアの機能維持作用、中枢作用などが関係してい ると考えられる。健常な小型の脂肪細胞はタウリン 合成活性が高いが、肥満動物の肥大した脂肪細胞で はタウリン合成能が低下し、これに伴い血中タウリ ン量も減少することが知られており、タウリン欠乏 と肥満の関連も示唆されている。一方、ヒトにおけ るタウリンの抗肥満作用は研究例が少なく作用も 明確ではない。
著者
村上 宣寛 村上 千恵子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-39, 1997-10-09 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
6 17

本研究の目的は, 主要5因子を測定する質問紙を作成することである. 予備調査では, 試作版の95項目, GoldbergのSD尺度, MINI性格検査を大学生236名に実施した. SD尺度は5因子モデルのよいマーカーであることが分かった. また, 試作版の因子分析から69項目が選択された. 本調査では, 試作版に, MINIの43項目, 新たに執筆した項目を加え, 合計300項目の質問紙を作成した. その質問紙と, GoldbergのSD尺度, MINIを大学生496名に実施した. MINIの結果から洞察力に問題がある被験者を除き, 443名を分析の対象とした. 最初に暫定版質問紙300項目とSD尺度の各次元の合計点との相関を求め, 合計150項目を選出した. グループ主軸法による分析を行い, 60変数を抽出し, 最終的に, 主因子法と因子パーシモニー基準による直交回転を行った. その後, MINI性格検査の建前尺度12項目を追加し, 並ベ換えを行った. 基準関連妥当性としてSD尺度の各次元の合計点との相関を算出すると, 0.510から0.774の範囲に分布していた. 信頼性をみるために, 主要5因子性格検査(決定版)を大学生227名に1週間間隔で2度実施した. 結果は0.853から0.953の範囲であった. 主要5因子性格検査(決定版)の妥当性, 信頼性はともにかなり高いと考えられる.
著者
岩政 衣美 三木 雄太 井上 嘉則 江坂 幸宏 村上 博哉 手嶋 紀雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.479-484, 2018-08-05 (Released:2018-09-08)
参考文献数
23
被引用文献数
3 3

The concept of comprehensive DNA adducts analysis (called DNA adductomics) has recently been attracting attention, and the development of a highly sensitive and accurate quantitative method for DNA adductomics has been desired. In our previous research on LC-ESI-MS/MS, hydrophilic interaction chromatography (HILIC) was found to be effective for improving the sensitivity concerning the quantitation of DNA adducts. Although HILIC-ESI-MS/MS is useful for the quantitation of DNA adducts, the improvement of HILIC separation for DNA adductomics must be still needed. In this paper, we describe the improvement of HILIC separations for DNA adductomics by investigating the composition of mobile phases and the commercially available HILIC columns with four difference polar groups. While the elution order for four 2'-deoxynucleosides and the two DNA adducts was not drastically changed by varying the HILIC columns, the separation of each dN and DNA adducts was improved by adding alcohols and by varying the alcoholic concentration.
著者
村上 雅裕 中谷 真由美 安田 恵 天野 学
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.209-213, 2016 (Released:2017-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Objective: The squeezing force and one-drop weight, suggested to directly influence adherence, were measured in 6 eye drop products containing a switch OTC drug, ketotifen fumarate, to investigate useful information for product selection.Methods: The squeeze force, one drop weight, and pH were measured using a digital force gauge, analytical balance, and pH meter, respectively.  Information on additives contained in each product was collected from package inserts.  For the total number of drops, the number per 10 mL was calculated from the obtained value.Results: The maximum squeeze force was 14.8 N of Irice AG Guard, and the one drop weight (33.2 mg) of Raferusa®AL was the minimum.  The total number of drops per 10 mL was 215 in Sutto eyes Z, being the minimum.  The pH was in the range of 5.2-5.7.  On comparison of additives among the products, a cooling agent was contained in only 2 products.Discussion: Since the squeeze force was in the range of 5.3-14.8 N, it was less likely that the squeeze force reduces usability.  Since the one-drop weights of 2 products were more than 10 mg lower than the weights of the other products, the dose may be insufficient and the effect may not be attained.  The pH was within the acceptable range in all products.  Two products contain a cooling agent as an additive, and this has to be explained beforehand.  Information related to usability, actual feeling of the effect, and sense of the use of the products containing ketotifen fumarate was collected.
著者
村上 純子
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第31巻, no.第1号, pp.43-51, 2018-10-25

これまでアレルギー疾患と発達障害の関連についての研究が多くなされてきた。本論文では,アレルギー疾患と発達障害の関連についての研究をまとめたが,その関連性の有無については一致した見解がみられていない。また,アレルギー疾患と発達障害の病理学的な関連性についてもまだ明らかになっていない。しかし,その両方を発症している子どもたちは一定数存在しており,アレルギー疾患と発達障害を併発していることは双方の疾患の診断,治療,療育に深く影響している。アレルギー疾患は比較的治療可能な疾患であり,発達障害を併発しているとすれば,その子どもに適した方法での治療を行うことで,予後が良くなると思われる。したがって,アレルギー疾患と発達障害の両方を有しているケースにおいて,より効果的なアレルギー疾患の治療のために,その子どもの特徴(偏り)が理解できるようなツールの開発が期待される。