著者
八谷 満 古山 隆司 福森 功 市戸 万丈 平田 晃 桑名 隆
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.115-127, 2000-12-15
被引用文献数
4

繋ぎ飼い用搾乳ロボットシステムの開発に向けて、特にマニピュレータ機構の設計指針を得ることを目的として、ホルスタイン種泌乳牛111頭を供試して体尺測定調査を実施した。ロボットはストール後方より牛に接近して、牛体位置検出機構は牛体において変形量の少ない部位として坐骨端と左右の腰角を捕捉する。本機構に自動搾乳ユニットを搭載することによって、機械系の原点と牛体との水平面上での相対的位置関係をほぼ確定し、牛体の動きに追従して両者の位置関係を維持する。これを基本的な機械設計概念とする。その上で、牛体とロボット機械系双方の安全性を確保するために、ロボット作業環境内の四肢や乳房等の配置から干渉あるいは衝突の可能性の低い部分を抽出し、動作可能な空間領域をモデル的に示した。これを考慮した機械系, 特にロボットマニピュレータの関節構成と軌道生成を提案した。マニピュレータ機構は、平面的な位置決めと姿勢決めの回転自由度を各々2と1、これにティートカップ装着動作のための並進自由度1を加え、計4自由度の基本仕様で対応可能と判断された。マニピュレータの標準作業域は、牛体軸上の坐骨端からの距離380mmの点を中心とする、350×350mm区画が4乳頭の散在する領域である。この領域においては、エンドエフェクタを有する第3アームを常に牛体軸に平行な姿勢に制御することによって、後肢を回避しながら、狭降な後肢内側空間においてテイートカップのマニピュレーションが可能であると推察された。マニピュレータ機構をモデル的に単純化して、位置制御するための関節変数ベクトルを求める逆運動学問題の解を示した。X-Y平面内での運動特性を考慮して、第1、第2および第3アームリンク長をそれぞれ400mm、350mmおよび200mmと設定した。また、マニピュレータ台座の適正な位置をX、Y座標それぞれ580mm、520mmと設定した。日本家畜管理学会誌、36(3)115-127、2000 1999年4月12日受付2000年9月1日受理
著者
森田 達也 野末 よし子 花田 芙蓉子 宮下 光令 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.121-135, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
5

本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが行われた地域の医師・看護師の体験した変化を収集することである. OPTIMプロジェクト介入後の医師1,763名, 看護師3,156名に対する質問紙調査の回答706件, 2,236件を対象とした. 自由記述の内容分析を行い, それぞれ327, 737の意味単位を同定した. 好ましい変化として, 【チーム医療と連携が進んだ】 ([相談しやすくなった][名前と顔, 役割, 考え方が分かるようになった]など), 【在宅療養が普及した】 ([在宅移行がスムースになってきた]など), 【緩和ケアを意識するようになり知識や技術が増えた】が挙げられた. 意見が分かれた体験として, 【病院医師・看護師の在宅の視点】【活動の広がり】【患者・家族・市民の認識】が挙げられた. 地域緩和ケアプログラムによるおもな変化は, チーム医療と連携, 緩和ケアの意識と知識や技術の向上, 在宅療養の普及であると考えられた.
著者
藤澤 正視 稲村 哲也 渡部 森哉 福山 洋 菊池 健児 高橋 浩 五十嵐 浩也 山本 紀夫 川本 芳 大山 修一 大貫 良夫 阪根 博 ワルテル トソ セノン アギュラール カルロス サバラ 鶴見 英成 藤井 義晴 阿部 秋男
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

ラス・シクラス遺跡の発掘を実施し、同遺跡の中核的遺構の北マウンドの様態を解明した。マウンド上部の建築群は形成期早期(紀元前2900~1800年)の神殿建築であり、少なくとも8回の神殿更新が認められた。その過程で多量のシクラが使用されたのがこの遺跡の特徴である。シクラ構造を模擬した試験体で振動台実験を行った。その結果、一定の制振効果をもつことが確認される一方で、ある条件のもとでは、その効果がなくなるという特徴が示唆され、シクラを持つ神殿の地震動に対する挙動と被害軽減効果を確認した。
著者
平井 邦彦 後藤 哲男 森田 守 渡邉 誠介 澤田 雅浩
出版者
長岡造形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本年度はこれまで新潟県南魚沼郡で行ってきたさまざまな調査研究の集大成として、より広範な施設に関するバリアフリー状況調査を実施するとともに、その簡便な改善策の実証的研究を当該地域において実施した。具体的には、バリアフリー状況調査で抽出した観光・レジャー施設を複数抽出し、その施設のより詳細な調査を実施するとともに、簡便な設備で状況が改善可能な場合にはそのような対策を施した。また実際に障害者や高齢者が訪問した場合の障害に対してのシミュレーションを実施した上で、南魚沼郡全域にわたる一日観光ルートを設定し、そのルートを利用した実地調査を行った。調査に際しては、抽出した施設からの協力を受けるとともに、塩沢町社会福祉協議会の支援を受け、実際に車椅子を利用されている方をモニターとして4名の方にご参加いただき、利用時の問題点や対策の有効性についてユーザー側からの情報を提供してもらうことができた。ハートビル法が成立したものの、一定規模以下の施設ではバリアフリー改修が不必要なことも多く、またそれらの施設はそのような設備改修の余裕を有していない場合が多いが、今回の調査で事前に行った対策は費用、手間両面からも大変扱いやすいレベルのものであり、その効果を実際に施設管理者が目にすることで、障害者受け入れの精神的障壁を取り除くことができるようになることも調査の中で明らかとなった。手近なところの工夫によって今後国内で増加する高齢者・障害者を積極的に受け入れることができるようになることが実証的に明らかにされるとともに、この知見を地域内で共有することでより広範かつ綿密な「もてなし」が実現する可能性が示唆されたといえる。
著者
萩原 洋一 池田 論 中森 眞理雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション
巻号頁・発行日
vol.98, no.442, pp.57-64, 1998-12-04
被引用文献数
1 1

マージソートは時間計算量が0(n log n)(nはソートされるレコードの個数)であり高速であるが, 内部ソートとして実行する場合, 作業場所として大きさnの配列を要するのが欠点であるとされている.本論文では, 作業場所として数語だけを要するマージソートを提案する.新しいマージソートの時間計算量は0(n log^2 n)であり, 従来のアルゴリズムより悪いが, これは作業場所とのトレードオフの結果である.
著者
森本 政之
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.295-296, 2006-04-01
著者
石本 雄真 久川 真帆 齊藤 誠一 上長 然 則定 百合子 日潟 淳子 森口 竜平
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.125-133, 2009-06-10

本研究は,青年期女子の友人関係のあり方と心理的適応や学校適応の関連を検討することを目的とした。友人関係のあり方を心理的距離と同調性といった2側面から捉え,学校段階ごとに心理的適応,学校適応との関連を検討した。女子中学生96名,女子高校生122名を対象に友人との心理的距離,同調性,心理的適応,学校適応について測定した。その結果,表面的な友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに不適応的であることが示された。心理的距離は近く,同調性の低い友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに良好であることが示された。心理的距離は近く,同調性の高い密着した友人関係をとる者は,中学生では概して適応的であった。一方,高校生で密着した友人関係をとる者は,学校適応においては適応的であるものの,心理的適応に関しては不適応的な結果も示した。これらの結果から,同じ青年期であっても学校段階ごとに友人関係のあり方が持つ意味が異なるということが明らかになった。高校生においては,心理的距離は近くとも同調的ではない友人関係を持つことが心理的適応にとって重要であることが示唆された。
著者
松森 晶子
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.93-108,158, 2000-06

琉球の多型アクセントの諸体系には,型の生産性の片寄りと体系の不均衡が観察されることを,沖永良部島と徳之島のいくつかの方言を例にして示し,この原因は,服部(1979)の仮説を一部取り入れ類別語彙2拍語に1・2/3・4・5(板)/3・4・5(息)という合流の仕方を認める松森(1998)の説により,説明できることを示す。さらに,これら琉球の多型アクセント体系全般を通じて,類別語彙3拍語が生産的な3つの型に所属し,しかもその3つの型に所属する類別語彙の種類が諸方言間で対応することを確認する。このことから,琉球祖語に存在したと推定される3音節語の3つのアクセント型の,各々に属する語彙群のリスト(試案)を提示,これらの語彙群を,各々「形」類,「鏡」類,「刀」類と呼んだ。また,本土の類別語彙3拍語に対応する語彙の,琉球における合流の仕方は,1・2/4・5(鏡)/4・5・6・7(刀)であることを論じ,このように琉球では,類別語彙の2拍語のみならず,その3拍語も,特殊な類の分裂と合流を遂げたことを論じる。
著者
児玉 啓浩 森本 康彦 中村 勝一 横山 節雄 宮寺 庸造
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.453, pp.151-156, 2011-02-25

大学における研究活動では,発生する多様な情報を蓄積・活用することが重要である.しかし,研究初学者にとって,これらの蓄積された情報を効率的に活用することは容易ではない.そこで本研究では,ユーザの活動場面に適応的な情報抽出と視覚的提示手法を搭載した研究活動支援システムを開発する.これを達成するためにオペレータモデルを開発する.このオペレータは,活動場面と視覚提示制約によって,適応的な情報抽出と視覚的提示,促進メッセージ提示を行う.これにより,ユーザの活動場面に則した研究情報の抽出と,それらの効果的な活用を支援することが期待できる.本稿では,オペレータの定義と支援システムの開発について述べる.
著者
齊藤 奈津子 土山 寿志 大森 俊明 山田 真也 島崎 英樹
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.268-273, 2004-05-25
被引用文献数
5 7

従来本邦では, E型肝炎の発生は稀であると考えられてきたが, 近年海外渡航歴のない国内発症例が報告されている. 今回, 北陸では初の報告となるE型急性肝炎の国内感染, 発症例を経験した. 症例は50歳男性. 海外渡航歴, 輸血歴, 動物の飼育歴, 薬剤服用歴及び, 不特定な人との性的接触はなかった. 2002年3月下旬より全身倦怠感, 褐色尿が出現し4月4日当科受診. 血液検査, 画像所見より急性肝炎と診断され入院となった. 対症療法にてトランスアミナーゼは速やかに改善したが, 黄疸は遷延化した. ビリルビン吸着療法計7回の後, 黄疸も改善傾向を示し, 第56病日目に退院となった. 入院時血清よりIgM型抗HEV抗体, HEV-RNA陽性が判明し, 本症例はE型急性肝炎と診断された. HEVは genotype IIIで, その塩基配列は既報のJRA 1株と最も高い一致率 (94.9%) を示した. HEVは日本国内に広く定着していると考えられた.
著者
益森 治巳 高城 章代 北村 明久 内藤 衛亮
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-93, 1996-03-29

学術情報の流通を促進する方策の一つとして、鹿児島大学において1995年前半に、大学紀要の電子入稿について調査した。1995年2月時点で当該年度の出版物として、11部局から29種類の紀要が刊行されており、254論文が掲載されていた。第一著者、複数の論文を執筆した場合は一論文のみの著者として154名が確認できた。全教官の15%に相当する。有効回答は133名(回収率86%)。電子的に執筆していたのは117名(全回答者の88%)。ハードウェア、ソフトウェアは多岐にわたった。入稿の態様は投稿規定に依存しているものの、37名(28%)の著者がプリントとフロッピーによって入稿した。流通に対する意識は未見の事態に対するものとして、過渡的であり、平行出版の必要性が指摘された。投稿規定・手順としての意見も未成熟であり、フオーマットの標準化についての意見は分かれている。投稿規定の整備が必要である。
著者
小森 悟 黒瀬 良一 高垣 直尚 伊藤 靖仁 鈴木 直弥 鈴木 直弥 伊藤 靖仁
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

上部に降雨装置を取り付けた風波水槽を用いた実験により,風波気液界面を通しての物質移動が降雨により促進されること,また,降雨およびウインドシアーが共存する場合の物質移動量がそれぞれ単独の物質移動量の足し合わせにより概ね予測可能であることを明らかにした.さらに,単一液滴の気液界面衝突現象に着目した実験と数値計算により,液滴の界面衝突が液側の表面更新渦を生成し,気液界面を通しての物質移動を促進することを明らかにした.
著者
細木 高志 浜田 守彦 神門 卓巳 森脇 良二 稲葉 久仁雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.395-403, 1991
被引用文献数
5 24

日本, 中国および米国•仏国のボタンの花弁色素組成を調べ, 各国の品種が花色の育種の面でどのように異なっているかを比較検討した.<BR>調査したすべての日本品種 (<I>P. suffruticosa</I>) の花色はCIE座標軸上の赤と青の範囲内に入った. 紅紫色品種は赤味•青味とも高い値を示した. 桃色と白色品種は赤味•青味とも低い値となった. 暗赤色と紅紫色の品種は花弁に多量のアントシアニンを含んでいたが,桃色と白色品種は逆に少なかった. したがって花弁の明度と花弁のアントシアニン含量には高い負の相関がみられた. すべての日本の暗赤色または紅紫色品種は,6種類のアントシアニン (peonidin 3,5-diglucoside/peonidin 3-glucoside, cyanidin 3, 5-diglucoside/cyanidin 3-glucoside, pelargonidin 3,5-diglucoside/pelargonidin 3-glucoside) を含んでいた. 鮮紅色の品種はCy3G5G/Cy3Gを欠いていたが, 大量のPg3G5G/Pg3Gを含んでいた. いくつかの桃色品種はCy3G5G/Cy3GおよびPn3GとPg3Gを欠いていた.<BR>中国品種 (<I>P. suffruticosa</I> と<I>P. suffruticosa</I> var. <I>spontanea</I>) は一般に6種類のアントシアニンのうちPg3Gを欠いており, このことが鮮紅色の品種の少ないことと関連しているようであった.<BR>米国•仏国の雑種品種 (<I>P. suffruticosa</I>×<I>P. lutea</I> or <I>P. delavayi</I>) は, 6種類のアントシアニンのうちPg3GとPg3G5Gを欠いており, このことが深紅色や緋色品種の出現に関連しているようであった. また鮮黄色のchalconeが<I>P. lutea</I>や<I>P. delavayi</I> から導入され, 花弁内でpeonidin や cyanidin と混合し, オレンジ色やクリ色等, ユニークな花色を発現させる要因となっていた.
著者
森川 修
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

鳥取大学における学力試験を課さない入試区分(AO入試,推薦入試Ⅰ)の合格者に対し,合格直後から入学直前まで,インターネットに接続されたPCを用いて自学自習ができるe-ラーニングを実施させた.合格後と入学後に学力試験の結果から,e-ラーニングの進捗率が高かった者や一定のペースで学習した者の成績は良好であった.また,卒業までの成績追跡の調査で,AO入試,推薦入試Ⅰの合格者は,一般入試合格者と比較して,大学在学中の学業成績や卒業率などに有意差は見られなかった.その結果,e-ラーニングは学習習慣を継続させるために有用なツールで,リメディアル教育として十分に利用可能である例を示した.
著者
西村 豪生 森谷 高明 大西 浩行 飯尾 政美
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.4, pp.510-522, 2012-04-01

対外インタフェースがオープン化されているNGNにおいては,インターネットとテレコム網のサービスを連携させたWeb-テレコム連携サービスが利用可能である.従来のWeb-テレコム連携サービスは,Web端末によるアクション契機で,Web端末とは独立したテレコム端末に対してテレコムサービスが提供される形態が一般的であった.既存のインターネットユーザに対する親和性を考慮した場合,テレコムサービスもWeb-テレコム連携サービスの開始契機を与えたWeb端末にシームレスに提供可能とすることが望ましい.本論文ではテレコム端末機能と連携するリッチインターネットアプリケーションをWeb端末上で実行することにより,単一Web端末によりWeb-テレコム連携サービスを利用可能とするアーキテクチャを提案する.提案アーキテクチャは,テレコム端末機能を共通コンポーネント化し,テレコム網の詳細が隠ぺいされた抽象APIによって利用可能とする.共通コンポーネントをサービス利用時に端末に動的配備する方式と,外部装置に静的配備する方式について,プロトタイプ実装による性能評価を通じてその実現性を確認した.