著者
山本 恭子 鵜飼 和浩 高橋 泰子
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.329-334, 2002-11-26 (Released:2010-07-21)
参考文献数
23
被引用文献数
6

本研究は非薬用固形石鹸と流水による手洗いを, 石鹸を泡立て擦り合わせる行為, 流水にてすすぐ行為, ペーパータオルで拭く行為の3段階に分け, それぞれの段階における手指の細菌数の変化を明らかにし, 有効な手洗い方法に関して検討を加えた. 石鹸を泡立て擦り合わせることによる手掌部の細菌数を経時的に測定した結果, 泡立て時間が長いほど細菌数は多くなった. 次に, 15秒間石鹸を泡立てた後流水ですすぎ, 手掌部, 指部, 指先の細菌数を経時的に測定した結果, 3部位ともすすぎに伴い細菌数は減少した. しかし, 手洗い前と比較して, 手掌部では120秒間, 指部では60秒間のすすぎで細菌数は有意に減少したが, 指先では120秒間すすいだ後も細菌数が有意に多かった. また, すすぐ過程で指先を他方の手掌部に擦り合わせることを試みたが, 除菌効果に改善は認められなかった. 最後に15秒間石鹸を泡立て15秒間すすいだ後ペーパータオルで手を拭くことによる除菌効果を調べた. 手掌部, 指部では手拭きの前後で細菌数の有意な減少は認められなかったが, 指先では手拭きによる有意な細菌数の減少が認められた. 以上の結果から, 手洗いで除菌効果を得るためには, 石鹸泡立て時間が長いほど充分なすすぎを行う必要がある. さらにすすぎにより指先は手掌部および指部と比べて除菌されにくく, すすぎ後にペーパータオルで拭くことが除菌に有効であると考えられた.
著者
山本 理佳
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.193, pp.187-219, 2015-02-27

本稿で取り上げる大和ミュージアム(広島県呉市)は,正式名称が「呉市海事歴史科学館」であり,呉市を設立主体とする博物館である。呉における戦前から戦後に至る船舶製造技術を主たる展示内容としているが,愛称の「大和ミュージアム」が示すように,旧日本海軍の超大型軍艦「大和」の建造およびその軍事活動が展示の中心となっている。こうした特徴から,大和ミュージアムは少なからぬ物議を醸しつつ,2005(平成17)年4月23日に開館した。ただし,多くの関係者の予想を大きく裏切り,大和ミュージアムは極めて多くの入館者を集め,開館後約8年を迎えた2013(平成25)年3月17日,累計入館者数が800万人に達した。通常の地方の歴史博物館の年間入館者数が数万人という規模であることからも,その極度の人気ぶりがうかがえる。この博物館は,その人気ぶりから呉市やその周辺の観光・地域戦略を大きく変化させている。本稿では,そうした大和ミュージアム開館を契機とする呉市周辺の観光・地域戦略の変化について明らかにするものである。
著者
菅野 博之 大塚 英志 泉 政文 山本 忠宏 本多 マークアントニー 大内 克哉 Hiroyuki KANNO Eiji OHTSUKA Masafumi IZUMI Tadahiro YAMAMOTO Mark Anthony HONDA Katsuya OUCHI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

WEB上にまんが表現が移行するということは、「単行本」や「雑誌」がWEBの環境下で新たな適応を求められることを意味する。現在のまんが表現は「コマ」を映画の1カットに見立て「モンタージュ」的に接続する一方、2頁単位の「見開き」に「構成」として配置するものであるが、そのような方法はWEB上では一度解体する。本研究では「横スクロール」形式によってiPadなどのタブレット上に帯状に描かれたまんがを表示する技法において、紙のまんがに替わる新しい文法形式を検証するため、中世の絵巻物「信貴山縁起」の手法の解析を行った。その結果、画面を上下二分割する中心軸上で読者の視線を上下させる技法を確認し、それがiPad対応の横スクロールまんがにも用いることができることを確認した。その他「異時間図法」など、絵巻の技法は応用可能であることが確認できた。「絵巻」と「横スクロール形式のWEBコミック」の方法上の互換性は高く、そこに「紙のまんが」や「アニメーションの技法」をどのようにあらためて導入するかが次の重要な課題である。Transitioning the presentation of MANGA on the web means that a new adaptation under the web environment is desired for the presentational syntax of MANGA, which has been defined through print media such as 'books' and 'magazines'. The current presentation of MANGA is something that is a continuation of 'frames' selected as 1 scene of a video and joined in a 'montage'-like manner, arranged as a 'composition' in two-page unit 'spreads', however this type of method is momentarily demolished on the web. In this study, we performed an analysis of the techniques of the medieval picture scroll "The Legend of Mount Shigi(Shigisan-engi)", in order to verify the new syntactical form taking the place of 'paper MANGA', through the technique of displaying comics drawn as a strip for tablets such as the iPad via a 'horizontal scroll' format. Those results confirmed a technique of causing the reader's line of sight to go up and down via a core dividing the image into two upper and lower parts, and confirmed that it can also be utilized for horizontal scroll MANGA for the iPad. We were able to confirm that others picture scroll techniques such as 'drawing of different times.
著者
中村 智幸 片野 修 山本 祥一郎
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.287-291, 2004-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
30
被引用文献数
1

コクチバスによる在来魚への捕食圧を軽減するうえでの水草帯設置の効果を実験的に検証した。屋外実験池8面のうち4面に, クサヨシを1m2の範囲に100本植え, 他の4面は無植栽とした。そして, 各池にコクチバス3尾とフナおよびウグイを各20尾放流し, 1期14日間, 計2期, フナとウグイの被食数を調べた。その結果, 両種ともにクサヨシ帯を設置した池では, 被食数が有意に減少することが明らかになった。この結果は, 自然水域における水草帯の保全・拡大が, コクチバスによる在来魚への捕食圧を軽減するうえで効果的であることを示す。
著者
山本 康司
出版者
神戸大学
巻号頁・発行日
2019
著者
山本 めゆ
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.103-119,184, 2012-02-29 (Released:2015-05-13)
参考文献数
22

There were at most 800 Japanese residents living in South Africa during the era of apartheid. They were predominantly expatriate employees sent from Japan who were permitted to reside in white residential areas. The existence of this resident population group who would normally have been classified as “non-white” in terms of South Africa’s race categories under apartheid led to the Japanese being described as ‘honorary whites’. In this paper, the ‘honorary white’ status will be discussed, with a focus on what is called the ‘looping effect’ (Hacking), or interactions between a concept that classifies people and those who are classified. For this study, 15 Japanese people who had resided in South Africa under apartheid were interviewed, and documentary materials were also collected both in Japan and in South Africa. These data were used, first, to create a general history of the status of the Japanese in South Africa from the beginning of the 20th century. The study follows the genesis of the title ‘honorary white’ in the early 1960s, and considers the influence of the concept on the Japanese and Chinese communities at that time. Finally it describes the way in which the title ‘honorary white’ affected the identities and actions of the Japanese residents in South Africa, and at the same time how their actions in turn constructed the image of ‘honorary whites’.
著者
水田 拓道 植屋 清見 日丸 哲也 永田 晟 山本 高司
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.101-107, 1975-09-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
8

目的に応じたサウナ入浴をするための一つの条件として, サウナ入浴時間が生体におよぼす影響というかたちで, 主に運動機能的な面からサウナ入浴前後, および入浴中の変化について比較検討した。本実験の結果からサウナの効果的利用法について次のような示唆が得られた。1.アンケート調査の結果, サウナ入浴時間においては5分単位の入浴を繰返している者が最とも多く60%余りをしめていた。また, 95%の者がなんらかの形で冷水浴を併用していた。2.全身反応時間, 膝蓋腱反射閾値, 垂直跳びにおけるジャンプパワー等, 筋神経系の関係する機能においては, 5分入浴, 1分冷水浴で3回繰返し入浴法が, 入浴前に比べてよい成績を示し効果的であることがわかった。このことから, 経験的に得た5分単位の入浴法が, 疲労回復, 気分転換等に効果的であることが裏付けられた。3.血圧, 心拍数, 皮膚温の変化には設定パターンによる著明な差異は認められなかった。しかし, いずれのパターンにおいても循環機能への有効な剌激として考察され, 長期にわたる利用によって環境温の変化に対する適応能を高める効果が期待される。4.サウナ入浴中の酸素摂取量は安静時に比して, パターン (1) が23.2%, パターン (2) が31.6%れぞれ増加した。エネルギー代謝促進の面からは少し長い入浴時間が必要と考えられる。
著者
大塚 浩仁 田中 健作 斉藤 晃一 森田 泰弘 加藤 洋一 佐伯 孝尚 山本 高行 後藤 日当美 山本 一二三
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.148-154, 2015-05-05 (Released:2017-06-12)
被引用文献数
1

イプシロンロケットは2013年9月14日に惑星分光観測衛星「ひさき」の打上げに成功し,目標とした軌道投入精度を達成し,新規に開発した誘導制御系の性能を遺憾なく発揮した.イプシロン開発では,惑星探査機「はやぶさ」を投入したM-Vロケットの誘導制御系の性能を継承しつつ新たな技術革新にチャレンジし,M-Vの機能,性能をさらに向上させた誘導制御系を実現した.最終段には信頼性の高い低コストなスラスタを用いた液体推進系の小型ポストブースタ(PBS)を開発し,新たに導入した誘導則とともに軌道投入精度を飛躍的に向上させた.フライトソフトにはM-Vで蓄積した各種シーケンスや姿勢マヌーバ機能をユーティリティ化して搭載し,科学衛星ユーザ等の多様な要望に容易に対応できる機能を実現し運用性を高めた.
著者
山本 耕司 角谷 直哉 山本 敦史 鶴保 謙四郎 森 義明
出版者
Japan Society for Environmental Chemistry
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.137-144, 2005-03-25 (Released:2010-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
5 6

大阪市では2000年3月から全域で高度浄水処理水が給水されている。高度処理水をやかん, 電気ポットで加熱, 沸騰させたときのトリハロメタン, 全有機ハロゲン (TOX) の減少経過について検討した。トリハロメタンについては, これまでの水道水にみられた沸騰直前の急激な濃度上昇は見られず, 加熱に伴って減少し, 煮沸1分で消失した。蛇口水でのTOXに占めるTHMの割合は32%であった。TOXの加熱・煮沸に伴う減少経過から, TOXは揮発性と不揮発性のハロゲン化合物から構成されていた。高度処理水のTOXはやかんで沸騰時に17%, 電気ポットで40%しか減少されなかった。
著者
山本 淳一 楠本 千枝子
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.621-639, 2007 (Released:2009-04-24)
参考文献数
98
被引用文献数
5

Children with autistic spectrum disorders (ASD) are diagnosed by deficits in social interaction and linguistic skills, and restricted interests and stereotypic pattern of behavior. They have difficulties in motor, perceptual, cognitive, linguistic functions. In the present article, we proposed the comprehensive view point for understanding children with ASD; Relationships between various psychological functions, interaction between individual and environment, developmental mechanisms and developmental change by the appropriate intervention. We first described the profiles of ASD, prevalence, diagnostic criteria and resent assessment measures with the possibilities for very earlier screening in one year. Recent advancement of early intervention studies and the guideline for the application showed that early intensive treatment, pivotal behavior treatment, structured environment and parent-support program were effective for promoting the development of children with ASD. The developmental mechanism and treatment curriculum were analyzed in positive social interaction, joint attention, imitation, auditory comprehension, vocal production, verbal behavior and conversation. Children with high-functioning autism and Asperger syndrome have deficits in understanding ambiguous context, higher-ordered linguistic rules, social interaction and other's “mind”. We reviewed the treatment studies for these difficulties and found that the effective treatment included the “visualized” procedures, because children with ASD have “strength” in visual thinking. Video modeling and in-vivo role playing were effective for generalizing the acquired social skills to everyday life situation. We, as scientist ⁄ practitioner, discussed the future direction of evidence-based studies for developing children with ASD.
著者
山本 裕晃 伊良部 諒馬
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.279-282, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
13

〔目的〕高齢者を対象に下肢反復開閉運動による敏捷性運動が歩行速度に与える即時的な影響について検討し,下肢反復開閉運動のトレーニングとしての有用性を見出すこととした.〔方法〕対象は65歳以上の高齢者14名(男性4名,女性10名,平均年齢73.1 ± 5.4歳,身長158.1 ± 11.2 cm,体重53.2 ± 12.2 kg,BMI 21.2 ± 3.8 kg/m2)とした.下肢反復開閉運動前後の歩行速度を測定し,比較検討した.〔結果〕下肢反復開閉運動前と比較して下肢反復開閉運動後は歩行速度が有意に高く,下肢反復開閉運動が歩行速度に与える即時的な影響が確認された.〔結論〕高齢者は下肢反復開閉運動により歩行速度に即時的な影響を与えることが確認され,下肢反復開閉運動のトレーニングとしての有用性が示唆された.
著者
井上 佳奈 山本 佑実 菅村 玄二
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.87.15012, (Released:2016-03-10)
参考文献数
60
被引用文献数
1

We tested possible intrapersonal effects of a sigh as a psychological “resetter/rebooter.” Fifty-eight undergraduates were randomly assigned to a sigh or a normal exhalation (control) group. We asked participants on each task to model the experimenter demonstrating how to exhale air into a small plastic bag for breathing manipulation under the pretext that we were interested in the exhaled gas in stressful situations. Results revealed that the sigh group did not experience more relief (as shown by prolonged reaction time) after exposure to threat stimuli, but showed more persistence on a highly-difficult puzzle task (p = .03, d = .62) and more willingness to continue working on a monotonous task (p < .10, d = .48), than the normal exhalation group. A sigh may have an adaptive function to motivate further work; although it may not induce relief — suggesting that a “sigh of refresh” is a voluntary but a “sigh of relief” is an involuntary response.
著者
三木 文雄 小林 宏行 杉原 徳彦 武田 博明 中里 義則 杉浦 宏詩 酒寄 享 坂川 英一郎 大崎 能伸 長内 忍 井手 宏 西垣 豊 辻 忠克 松本 博之 山崎 泰宏 藤田 結花 中尾 祥子 高橋 政明 豊嶋 恵理 山口 修二 志田 晃 小田島 奈央 吉川 隆志 青木 健志 小笹 真理子 遅野井 健 朴 明俊 井上 洋西 櫻井 滋 伊藤 晴方 毛利 孝 高橋 進 井上 千恵子 樋口 清一 渡辺 彰 菊地 暢 池田 英樹 中井 祐之 本田 芳宏 庄司 総 新妻 一直 鈴木 康稔 青木 信樹 和田 光一 桑原 克弘 狩野 哲次 柴田 和彦 中田 紘一郎 成井 浩司 佐野 靖之 大友 守 鈴木 直仁 小山 優 柴 孝也 岡田 和久 佐治 正勝 阿久津 寿江 中森 祥隆 蝶名林 直彦 松岡 緑郎 永井 英明 鈴木 幸男 竹下 啓 嶋田 甚五郎 石田 一雄 中川 武正 柴本 昌昭 中村 俊夫 駒瀬 裕子 新井 基央 島田 敏樹 中澤 靖 小田切 繁樹 綿貫 祐司 西平 隆一 平居 義裕 工藤 誠 鈴木 周雄 吉池 保博 池田 大忠 鈴木 基好 西川 正憲 高橋 健一 池原 邦彦 中村 雅夫 冬木 俊春 高木 重人 柳瀬 賢次 土手 邦夫 山本 和英 山腰 雅宏 山本 雅史 伊藤 源士 鳥 浩一郎 渡邊 篤 高橋 孝輔 澤 祥幸 吉田 勉 浅本 仁 上田 良弘 伊達 佳子 東田 有智 原口 龍太 長坂 行雄 家田 泰浩 保田 昇平 加藤 元一 小牟田 清 谷尾 吉郎 岡野 一弘 竹中 雅彦 桝野 富弥 西井 一雅 成田 亘啓 三笠 桂一 古西 満 前田 光一 竹澤 祐一 森 啓 甲斐 吉郎 杉村 裕子 種田 和清 井上 哲郎 加藤 晃史 松島 敏春 二木 芳人 吉井 耕一郎 沖本 二郎 中村 淳一 米山 浩英 小橋 吉博 城戸 優光 吉井 千春 澤江 義郎 二宮 清 田尾 義昭 宮崎 正之 高木 宏治 吉田 稔 渡辺 憲太朗 大泉 耕太郎 渡邊 尚 光武 良幸 竹田 圭介 川口 信三 光井 敬 西本 光伸 川原 正士 古賀 英之 中原 伸 高本 正祇 原田 泰子 北原 義也 加治木 章 永田 忍彦 河野 茂 朝野 和典 前崎 繁文 柳原 克紀 宮崎 義継 泉川 欣一 道津 安正 順山 尚史 石野 徹 川村 純生 田中 光 飯田 桂子 荒木 潤 渡辺 正実 永武 毅 秋山 盛登司 高橋 淳 隆杉 正和 真崎 宏則 田中 宏史 川上 健司 宇都宮 嘉明 土橋 佳子 星野 和彦 麻生 憲史 池田 秀樹 鬼塚 正三郎 小林 忍 渡辺 浩 那須 勝 時松 一成 山崎 透 河野 宏 安藤 俊二 玄同 淑子 三重野 龍彦 甲原 芳範 斎藤 厚 健山 正男 大山 泰一 副島 林造 中島 光好
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.526-556, 2005-09-25

注射用セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の下気道感染症に対する早期治療効果を評価するため, ceftazidime (CAZ) を対照薬とした比較試験を市販後臨床試験として実施した。CZOPとCAZはともに1回1g (力価), 1日2回点滴静注により7日間投与し, 以下の結果を得た。<BR>1. 総登録症例412例中最大の解析対象集団376例の臨床効果は, 判定不能3例を除くとCZOP群92.0%(173/188), CAZ群91.4%(169/185) の有効率で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。細菌性肺炎と慢性気道感染症に層別した有効率は, それぞれCZOP群90.9%(120/132), 94.6%(53/56), CAZ群93.3%(126/135), 86.0%(43/50) で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。<BR>2. 原因菌が判明し, その消長を追跡し得た210例での細菌学的効果は, CZOP群89.5%(94/105), CAZ群90.5%(95/105) の菌消失率 (菌消失+菌交代) で, 両群間に有意な差はみられなかった。個々の菌別の菌消失率は, CZOP群91.1%(113/124), CAZ群90.8%(108/119) で両群問に有意な差はみられなかったが, 最も高頻度に分離された<I>Streptococcus pneumoniae</I>の消失率はCZOP群100%(42/42), CAZ群89.5%(34/38) で, CZOP群がCAZ群に比し有意に優れ (P=0.047), 投与5日後においてもCZOP群がCAZ群に比し有意に高い菌消失寧を示した (P=0.049)。<BR>3. 投薬終了時に, CZOP群では52,4%(99/189), CAZ群では50.3% (94/187) の症例において治療日的が達成され, 抗菌薬の追加投与は不必要であった。治療Il的遠成度に関して両薬剤間に有意な差は認められなかった。<BR>4. 随伴症状の発現率はCZOP群3.9%(8/206), CAZ群5.0%(10/202) で両棊剤間に有意な差はなかった。臨床検査値異常変動として, CAZ群に好酸球増多がCZOP絆より多数認められたが, 臨床検査値異常出現率としては, CZOP群31.6% (65/206), CAZ群32.2% (65/202) で, 両群間に有意な差は認められなかった。<BR>以上の成績から, CZOPは臨床効果においてCAZと比較して非劣性であることが検祉された。また<I>S. pneumoniae</I>による下気道感染症に対するCZOPの早期治療効果が確認された。