著者
柏原 正樹 西山 亨 行者 明彦 三輪 哲二 岡田 聡一 黒木 玄 寺田 至 小池 和彦 山田 裕史 谷崎 俊之 中島 俊樹 中屋敷 厚 織田 孝幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

この科研費による計画においては、リー群・量子群・へッケ環などの表現論を数理物理学・組合わせ論との関係から研究した。以下、各年次における活動を記す。初年度(1997)においては、特にRIMS project1997(等質空間上の解析とLie群の表現)とタイアップして計画を遂行した。このプロジェクト研究では、等質空間という幾何的観点にたった実Lie群の表現の研究に焦点をあてた。海外からのべ約40名の参加者があり国際的な共同研究・研究交流の場が提供できた。この成果は、Advanced Studies in Pure Mathematics,vol.26に発表された。1998年は、RIMS project 1998(表現論における組合わせ論的方法)とタイアップして計画を遂行した。このプロジェクト研究では、海外からのべ約25名の参加者があり、量子群・アフィンへッケ環の表現論と組合わせ論を中心にして計画を行った。1999年は、国際高等研究所と数理解析研究所において"Physical Combinatorics"の国際シンポジュウムを開催し、数理物理と関連して研究を行った。量子群の表現論、Kniznik-Zamolodhikov方程式とそのq-変形の解の性質や共形場理論の研究を推進した。その成果は、"Physical Combinatorics,Progress in Math,vol.191,Birkhauserに発表された。2000年度は、計画の最終年として"数理物理における表現論および代数解析的方法の応用"を中心とする研究成果の発表を目的として、"Mathphys-Odyssey 2001"という国際シンポジュウムを開催した。この会議録は、Birkhauser出版から出版される予定である。
著者
石原 恵子 吉田 倫幸 岩城 達也 小森 政嗣 木野 和代 加藤 荘志 内田 照久 出木原 裕順 石原 恵子
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

ヒトがモノに重ねるイメージと、愛着形成に必要なモノの要素を重点的に検討した。別のヒトとのコミュニケーションに用いるモノのイメージ贈り物:贈り物選択時に贈り主はモノへの価値づけ(客観的価値、実用的価値、感情的価値、他者表現性)を行っており、それらが贈ったモノへの愛着につながると期待していることがわかった。メディア:職場の対人関係とお詫びを伝える際の各種メディアのイメージを、送信者と受信者の両方の視点から検討した。その結果、心理的負荷や上下関係に関わらず、気持ちを伝えるために対面が最も適切であり、目上に対して携帯メールは礼儀正しくないと判断された。一方、同輩や目下に対しては電話(速い)や電子メール(正確)も容認されていることがわかった。ヒトとヒトでないモノとのやりとりについて道具:むだ時間系に対するヒトの運動適応について検討した。その結果、短期の運動学習スケジュールでは、制御成績には顕著な改善が見られなかったものの、操作者の運動意識には正の効果が惹起されることが明らかとなった。ロボット:人型二足歩行ロボットでは、ヒトへの接近行動が、ロボットを主体性を持つモノと認識させ、ヒトと協調して仕事を行う役割を期待させることが示された。より単純な、車輪移動と胴体後部の棒を振る機能だけをもつロボットでは、ロボットを擬人化・擬生物化する傾向がより顕著で、ヒトに「ついてくる」「しっぽを振る」ことが愛着に重要であるとともに、自律ロボットへの恐怖感や違和感が「しっぽ」により大きく緩和されることがわかった。快適性評価技法の開発感性評価の軸となる快適性を脳活動から評価する技法を検討した。脳波α波の周期ゆらぎによる快適性推定技術を検証し拡張するために、心地よさを伴う入眠に着目して、入眠潜時とゆらぎ係数との関係を検討した。その結果、左前側頭部のゆらぎ係数から入眠潜時を推定可能なことが示唆された。
著者
甚野 尚志 大稔 哲也 平山 篤子 踊 共二 三浦 清美 青柳 かおり 太田 敬子 根占 献一 関 哲行 網野 徹哉 大月 康弘 疇谷 憲洋 皆川 卓 印出 忠夫 堀越 宏一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々のプロジェクトは、中近世のキリスト教に関わる諸問題をさまざまな視角から分析することを目指した。それも地域的には、ヨーロッパ世界に広がったキリスト教の問題だけでなく、布教活動とともにキリスト教化した他の世界の諸地域も対象とした。これまでの研究は主として、中近世キリスト教の非妥協的態度、迫害社会の形成、異教徒との対決の視点から研究がなされてきたが、我々は最近の研究動向に従い、中近世キリスト教世界の多様性やことなる宗教の共存に光があてつつ研究活動を行ってきた。この間の多くのワークショップなどの成果に基づき、各分担者が論文などで中近世のキリスト教史の新しいイメージを提示できた。
著者
田中 俊次 永島 俊夫 黒瀧 秀久 小林 道明 堀内 淳一 高井 寛 小川 昭一郎 小松 輝行
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトは、「環オホーツク海圏交流」を促進するため、環境科学的学術交流に的を絞り、持続的可能な経済発展交流の研究を追求することを目的とした。研究計画及び研究成果については研究分担者が所属する5大学の、1995年以来の各種の地域とのコンソーシアム開催事業によって、その課題を絞り込んで環境科学研究のテーマを設定してきた。そこで具体的な対象地域を設定し、社会科学的アプローチ、人文科学的アプローチ、自然科学的アプローチといった多種多様の切り口から分析を行ってきた。主な研究実績は下記の通りである。1.分析視点を深めるとともに、調査研究方法の検討会議を開催した。具体的には、これまでに先駆的に海圏交流研究を行なっている研究者に講演して頂き、研究手法・論理展開を参考としつつ、国際的見地からの環境問題への視座や、伝統的地域圏交流の再確立、広域圏交流へむけた新たな研究の視座を盛り込む研究手法を検討した。2.環オホーツク海圏における環境科学研究に関する基礎資料及び比較のための環日本海圏域における基礎資料の収集及び国内調査を実施した。3.「環オホーツク海圏広域交流」形成の課題を明らかにするため、北東アジア(モンゴル、ロシア・サハリン、中国東北部)を対象に、環オホーツク海圏における農畜産業の展開や環境汚染の状況、国際交流に向けての取り組みなどについて、各国の関係機関を中心に聞き取り調査を実施し、また関係機関からの提供資料や広域交流関連の文献などを用いながら、研究を深化させてきた。本研究の主な研究実績としては、「越境広域経営」や「環境ガバナンス論」を土台に、環オホーツク海圏の持続的な資源の利用と管理のための環境ガバナンスの構築を目指して、学術的なグランドデザイン「(仮称)OSERIEG(The Okhotsk Sea Rim for Environmental Governance)ビジョン」のモデルを検討し、「環オホーツク海圏」の位置づけを明らかにしたことがあげられる。
著者
石黒 章夫 青沼 仁志 松坂 義哉 加納 剛史 坂本 一寛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

現在のロボットは,設計時に想定した稼働環境や使用目的に極度に最適化されているため,その振る舞いは著しく単調かつ画一的であり,またそれゆえに環境や身体の変化に対して脆弱である.一方で生物は,身体が持つ膨大な自由度の間に時空間的秩序を生み出すことで,適応的かつ多様な振る舞いを自己組織的に創り出している.本研究では,特異な対称性を持ち,自切する動物であるクモヒトデに着目し,状況依存的に多様かつレジリアントな振る舞いを発現する機序の解明を目的とした.その結果,比較的シンプルな自律分散制御則によって優れた適応性と耐故障性を有する振る舞いを再現できることを実験的に明らかにした.
著者
花里 孝幸 柳町 晴美 平林 公男 宮原 裕一 朴 虎東 豊田 政史 山本 雅道 武居 薫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

水質汚濁問題を抱えていた諏訪湖の水質が近年になって改善されはじめ、それに伴って生態系が大きく変化し始めた。本研究では、その生態系変化の様子とメカニズムの解明を試みた。諏訪湖では、アオコ減少、不快昆虫ユスリカの減少、水草の増加、大型ミジンコの増加がほぼ同時期に起きた。生態系のレジームシフトが起きたといえる。植物プランクトンの生産力低下が生物間相互作用を介して生態系全体に波及したと考えられた。
著者
小林 悟
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、生殖細胞系列の性決定機構を解明することを目的としている。これまでに、始原生殖細胞中において細胞自律的にメス化を誘導できるSxlに制御される候補遺伝子を同定するとともに、始原生殖細胞の性差に依存して発現する遺伝子の網羅的な同定、中胚葉を持たない原始的な動物であるヒドラにおいて、生殖幹細胞の性差に依存して発現する遺伝子の網羅的な同定を行うことに成功した。以上の成果は、生殖細胞系列における普遍的な性決定機構を明らかにする上での基盤となる。
著者
榎田 洋一 澤田 佳代 杉山 貴彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

アクリルニトリルは数十年間にわたって U と Sb を含む触媒で合成されてきた,この廃触媒は放射性廃棄物であり合理的処分が必要である.しかし,U は長半減期で化学毒性と放射性毒性のために浅地中への直接処分が難しく, Sb の化学毒性も考慮を要する.従って,触媒担体から U と Sb を除染した後,触媒担体を利用してガラス固化する方法を提案した.目標はシリカ担体の細孔から高収率で U と Sb を回収することと浅地中処分に適切な最終廃棄体とすることであった.成果として,ホウケイ酸ガラスの相分離を利用する方法と Sbを塩化揮発した後に U を回収する方法を考案できた.実触媒に対する実証実験を行い, U に対して 99.3%以上,Sb に対して 97%以上の回収率での除染を確認できた.また,最終廃棄体であるガラス固化体試料について,脱イオン水による浸出試験を実施した結果,浸出液濃度は誘導結合プラズマ発光分光法の検出限界以下である 0.1ppm 以下とできた
著者
肥後 靖 土井 康明 茂里 一紘 岩下 英嗣
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,海上浮体が受ける海震による衝撃荷重を合理的に求めるプログラムの開発を第一の目的と実施した。開発にあたっては,模擬的な海震を発生させられる水槽を製作し,海震実験法を確立すると共に,当該海震実験の結果と開発したプログラムによる計算とを対比し,開発プログラムの妥当性を検証しながら海震のメカニズムについて検討した。その結果,まず海震実験によって,圧力波が水面と水底で共振していることが確認できた。また,本研究で開発した数値計算プログラム(時間領域,周波数領域双方)の妥当性を検証するために,実験によって得られた結果と計算との比較を行い,その結果,理論上第一共振に対応する周波数で,実験においては大きな圧力分布を示さず,第二共振に対応する周波数付近で大きな圧力変動が見られた。この実験の傾向と計算の結果の不一致の原因は,圧力波の伝播速度が水温に依存しており,実際と計算で異なっていること,また,水槽の側壁が振動装置からの隔離が完全ではなく,二次的な振動源となっていることが考えられるが,詳細にはさらなる検討が必要である。さらに,当該水槽を使用して海震荷重計測試験も行ったが,これも側壁の振動が原因と思われる雑音が存在し,理想的な実験結果を得られるにいたらなかった。いずれにしても,未だ実施されたことのない実験のために,色々と解決すべき問題はあるが,今後それらを一つ一つ解消し,目的である海震のメカニズム解明に役立てられるという目処は立った。特に,数値計算の検証という意味で本模擬海震発生水槽はこれから威力を発揮すると期待される。
著者
松井 三郎 松田 知成 中山 亜紀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

ダイオキシン受容体(AhR)は、様々な化学物質を認識することが知られている。外因性のリガンドとしてはダイオキシン、PCB、多環芳香族類などが知られている。また、内因性のリガンドとしては研究代表者の研究で明らかになったインディルビンをはじめ、ICZ、FICZ、DIMなどのインドール化合物が知られている。HPLCとバイオアッセイを組み合わせることにより、環境中には、多種類の外因性リガンドが存在することを明らかにした。染色工場の排水や、下水処理水中はAhRリガンド活性を示した。水環境中のAhRリガンドの単離精製をすすめたところ、いくつかの染料を同定した。この中には、赤ボールペンに使われるローダミンB、黄色染料のHydroxybenzo[b]quinophtaloneなどがあった。また、様々な染料の標準品のAhR活性を調べたところ、アントラキノン系の染料にリガンド活性があることを見出した。さらに、様々な食品中のAhRリガンド活性を調査したところ、コーヒー中に数種類のAhRリガンドがあることをつきとめた。内因性または食品由来のインドール系リガンド、インディルビン、ICZ、FICZ、DIMのAhRリガンド活性を比較した結果、インディルビン、ICZ、FICZのいずれにも極めて強い活性が観察された。また、これらのリガンドは自らが誘導するCYP1A1やCYP1A2によって極めて容易に分解されてしまうことも明らかにした。これらの強いAhRリガンドと、ダイオキシンの毒性の違いは、この代謝のされやすさにあると考えられる。さらに、AhRがリガンド依存的にp21の発現を誘導し、細胞周期に影響を与えるメカニズムの一端を明らかにした。
著者
大谷 信介 後藤 範明 木下 栄二 小松 洋 永野 武
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

研究成果の概要:住民基本台帳などの公的名簿の使用制限によって困難となっているサンプリングの現状を打開するため、「住宅地図」を用いたサンプリング手法の開発と問題点を考察した。高松市調査によって、一戸建てを対象とした社会調査では「住宅地図」サンプリングは使用可能性が高いことが証明された。西宮市調査では、アパート・マンションを対象とした調査を実際に実施し、どのような問題点が存在しどのような工夫が必要となるかを検証した。
著者
山口 高弘 麻生 久 渡邊 康一 長谷川 喜久
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、骨格筋形成を負に制御するミオスタチン(Myostatin:MSTN)が生まれつき欠損することにより、優れた産肉形質を有する日本短角種牛(Double muscled Cattle:DM牛)の産肉向上機構の全容を解明するために計画された。平成17-19年度の3年間の研究により、下記の結果を含む多くの新知見が得られた。1)日本短角種DM牛由来の筋細胞で、HGFとIGFIIの発現が変化し、MSTNはIGFII発現を抑制し、HGFはMSTN発現を抑制すること、DM牛ではHGFによるMSTN産生が欠如するため筋肥大が生ずることが明らとなった。2)マイクロアレイ結果、DM牛で4.5倍発現低下するMSTNシグナル伝達系に関与するTBF-β inducible early gene family(TIEG1,2)が見出され、siRNA法等でTIEG1機能を欠損させたところ、細胞増殖と筋管形成が著しく増強し、MyoD familyのMRL4と増殖因子であるIGF-II発現が増加した。このことより、TIEG1がMSTN特異的シグナル伝達因子として関与することが明らかとなった。3)DM牛から成熟型MSTN欠損のクローン化筋芽細胞(Cloned Double muscled myoblasts:DMc)を樹立した。さらに、DMcからウシ不死化筋芽細胞(DMc-t)の作成に成功した。これらの細胞は、ウシ筋細胞でのMSTN作用を初めとする筋分化機構の解明に極めて有用である。4)骨格筋の分化過程において、MSTNとIGF2は関連しながら相反して作用し、MSTNとIGF1は独立して作用することが判明した。5)ウシとブタの下垂体前葉で、MSTNがTSH細胞に、MSTNレセポターアクチビン受容体IIがACTH細胞に発現することを明らかにした。6)マウス下垂体前葉でNSTNとそのレセプターがACTH細胞に発現し、MSTNがACTH細胞でのホルモン合成を抑制することを明らかにした。
著者
石川 尚人 東野 伸一郎 吉村 令慧 望月 伸竜 加々島 慎一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、大陸リフトから海洋底拡大へと現在進行しているエチオピア・アファール凹地において、近年拡大現象が起こったDabbahu Riftとその周辺域を対象に、陸上での電磁気探査、地表溶岩流の岩石学的・古地磁気学的解析、無人小型飛行機による航空磁気探査を行い、プレート拡大軸域の磁気異常の分布と構造、その形成過程を明らかにすることを目的としている。今年度は10月22日~11月5日にエチオピアに渡航し、Dabbahu Riftの南方約40kmの地点にリフトの延長方向に直交する測線(約60km)をとり、MT探査(14地点、約6時間観測)と溶岩流からの試料採取(古地磁気解析用18地点53個、岩石学的解析用10地点22個)を行った(現地調査6日間)。MT探査から、測線中央部の地下約4km以深に熱源の存在を示唆する低比抵抗域、その両側には高比抵抗域があることがわかった。同測線で2016年に行った磁場探査のデータ解析から、測線中央部に負、その両側に正の異常がある長周期の磁気異常が確認された。以上から、測線中央部を軸とする拡大現象による上記の磁気異常の形成が示唆された。溶岩流の古地磁気学的解析から、測線東端は逆帯磁、他は正帯磁の残留磁化もち、測線中央部ほど磁化強度が強いこと、上記の磁気異常に重なる短周期の磁気異常の変動が溶岩流の磁化強度の強弱を反映していることがわかった。岩石学的解析から、溶岩流が中央海嶺玄武岩であり、測線中央部からの距離に応じ化学組成が系統的に変化することがわかった。航空磁気探査のため、無人飛行機と磁気センサシステムの製作・調整を行った。また無人飛行機の持込・使用の許可を得るために、エチオピアの関係機関と同国の研究協力者を通じて渡航時を含め折衝し、2018年夏頃に許可が得られる見通しとなった。以上から次年度からの航空磁気探査の実施の目処がたった。
著者
岡本 博 矢田 祐之 堀内 佐智雄 鹿野田 一司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

分子内あるいは分子間のπ電子の移動が分極の起源である電子型有機強誘電体(TTF-CA、α-(ET)2I3、クロコン酸)を対象とし、テラヘルツ電場パルスによるサブピコ秒の強誘電分極変調に初めて成功した。また、TTF-CAの常誘電相にテラヘルツ電場を印加することにより、サブピコ秒の時間で強誘電相の約20%の巨大分極を誘起できることを明らかにした。このような高速高効率の分極応答は、電子型誘電体に特有のものであることを示した。本研究で実証したテラヘルツパルスによる分極制御法は、高速の光変調や光スイッチに応用できるものであり、今後、基礎、応用両面からの研究の進展が期待される。
著者
窪薗 晴夫 梶 茂樹 岩田 礼 松森 晶子 新田 哲夫 李 連珠
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は世界の諸言語(とりわけ韓国語諸方言、中国語諸方言、アフリカのバンツー諸語)と比較することにより類型論的観点から日本語諸方言のアクセントを考察し、その特質を明らかにすることである。この目的を達成するために年度ごとに重点テーマ(借用語のアクセント、疑問文のプロソディー、アクセント・トーンの中和、アクセント・トーンの変化)を設定し、それぞれのテーマについて諸言語、諸方言の構造・特徴を明らかにした。これらのテーマを議論するために4回の国際シンポジウムを開催し、海外の研究者とともに日本語のアクセント構造について考察するとともに、その成果をLingua特集号を含む国内外の研究誌に発表した。
著者
上野 健爾 山田 泰彦 齋藤 政彦 加藤 文元 神保 道夫 齋藤 秀司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

上野はJ.Andersenとの共同研究で,曲線が退化する際のアーベル的共形場理論(bc系の理論)を構成した.この結果は,非アーベル的共形場理論からモジュラー函手を構成する際に,アーベル的共形場理論の分数ベキとのテンソル積を取ることが必要となり,点付き代数曲線のモジュライ空間の境界でのテンソル積の挙動を調べるために使われた.さらに,このモジュラー函手から構成される3次元多様体の不変量は,リー代数がsl(2,C)の時はReshetikhin-Turaevが構成した不変量と一致することがほぼ明らかになった.証明の詳細な詰めは次年度の研究で行う予定である.また,上野はアーベル的共形場理論を代数曲面の場合に拡張するための予備的な考察を行った.齋藤政彦はパンルヴェ方程式の初期値空間の研究を行い,初期値空間として登場する岡本・パンルヴェ対が逆にパンルヴェ方程式を決定することを,岡本・パンルヴェ対に変形理論を適用することによって示した.山田は多変数のパンルヴェ方程式を対称性の観点から研究した.また,神保は量子場の相関関数とq直交多項式との関連を考察した.また,齋藤秀司は非特異代数多様体のChow群に関するBloch-Beilinsonフィルター付けについて考察した.加藤はMumford曲線に関する研究を行い,Mumford曲線を被覆として持つ非アルキメデス的オービフォールドの特徴付けを与え,またモジュライ空間でのMumford曲線のなす軌跡の性質について新しい知見を得た.またMumfordによる擬射影平面の志村多様体としての具体的な構成を与えた.
著者
大宮 邦雄 渡邊 巖 西原 宏史 熊澤 修造 宮本 和久 魚住 武司 小野寺 一清 大宮 邦雄
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

水素ガスはクリーンなエネルギーとして注目されている。本研究ではヒドロゲナーゼ、ニトロゲナーゼ両システムの研究者が意見を交換しながら、水素ガス生産のために培養工学、遺伝子工学的方法で系を改良することをねらって研究を行った。小野寺は水素ガス発生能にすぐれているAzotobacterのミュータントを得た。またアンモニアで抑制されず、高い水素ガス発生能をもった窒素固定菌を土壌から分離した。いずれのアプロウチも今後の新微生物探索の方向を示唆する。魚住は窒素固定菌Azospirillum lipoferumのニトロゲナーゼ遺伝子の転写時および転写後のアンモニアによる活性抑制の機構解明を行い、高アンモニアで窒素固定活性が抑制されない菌TAIを作成した。熊沢は水素ガス発生能の高いらん藻の改良に取り組み、アンモニアによる窒素固定抑制のかからない条件では窒素ガス存在下でも水素ガス発生が継続することを明らかにした。いずれも、ニトロゲナーゼで水素ガスが発生するとアンモニアができにくくなることを考慮して、アンモニアでニトロゲナーゼ活性が抑制されないようにする試みである。西原は酸素ガスと熱に強く、酸性条件で水素ガス発生に強く傾いたヒドロゲナーゼを海洋性細菌Hydrogenovibrioから取り出した。このヒドロゲナーゼは酵素を利用した水素ガス発生に利用できそうである。浅田はらん藻に真正細菌のヒドロゲナーゼ遺伝子を組み込み、水素ガス発生の光エネルギー利用効率を高めようとした。宮本はNoxと二酸化炭素含有ガスを利用する海産微細藻類から乳酸菌と光合成細菌を使って水素ガスを高い効率で生産することに成功した。二酸化炭素削減技術のひとつの有望な方向を示すものである。大宮は難分解性物質からの水素ガス生産に利用するため、Clostridiumのキティナーゼ遺伝子を解析した。渡辺はアゾラと共生しているらん藻の水素ガス発生活性の窒素固定活性にたいする相対比はらん藻の窒素固定活性高いほど高くなるこを見いだした。これらの研究はいずれも水素ガス生物生産の今後の改良戦略の基礎となる知見を与えた。
著者
庵 功雄 イ ヨンスク 松下 達彦 森 篤嗣 川村 よし子 山本 和英 志村 ゆかり 早川 杏子 志賀 玲子 建石 始 中石 ゆうこ 宇佐美 洋 金田 智子 柳田 直美 三上 喜貴 湯川 高志 岩田 一成 松田 真希子 岡 典栄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の成果は次の3点に要約される。第1点は公的文書の〈やさしい日本語〉への書き換えに関わる諸課題の解決、第2点は外国にルーツを持つ生徒に対する日本語教育に関する実証的な取り組みであり、第3点は各種メディアを通じた〈やさしい日本語〉の理念の普及活動である。第1点に関しては、横浜市との協働のもと、行政専門用語562語についての「定訳」を作成し、書き換えに際し有用な各種ツールとともにインターネット上で公開した。第2点に関しては、新しい文法シラバスを公刊する一方、JSL生徒向け総合日本語教科書の試行版を完成した。第3点に関しては、書籍、講演等を通して〈やさしい日本語〉に関する理念の普及に努めた。