著者
中村 和彦 杉山 登志郎
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

虐待関連性発達障害(自閉症様症状およびADHD様症状)を呈する成人患者に対してPET研究を行った。脳内ドパミンD1受容体の増減で、虐待関連性発達障害の病態がわかり、鑑別ができる可能性がある。虐待関連性発達障害のトラウマ処理の技法として、短時間で行うチャンスEMDRを開発しトラウマ処理への効果を見出した。少量薬物療法について、神田橋條冶による漢方処方のトラウマへの効果、少量抗精神病薬の併存症への効果を見出した。
著者
村山 綾
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、(1)宗教性の程度によって、不運に対する公正推論(公正な世界の存在を求めるがために行う、「悪いことをしたら必ず罰を受ける」に代表されるような非合理的な推論)のしやすさに関する文化差が説明できるのか、(2)公正推論と時間認識との関連を検討した。そして、(1)日本人はアメリカ人よりも宗教への熱心さや信仰心が低く、遠い未来の補償をもって現状の不公正を回復しようとする推論を行いにくいことが示された。また、日本人では、現在に対してポジティブな印象を持つ若者と高齢者、および、将来の見通しを立て、未来に向かって計画的に行動しようとする高齢者において、究極的公正推論が行われやすいことが示された。
著者
澤井 秀次郎 坂井 真一郎 坂東 信尚 丸 祐介 永田 晴紀 後藤 健 小林 弘明 吉光 徹雄
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-05-31

空気吸込式エンジンを用いるスペースプレーンの実現に向けて,飛行実証を通して基盤となる技術を獲得するために,気球による高高度からの落下と小型ロケットブースターによる加速を組み合わせた高速飛行実証システムの構築を目指した.飛行軌道検討を主としたシステム概念検討を行った.その結果を踏まえ,飛行実験機の試作研究を行った.試作研究を通して,システム統合および飛行制御系技術の実践研究を行った.さらに,スペースプレーンに必要な技術として,空力設計技術の研究を行った.実験オペレーションまで想定した実験計画を検討し,本システムのメリットに加え,課題も整理した.
著者
内田 忠賢
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

全国各地に伝播した「よさこい祭り」について、調査・研究した。本研究の特色は次の4点。1)現代の社会現象を代表する対象だが、先行研究が少なく、先駆的、独創的と自負する。2)巨視的な調査と微視的な調査を組み合わせ、個人に踏み込んだ新しい地理学を目論む。3)助成期間(3年間)、参与観察に徹し、内部者しか体験できない過程を調べられた。4)学術論文、学会発表だけでなく、マスコミ報道でも、研究成果の一部を公表できた。高知起源(1954年開始)の「よさこい祭り」は、90年代以降、札幌「YOSAKOIソーラン祭り」の影響で、各地に伝播した。独自性と地域性を上手く出せ、比較的安上がりなイベントだからである。鳴子踊りと民謡の組合せが基本だが、振付、音楽、衣装等が自由であるため、全国600カ所以上に伝播した。本研究では、全国で関連資料を収集し、現地調査を行った。特に千葉県内での伝播に着目した。県内のチームに参加、遠征や祭りの企画・運営に関わった。千葉県では、全国大会も始められた。ともかく、伝播のメカニズムとして、次の3点を指摘できる。1)応用が利く「よさこい祭り」は各地で受容されたが、常に、イノベータが存在する。2)インターネットを含む現代的なネットワークと都市的な人間関係が核心にある。3)商工会とNPO、匿名性を帯びる個人が、絶妙のバランスで組合わされる。
著者
横堀 伸一
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

尾索動物の複数ミトコンドリアゲノムの全塩基配列の決定を行い、一次配列とそれ以外の高次情報に基づいて分子系統解析を行い、尾索動物の進化経路を明らかにすることを試みた。特に、ヒカリボヤPyrosom atlanticumのミトコンドリアゲノム配列の情報を加え、尾索動物の分子系統解析を行うと、タリア綱は腸性目の群内郡となり、腸性目ホヤ(管鰓亜目と無管亜目)が側系統群である可能性が示唆された。特に、ユウレイボヤ科ユウレイボヤ亜科が無管亜目の姉妹群に、またユウレイボヤ科ムネボヤ亜科が無管亜目の内群である可能性が示唆された。
著者
加藤 隆宏
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では、ヒンディー語、サンスクリット語、ネパール語などの諸語に用いられるインド系文字の一つ、デーヴァナーガリー文字を読み取るための光学文字認識(OCR)ソフトウェアを開発し、その技術を用いて読み取った文献群のデータベースを構築する。研究の第一段階では、これまでなかった高精度のOCRの共同開発を試み、第二段階では開発された文字認識ソフトウェアを利用して、世界各国で先行する同様のプロジェクトを凌駕しうるような規模の電子テキスト・データベース構築に向けて準備を整えたい。
著者
張 子見
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

今年度は、当初から研究計画であった、福島第一原子力事故由来のホットパーティクル(HP)の破壊分析に史上はじめて成功した。帰宅困難区域で採取された環境試料から、オートラジオグラフィーによって強放射能源の位置を特定し、最終的に顕微鏡下でHP粒子を取り出した。単離されたHPを、高純度ゲルマニウム半導体検出器で測定し、HPに含まれる放射性セシウムを定量した。この放射能測定の結果から、Cs-134/Cs-137放射能比が得られる。この放射能比は、福島第一原子力発電所の原子炉ごとに異なる値をとるため、それらの値との比較から、今回採取されたHPがすべて一号機から放出されたことが推測できた。アルカリ溶融法によってHPを溶液化したのち、固相抽出―イオン交換法によってSr-90を分離した。分離されたSr-90を含む溶液をチェレンコフ光測定することで、Sr-90の放射能を定量した。これまで、計6つのHPに対して上記のSr-90分析を行った。HPに含まれるSr-90は最大で1.3 Bqであった。また、Sr-90/Cs-137放射能比は、すべて0.0001のオーダーであった。これらの結果から、今回分析対象としたHPのSr-90の含有量は低く、Sr-90による人体への被ばく影響はCs-137に比べて無視できると言える。この傾向は、事故後に行われた大規模な陸域の調査からも知られている。一般的に、原子炉過酷事故において、Csは、核燃料から放出されやすい揮発元素として知られており、Srは、比較的放出されにくい非揮発性核種として知られている。定性的にいえば、SrはCsに比べて核燃料からの放出率が低いために、最終的に環境中に放出された放射性物質のSr-90/Cs-137放射能比は低い傾向にある。これら成果は、測定試料の公開手続きを経て、随時論文化して発表する予定である。
著者
宗景 志浩 山本 由徳 吉田 徹志 宮崎 彰 加藤 伸一郎 加藤 伸一郎 バクタ ジャティンドラ ナース
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ヴェトナムのエビ養殖池及びその周辺の底泥を採取して, 抗生物質, 重金属, 富栄養化物質の濃度を調べ, あわせて耐性菌の出現率や抗生物質の抵抗性に関する実験を行った。食料生産の場であるにもかかわらず, 重金属濃度は高く, 環境基準値を大きく超えるものもあった。多くの抗生物質や薬剤が使われており, 生物濃縮が危惧される。保全対策として光触媒と紫外線用いた蓄積抗生物質の分解, シリカセラミックを用いた重金属吸着除去法について研究した。
著者
久場 敬司 木村 彰方
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

新規ACE ファミリー分子であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)はアンジオテンシンII を分解してレニン-アンジオテンシン系を負に調節し、心血管機能の制御などに関与する一方で、SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスの受容体であるとともに、急性肺傷害において肺保護作用を発揮する。しかしながら、その肺保護作用の分子細胞メカニズムは不明であった。本研究課題において、私たちはACE2 の発現が酸化ストレスにより制御されることを見出し、遺伝子改変マウスを用いた解析からアンジオテンシンを介したマクロファージの活性化が重要であることを明らかにした。さらに酸化ストレスによる酸化リン脂質の産生を介した自然免疫シグナルの過剰な活性化が、SARS のみならず高病原性H5N1 インフルエンザによるARDS/急性肺傷害の病態発症に重要であることを見出した。実際にSARS などに加えて幅広い原因によるARDS/急性肺傷害の患者検体の肺病理組織においても酸化リン脂質の産生が認められた(Cell, 2008)。これらの成果は、SARS、急性肺傷害の治療のみならず幅広い疾患の病態解明、新しい治療法の開発に貢献することが期待される。
著者
木舩 崇
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、最も頻度の高い神経発達障害の一つである。ASDの発症には、松果体系とドーパミン系の機能不全が関与する可能性があり、それぞれ独立してASDへの関連が研究されてきた。しかし、松果体から分泌されるメラトニンは、睡眠導入の他、抗酸化、抗炎症、抗アポトーシスなど多様な作用を示すことから、この両者の間にはASDの発症に関する病理学的相互作用が推定される。本研究では、病態モデルとしてASD児から供与された乳歯幹細胞(SHED)をドーパミン作動性ニューロン(DN)に分化誘導し、両者の相互作用を細胞生物学的解析により明らかにする。本研究は、ASDの発症機序解明と治療法開発に寄与すると期待できる。
著者
佐藤 佳亮
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、オキシトシン受容体(OXTR)の担う機能のうち、母性行動・社会識別行動・体温調節を制御する脳領域を明らかにすることを目的とした。その実現のため、Oxtr-floxedマウスとAAV-Creベクターにより脳領域特異的なOXTR欠損マウスを作成後、各試験に供し、表現型を観察した。この結果、昨年までのOxtr欠損マウスとAAV-Oxtrベクターを用いた研究と合わせ、生理機能や社会行動を制御するOXTRが発現する脳領域を明らかにした。さらに、より限定的な、ニューロン種特異的な可視化・活性化/抑制化のため、Cre組換え酵素依存的に導入遺伝子が発現する実験系を構築した。特に、オプトジェネティクスによるニューロンの活性化を可能とする、Cre依存的チャネルロドプシン発現AAVベクターを作製し、実用化にこぎつけた。現在当研究室で開発中のOxtr-Creマウスと組み合わせて使用することで、OXTR発現ニューロン特異的な刺激が可能となった。以上の結果は、広範囲にわたって発現しているOXTRの脳領域特異的な機能を明らかにしたものであり、OXTRのより詳細な理解につながった。OXT/OXTRについては現在精神疾患の治療ターゲットの1つとして考えられており、脳領域特異的な機能を明らかにすることは、候補医薬品の作用メカニズム解明等にもつながる。また、オプトジェネティクスについては、OXTR発現ニューロンの刺激による行動制御の可能性につながる成果である。
著者
田畑 稔 江島 伸興
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

利得が空間経済学のDSKモデルによって記述される空間的進化ゲームを構築することにより,人口移動による人口集中現象の数学的性質を明らかにした.この進化ゲームは人口増加率がDSKモデルの解作用素を含むリプリケーター方程式の初期値問題で記述される.この方程式の解がDiracのデルタ関数に収束することの証明ができた.これにより実質賃金密度の地理的不均衡により人口移動が発生し,これによって白血病ウイルスがどのように広がっていくのかを明らかにすることができた.
著者
高橋 睦子 小川 富之 メルヴィオ ミカ 立石 直子 片岡 佳美 藤田 景子 渡辺 久子 酒井 道子 平井 正三 中島 幸子 栄田 千春 岡田 仁子 手嶋 昭子 長谷川 京子 吉田 容子 可児 康則
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

面会交流に関する取決めや判決は、当事者たちの生活に長期にわたって影響をおよぼす。司法は申立てに対して調停や判決を下すが、その後の親子関係の状況や展開についてのフォローアップの機能は備えていない。子どもの最善の利益を保証するためには、司法のみならず、中長期にわたり子どもの成長・発達を把握し、必要に応じて専門家(臨床心理や児童精神科など)につなぐ社会制度の構築が重要である。幼児も含め子どもの本心に真摯に寄り添いつつ、面会交流について適切に判断し当事者らが必要とする支援を行うためには、乳幼児や子どもの発達に関する最先端の知見や情報を専門領域の境界を超えて共有することが重要である。
著者
楠見 孝 子安 増生 道田 泰司 MANALO Emmanuel 林 創 平山 るみ 信原 幸弘 坂上 雅道 原 塑 三浦 麻子 小倉 加奈代 乾 健太郎 田中 優子 沖林 洋平 小口 峰樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,課題1-1「市民リテラシーと批判的思考のアセスメント」では市民リテラシーを支える批判的思考態度を検討し,評価ツールを開発した。課題1-2「批判的思考育成のための教育プログラム作成と授業実践」では,学習者間相互作用を重視した教育実践を高校・大学において行い,効果を分析した。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では,哲学と神経生理学に基づいて推論と情動を検討した。さらに市民主体の科学コミュニケーション活動を検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」では,放射能リスクに関する情報源信頼性評価とリテラシーの関連を調査によって解明し,情報信頼性判断支援技術を開発した。
著者
平野 史朗
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

地震時に断層面上の滑り速度が満たすべき偏微分方程式の、最も基本的な形式を考察した。従来の震源物理学における順問題的アプローチとは異なり、地震波の観測から知られる経験則を満たすという要請から出発することで、Klein-Gordon 型という方程式を導いた。この方程式はこれまでにも順問題的に提唱されたことがあったが、全く異なる方向から類似のモデルが導かれることを示したのがひとつめの主要な結果である。次いで、この方程式に確率的な揺らぎをもたらすノイズ項を付加したものが断層の支配方程式であると考え、そのノイズが満たすべきパワースペクトル密度について考察した結果、まずはこの方程式についてのインパルス応答を調べることが重要と判断した。そこで差分法によりインパルス応答を近似計算したところ、方程式に含まれるパラメタ間の比に応じて、断層滑りが波のように伝播する場合と、拡散する場合の2通りが得られることが分かった。前者は通常の地震の振舞いとしてよく知られるが、後者はスロー地震のモデルとして提案されていたものであり、それらを包括的に説明しうるモデルであると考えることができる。また、それらパラメタの正負が断層面上の摩擦則において考えられてきた滑り距離依存性と滑り速度依存性に関係することも見出された。以上の結果を、12月の American Geophysical Union 2019 Fall Meeting にて公表し、他研究者と議論した結果、今後の方向性についていくつかの可能性が得られた。
著者
江島 亜樹
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ヒトを含む多くの動物では脳内のモノアミン神経伝達物質が「快」「不快」などの情動を決定している事が知られている。本研究では、ショウジョウバエオスの求愛行動制御機構を足がかりとして、動物の気分(情動)変化を脳内モノアミン量の変化をパラメーターとして表現する事を目標に行われた。昆虫の主要モノアミンであるドーパミン、セロトニン、オクトパミン生合成に関わる遺伝子、各受容体の遺伝子の突然変異体の行動解析を行ったところ、複数の変異体において求愛率の低下が見られる事が確認され、その中でも一過的な作動剤投与によりオスの求愛行動を即効的に上昇させる神経伝達物質の同定に成功した。
著者
矢内 勇生 東島 雅昌 清水 直樹 鷲田 任邦
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、選挙タイミングの決定要因とその帰結について、民主制だけでなく、独裁制も対象にして分析する。選挙タイミングの変更が制度的に予定されている議院内閣制の国々だけでなく、選挙タイミングが固定されているはずの大統領制諸国も合わせて分析し、選挙タイミングを包括的に理解することを目指す。具体的には、(1) 選挙タイミングの決定要因、(2) 選挙タイミングが選挙結果などのマクロな政治的結果に与える影響、(3) 選挙タイミングが有権者の態度や行動などのミクロな政治的結果に及ぼす影響の3点を明らかにする。
著者
小田 康徳 原田 敬一 赤澤 史朗 佐久間 貴士 原田 敬一 赤澤 史朗 佐久間 貴士 大谷 栄一
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大阪市天王寺区内所在の旧真田山陸軍墓地内納骨堂に合葬される骨壺等1件ずつについて、納骨堂内の所在場所、戦没者氏名、所属部隊、階級、戦没地、戦没年月日、本籍地、現住所、遺族、遺骨の有無、同梱物などに分類してデータ化を進め、その結果、件数は8249件、実際の合葬者数は8230人前後という事実が判明した。なかでも戦局が絶望的となった1944年、45年には急増する戦没者(大阪府だけで約9万7千人と推測)のうち、わずかに1303人分の合葬しか実現できていないこと、しかもそのうち約7割が遺骨なしの状況であることを解明した。