- 著者
 
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             矢野 俊彦
             
             高田 容司
             
             平野 雅親
             
             中山 勇
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 日本衛生動物学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 衛生動物 (ISSN:04247086)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.45, no.3, pp.253-263, 1994 
 
          
          
          
          - 被引用文献数
 
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             1
             
             
          
        
 
        
        
        地下街に棲息するゴキブリ類の棲み分けとその薬剤感受性について, 飲食店街24店舗と食料品街12店舗を対象に10年間の推移を調査した。その結果, 優占種はチャバネゴキブリとトビイロゴキブリであり, 若干のクロゴキブリが混在していた。飲食店街における優占2種の平均捕獲率はほぼ拮抗していたが, チャバネゴキブリが洋食店・喫茶店で優占種であったのに対し, トビイロゴキブリは和食店・酒房・寿司屋で優占種となっていた。店舗間に仕切りがなく各店舗内の温度が共通である食料品街においても同様の棲み分けが認められた。この棲み分けは10年間にわたりほとんど変化がなかったが, 両種ともその棲息密度はやや減少の傾向にあった。棲み分けの要因の一つとして, 両種の食物嗜好性の違いが関与していると考えられた。チャバネゴキブリ成虫に対する薬剤感受性は, 供試した3薬剤(フェニトロチオン, ピレトリン, d-transペルメトリン)のいずれに対しても10年の間に徐々にLD_<50>値が上昇する傾向にあったが, その変化幅はさほど大きくなく, 抵抗性比としては低レベルにあった。一方, トビイロゴキブリに対する薬剤感受性は, フェニトロチオンにおいては10年間にわたりほとんど変化なかったが, ピレスロイド系2剤の場合はLD_<50>値の上昇傾向が認められ, とくにd-transペルメトリンでは中程度と目される感受性低下が観察された。この地下街では, 1968年以降有機リン剤(フェニトロチオン等)とピレスロイド剤(ペルメトリン等)の交互施用が行われてきている。この防除プログラムは, チャバネゴキブリに対しては密度抑制と薬剤抵抗性発達の抑制の両面から有効な防除技術の一つと考えられたが, トビイロゴキブリに対しては, さらにモニタリングを続け, 動向を注視していく必要があると考えられた。