著者
日浦 幹夫 織田 圭一 石渡 喜一 前原 健寿 成相 直 牟田 光孝 稲次 基希 豊原 潤 石井 賢二 石橋 賢士 我妻 慧 坂田 宗之
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.297-302, 2017

<p>運動介入が脳機能の保持・改善に重要な役割をもつことが疫学および臨床研究により提唱されてきた.運動が脳機能に及ぼす影響と関連する生理学的背景を探索する目的で,PETを活用して有酸素運動による局所脳血流量(regional cerebral blood flow: rCBF)と脳μ-オピオイド受容体系の変化を検討した.oxygen-15-labeled water(<sup>15</sup>O-H<sub>2</sub>O)を用いたPET研究では有酸素運動中に一次運動感覚野,小脳,島皮質などで広範な脳領域でrCBFが増加することが示され,このような変化は局所の神経活動の亢進や周辺の神経受容体への影響を介して運動による神経可塑性の発現のメカニズムに関与することが推測される.<sup>11</sup>C-Carfentanil を用いたPET研究では有酸素運動後に生じるポジティブな気分変化や激しい運動に伴う疲労の発現に辺縁系や下垂体に分布するμ-オピオイド受容体系が関与し,その変化には運動強度の違いや気分変化の個人間差が影響することが提示された.PETを活用した神経画像研究は,運動に伴う脳機能変化のメカニズムに関与する要因であるrCBFおよび神経受容体系の変化を検証するために有用な手法である.</p>
著者
広瀬 直人 小野 裕嗣 前田 剛希 和田 浩二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.27-31, 2019
被引用文献数
2

<p>試験用黒糖製造において,仕上加熱工程と冷却撹拌工程を連続して実施できる,卓上型の黒糖試験製造装置を開発した.この装置は,PC制御されたマイクロヒーターと水道水利用の冷却管を備えた加熱冷却容器,および撹拌トルクを検出できる撹拌装置から構成される.この試験製造装置を用いて黒糖を試作する過程で,冷却撹拌工程の終了時に品温が上昇する現象を見出した.この品温上昇は,温度上昇幅と糖蜜の推定比熱からショ糖の結晶熱が要因と推測された.</p>
著者
藤原 幸一 坂根 史弥 宮島 美穂 山川 俊貴 加納 学 前原 健寿
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.4C1OS27a05, 2018

<p>京都市祇園で起きた軽ワゴン車の暴走により,多数の死傷者が出た痛ましい事故は記憶に新しい.事故原因としてドライバのてんかん発作が挙げられている.てんかんとは脳細胞のネットワークに起きる異常な神経活動のため,けいれんや意識障害などのてんかん発作を来す疾患である.てんかん治療の第一選択は抗てんかん薬であるが,3割の患者は薬剤では発作を抑制できない.しかし,数十秒前に発作を予知できれば,患者は発作までに身の安全を確保し,生活の質を改善できる.我々はこれまでに心拍変動(HRV)と異常検知アルゴリズムを組み合わせたてんかん発作予知技術を開発した.オフライン解析によると,感度90%以上,擬陽性率0.7回/hが達成されている.発作予知技術が実用化できれば,発作起始の前に即効性抗てんかん薬の服薬することなどにより,発作を抑制または軽減できると期待される.このような治療法をClosed-Loopてんかんケアと呼ぶ.現在,AMED先端計測プログラムにて,Closed-Loopてんかんケアの実現に向けた研究開発を行っている.本発表ではてんかん発作予知システム開発の現状と今後の見通しについて発表する.</p>
著者
前田 昌弘 髙田 光雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.756, pp.397-405, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
10
被引用文献数
3

This paper analyzed how Jizo-Bon, small-scale religious festivals held widely in Kyoto, contributes for improving resilience of “cho”, the basic communities in the central urban area of Kyoto. We clarified that inhabitants who has no involvement or quite limited involvement to “cho-nai-kai”, community management associations are joining management of Jizo-Bon. The result means Jizo-Bon is an opportunity for inhabitants to be involved in “cho” except for “cho-nai-kai”. In addition, it means Jizo-Bon provide “cho” with “redundancy”, another key factor of resilient communities in addition to “diversity”. We also clarified that it is caused with characteristics of Jizo-Bon described as follows. 1. Distribution of management loads to various inhabitants Loads for management of Jizo-Bon are distributed to the extent that each inhabitant can bear them. For example, people can join in the management only with "arranging place", "supporting events on the day" which is easier to bear than other roles as "manager of Jizoubon", "preparing for events" etc. It is also clarified that inhabitants who are usually difficult to be involved in communities as those who are not belong to "cho-nai-kai", those who moved in "cho" recently, single old inhabitants and apartment inhabitants participate in Jizo-Bon. It means Jizo-Bon contribute to "Diversity" of "cho". It is expected that the people involved in Jizo-Bon management to make roles also in "cho-nai-kai" in the future. However, the people differentiate the former involvement from the later as far as we analyzed in this paper. That make it possible the people who cannot bear much loads of "cho-nai-kai" management to be involved in "cho". 2. Flexible meaning corresponded with community situation Meaning of Jizo-Bon is flexible corresponding with situation of communities and people can join in it with their own purpose or motivation. The recognition about Jizo-Bon is different in the two "cho" communities selected as survey area in this paper. Inhabitants in "A cho", a community managed mainly by people who are living there for long term, recognize Jizo-Bon as "religious events" and "traditional events". On the other hand, inhabitants in "B cho", a community including people who moved in "cho" recently, don't recognize as "A cho" and accept it as rather for "communication among inhabitants" and "fan of inhabitants". It means that Jizo-Bon is sustaining by adding or changing meaning of itself corresponding with characters of community as its population structure. In addition, we also clarified that Jizo-Bon is an opportunity for people who moved inside the city to become familiar with their new community because Jizo-Bon is held widely in the urban area of Kyoto. The image of Jizo-Bon shared among citizens seems to be a key factor making it possible for various inhabitant to join and collaboratory manage it. Jizo-Bon is a resource which provide various inhabitants with opportunity to involve in communities depending on their situation and interest. It is precious especially in the context in which decrease of interest and lack of manpower for community management is serious problem. On the other hand, once Jizo-Bon is lost, it is difficult to restore because the characteristics of Jizo-Bon we clarified in this paper is acquired through long-term experience. It is necessary to advocate and measure for conserving Jizo-Bon for the future.
著者
田畑 肇 坂本 和仁 門倉 豪臣 蓑毛 博文 瀬戸山 孔三郎 谷口 康徳 福岡 香織 北村 知宏 所 和美 洲加本 孝幸 宮前 陽一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第38回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.20139, 2011 (Released:2011-08-11)

Fluoride is a natural component of the biosphere, the 13th most abundant element in the earth’s crust. Fluoride has been known to play an important role in mineralization of bone and teeth, and can be therapeutically used at low doses for dental care and prevention or at high doses for the treatment of osteoporosis. Particularly in cases of the development of a fluoride compound as a proprietary drug, liberated fluoride ions may bring the risk of causing dental or skeletal fluorosis in animals treated with high doses of fluoride drugs in toxicity studies. However, there are limited data on changes in fluoride levels in hard tissues of the body over animal life spans. In the present work, we obtained plasma, teeth (incisors and molars), bones (alveolar, femur and tibia) and nails from SD rats at 8, 11, 20, 33, 46, 59 and 72 weeks of age and determined fluoride levels individually. Fluoride accumulated time-dependently in bones, nails and molars in a similar manner, with fluoride levels increasing 2-3 folds from 8 to 72 weeks of age. In contrast, fluoride levels in plasma and incisors, which grow continuously in living rats, showed almost constant values. These data can be used not only as a historical database for the effective evaluation of data from toxicology studies, but also as a contribution to biological characterization of SD rats.
著者
前田 健一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.94, 2002

全国レベルでの規模拡大が進んでいない現状の中で、新潟県頚城村では経営規模の拡大が進んでいる点に注目し、規模拡大が展開している要因を考察することを本報告の目的とした。1969年以降からはじまった減反政策のさらなる強化や近年のさらなる米価の低迷は、全国的レベルで水稲作農業経営を困難なものとして、その対応に苦慮しており、低湿地を広く持つ頚城村でも例外ではなかった。畑作物の導入が困難な村の農業経営の安定にとっては、水稲作の大規模化が迫られている。このような状況のもとで、一部の個別経営農家や農業法人では積極的な経営規模の拡大が展開している。農地の流出元は「浜」の少ない面積を所有する多数の農家、「在」の大きな面積を所有する少数の農家が挙げられるが、近隣である上越市周辺の就業機会の深化とともに流動面積を伸ばした。
著者
前田 憲吾 清水 芳樹 杉原 芳子 金澤 直美 飯塚 高浩
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.98-101, 2019 (Released:2019-02-23)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

症例は48歳女性.43歳時に下肢硬直感が出現したが3か月で自然軽快した.両下肢の筋硬直が再発し,ミオクローヌスが出現し入院.意識清明,言語・脳神経は異常なし.両足趾は背屈位で,足関節は自他動で動かないほど硬直していた.神経伝導検査は異常なく,針筋電図では前脛骨筋に持続性筋収縮を認めた.血液・髄液一般検査は正常で,抗GAD65抗体・抗VGKC複合体抗体は陰性.脊髄MRIにも異常なく,症候学的にstiff-limb症候群(SLS)と考え,ステロイドパルス療法を実施し筋強直は改善した.その後,血液・髄液の抗glycine受容体抗体が陽性と判明した.プレドニゾロン内服後,再発はない.
著者
尾前 照雄 上田 一雄
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.207-217, 1985
被引用文献数
1

久山町住民間の老年者を用いて, その生理・生化学的特徴, 疾病, 死因について検討した. 対象とした集団は1961年, 1978年の断面調査時における満40歳以上の男女住民それぞれ1,621人, 2,190人であった. 追跡調査では1961年に設定した満40歳以上の男女1,621人 (第1集団) と, 1974年の同年齢階層の男女2,053人 (第2集団) について, 8年間の成績を比較した. また, 1961年から1981年の20年間における乳幼児を除く久山町住民連続剖検769例を用いて, 臓器重量の経年的変化や, 老年者疾病の特徴について分析した. 40歳以上の各年齢層毎に比較すると, 比体重は加齢とともに減少し, 同一個体の追跡結果では, その程度は男により著明であった. 30歳以上の連続剖検例について臓器重量の経年的変化をみると, 脳・肝・腎重量は加齢とともに減少したが, 心重量にはその傾向がみられなかった. 血液生化学値の加齢変化には男女差がみられたが, 男女共通に加齢とともに上昇するのはアミラーゼ, BUN, クレアチニンであり, 減少するのはアルブミン, LAPであった. 老年者の血圧については, 収縮期血圧は加齢に伴い上昇すると考えられたが, 老年期における変動には個体差が大きかった. 心血管系疾患に対する高血圧のリスクは老年者では減少するが, 収縮期血圧の上昇は, 心血管系疾患の危険因子として無視できなかった. 日本人における三大成人病の脳卒中, 心疾患, 悪性新生物の死亡率は加齢とともに増加した. しかし近年久山町住民間では高齢者死亡率の減少がみられ, 脳卒中死亡率の減少が一部関与していた. 老年者の脳卒中, 心疾患, 悪性新生物には, 症状の発現様式が典型的でない, 重複病変が多く存在する, これらの疾病によりADLが制限される, などの特徴があった. 剖検例における血管性痴呆, 老年痴呆の頻度はそれぞれ3.8%であり, 老衰は1.2%であった. 肺炎は合併病変として老年者の生命予後に重大な影響をおよぼした.
著者
松尾 浩司 前田 俊二 飯塚 正美 安野 拓也 西村 晃紀
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2017年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.69-70, 2017-03-01 (Released:2017-09-01)

昨今、刃物による傷害事件が後を絶たないため、刃物個々の威力を評価し、事件解決の手がかりの一つにすることを目的とする。本研究では刃物(洋包丁、三徳包丁)を被験物に突き刺し、被験物に刃物を突き刺すときの速度、変位、断面積、体積の時間推移とそれぞれの関係を調べた。測定方法は画像解析技術の一つである特徴点抽出を用いた。本報告では上記関係に基づき、刃物の威力を定量化した結果を述べる。
著者
前原 正美
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.44, pp.545-575, 2013-09-20

「人聞の幸福」=《相対的幸福》とは,他者や社会からより高い社会的賞賛=社会的是認を獲得するということであり,つまりは自分自身の存在価値の社会における他者と比較しての相対的優位性--富の大きさ,社会的地位や名声,能力や才能など--を獲得するプ ロセスのなかに自らの幸福を見いだす.という幸福のことである。「入聞の幸福」=《絶対的幸福》とは,現実の不完全な自分自身 =「良心」に従えない現実の自分自身から. 「良心」に従える完全な自分自身へと自分自身を創造してゆくことのなかに自らの幸福を見いだす.という幸福である。まさにそれは,スミスにとって真の意味での幸福であり,「良心」に従って自己を改善し.より完全なる自分を創造する.という意味で《絶対的幸福》 なのである。『道徳感情論』におけるスミスは. 「人間の幸福」 =《相対的幸福》論に加えて「人聞の幸福」論=《絶対的幸福》論を展開している。スミスの考えでは,最終的には「人間の幸福」は《絶対的幸福》を実現してゆ〈プロセスのなかにある。スミスは. 『国富論』において.資本蓄積の増進→富裕の全般化→高利潤・高賃金の実現→富の増大=物質的利益の増大→より高い社会的賞賛=社会的是認の獲得というプロセスのなかでの社会の全構成員の相対的地位の向上の実現可能性を資本蓄積論に基礎づけて論証したのだが,そうして万人が「人間の幸福」=《相対的幸福》の実現を目指し努力してゆけば.おのずと「見えざる手」を通じて万人が「人聞の幸福」=《絶対的幸福》の認識へと到達し 幸福の価値転換=意識転換を果たしてゆける機会を与えられてゆくであろう,と予想したのである。
著者
前岡 浩 松尾 篤 冷水 誠 岡田 洋平 大住 倫弘 信迫 悟志 森岡 周
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0395, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】痛みは不快を伴う情動体験であり,感覚的,認知的,情動的側面から構成される。したがって,知覚される痛みは刺激強度だけでなく,不快感などの心理的状態にも大きく影響を受ける。特に,慢性痛では認知的および情動的側面が大きく影響することが報告され(Apkarian, 2011),運動イメージ,ミラーセラピー,バーチャルリアリティなどの治療法が提案されている(Simons 2014, Kortekass 2013)。しかしながら,これらの治療は主に痛みの認知的側面の改善に焦点を当てており,情動的側面からのアプローチは検討が遅れている。そこで今回,痛みの情動的側面からのアプローチを目的に,情動喚起画像を利用した対象者へのアプローチの違いが痛み知覚に与える影響について検証した。【方法】健常大学生30名を対象とし,無作為に10名ずつ3群に割り付けた。痛み刺激部位は左前腕内側部とし,痛み閾値と耐性を熱刺激による痛覚計にて測定し,同部位への痛み刺激強度を痛み閾値に1℃加えた温度とした。情動喚起画像は,痛み刺激部位に近い左前腕で傷口を縫合した画像10枚を使用し,痛み刺激と同時に情動喚起画像を1枚に付き10秒間提示した。その際のアプローチは,加工のない画像観察群(コントロール群),縫合部などの痛み部位が自動的に消去される画像観察群(自動消去群),対象者の右示指で画像内の痛み部位を擦り消去する群(自己消去群)の3条件とした。画像提示中はコントロール群および自動消去群ともに自己消去群と類似の右示指の運動を実施させた。評価項目は,課題実施前後の刺激部位の痛み閾値と耐性を測定し,Visual Analogue Scaleにより情動喚起画像および痛み刺激の強度と不快感,画像提示中の痛み刺激部位の強度と不快感について評価した。統計学的分析は,全ての評価項目について課題前後および課題中の変化率を算出した。そして,課題間での各変化率を一元配置分散分析にて比較し,有意差が認められた場合,Tukey法による多重比較を実施した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】痛み閾値は,自己消去群が他の2群と比較し有意な増加を示し(p<0.01),痛み耐性は,自己消去群がコントロール群と比較し有意な増加を示した(p<0.05)。また,課題実施前後の痛み刺激に対する不快感では,自己消去群がコントロール群と比較し有意な減少を示した(p<0.05)。【結論】痛み治療の大半は投薬や物理療法など受動的治療である。最近になり,認知行動療法など対象者が能動的に痛み治療に参加する方法が提案されている。本アプローチにおいても,自身の手で「痛み場面」を消去するという積極的行為を実施しており,痛みの情動的側面を操作する治療としての可能性が示唆された。
著者
前岡 浩
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は不快感や不安感といった痛みの情動的側面について、特に非特異的慢性腰痛者を対象に脳機能および自律神経機能の側面から明らかにし,さらに,痛みの情動的側面に対する有効な治療手段についても検討することである.平成29年度は,まず平成28年度に実施した痛みの情動的側面に対する有効な治療手段についてさらに詳細に検証した.内容は,情動喚起画像を使用し,受動的に画像内の痛みの部位が消去されるのを観察する条件と被験者自らが積極的に画像内の痛みの部位を消去する条件を比較した.その際,心拍変動を測定することで自律神経系の変化も評価した.その結果,痛み閾値と耐性の増加,強度と不快感の減少,さらに交感神経活動の減少も認められ,痛みの情動的側面に対する有効なアプローチとして可能性を示すことができた.次に,非特異的腰痛者に対する経頭蓋直流電気刺激の痛みの情動的側面における有効性と鎮痛効果について検証した.腰痛を有する50名を無作為に5群に割り付け,左右一次運動野,左右背外側前頭前野への陽極刺激および左背外側前頭前野へのsham刺激の5条件を設定した.評価項目は圧痛の閾値と耐性,腰痛における日常生活の影響,破局的思考,特性および状態不安,痛みの強度および質,不快感の強度とした.その結果,圧痛閾値では左背外側前頭前野への刺激によりsham群と比較して有意な増加が認められた.刺激1週間後における破局的思考では,右一次運動野への刺激により左背外側前頭前野と比較し有意に減少した.腰痛の強度は,左一次運動野において,刺激直後と比較して24時間後に有意な減少を認めた.今回の結果から,有効な刺激部位の特定には至っていないが,一次運動野は痛みの感覚的側面,背外側前頭前野が痛みの感覚的側面および情動的側面の鎮痛に関与している可能性が示唆された.
著者
前田 憲多郎 岩井 克成 小林 洋介 辻 裕丈 吉田 誠克 小林 靖
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.198-201, 2018 (Released:2018-03-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は受診時51歳女性.6年前より頸部の重みを自覚.1年前から頸部伸展障害が増悪し,歩行障害が加わった.首下がりを主訴に当院を受診した.頸部伸展筋力低下,構音・嚥下障害,頻尿・便秘を認め,両側バビンスキー徴候陽性であった.歩行は小刻みかつ痙性様であった.頭頸部MRIで延髄・脊髄の萎縮を認めた.遺伝子検査でGFAPに本邦ではこれまで報告のない変異p.Leu123Pro(c.368T>C)を認め延髄・脊髄優位型アレキサンダー病(Alexander disease; AxD)(2型)と診断した.首下がりを呈する(AxD)の報告は散見されるものの,本例は首下がりを初発症状とした点が特徴であり,その機序に対する考察を加えて報告する.
著者
奥田 稔 高坂 知節 三宅 浩郷 原田 康夫 石川 哮 犬山 征夫 間口 四郎 新川 秀一 池野 敬一 松原 篤 稲村 直樹 中林 成一郎 後藤 了 小野寺 亮 遠藤 里見 亀井 民雄 室井 昌彦 馬場 廣太郎 島田 均 舩坂 宗太郎 大橋 伸也 鄭 正舟 小澤 実佳 八木 聰明 大久保 公裕 後藤 穣 服部 康夫 上野 則之 柏戸 泉 大塚 博邦 山口 潤 佃 守 池間 陽子 坂井 真 新川 敦 小林 良弘 佐藤 むつみ 山崎 充代 藤井 一省 福里 博 寺田 多恵 小川 裕 加賀 達美 渡辺 行雄 中川 肇 島 岳彦 齋藤 等 森 繁人 村上 嘉彦 久松 建一 岩田 重信 井畑 克朗 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 増田 佐和子 村上 泰 竹中 洋 松永 喬 上田 隆志 天津 睦郎 石田 春彦 生駒 尚秋 鈴木 健男 涌谷 忠雄 宮國 泰明 夜陣 紘治 森 直樹 田頭 宣治 宮脇 浩紀 青木 正則 小林 優子 高橋 正紘 沖中 芳彦 遠藤 史郎 池田 卓生 関谷 透 奥園 達也 進 武幹 前山 忠嗣 恒冨 今日子 増山 敬祐 浅井 栄敏 土生 健二郎 中崎 孝志 吹上 忠祐 角田 憲昭 渡辺 隆 野口 聡 隈上 秀伯 吉見 龍一郎 茂木 五郎 鈴木 正志 大橋 和史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.633-658, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
21

通年性アレルギー性鼻炎患者211例を対象に, KW-467910mg/日 (KW群) の有効性, 安全性および有用性をoxatomide 60mg/日 (OX群) を対照薬として多施設二重盲検群間比較試験により検討した.最終全般改善度の「改善」以上は, KW群61-6%, OX群57.6%で, 両群間に有意差は認められなかつたが, 同等性の検証を行った結果, KW群はOX群と比較して同等ないしそれ以上と考えられた. 概括安全度の「安全性に問題なし」と評価された症例は, KW群68.0%, OX群61.4%で, 両群間に有意差は認められなかった. 主な副作用症状は両群とも眠気であった. 有用度の「有用」以上は, KW群54.9%, OX群50.5%であり両群間に有意差はなかったが, KW群の方がやや有用率が高かった.以上の成績より, KW-4679は通年性アレルギー性鼻炎に対して, 臨床的に有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
宮前 保子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.49-54, 1999

The purpose of his article is to clarify the problem on the landscape-management at historical landscape in Asuka village, Nara pref. Conclusions are below: (1) The main methods of landscape-management is to maintain economic activities which is agriculture and forestry. (2) The aim of projects about public owned land is to promote the development of sightseeing. (3) The main problems are to be left the landscape to run wild, and to be insufficient of the torchbearers. (4) Residents' perception shows that they recognize the regional-landscape honor and want the understandings and supports of all the people. To create the better landscape-management, it is significant to experiment the new methods and to prepare the total landscape planning and involve both residents' and many people's participation.
著者
前田 稔
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
1974

博士論文
著者
前田 芳實 MINVIELLE Francis 岡本 新 橋口 勉
出版者
日本家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.83-95, 1999
被引用文献数
5

本研究では,INRA(フランス国立農業研究所)で実施された日本ウズラの産卵能力に対する選抜実験(個体選抜法と相反反復選抜法)において,第8世代と第13世代での遺伝子構成と遺伝変異の変化について検討を行った。遺伝的変異性はJouy系統とTours系統に属する6lines(line 1, 2, 3, 4, CおよびD)に対して10蛋白質座位により分析された。変異の量(P<sub>poly</sub>)は世代と共に減少し,第1世代,第8世代および第13世代のP<sub>poly</sub>はJouy系統でそれぞれ0.5-0.6, 0.4-0.5および0.3-0.4,また,Tours系統で0.7, 0.6-0.7および0.5-0.7であった。6系統間のG<sub>ST</sub>は第1,第8および第13世代で0.019,0.076および0.156と計算された。G<sub>ST</sub>の世代に伴う増加はline間の系統分化が進んでいることを示唆している。G<sub>ST</sub>の種々の比較から,遺伝的分化が徐々に進行し,この系統分化の一部には選抜システムの違いが関与していることが示唆された。主成分分析の結果,第8世代では,個体選抜群のline 1とline 2, Jouy系統のline 3とlineC,およびTours系統のline 4とline Dの3群に分けられ,また,第13世代では,対照群(line Cとline D),個体選抜群(line 1とline 2)および相反反復選抜群(line3とline 4)に分けられた。遺伝的距離の結果から,本研究での13世代にわたる選抜はINRAの系統間の遺伝的分散を大きくし,それには選抜様式の効果と遺伝的浮動が関与していることが示唆された。
著者
仁田 善雄 前川 眞一 柳本 武美 前田 忠彦 吉田 素文 奈良 信雄 石田 達樹 福島 統 齋藤 宣彦 福田 康一郎 高久 史麿 麻生 武志
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.3-9, 2005-02-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6
被引用文献数
2

共用試験CBTにおける項目反応理論の有用性を評価するために, 2002年の2-7月に実施した医学系第1回トライアルのデータを解析した. このトライアルはモデル・コア・カリキュラムの大項目分類 (6分野) をすべてカバーできるようにデザインされており, 含まれている試験問題数は2, 791題であった.各分野において, 3-40題の問題がランダムに抽出され, コンピューターシステムを用いて5, 693名 (4年生-6年生: 解析対象者5, 676名) の学生に実施された. 各学生には100題出題された. 項目反応パターンについては3母数ロジスティックモデル (項目識別力, 項目困難度, 当て推量) により分析した. 以下の知見が得られた. 1) 項目困難度と正答率には強い負の相関がみられた (r=-0.969--0.982). 2) 項目識別度と点双列相関係数には中程度の相関がみられた (r=0.304-0.511). 3) 推定された能力値と得点とには強い正の相関が見られた (r=0.810-0.945). 4) 平均能力値は学年が上がるにつれて増加した. 5) モデル・コア・カリキュラムの6分野間の能力値の相関係数は0.6未満であった. 1人ひとりが異なる問題を受験する共用試験の場合, 項目反応理論を使用することが望ましいと考える. 第1回トライアルは, 項目反応理論を使用することを想定してデザインされていなかった. 第2回トライアルでは, これらの比較を行うために適切にデザインされたシステムを用いた. 現在, この結果について詳細に解析を行っているところである.