著者
西村 拓生 岡本 哲雄 吉田 敦彦 山内 清郎 井谷 信彦 辻 敦子 神戸 和佳子 山田 真由美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

教育における宗教性は、教育という営みの根底を考える際に非常に重要な契機である。この問題を考える際に思想史的に注目すべきなのが、京都学派の哲学に源流をもつ教育哲学の系譜である。この研究では、京都学派教育哲学の諸思想を分析し、その中に、「生命性と超越」を鍵概念とする系譜、「臨床性から公共性」という志向をもつ系譜、そして「言語の限界と可能性」をめぐる系譜を見出した。さらに、その分析を基盤として、教育における宗教性・超越性に関する多様な思想史的・人間学的研究を行ない、包括的・体系的な研究への足掛かりを構築した。
著者
山田 雅行 山田 真澄 羽田 浩二 藤野 義範 Jim MORI 坂上 啓 林田 拓己 深津 宗祐 西原 栄子 大内 徹 藤井 章男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_216-I_224, 2017 (Released:2017-09-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 5

平成28年熊本地震によって被災した益城町の倒壊建物が集中している地域を対象とした悉皆調査から,狭い範囲における被害分布の急変が見られた.この説明のために,常時微動を用いた地盤調査に基づいて地表面での揺れの推定を試みた. 常時微動は極小アレイ+1点の5点を基本とし,約62.5mメッシュごとに108箇所の観測を行った.各箇所でインバージョンを行い,地盤モデルを作成した. 治水地形分布図に氾濫平野または旧河道と記された比較的被害の小さい地区は,非常に軟弱な堆積層が5m程度以上存在することがわかった.非線形地震応答解析を行った結果として,本震時の地表面の揺れにおいて,低周波数成分が卓越し,1-2Hz(周期0.5~1 秒)の応答倍率が小さかったことが,比較的被害が小さいことの一因である可能性が考えられる.
著者
生野 達也 奥埜 博之 信迫 悟志 川見 清豪 山田 真澄 塚本 芳久
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B3P3285, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】Pusher現象は、リハビリテーションの主要な阻害因子の一つである.KarnathらはPusher現象について、開眼時の視覚的垂直認知(以下SVV)はほぼ鉛直であるが閉眼時の身体的垂直認知(以下SPV)が健側へ偏倚していると報告しており、感覚モダリティによって垂直認知が異なることを示した.治療は、視覚を用いたSVVに関する報告は多いが、体性感覚を用いたSPVに関する報告は少ない.今回、閉眼時のSPVが健側へ偏倚している症例に対して、体性感覚を用いた治療アプローチを行ったので報告する.【自己身体の垂直性を認知する過程と観察の視点】1.注意を向けることによってはじめて体性感覚野の再組織化が起こる(Recanzone).2.身体の左右両側に受容野をもつニューロンが存在し身体正中部の情報を収集する(Iwamura).3.体性感覚と視覚を統合して空間内における身体像を符号化する(Iwamura).以上の知見より、SPVには患側の体性感覚に注意を向けて認知する能力と、左右の体性感覚を比較照合する能力について評価・観察することが不可欠である.【症例紹介】60歳代(女性) 診断名:脳梗塞(H20.8.2発症) 障害名:左片麻痺、左半側空間無視、注意障害 Pusher重症度分類:6.端座位ではPusher現象あり中等度介助レベル.開眼時のSVVはほぼ鉛直.閉眼時のSPVは健側へ偏倚.表在・深部感覚は重度鈍麻しているが、右側の触・圧覚に注意を向けた後であれば左側での識別が若干改善する.なお、本発表は症例の同意を得て行った.【病態解釈と訓練】本症例は、左上下肢の深部感覚に加え、左側殿部・足底部の触・圧覚を十分に細かく認知することが困難であり、左右からの体性感覚情報の収集に問題が生じた結果、SPVが変質したと考えた.訓練は、体性感覚の左右比較の基準を作ることを目的に、まず硬度の異なるスポンジを用いて右側殿部・足底部で触・圧覚に注意を向けた後に、左側殿部・足底部で硬度の異なるスポンジの認識する課題を通じて触・圧覚を弁別する課題を行った.左側触・圧覚の認知が可能になると共に左右比較を行った.前述の課題を通じて閉眼座位でSPVの偏倚が修正された後に、SVVとSPVを比較照合する課題を行った.【結果および考察】訓練一回毎の前後で変化が認められた.左側触・圧覚の認知が向上すると共に閉眼時のSPVは鉛直へと変化した.左半側空間無視・注意障害:軽減、Pusher重症度分類:2.端座位見守りレベル.SVVとSPVはほぼ一致した.注意を向ければ触・圧覚の左右比較が可能.本症例は感覚鈍麻に加え、左側殿部・足底部の触・圧覚に注意が向かずSPVが偏倚していた.体性感覚に注意を向け、必要な情報を選択できるようになり、左側殿部・足底部の触・圧覚の認知が可能になると共にSPVが再構築されたと考えた.
著者
山田 真司
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

複数の知覚実験を実施し,それらの結果を統合することで,音楽を構成するパラメータ,音楽の印象,ゲームの印象,ゲームの遂行成績の間の機序を定量的に明らかにした。このことによって,ゲーム音楽のための科学的設計指針が得られ,求めるゲームの印象および難易度を実現するためには音楽のどのパラメータをどのように設定すれば良いか推定することが可能になった。
著者
友枝 敏雄 山田 真茂留
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.567-584, 2005-12-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

今期社会学教育委員会では, 社会学教育の一環として社会学テキストのありようについて検討してきた.この論文は, この作業をもとにした今号の特集の序論をなすものである.多くの社会学テキストのなかで, とりわけ焦点をあてるのは, 初学者向けの, もしくは概論的なテキストである.まず戦後日本社会の変動を概観すると, そこには個人化の進行という一貫した趨勢が看取される一方で, 「第1の近代」と「第2の近代」との間にそれなりの断層があることが認められる.「第1の近代」においては産業化・都市化・核家族化等が中心であったのに対して, 「第2の近代」では政治領域における新保守主義・新自由主義の台頭, 経済領域における消費社会的状況の先鋭化, 文化領域におけるポストモダンな言語論的・記号論的転回等が顕著になってきたのである.そして社会学テキストも, この社会変動に応じて相貌を大きく変えることとなった.まず, 社会学テキストが扱うべき内容やその範囲が時代によって変わっていったという局面がある.またそれとともに, テキストの形式面でも大きな変化が生起した.かつてのテキストではオーソドックスな概念や理論の伝達が中心的であったわけだが, 今日では読者にとって読みやすい形でのパースペクティブの紹介が主流になってきているのである.社会学テキストは近年, 内容面・形式面の双方にわたって大きな変容をとげている.
著者
川内 規会 オガサワラ メリッサ 山田 真司
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、医療通訳に焦点を当てながら外国人患者と医療従事者が抱えているコミュニケーションの問題を分析し、医療通訳の今後の可能性を考察した。在日外国人対象の調査では、外国人患者の医療現場における言語上の不安要因が明らかになり、さらに外国人患者は病院内の説明を十分に理解していないという結果から、「情報保障」の問題が重要視された。医療通訳の調査では、通訳者の活躍が期待されているが、医療通訳派遣システムが形作られている大都市の課題と外国人が少ない地域でかかえる課題には、将来的な改善点が大きく異なることから、今後、地域社会のニーズに合わせた段階的な医療通訳の対応が必要であると考える。
著者
山田 真美 YAMADA Mami
雑誌
お茶の水地理
巻号頁・発行日
vol.54, pp.89-91, 2015-05-30

博士学位論文「カウラ事件(1944年)の研究-捕虜の日々を生きた日本兵たちの「日常」からの再考察-(英題:Reconsidering the Cowra breakout of 1944: From the viewpoints of survived Japanese prisoners of war and their"everyday lives" in the Camp)」の要旨
著者
山田 真理子
出版者
九州大谷短期大学
雑誌
九州大谷研究紀要 (ISSN:02864282)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.198-212, 1994-12-20
著者
津田 祥平 中川 佳織 大山 俊幸 高橋 昭雄 岡部 義昭 香川 博之 山田 真治 岡部 洋治
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.75-83, 2010
被引用文献数
1

相分離変換システム法により,天然リグニンから精密な分子設計の下に誘導されるリグニン系新素材であるバイオマス由来リグノフェノールのエポキシ樹脂硬化剤への適用可能性を検討した。エポキシ樹脂としてビスフェノールA ジグリシジルエーテル(DGEBA),硬化剤としてリグノフェノール(LP),硬化促進剤として1- シアノエチル-2- エチル-4- メチルイミダゾール(2E4MZ-CN)を用い,エポキシ基と水酸基の当量比を1:0.9 とした系において,硬化物のガラス転移温度が198℃を示し,石油由来のフェノールノボラック(PN)を硬化剤とした硬化物を約60℃上回った。さらに5% 熱重量減少温度も373℃と熱的に安定であった。FT IR 測定において,910cm<sup>-1 </sup>のエポキシ基由来の吸収帯が消失していることから,LP の水酸基がDGEBA のエポキシ基と十分に反応していることが観察された。また硬化物の動的粘弾性試験(DVA)から,PN 硬化物と比較して,室温での貯蔵弾性率の上昇,および架橋密度の上昇が観察された。以上の結果より,リグノフェノールはエポキシ樹脂の硬化剤として適用可能であり,最大で49% のリグノフェノールを含むエポキシ樹脂硬化物が作製できることが示された。
著者
佐々木 善浩 山田 真希 寺島 崇 王 剣鋒 橋詰 峰雄 范 聖第 菊池 純一
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.541-546, 2004-10-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
18
被引用文献数
14 17 2

生体膜モデルとしての有機-無機ハイブリッドベシクル「セラソーム」を用いて, シグナル伝達機能を有する分子間コミュニケーションシステムを構築した. 頭部にトリエトキシシリル基と四級アンモニウム基をもつ二本鎖型のペプチド脂質から作製したセラソームは, 従来型の脂質二分子膜ベシクルよりも著しく高い構造安定性を有することが, 界面活性剤に対する耐性評価から明らかになった. このセラソームを基板に用いて, 人工受容体による化学シグナル認識の応答が, メディエータとしての金属イオンを介して酵素に伝達され, 酵素活性のオン・オフを制御できる分子デバイスを作製し, その機能を明らかにした. 人工受容体にアミノ基を有するステロイド誘導体, シグナルとしてピリドキサール5'-リン酸, メディエータに銅 (II) イオン, 化学信号増幅器として乳酸脱水素酵素を用いたセラソーム系において, 顕著なシグナル伝達機能が発現した.
著者
田中 愛治 河野 勝 清水 和巳 山田 真裕 渡部 幹 西澤 由隆 栗山 浩一 久米 郁男 西澤 由隆 長谷川 真理子 船木 由喜彦 品田 裕 栗山 浩一 福元 健太郎 今井 亮佑 日野 愛郎 飯田 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、全国の有権者から無作為抽出した対象者(サンプル)に対し、ノート・パソコンを用いた世論調査(CASI方式)を日本で初めて実施した。さらに、ノート・パソコンによるCASI調査に、認知心理学的視点を加えた政治経済学実験の要素を組み込み、実験を導入した世界初のCASI方式全国世論調査に成功した。これにより、政治変動をもたらす日本人の意志決定のメカニズムの解明を可能にし得る新たな研究を踏み出した。
著者
油布 佐和子 越智 康詞 紅林 伸幸 中澤 渉 川村 光 山田 真紀
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、今世紀に入って加速的に進行した新自由主義的な教育改革が教職に及ぼす影響を分析することを目的としている。15年間の時系列調査を分析した結果、教職観や役割認識などに変容が見られ、教師が「組織の一員としての教師」への志向性を強めていることが明らかになった。しかしながらこれを、新自由主義的な理念への賛同と解釈するのは妥当ではない。そうではなくて、外部に見えにくく理解されがたい<教師という仕事>を、新自由主義的教育改革が可視化する側面を持っていることによるものではないかと推測された。
著者
品田 裕 大西 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 山田 真裕 河村 和徳 高安 健将 今井 亮佑 砂原 庸介 濱本 真輔 増山 幹高 堤 英敬 平野 淳一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、国会議員を主とする政治家と有権者の関係、あるいは政治家同士の関係がどのように変容しつつあるのかを調査し、その変化の要因を実証的に解明することを目的として開始された。その結果、本研究では、選挙区レベルの詳細な観察・データを基に、実証的に現代日本の選挙政治の変容を明らかにすることができた。取り上げた研究対象は、集票活動・有権者と政治家の関係・政治家同士の関係・議員活動・政治家のキャリアパス・政党下部組織など、多岐にわたった。これらの分析から得られた成果を基礎に、さらに、国会のあり方や選挙制度にまで分析を進めることができ、現代日本の選挙政治理解に一定の貢献を果たすことができた。
著者
三浦 雅展 尾花 充 山田 真司 柳田 益造
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.103, pp.21-26, 2001-10-26

ここでは,音大の学生を被験者とし,音楽的な美しさ評価について和声学のバス課題許容解群を用いて調査している.その結果,音大生の中でも作曲科の学生の回答が,専門家の回答と相関が高いことが確認された.また,専門家の評価基準を実装した"音楽美評価システム(MAES)"を構築し,MAESと音大の学生とどちらが専門家の答えに類似しているかを調査したところ,MAESは作曲科専攻などの優秀な学生とほぼ同じレベルで音楽的な美しさを評価することができることが確認された.Aesthetics evaluations by music college students are investigated using allowable answers for given bass tasks for the theory of harmony. The evaluation scores by students of composition course are found to be similar to the average scores by experts in music composition. A system that can evaluate musical aesthetics is realized by introducing weights obtained from regression analysis of aesthetics evaluations through enquetes to experts. The system is called "MAES(Musical Aesthetics Evaluation System)". Comparing the outputs of MAES with the average scores by experts and students in several levels in music college, it is confirmed that MAES can evaluate musical aesthetics as the same level as excellent students.
著者
野田 舞 山田 真紀
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.39-50, 2018 (Released:2018-10-31)
参考文献数
9
被引用文献数
2

本研究は,保育施設のリスクマネジメントのうち,園庭遊具に焦点をあてて,重篤な怪我のリスクを減らして,遊びの価値を最大限に発揮させる,「子どもと遊具の関わり」と「保育者の援助のあり方」を,参与観察とインタビュー調査から明らかにするものである。概念整理では,日本の遊具に関する安全基準におけるハザードとリスクの概念が,世界基準のそれと異なることを指摘し,世界基準の概念定義を用いること,すなわち,ハザードは「遊具が内在する危険性」,リスクは「ハザードから生ずるおそれのある怪我の重篤度とその発生頻度」ととらえること。そして,遊具のハザードを「遊具の本質として内在するハザード」「取り除くべきハザード」の縦軸と「子ども認知可能」「子ども認知不可能」の横軸をクロスさせた4つの象限に分けて分類することの有用性について論じた。
著者
幸塚 久典 小野 廣記 山田 真悠子 木村 知晴 稲村 修
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.AA2023-10, 2023-05-15 (Released:2023-05-15)

ガンガゼモドキ Echinothrix diadema(Linnaeus, 1758)とアカオニガゼ Astropyga radiata (Leske, 1778)が島根県隠岐の島町(島後)の日本海で採集された。この2種のガンガゼ目ウニ類は、日本海側から初めての記録である。本報告では、採集した標本をもとに、両種の外見形態について記載した。今回記録されたガンガゼモドキとアカオニガゼは、インド・西太平洋に分布する熱帯・亜熱帯種であり、寒流域には侵入できない種である。したがって、これらの熱帯・亜熱帯の動物の出現が、近年の海水温の上昇に伴う長期的な変化によるものなのか、暖流の一時的な影響なのか、引き続き調査が必要である。
著者
渡部 龍 山田 真介 橋本 求
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.2160-2165, 2021-10-10 (Released:2022-10-10)
参考文献数
8

JAK(Janus kinase)阻害薬は,経口投与可能な低分子化合物であり,生物学的製剤と異なり,複数のサイトカインの細胞内シグナル伝達を阻害することにより,関節リウマチに対して有効性を示す.現在,我が国では5剤のJAK阻害薬が投与可能である.生物学的製剤と同等またはそれ以上の有効性を示すが,帯状疱疹等の副作用に注意を要する.今後,本邦における長期安全性の検証が重要である.