著者
青山 俊弘 松本 昇吾
出版者
鈴鹿工業高等専門学校
雑誌
紀要 (ISSN:02865483)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.43-48, 2008
被引用文献数
2

近年,インターネットの普及により,研究者は容易に論文の書誌情報を取得できるようになった。研究者はこれらのサイトから論文の書誌情報を自由に検索し取得することができる.しかし,公開される文献は日々増加し,今では非常に膨大な数となっているため,その中から必要な文献情報を取得することが困難となってきている.Support Vector Machine(SVM)は高次元特徴空間において線形関数を用いる学習システムであり,高次元特徴空間においてもトレーニングを非常に効率良く行えるよう工夫されている.本研究ではSVMを文献分類に適用し,論文情報の自動分類について検討した.
著者
松本 和紀
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、統合失調症(精神分裂病)の記憶機能に注目し、これが統合失調症の病態といかなる関わりがあるかを明らかにするために行った。報告者の研究により統合失調症では、記憶や言語機能を反映する事象関連電位反復効果に異常があることが見いだされているが、今回は特にこの反復効果が、統合失調症に特徴的である思考障害の基盤にある認知神経異常として現れると考え実験を行った。対象は、健常対照者10名、統合失調症患者19名で、患者はDSM-IVの基準を満たし、検査時には寛解期にあった。いずれの被検者に対しても研究について書面でのインフォームドコンセント行った。思考障害の評価にはホルツマンらの思考障害評価尺度を用いた。統合失調症患者は、この尺度に基づき思考障害群9名と非思考障害群10名に分けられた。反復効果課題施行中の事象関連電位が測定された。刺激は、かな二文字からなる単語で、標的は動物を意味する単語、非標的はそれ以外の単語を用いた。非標的の半分は初回提示の後に反復され、その半分は直後に反復される直後反復で、残り半分は平均5単語おいて反復される遅延反復であった。思考障害群では、有効な反復効果は認められず効果の大きさは刺激提示後300-500ミリ秒の平均振幅で健常群と比べ有意に減弱した。非思考障害群は部分的に反復効果を認め、効果の大きさは健常者と思考障害群との中間であった。反復効果の頭皮分布は、思考障害群では健常群や非思考障害群で認められる正中有意の分布を示さなかった。反復効果は、記憶や言語などの認知機能と関わりが深いことが知られており、特に刺激提示後400ミリ秒近辺の電位はN400成分と関わりが深いことが知られている。本研究の結果、思考障害を有する統合失調症患者では、N400の調整機構が障害されており、記憶や言語と関わる認知機能が思考障害の基盤にある可能性が指摘される。
著者
松本 和紀 進藤 克博 松岡 洋夫 松本 和紀
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究は脳内で行われる言語情報処理の早期の「知覚処理」から後期の「意味処理」への変換の仕組みとその相互作用を電気生理学的に解明していくために、事象関連電位を用いて早期の知覚情報処理に関わるNA電位と意味・記憶処理と関わるERP反復効果を指標に研究を行った。今年はNA電位とERP反復効果を健常者と精神分裂病者を対象に調べた。実験1:外国文字とかな文字との比較-刺激は非読外国文字、無意味かな単語、有意味かな単語の三種類。刺激は二文字からなり200m秒、2〜3秒の間隔で提示された。被験者はある意味範疇に属する単語に対してボタン押し反応をした。NA電位は非標的刺激に対するERPから単純反応課題に対するERPを差分して得られた。結果、NA電位は、三種類の刺激間で差が認められず、早期知覚処理では、意味の有無、日本語・外国語の違いなく同等に処理が行われることが分かった。健常者と分裂病者の比較では、分裂病者でNA電位の遅延が認められたが、刺激間の差はなかった。実験2:ERP反復効果とNA電位の比較-刺激は二文字からなるかな単語で、標的は動物の意味をもつ単語で非標的はそれ以外のかな単語。非標的の半分は初回に提示される単語で、残り半分は直後反復される単語と平均5単語間隔をおいて遅延反復される単語とに分けられた。単純反応課題も施行され、実験1と同様の方法でNA電位が計測された。結果、反復単語に対してCzを中心に全般性にERPが陽性方向へシフトするERP反復効果が認められた。NA電位とERP反復効果とは振幅や潜時に相関は認められなかった。一方で精神分裂病では、直後反復でのERPで反復効果の減弱が認められた。この結果、知覚の早期処理と記憶処理とでは、ある程度独立した機構が並行した処理を行っている可能性が指摘され、精神分裂病では知覚の早期処理の遅延と、記憶や意味と関連する電気生理学的活動の減弱が推定された。
著者
井川 憲男 赤坂 裕 石野 久彌 郡 公子 曽我 和弘 松本 真一
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

気象庁の20年間(1981〜2000年)の全国842地点のアメダスデータを利用して、欠測や非観測要素を補充して作成され、2005年に拡張アメダス気象データが公開された。拡張アメダス気象データを多目的に有効活用するには、人体や建材等への影響を予測するための紫外放射量(UV-A,UV-B)や、緑化に関連する光合成有効放射量(PAR)など、現状の拡張アメダスに収録されていない基礎データを増強する必要がある。気象要素推定モデルを開発するため、基礎データを収集することを目的として、これまでに日射量、気温、湿度、風向・風速などの気象観測を実施している秋田県立大学(由利本荘市)、首都大学東京(八王子市)、大阪市立大学(大阪市)、鹿児島大学(鹿児島市)、に、本補助金によって照度、UV-A、UV-B、PAR、赤外放射量などのセンサーを追加導入し、計測システムを再構築した。測定開始日を平成18年1月1日とし、1分間隔での測定を開始した。現在、1年間以上の測定データが蓄積され、さらに、測定を継続している。測定データを基に、紫外放射量と日射量の関係を詳細に比較検討し、晴天指標と澄清指標で天空状態を分類する方法が、日射量からUV-A、UV-Bを推定する数式モデルの開発に有力な手法であることが確認できた。また、日射量から照度を推定する既開発モデルを測定データにより比較検証し、その高い推定精度が再確認できた。日射の直散分離法についても基本モデルを提案した。また、風向・風速・降水量については長時間間隔のデータから、1分間隔のデータを推定するための手法を検討し、基本的方向性が見えてきた。今後、さらに測定を重ね、長期連続測定により取得した各種気象要素データを基に、拡張アメダス気象データをさらに増強、高精度化するための気象要素の推定法を開発する予定である。今後得られる成果より、さらに多目的利用が可能な、次世代の「拡張アメダス気象データ」を多数のユーザーに提供できると信じる。
著者
宮村 摂三 堀 実 安芸 敬一 松本 英照 安藤 誠一
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, 1962-03

1961年8月19日岐阜,福井,石川3県境界付近に発生した北美浜地震にともなう余震群を,本震震央南南西30kmの岐阜県郡上郡八幡町において8月27日より約1ケ月間磁気テープ記録による多成分観測装置によつて観測した.辺長1kmにちかい3点観測によつて初詣の到来方向,みかけの速度をもとめ余震群の分布を現地でただちに推定することができたが,それによると余震域は本震震央の西方にひろがるごくせまい面積をしめ,深度はO~25kmの地殼内にかぎられることがわかつた.余震域の面積A(km2)は本震の規模(M=7.2)から宇津・関の公式logA=M-4で推定されるものにくらべいちぢるしくせまい.なお余震群以外の局地的小地震が観測されたことも注目にあたいする結果である.|After the Kita Mino (North Mino) Earthquake of August 19th, 1961, we hurried to Hachiman, Gujo County, Gifu Prefecture, Central Japan, about 30 kms south-east of the epicenter to observe its aftershock activity for several weeks. Tripartite stations were occupied, as shown in the map of Fig. 1, near the temporary observation room at Gujo High School and from Aug. 27th to Sept. 20th the observation were executed almost continuously.
著者
森岡 清志 大谷 信介 松本 康 園部 雅久 金子 勇 直井 道子 中尾 啓子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、第一に都市度とパーソナルネットワークの関連を都市間比較を通して明らかにすること、第二に、都市度の他に、階層性、家族的特性などのパーソナルネットワークへの効果も明らかにすること、第三に、「それほど親しくない人びと」とのネットワークを年賀状調査を中心とする事例分析をもとに捉え、機関や集団の存在を明らかにしながら、パーソナルネットワークと都市社会構造との連結点を具体的に把握することの三点である。第一と第二の研究目的に従って、平成6年度と平成7年度には、仮説の検討、調査票の作製、全国7地区における実査、調査票の点検、エラーチェックなどをおこなった。調査地は東京都文京区、調布市、福岡市中央区、西区、新潟市、富士市、松江市であり、各地点300サンプルを選挙人名簿から抽出した。回収率は全体で約48%であった。詳細は報告書第2章に記載されている。また、この調査結果の解析と知見については報告書の第3章〜第11章にまとめられている。平成8年度は、上記調査の集計分析の他、第三の研究目的を達成するべく年賀状調査を実施した。現在この事例分析の知見を整理・検討しているところである。調査票にもとづく大規模調査の結果は、都市度と友人ネットワークとに先行研究で示されたようなストレートな相関を見出しえないものとなった。都市度の高低は、遠距離に居住する友人数の大小と有意な相関を示し、むしろ親族ネットワークと都市度との間に興味深い関連が見出されるものとなった。このような結果の差異は、親しい親族数、友人数の聴き方のちがいによっても生じたものと思われる。
著者
松本 エミ子 峯木 真知子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.183-187, 1981-10-20
被引用文献数
2

グリーンピース・スープの材料の破砕について、冷凍グリーンピースを用い、加熱時間、破砕方法の影響を組織学的に調べ、官能検査を行った。1) 冷凍グリーンピース・スープの豆分散物の形状はビマン状の澱粉、蛋白質のほか、細胞細片、遊離澱粉粒、単離澱粉貯蔵細胞、破砕組織片などである。2) 冷凍グリーンピースの破砕は、裏ごしとミキサーで差がみられるが、加熱時間の影響は小さい。破砕後加熱すると破砕時の分散物の状態は大差なくなる。3) 冷凍グリーンピースを用いたグリーンピース・スープでは、官能検査結果から5分力加熱の豆でもミキサーを使用することで簡便に満足できるスープが得られる。なお、グリーンピース・スープにおいてグリーンピースの破砕程度と添加物によるスープの色、物性なと多くの問題があり、今後の興味ある課題であると考える。
著者
笹木 義友 佐々木 利和 山田 哲好 三浦 泰之 東 俊佑 松本 あづさ 山本 命
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、近世後期から近代初期にかけて、尊王攘夷派の志士、蝦夷地の〈探検家〉、書籍や地図の出版者、情報屋、書画骨董類の収集家などとして、さまざまな活動を行った松浦武四郎に焦点を当て、当該期における知識人ネットワークの具体的な様相について明らかにした。また、今後の松浦武四郎研究の新たな展開に向けての基礎資料として、松浦武四郎関係資料(特に松浦武四郎関係書簡)のデータベースを作成した。
著者
鈴木 郁美 原 一夫 新保 仁 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.2, pp.65-70, 2009-01-15

コーパスから抽出した文脈情報により作成する専門用語グラフに対し,グラフを辿ることで節点間の類似度を計算する手法を適用し,類義語獲得に応用した.雑誌 「蛋白質・核酸・酵素」 をコーパスとして用いた実験で,コーパスでの出現頻度が少ない専門用語をクエリとして与えた場合,ラプラシアン拡散カーネル行列を用いた手法が比較的高い精度を示した.この結果は,専門性の高いレアな用語を既存のシソーラスに登録する場面において,ラプラシアン行列ベースの手法の有効性を示唆するものである.We apply graph-based methods to problems of biomedical synonym acquisition. Given a graph of biomedical terms constructed from a corpus, the methods calculate term similarities by traversing the graph to capture shared features between nodes. An experimental study shows that, for query terms appearing less than three times in the corpus, the Laplacian diffusion kernel gives better accuracy than the methods based on the adjacency matrix.
著者
松本 陽子 今村 主税 伊藤 貴俊 谷口 智穂 上岡 龍一
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Biological & pharmaceutical bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.1456-1458, 1995-10-15
被引用文献数
15 31

The hybrid liposomes (90mol% DMPC/10mol% C_<12> (EO)_8 and 90mol% DMPC/10mol% C_<12> (EO)_<12>) have a highly inhibitory action against the growth of tumor cells. The uniform and stable structure of the hybrid liposomes was revealed on the basis of electron microscopy and dynamic light scattering measurements.
著者
田崎 修 杉本 壽 嶋津 岳士 朝野 和典 鍬方 安行 小倉 裕司 塩崎 忠彦 松本 直也 入澤 太郎 室谷 卓 廣瀬 智也
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

救命救急センターにおいて、挿管患者に集中して「先制攻撃的接触予防策」を導入したところ、挿管患者だけでなく病棟全体のMRSA院内感染が減少した。救命センター入院早期(24時間以内)におけるMRSA院内感染のリスクファクターは、挿管、開放創の存在、抗生剤投与、およびステロイド投与であった。Neutrophil extracellular traps(NETs)は喀痰中において、呼吸器感染症に対して速やかに発現し、感染症が軽快すると減少した。NETsは感染症のみならず非感染性の高度侵襲にも反応して血中に発現した。今後、NETsの臨床的意義の解明が必要である。
著者
サイト エリカ 松本 洋子
出版者
駒澤大学
雑誌
論集 (ISSN:03899837)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.169-182, 1990-03

国家社会主義者によって一貫して推し進められてきた女性学卒者の職業的地位からの排除は,-ここでは特に女教師についてであるが-すでにヴァイマル共和国に存在していたこれらの女性に対する社会的意識と法的措置を基盤に行うことが出来た。ヴァイマル共和国は,女性にとってはその解放の可能性という点では矛盾した諸条件をつくりだした。法的・形式的な同等や男女同権と並んで,依然としてしっかりと根を下ろした伝統的な女性観や家庭観,また増大する経済危機が,その実現,ないしは発展の継続を阻止した。より高い職業的地位と社会的に影響力のある役割での貢献と正当な評価を求める女性学卒者の困難な戦いは,経済的危機のために法的基盤すら狭められた。失業が増大する時代には,職場をめぐる競争は不可避であるが,女性たちは伝統的な考えによって,男性が所望する職場から駆逐されていった。経済的危機と厳しい競争への不安から,多くの女性たちは,彼女たちにとって安全な領域,つまり家庭へ,むしろ自ら戻ることを選ぼうとさえした。さらにヴァイマル共和国における女性の経済的解放は,まだ巾広い社会的基盤の上に行われていなかった。それは今まで男性が多数を占める分野に敢えて出て行こうとする女性があいかわらず少なかったことにも問題があった。国家社会主義者は,こうして彼らの女性観を現実化するための準備された耕地を手に入れた。1932年5月12日の女性官吏の法的地位に関する法律が憲法第128条にはっきりと抵触していたにもかかわらず,国会によって可決された。それは女性を100年前の状態に引き戻した。この法律は国家社会主義者に,彼らが女性官吏に対してさらにそれ以上の制限を課し,また官吏法の中に最終的に明記し得る基盤を提供した。国家社会主義者はまず最初に女性学卒者に対する措置を取った。国家社会主義者の女性政策は,もちろんすでにヴァイマル共和国で進められた政策を極端に展開しただけではなかった。その継続的な展開のほかに,彼らはさらに質的にいくらか新しいことを具現した。国家社会主義者は,今や女性たちから教育と職業の機会均等の権利を完全に奪い,彼女たちから,その組織と雑誌を廃止し,画一化することで,自主的な社会・政治的活動の基盤と影響力を奪い去った。さらに女教師たちは,他のすべての社会的に重要なグループと同様に,国家社会主義思想とその価値規範に基づいて「整列」させられた。残忍な弾圧によってあらゆる反対派はすでに芽のうちに摘み取られた。女教師自身の気持ちの中にあった保守的女性観の要素は,国家社会主義運動に彼女たちが急速に統合されていくうえでの重要な条件であった。意図は様々であったにせよ,同性に対する教育者として,排他的な,少なくとも女性の特別な権利についての女教師たちの要求が,徹底的な男女分離教育を目指す国家社会主義者の要求と一致したのも無理からぬところであった。依然として少女の将来における「母親としての役割」を強く志向していた女子教育に対する彼女たちの実際的考え方や女教師自身が職務を遂行するにあたって果した「母性的役割」は,国家社会主義者の同じ見解に敵対することを難しくした。彼女たちの「国民への奉仕」という基本思想は,彼女たちが国家社会主義国家に進んで協力を申し出ることを容易にした。最も低い地位と最も影響力のない社会的分野においてさえ,彼女たちはこの思想によって,特別な価値があるように思うことが出来た。いろいろのグループと利害関係によって分裂していたヴァイマル共和国の婦人運動は,女性の側から国家社会主義に反対する統一的な防御闘争を組織することを不可能にした。このことは議論すらもされなかったし,また努力もされなかった。彼女たちは,男性同僚,とりわけ文献学者同盟に組織されていた同僚たちの中に,国家社会主義に反対する闘いでの同盟者を見いだすことは出来なかった,なぜなら同盟はすでに早くからはっきりと国家社会主義に協力を申し出ていたからである。どちらかといえば保守的陣営に属する彼女たち自身の政治的立場ゆえに,他の同盟者,たとえば社会民主党や共産党などは,女教師連盟にとってはじめから問題にならなかった。彼女たちの女権的な,または自由主義的基本姿勢にもかかわらず,女教師たちもまた意識面では保守的な官吏に属していた。ドイツの官吏は特殊なブルジョア的意識を持っていて,その自由主義的要素は19世紀末以来,強力な国家主義と社会進化論に影響されて新しい形を形成していた。その保守的傾向は,とりわけ国家社会主義がドイツ官吏に再び社会的特権とそれにふさわしい社会的地位を保障するであろうと期待していたことに現われていた。ドイツの教員集団は,さらにその教育的基本姿勢では,反自由主義的,民族的傾向で思想的に国家社会主義と強く共通していた世紀の変わり目の「文化批判的改革教育」に影響されていた。国家社会主義者は巾広い分野で,多様な方法を用いて彼らの目的を宣伝した。保守的な基本思想は,改革・変革を求める急進的な要求やさらには社会正義さえ混ぜ合わせていたので,この時期,失業者の大きなグループであった女教師たちもこの標語の急進性に魅せられていった。「…腐敗を容赦なく取り締まるというのはナチスの術であった。ナチスは歴史的なものに対して活力,生命,若さを声高に宣伝した,そうすることで過去の慣習を一層確実にとり戻そうとしたのだ。」かっての女権論者の多くは,国家社会主義者の人種理論に魅せられているのを感じていた。彼女たちはゲルマンの原始時代を回想する中で,「北方人種」に属していることから,今や「選ばれた女性」として巾広い社会的活動の可能性を期待していた。全ドイツ女教師連盟の指導者たちの国家社会主義に対する警告は女性特有の困惑の表れであった。それは彼女たちが国家社会主義思想と政策を,主にこの分野においてのみ分析していたからである。彼女たちは国家社会主義思想と政策をその全体として拒否しようとはしなかった。それにもかかわらず,この警告と後に国家社会主義の期間中これらの女性たちの側から示めされた批判は,ともにブルジョア・自由主義的側にあった潜在的抵抗力の一つの現れであった。国家社会主義は巧妙な,また同時に弾圧的な政策によって,これらの潜在力を政治的に封じ込むことが出来た。国家社会主義は,さらに様々な思想的潮流や経済的危機によって生じた不安や偏見をとらえ,彼らの目的に利用する術を心得ていた。
著者
松本 良 荻原 成騎 徳山 英一 芦 寿一郎 町山 栄章 沼波 秀樹 小池 義夫 大出 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、海洋のガスハイドレートが地球環境へどのような影響を与えうるか、また現に与えつつあるかを、地質学、地球物理学、海洋生物学など異なるアプローチで総合的に解明することである。3年間の調査を通じて、以下を明らかにした。1. 日本海、直江津沖では「海鷹丸」による調査航海を3回、海洋機構の「なつしま」で2回、「かいよう」で1回の調査を行なった。2. 日本海の調査海域で強いメタンの湧出域を確認した。メタンはプルームとして海面近くまで立ち上がり、表層海水にメタンを供給していることが分かった。メタンプルームが立ち上がる日本海の底層水は温度が非常に低く、ガスハイドレートの安定領域に含まれる。従って、メタンバブルの表層にはガスハイドレートが形成されると予想され,この事が高さ600mものメタンプルームの発達要因である。3. 潜航艇による調査で、海底にガスハイドレートが露出していることを確認した。これは本邦周辺では始めての発見である。このことは、海底下からのメタンフラックスが高いことを示す。4. 水温が低いため海底の生物相は単純で、分布密度低は低いが、メタンプルーム付近ではバクテリアのコロニー、ハナシガイなどの化学合成生物、さらに食物連鎖の頂上にベニズワイガニが存在している。5.メタンプルームが発達する海脚上には直径約500mの凹地(ポックマーク)が発達する。当初、この凹地がメタン湧出源と予想したが、実際は、ポックマークは非活動的であり、堆積物で埋められている。この事は、過去に今よりも激しいメタン湧出があったことを示唆する。6. もう一つの調査海域、下北半島東方では、2年目に海洋機構の「淡青丸」による調査を行なった。ここでは、メタン湧出を確認することはできなかったが、海底下に強いBSR反射面が発達することが分かっており、ガスハイドレートが発達することは明らかである。
著者
和崎 春日 松田 素二 鈴木 裕之 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 上田 冨士子 三島 禎子 若林 チヒロ 田中 重好 嶋田 義仁
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

科研共同研究の最終年度にあたり、報告書に向けての総括的なまとめ討論をおこなった。とくに、日本における第1位人口をしめるナイジェリア人と第2位人口のガーナ人の生活動態については、この分野の熟成した研究を共同討論のなかから育てることができた。日本への来住ガーナ人のアフリカ-日本-アフリカという、今まであまり報告されていない新しい移民動態の理論化(若林ちひろ)や、日本に来住したナイジェリア人の大企業従業員になろうとするのではない、起業活動に向かう個人的・野心的なアントルプルヌーシップについての新規な理論化(川田薫)と、まったく情報のなかった、その日本における協力扶助と文化維持のアソシエーション活動の詳細な記述報告(松本尚之)、さらには、アフリカ-日本-アメリカという地球規模のネットワーク形成がナイジェリア人によってなされている動態を、アフリカ移民論のまったく新しい指摘として提示しえた。また、アフリカ人の芸能活動についても、ギニア、マリ、セネガルといった西アフリカ・グリオ音楽文化の「本場」とされる地域からの日本への来住アフリカ人の活動調査と、そのアフリカの母村での活動状況の調査の両方を行い、それをめぐる、やはり新規性に富む、日本ーアフリカ間の何層からもなる往来活動を抽出し、指摘・一般化することができた(鈴木裕之、菅野淑)。こうしたポジティブな活動側面のほかに、ネガティブなHIVをはじめとする病気の実情とそれにむけるホスト社会側からの協力の可能性についても重要な研究糸口を提案している(若林ちひろ)。1年後に『来住アフリカ人の相互扶助と日本人との共生に関する都市人類学的研究』と題して報告書を出版し、この共同研究の成果と今後の継続的発展について、アフリカ学会における集中発表でも熱い期待と高い評価を得た(2008年5月於・龍谷大学)。
著者
松本 康隆
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.602, pp.191-198, 2006

Sosen KIZU is a designer of modern tea rooms, and the one he designed for the Imperial family in 1930 is one of his most famous work. But, up to know, there has been no study about the whole life work of Sosen Kizu. The purpose of this paper is to settle the fundamental basements for the futures studies about him. In this study, by first piecing out the plans and texts, that is all the historical documents about KIZU and his contemporaries, we want to make a synthesis of his skill as a Tea-Master. By listing up his architecture, we understood where it spread in the different regions, and the approximate proportion of the tea rooms in his all work.
著者
松本 博志
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アルコール性急死および大腿骨頭壊死において自然免疫機構のシグナリングが関与していることを明らかにし、特にIRF7およびIFN-αの活性が影響を及ぼしている可能性が明らかとなった。