著者
萩尾 生
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

スペインのバスク自治州政府が1994年以来実施している在外バスク系同胞支援策は、在外同胞の帰還支援よりも、スペイン中央政府を介さない自治州政府と在外同胞との関係性の構築に主眼があった。また、帰還すべき「バスク本土」の領域性と「在外バスク系同胞」に対する民族性に関して、自治州政府と在外バスク系同胞との間には認識のずれがある。予算と受益者が限定的な在外同胞支援策の意義と効果は、つねに議論の姐上にある。
著者
付 月
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、日本における退去強制手続きの対象者である非正規滞在者の人権保障問題について、国際人権法の観点および比較法的観点から検討することである。そのために、まず、日本における非正規滞在者の実態を把握するとともに、彼らの退去強制に際する人権保障問題について、日本国内における関連する国際人権諸条約の条文解釈および条約履行の現状を把握することに努めた。次に、ヨーロッパ人権裁判所の関連判決の分析を行った。そして、比較法的な視点から得た示唆を踏まえて、日本における非正規滞在者およびその家族の退去強制にかかる人権保障問題の所在を明らかにし、具体的な法的解決策について検討している。
著者
加藤 茂孝 棚林 清 鈴森 薫 川名 尚 竹内 薫
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.風疹ウイルスゲノムの増幅検出風疹ウイルスゲノムの増幅検出については、最終的に、(1)ウイルスRNAをグアニジン・フェノ-ル・クロロフォルムで抽出する。(2)RNAの逆転写後の相補的DNAのPCRによる増幅は2段階で行う(mested PCR)、(3)増幅DNAの検出は、アガロ-スゲル電気泳動後のDNA断片のエチジウムブロマイド染色による、事とした。2.妊娠中の風疹遺伝子診断妊娠中に発疹が出現し、風疹IgM抗体が検出された10症例について、抗体上昇以前の母血清6例、胎盤絨毛10例、治療中絶された胎児の組織5例について、ウイルス遺伝子の検出を試みた。陽性例は、血清2例、絨毛9例、胎児5例であった。胎児陽性例は全て絨毛陽性であったので、絨毛での陽性結果は、即、胎児陽性と診断して差しつかえないものと考えられた。3.風疹感染胎児におけるウイルス増殖部位臓器別に遺伝子検出を行なった胎児の症例について、ウイルス遺伝子陽性は、胎盤、腎、肝、脳、〓帯の各臓器であり、胎児感染は全身感染であると思われた。陰性の臓器は、脾、心、肺、眼、胸腺であった。この時、胎児血の風疹IgM抗体は陽性であったので、〓帯血IgM抗体陽性とウイルス遺伝子陽性、即ち、胎児でのウイルス増殖とが相関していることが確認された。4.先天性風疹症候群患児からのウイルス遺伝子の検出出生した患児の髄液、リンパ球、血清、咽頭ぬぐい液、尿、白内障手術の為摘出したレンズからも遺伝子が検出され、胎内持続感染であると思われた。
著者
加藤 茂孝 吉川 泰弘 海野 幸子
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

風疹ウイルスは先天性風疹症候群(CRS)を引き起こす原因ウイルスであるが、この風疹ウイルスの病原性と流行様式との解析を目的として、我が国を含むアジア地域における分離ウイルス株の遺伝子RNAの塩基配列を比較し、分子疫学的研究を行った。RNAの中のE1翻訳領域1443塩基を含む1484塩基を主な対象として、塩基配列を決定した。使用したウイルス株は15株あり、日本12株(1960年代5株、1990年前後7株)、香港2株(1980年代)、中国1株(1980年)である。分析の結果(1)1960年代の日本においては、少なくとも3グループのウイルス株が同時に平行して流行していたと思われた。3グループは、それぞれ西日本、中日本、東日本の3地域に対応していた。(2)1990年頃の日本においては、1960年代とは異なったグループの株が全国的に1グループで流行していた。(3)中国大陸の株は、日本の株とは別のグループに属すると思われる。その中では、中国株と香港の1株との間に強い近縁関係が見られた。(4)弱毒化した日本のワクチン3株においてその原株との比較ができたが、弱毒化に共通した変異は、見られなかった。弱毒化に関与する部位が株毎に異なるのか、または、E1以外の他の領域が関与しているのか、の何れかであると思われた。(5)CRS患者からの分離株においては、同じグループに属していても変異数が多いという傾向があり、持続感染による影響があった可能性が考えられた。
著者
小池 説夫 林 高見 山口 知哉 吉田 均
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

通常の花が咲くイネに比べて、花が咲かない突然変異の閉花性イネは、暑さ(38℃)あるいは寒さ(12℃)の温度処理いて稔実歩合が高く、障害を受けにくかった。閉花性イネは、めしべの上に受粉する花粉の数が非常に多く、また発芽している花粉数が通常のイネに比べて多かった。閉花イネでは花の中の温度が外気温より2℃低いことが分かった。このことが暑さの害を低くしていると推測された。
著者
石川 隆紀 前田 均 道上 知美 富田 正文
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,覚醒剤・向精神薬乱用者の中枢神経系および内分泌系組織について,アルツハイマー病やクロイツフェルトヤコブ病などの神経変性疾患で増加することが知られているアポリポプロテインE4,アポリポプロテインBおよびアポリポプロテインJの発現動態を免疫組織化学的手法および分子生物学的手法(mRNA発現)を用いて解析した.その結果,部位による発現の相違はあるものの,火災,熱中症および凍死などの異常温度環境下においてアポリポプロテインの発現に加え,薬物乱用者におけるアポリポプロテインの発現が明らかとなった.
著者
松村 潔 小林 茂夫
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究ではマウスの脳出血-発熱モデルを作成し、血小板由来サイトカインCD40Lが発熱に関与している可能性を検討した。マウス視索前野へのコラゲナーゼ投与は脳出血を引き起こし、発熱とシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の発現を引き起こした。CD40Lの脳内投与は発熱と脳血管内皮細胞でのCOX-2発現を引き起こした。これらの結果はCD40Lが脳出血時に内因性発熱物質として働く可能性を支持する。
著者
奥野 充
出版者
福岡大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

過去の火山噴火は,噴火堆積物と火山地形に記録されている。この研究において,(1)地形図や空中写真による地形観察,(2)地形・地質学的調査および試料採取,(3)放射性炭素年代測定などから,高分解能な噴火史を編年することを試みた。調査対象としては,大雪山旭岳,北八甲田,焼岳,由布岳,霧島,姶良カルデラなど,北海道から九州までの諸火山である。まず,テフラ直下の腐植土の放射性炭素年代がテフラの噴出年代を示すことを利用してこれらの火山の高分解能な噴火史を構築した。最近約1万年間の完新世では,放射性炭素年代から較正された暦年代を用いて議論する必要があり,ウイグルマッチング法による年代推定が有効であると考えられる。そこで,テフラを挟在する泥炭層を測定試料として,この方法が適用可能であるかも検討した。霧島火山についての予察的結果では,腐植土から推定された年代とも良く一致しており,その適用の可能性が示唆された。また,大雪山旭岳では,泥炭層中に4枚のガラス質火山灰層を識別し,EPMAによる火山ガラスの化学組成からB-Tmなどの広域テフラに対比した。テフラと同時に泥炭層も採取しており,この火山でも泥炭層の放射性炭素年代を用いたウイグルマッチング法を検討する予定である。この研究で確立された噴火史の高分解能な編年は,火山噴火の中・長期予測の基礎資料としてだけでなく,考古遺跡の編年や古環境復元など,隣接した分野の研究にも活用されることが期待される。
著者
岡田 吉史
出版者
室蘭工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、心の状態にかかわる遺伝子発現データの解析支援を目的として、1)個々の心理状態で特有の発現パタンを示す遺伝子群(モジュール)を抽出する新しい手法を開発し、2)抽出されたモジュールとその生物学的機能情報を集積したデータベースを構築した。これにより、複数の公共データベースに分散して存在する発現データが本システム上に整理・組織化され、生物学的に有用なモジュールを容易に発見できるようになった。
著者
出世 ゆかり
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

落雷活動は、積乱雲内の降水粒子の種類とその時空間分布に密接に関係している。本研究では、偏波レーダー観測データと落雷観測データを用いて、夏季に観測された雷雲のうち顕著な落雷特性を示した事例について雷雲の雲微物理構造とその時間発展を詳細に解析した。負極性落雷が卓越した活発な雷雲では、雷雲発生後10分程度で落雷活動が開始した。また、落雷が不活発だった雷雲では雨滴が強降水域を構成していたのに対し、落雷が活発だった雷雲の強降水域は霰が主な構成粒子であった。さらに、夏季にはまれな正極性落雷が卓越した雷雲では、雷雲中層に湿った霰が広範囲に分布しそれらが正に帯電したことが、正極性落雷の発生に重要であったと示唆された。
著者
高橋 修平 佐々木 正史 大橋 鉄也 川村 彰 榎本 浩之 鈴木 聡一郎 高橋 清 亀田 貴雄 菅原 宣義 堀 彰 舘山 一孝 中山 恵介
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

研究課題について次のような成果を得た。(1)知床半島は海氷の流れに対して「せき止め効果」を持ち、北海道で最も長く海氷が接岸する。(2)知床峠の山間部では吹き払いによる無雪区間と5m以上の吹きだまり区間と地形に依存する積雪特性が得られた。(3)知床半島で陸生動物も入った栄養塩循環が確認された。(4)送電線がいしに海塩汚損と着氷による電力障害を観測し、低温実験室内でも再現できた。(5)雪氷環境と人間社会に関する様々な課題が研究された。
著者
佐藤 勝明 玉城 司 伊藤 善隆 神作 研一 藤沢 毅
出版者
和洋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

『続猿蓑』の連句について付合分析を行い、「かるみ」が高度な思考活動と句作段階での捨象・推敲を伴って実現することを、明らかにした。それが同時期の俳壇全体の中でどう位置付けられるかを明らかにするため、元禄期の全俳書を調査し、その基礎的なデータを刊行した。その中から、地方俳書の一つである『備後砂』に着目し、その分析を通して、「かるみ」とは異なる地方俳諧の実態を明らかにした。
著者
高野 文英 太田 富久 石垣 靖人 矢萩 信夫
出版者
日本薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究代表者は研究機期間内に、冬虫夏草属菌が産生する消化管免疫調節物質の構成成分を明らかにする研究を行った。その結果、ハナサナギタケ培養物に強い免疫調節活性があり、精製の結果、糖タンパクであることが判明し、詳細な解析の結果、ペプチドは8種類のアミノ酸、糖はβ(1→3)グルカンから構成されることが分かった。さらに詳細な構造解析の結果、免疫賦活化高分子は多糖とペプチドの混合物であった。また、冬虫夏草属菌を用いた機能性食品等に配合されるプロアントシアニジンやニンニクについても経口免疫アジュバント活性を調べたところ、強い活性を示すことを明らかにすることができた。
著者
北村 玲子
出版者
山梨医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

メラニンは皮膚の色調を支配する因子の一つであり、メラノサイトのメラニン合成は周囲からのサイトカインやホルモンによって調節されている。なかでも周囲のケラチノサイト由来のサイトカインはメラノサイトの増殖、分化に関与していることが報告され、色素異常症の病因に関与している可能性がある。我々は色素異常症の患者皮膚を用いてメラノサイト増殖、分化に関わるサイトカインであるSCF、ET-1、GM-CSF、bFGF、IL-1、TNF-αの発現を免疫酵素抗体法及びRT-PCR法を用いて検討した。その結果、色素脱失症である尋常性白斑患者の皮膚では正常部に比べ白斑部表皮において免疫酵素抗体法ではその発現に明らかな差はみられなかった。しかしRT-PCR法を用いて正常部及び白斑部の表皮におけるサイトカインのmRNAの発現を検討したところ白斑部においてメラノサイト増殖に関わるサイトカインであるSCF、ET-1の発現はむしろ増加していた。またGM-CSF、bFGF、IL-1、TNF-αの発現に明らかな差はみられなかった。次に尋常性白斑患者の正常部、境界正常部、境界白斑部、白斑中央部メラノサイトにおける前述のサイトカインのレセプター(c-kit、ET-BR)及びメラノサイト関連蛋白であるチロシナーゼ、S100蛋白の発現をこれらに対する抗体を用いて免疫酵素抗体法を用いて検討した。この結果境界白斑部では、他に比べてc-kitの発現が有意に減少し、白斑中央部ではこれら蛋白の発現は認められなかった。このことから尋常性白斑患者における病変部でのメラノサイト消失の要因としてメラノサイト上のc-kitの発現異常が関与している可能性が示唆された。
著者
山室 信一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

明治国家は、欧米からの思想連鎖によって国民国家形成を進めた。しかし、そこでは国民国家としては幼体成熟ともいえる形で植民地領有国家すなわち帝国へと転化していった。しかしながら、これまでの日本のみならず欧米における政治学研究においても、この二重性をもった国家に関しての理論研究は、皆無であるような状況にある。こうした理論状況に鑑みて、本研究は植民地を有するに至った近代日本の統治システムが総体としていかなるものであったのかを史料的・理論的に整理し体系化することによって「国民帝国」という概念を新たに提起すべく、歴史的ならびに理論的に究明してきた。同時に、それによって明治国家の世界史的位相について新たな意味付けを行うとの目的をもって出発し、ウェストファリア体制以降の国際体系のなかにあった日本の近代国家としての二重性をもった国制的性格と法政理論の特徴について明らかにするという課題の下に史料的蒐集と論理的精緻化を図ってきた。ここで国民帝国とは「主権国家体系の下で国民国家の形態を採る本国と異民族・遠隔支配地域から成る複数の政治空間を統合していく統治形態である」と定義した。そのうえで、国民帝国とは(1)世界帝国と国民国家の拡張でありつつ、各々がその否定として現れる矛盾と双面性を持ち、(2)その形成・推進基盤が私的経営体からナショナルなものに転化し、(3)世界体系としては、多数の帝国が同時性をもって争いつつ手を結ぶという競存体制とならざるをえず、(4)その本国と支配地域とが格差原理と統合原理に基づく異法域結合として存在するものである、という4つのテーゼに収斂するものであることを提起した。今後は、王朝家産帝国の崩壊から国民国家が形成されたと見なされてきた中国が、むしろ家産帝国性を残したまま国民国家となったという意味で、日本とは逆方向での国民帝国となったのではないかという仮説を論証していきたい。
著者
池川 清子 吾妻 知美 西村 ユミ 守田 美奈子 蓬莱 節子 仁平 雅子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

看護の高等教育化が急速に進展しつつある現在、看護学の学的基盤の確立が急務である。本研究では、研究代表者である池川が長年と取り組んできた「看護学の実践学的パラダイム」を基礎理論として、看護学固有の対象と方法を明確にすることをとおして、実践学としての看護学をより詳細に特徴づけ、基礎づけるものを明確にした。本研究の成果は、おおよそ以下の5点に要約される。1.看護学を実践学的パラダイムの視座から体系化するという試みは時代の要請であり、実践を目的とする看護理論の構築という観点からも、今、世界が向かおうとしている動向である。2.看護学を実践学として基礎づけるためには、科学的パラダイムとは異なる方法論の吟味が必要である。本研究では、看護の現象を看護者と看護を必要とする相手とのかかわりの中から立ち現れる出来事として捉え、従来の看護学を現象学的視点から問い直した。3.実践学としての看護学の前提を明らかにするためには、看護実践の構造の解明が不可欠である。本研究では、看護実践と言語、看護実践と行為・技術、看護実践と経験の諸点から看護実践の構造を明らかにした。4.実践学としての看護学の研究方法として、看護の現象をありのまま生き生きと捉える方法として、現象学的解釈学の有用性を明らかにした。5.これまで抽出が困難であった看護実践者の経験を現象学的記述による、方法としての「対話」を確立した。
著者
尾嶋 史章 近藤 博之 阿形 健司 荒牧 草平 近藤 博之 阿形 健司 荒牧 草平 白川 俊之 多喜 弘文 西丸 良一 古田 和久 吉田 崇
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では教育達成過程の国際比較を行うことによって、教育機会格差が生じるメカニズムの日本的特徴を明らかにした。特に中心においたのは、PISAを用いた青少年の学力形成に及ぼす家庭背景の影響である。入学試験による選抜と学校の階層構造、学校外教育など異なる学校教育システム下における家庭背景と生徒の学力形成との関係を分析した結果、日本を含めた東アジアの国々は欧米諸国とは異なる教育達成過程を持つことが明らかになった。
著者
森 仁志 榊原 均
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

茎のプラスチドに局在し、頂芽切除によって変動するタンパク質を網羅的に同定することで、茎のオルガネラを理解し、腋芽の成長制御をオルガネラの観点から解析することを目的としている。頂芽切除前後のエンドウの茎からプラスチドを調製し、両プラスチドに含まれるタンパク質で量が変動するものを、質量分析法を用いた比較プロテオーム解析により検索した。比較プロテオーム解析は、質量の異なる修飾基(^<12>Cが^<13>Cに置換してある)を用いて、比較する試料を標識し、両者の量比を比較することによって行った。今年度はICPL(Isotope Coded Protein Labeling)法とNBS(13CNBS Stable Isotope Labeling)法で比較プロテオーム解析を行った。ICPL法では、まず両試料のタンパク質群のLys残基のε-アミノ基をニコチン酸(^<12>C_6/^<13>C_6)-NHSで修飾した。次にタンパク質群の複雑度を下げるために、SDS-PAGEでタンパク質を分画し、ゲルを87片の短冊に切り出した。各ゲル片をトリプシンでin gel消化し、生じたペプチド断片を逆相クロマトグラフィーで約50の画分に分画し、MALDI-TOF MSで解析した。質量差が6マスのペアペプチドイオンを探し、両者の量を比較した。その結果、頂芽切除前と切除3時間後、6時間後で量比に変化のあるペプチドが見いだされたが、概ね2倍以内の差であった。一方、NBS法ではタンパク質中のTrp残基を質量の異なるNitrobenzenesulfenyl(NBS)基(^<12>C_6/^<13>C_6)で特異的に修飾した。標識したタンパク質群をトリプシンで消化後、標識されたペプチドを、標識によって増加したペプチドの疎水性を利用しPhenyl Sepharoseカラムで濃縮した。このことによりペプチドの複雑度を下げることができた。8画分に分画した溶出試料をMALDI-TOF MSで解析し、質量差が6マスのペアペプチドイオンを探し、両者の量を比較した。しかし、ICPL法の場合と同様に顕著な差のあるペプチドを検出することはできなかった。
著者
井上 孝夫
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本の海岸は、だれもが利用可能な開かれた空間(コモンズ)である。そのような性格を持つ海岸について、利用しながら保全する方法を探究した。具体的なフィールドとして、千葉県内の主要な海水浴場を事例とした。調査の結果、営利に偏った利用の制限は定着したが、利用者の利便施設の設置については不十分であり、停滞していることがはっきりとした。公益性を備えた海の家の設置や、利用を第一に考えた防護施設の整備が強く求められている。
著者
濃沼 信夫 伊藤 道哉
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

最近の癌治療は、初期治療に加えて長期フォローアップの重要性が増している。技術進歩等で長期生存者が増加し、失われた機能の回復や再発の防止が大きな課題になってきたためである。しかし、フォローアップの方法や有効性について、経済面からの検討はほとんどなされていない。本研究は、癌手術後のフォローアップ体制や投じる資源の妥当性を、医療経済の観点から検証することを目的とする。大腸癌の術後ファローアップを類型化し、再発形式、生存予後、患者QOL、医療費を比較するシステムモデルをMarkovモデルに準じて開発した。モデルのパラメータの算出には、大腸癌術後フォローアップ研究会に登録されたデータ(大学病院を中心とする全国16施設、結腸癌3,092例、直腸癌2,507例、観察期間5年)を用いた。モデルにこれらパラメータを投入して、費用便益分析等を実施した。Stage Iの結腸癌は814例、直腸癌は785例である。これらの癌の術後フォローアップによる救命数増加は各4.0%、5.5%であり、純便益は各9,221万円、1億6,396万円、医療費の減少は各768万円、1,056万円、費用と便益の差額は各3億5,943万円、1億2,735万円である。再発後生存率は、現在、結腸癌15.0%、直腸癌33.3%である。すなわち、医療経済の観点からは、結腸癌ではファローアップ費用の低減が絶対条件となり、直腸癌では再発後生存率を改善することが重要と考えられる。一方、Stage IIの結腸癌は1,270例、直腸癌は790例である。このうち再発は各170例、180例、再発後の生存数は各47例、35例である。フォローアップの平均費用を、平成16年の医科診療報酬点数表をもとに算出すると、再発1人発見に要する費用は、結腸癌195万円、直腸癌132万円である。また、1人救命に要する費用は各704万円、679万円であり、これは社会的に支出を容認されうる水準と考えられる。フォローアップによる救命数増加は、結腸癌18.5%、直腸癌13.0%である。大腸癌術後フォローアップの経済的効果は十分高いと考えられる。