著者
池田 秀雄 渡邉 重義
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

理科の授業において、実験観察は不可欠であり、開発途上国においては簡易的な実験手法の開発、実験材料の開発、地域の実態に合わせた改良工夫などが必要である。また、同時に教科書やシラバスの分析も必要である。本研究の最終年度にあたりまず、バングラデシュ、ザンビア、カンボジア、マレーシアおよびガーナの中等理科教科書・シラバス分析を行った。次いで、バングラデシュ、カンボジアおよびガーナの教育現場の実態調査を行い、問題点を解析した。その結果、シラバスはどこの国においてもあまり大きな問題点は見られなかったが、教科書においては、記述が不正確、教授順序が構造化されていない、生徒の発達段階が考慮されていない、生徒実験が少ない、など多くの問題点が指摘された。また、教育現場においてはほとんど生徒実験がなされていない実態が明らかとなった。そこで、広島大学によってバングラデシュで実施している教員再研修プログラムを通して、現場で実施可能な理科実験観察教材を開発した。開発した教材を実際の教員再研修に組み込んで試行し、その有用性を検証した。さらに、上記で開発した教材を、広島大学の大学院生のインターンシップとしてフィリピン大学理数科教師訓練センターの教員再研修に用いた。以上の結果、本研究で開発した生徒実験教材は、教員再研修において極めて有用であることが実証された。これらの結果は、本科学研究終了後も、ザンビア、カンボジア、マレーシア、ガーナの生徒実験開発の指針となる。
著者
寺倉 清之 池田 隆司 Boero Mauro
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (Low temperature science) (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.57-69, 2006-03-22

多様な状況下で多様な振る舞いを示す水の性質の解明は,長い研究の歴史にも拘らず,なお物理化学, 生物の主要な研究課題となっている.第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションによる 水の研究から,水の基本的性質,超臨界水の物理と化学,高圧下のメタンハイドレードなどについて 解説する.
著者
池田 紘一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

トーマス・マンは自ら『魔の山』を錬金術的と称し、主人公ハンス・カストルプの人間的成長を錬金術的「昇華」と呼んでいる。従来単なる比楡としてさほど真剣には受けとめられなかったこの発言の意義と射程をユングの錬金術心理学との関連において明らかにする。その要点は以下のごとくである。1)ハンス・カストルプは「原質料」としてマダム・ショーシャをはじめとする諸元素ないしは物質との「分離」と「融合」を繰り返しながら「賢者の石」への道を辿る。この「精神」と「肉体」の錬金術的・エロス的結合の試みは失敗に帰する。それは錬金術の場合と同様、ヨーロッパ近代合理主義の批判を意味し、同時にその克服による新たな人間愛の模索を意味する。2)物語のこのプロセスは、マンの「錬金術的物語術」と表裏一体をなしている。マンの語りは、諸元素を密封して火にかけ、昼夜を分かたず繰り返される錬金術の分離・融合の試みに等しい。諸々の偶然的出会いや偶然的出来事から必然の糸(真の結合の可能性)を紡ぎ出すその錬金術的物語技法の特質を明らかにした。3)以上の『魔の山』の特質は、その現代的装いにも拘らず、『ファウスト』と見事に照応している。『ファウスト』もいわば、現世では失敗に帰する錬金術的実験の試みである。マンの『ファウスト』の現代的パロディーの試みは、錬金術心理学的観点を導入してはじめて、より根源的な意味での「まねび」であることが判明する。
著者
中塚 晴夫 渡辺 孝男 池田 正之
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

一般家屋に於ける空気の汚染源としては、暖房装置と炊事用熱源が挙げられるが、本研究では前者に注目し、その種類によって自覚症状に変化が見られるか否かを調査した。対象は宮城県仙台市・涌谷および田尻町の3地区40歳以上の男女32124人(男14383人、女17741人)とし、この人達にアンケート調査をした結果の解析を行うとともに、これに同県白石市の8千人の対象者を加えるための調査を行った。暖房に関する質問として、(1)暖房しない(2)電気ストーブまたは電気ごたつ(3)エアコン、セントラルヒーティングまたはスチーム(4)クリーンヒータ(5)煙突付きのストーブ(6)煙突無しストーブ(7)炭や煉炭の火鉢やこたつなど、のどれを使うかを回答してもらい、汚染源となる(6)(7)のいずれか一つでも用いる群(I)と、いずれも用いない群(II)とに対象者を分けて自覚症状に差が見られるか否かを検討した。その結果、撹乱因子の少ないと思われる非喫煙者を見ると、男子では涙が出やすい(Iで13%、IIで10%、値はいずれも年齢訂正有症率、以下同様)と疲れやすい(I16%、II13%)という自覚症状が汚染源を使用する群に有意(P<0.05)に多く、女子では鼻汁がよく出る(I11%、II10%)と不眠(I10%、II8%)に有意の差が現れていた。それ以外では統計的に有意とはならないが、男子では、せき、たん、眼の充血、眼がコロコロする、女子では眼の充血、眼がコロコロする、涙が出やすいなどが増加する傾向を示した。また、生活環境に影響を与える道路に面した家屋に住んでいるか否かについても解析したが、この影響は明確で、非喫煙女子では「症状無し」も含め17項目中9項目に有意差が認められた。以上のことから、暖房にともなう屋内汚染の人体に対する影響は若干認められるが、その程度は道路に代表される屋外環境の影響よりは少ないと推定される。
著者
吉川 英夫 矢部 俊康 池田 尊 三野 俊作
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.54, no.505, pp.2675-2679, 1988-09-25

In this study, the exhaust gas noise reduction is reported through the application of a heat resistant epoxide resin, in place of a 1.5 L 4-cycle gas engine steel muffler. The findings show that this resin muffler of the same shape as a steel muffler results in noise reduction without decreasing the engine efficiency, even in a restricted space. Being measured by a standard noisemeter and FFT analyzer, the noise reduction effect was analyzed to have a relationship with the temperature of the muffler, and with the frequency.
著者
池田 一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.44-52, 1961-03-25

小麦品種の発芽種子,幼植物,葉身におけるアミラーゼ活力の変異と遺伝について研究し次の結果を得た。1. 発芽種子と幼植物のアミラーゼ活力の間には+0.90,また発芽種子と出穂期における葉身のアミラーゼ活力との間には+0.87の相関係数が認められた。2.この研究の範囲においては,アミラーゼ活力の強い形質は単因子で優性に遺伝した。3. アミラーゼ活力における温度の後作用が認められた。しかしこれは一つの例外を除き1代で消失した。4. 異る土壌型の後作用もまた認められた。そしてこの場合,発芽種子のアミラーゼ活力と同じ土壌に育つた葉身の活力との間の相関係数は+0.74であった。5. 発芽種子のアミラーゼ活力は,主要品種の試料の産地が寒い地方から暖い地方に移動するにつれ,2.41ccから0.35ccの範囲において漸次減少し,その地理的変異は2月の平均気温と密接た関係を示した。以上の結果から,小麦におけるアミラーゼ活力の地理的分布は,温度に対する遺伝的及びそれと同様な傾向をもつ非遺伝的な適応現象であろうと推察した。
著者
王 文涌 池田 満 仲林 清 柏原 昭博 乙守 信行 林 公生 長谷川 忍
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.315, pp.11-16, 2008-11-14

本研究はカスタマイズ可能な学習コンテンツを中心にした知識循環型e-Learning環境を提案する.本環境では,SCORM,LOMという標準化技術とオントロジーに基礎にして,学習コンテンツをカスタマイズする機能を提供することにより,学習者が学習共同体に蓄積された学習コンテンツやWeb学習リソースから学習情報や経験知,応用知,理解知などを参照・利用しながら,自分自身の知識を獲得・再構成する場を提供する.そして,再構成された知識を学習共同体に蓄積して,集合知の形成と知識の再利用に貢献しながら,自らの学習を続けるという知識循環型e-Learningを実現する.
著者
長崎 勤 宮本 信也 池田 由紀江
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では[研究I]の「心の理解」の発達機序についての解明と、[研究II]の「心の理解」の発達援助に大別して研究を行った。[研究I]では、0-1歳の取り上げ場面での、実験者による応答条件と非応答条件の比較検討を行った結果、「待つこと」は、15ヶ月以降、応答条件が非応答条件に比べ持続時間が長くなり、高次な手段に変換するようになり、1歳半ばから他者意図の想定が明確になることが示された。また、1-2歳児における誤提示条件への応答の分析から、1歳半頃から「他者意図の気づき」の反応がみられ、その後、相手の反応に応じ伝達手段の変更を行い、2歳前半では大人の関わり方に左右されず、伝達手段を修正できた。2、3歳児の母子場面の心的状態語の表出を分析した結果、2歳では自己欲求に関する発話が中心であり、3歳では自己叙述が増加し、他者叙述も増加することが示され、自己から他者へ、欲求から叙述へという発達過程が考えられた。高機能自閉症児の「心の理解」の発達と談話の発達の関係を分析した結果、誤信念課題等の「心の理論」課題の通過群では、自分の過去経験についての語りは他者や自己の心的状態に言及することが多かったが、未通過群ではそれらが少なく、また未通過群は出来事を時系列的に並べず並列させていた。[研究II]では「『心の理解』発達援助プログラム(MAP)」を開発し、発達障害児に対し発達援助を行った。広汎性発達障害児およびダウン症児に対し、「宝探しゲーム」やおやつ場面を用いて他者の欲求意図理解と信念理解の発達を援助し、「心の理解」発達の効果を認めた。また、自閉症児に対し相談機関と通園先の保育所において、小集団の模倣遊びと鬼ごっこルーティンを用いた指導を行った結果、指導場面で役割の自発的遂行が可能になった。
著者
池田 克則 落水 浩一郎
出版者
北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科
雑誌
Research report (School of Information Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology) (ISSN:09187553)
巻号頁・発行日
vol.IS-RR-96-0010S, pp.1-72, 1996-03-18

本論文では、PCTE(Portable Common Tool Environment)を用いて、商用CASEツールのデータを統合する手段を論じたものである。様々な統合技術の調査及び開発を紹介しつつ、その結果をStP/OMTとObjectCenterの統合にまとめる。上流工程と下流工程のCASEツールをデータ統合することにより、作業の連続性の保証と変更の波及の追跡が容易に分かることが期待される。本論文ではそれを交換するためのスキーマ例の結果も示す。さらに、このツールを用いて実際のソフトウェアの開発を行ない、それに基づいて統合ツールの問題点を分析しつつ、ツール統合のありかたについて提案する。
著者
長谷川 公一 町村 敬志 喜多川 進 品田 知美 野田 浩資 平尾 桂子 池田 和弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、気候変動政策の政策形成過程と政策ネットワークに関する国際比較研究の日本版である。主要3紙の関連記事を対象としたメディア分析と主要な関係団体に対する質問紙調査とインタビュー調査からなる。後者では、省庁・政府系研究機関・業界団体・民間シンクタンク・NGO・自治体・政党・マスメディア・企業など125団体の気候変動問題担当者に質問紙を用いて面接、72団体から回答を得た(回収率57.6%)経済・業界団体などのように、自主的な削減の取り組みを評価し、大きな削減目標に消極的なグループと、地方自治体・環境NGOなどのように、法的な削減を求め、削減に積極的なグループとに2極化していることがわかった。
著者
池田 直 森 茂生 吉井 賢資
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

RFe204は電子の密度分布で実現する誘電体(電子誘電体)であり既知の誘電体とその発現原理が異なる。またその特性が室温に置いても実現しているため、応用面においても新機能発現の期待が持たれている。本研究は発見されたばかりの物性を精査するため、RFe204試料について化学当量比と酸素欠損量をパラメータとして調整しながら試料合成を行い,強誘電特性発現条件を明確化し、さらに電子秩序強誘電性崩壊条件近傍にある非線形電気伝導特性を探索・解明することを研究実施目標に定めた。本研究の結果,気密天秤炉を用いることで,高品質なRFe204結晶作成に必要とされるパラメータが解明された。また高品位単結晶を作成するための溶融帯或法の様々な条件が解明され発見された。新たに開拓した手法で作成された単結晶は,電気抵抗率が著しく高くなる。さらにまた"不完全な電子強誘電性"とも言うべき電子相が存在していることを確かめた。この電子相は,電気電導率が非線形特性を示し,さらに結晶方位に対して異方的であることを発見した。さらに可視光照射に伴い電気電導率が向上し、同時に誘電率が低下する現象を発見した。室温における光照射に伴う誘電性と電導性の異常応答今までに見いだされている物質と光の相互作用の理解は,イオンに存在する核に束縛された一つの電子が,光から運動エネルギーを受け渡され,その束縛順位から開放される過程として記述されている。一方ここに発見された現象は,本来金属状態にある電子系が電子相関効果で形成する極性な電子集団の光応答であり、新現象である。電荷秩序状態の非線形融解現象の異方性本物質の電流電圧特性は非線形であることを見いだした。この現象の起源は,物質の中に内在する電気集団が電流により融解し,また自発的に電気分極を持つ状態に再凝縮するためにおこる。これは室温にみられる集団電子の融解と再凝集の新しい現象である
著者
池田 潤 乾 秀行 竹内 茂夫 IZRE'EL Shlomo
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

紀元前2-1千年紀の北西セム語文書がXML でマークアップされ、個々の言語データが位置情報を有する言語データベースを検索し、検索結果を地理情報システムに送って地図化するプログラムのパイロット版を作成し、それを用いて事例研究を行った。一例として、動詞語尾-(n)naや定形動詞として用いられる不定詞の地理的分布を可視化し、それらがフェニキア以北から南へ伝播した言語的改新であったという新たな知見を得た。
著者
大城 昌平 藤本 栄子 小島 千枝子 中路 純子 池田 泰子 水池 千尋 飯嶋 重雄 福永 博文
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ハイリスク児の出生早期からの発達と育児支援の方法を開発し、フォローアップシステムを構築することを目的とした。その結果、出生早期からの親子の関係性を視点とした"family centered care"によるディベロップメンタルケアの取り組みが、児の行動発達、両親の心理的安定、育児の自信につながることが示された。また、そのような取り組みには、関係専門職者に対する、ディベロップメンタルケアの理論的実践的な教育の機会を提供し、低出生体重児・早産児のケアの質を改善することが急務の課題であると考えられた。
著者
池田 正浩
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

Aquaporin (AQP)分子種とは、疎水性の脂質二重膜である生体膜を水分子が透過する通路として同定されたタンパク質分子種で、現在では、200以上のAQP分子種が、微生物から脊椎動物に渡って存在することが明らかにされ、生命を維持する上で根本的なタンパク質分子の一つであると見なされるようになった。申請者のグループは、最近新しいAQP分子種であるAQP11を世界に先駆けて発見した。しかしながらAQP11が細胞のどこに局在するのか、どのような分子形態で存在するのか、AQP11の生理学的意義付けは何かなどについては、全く明らかにされていない。本研究では、これらの点を明らかにすることを目的とした。(1)AQP11の細胞内局在GFPやmycなどのタグをAQP11に融合させて細胞に発現させ、イメージング法により細胞内の局在を調べた。その結果AQP11は主として小胞体に局在すること、そして少ないながら一部は核膜および細胞膜にも局在することを観察した。次に、小胞体局在に関係するアミノ酸配列について部位特異的突然変異法などの手法を用いて検討した結果、AQP11のC末端側に存在しているNKKEモチーフ、およびCys-101は、AQP11の小胞体局在には関係していないことが明らかとなった。また、AQP11のC末端側に存在しているNKKEモチーフが、ER exitシグナルとして働いている可能性を見出した。(2)AQP11の分子構造現在までに分子構造が明らかにされているAQP分子種は4量体を形成して、細胞膜に存在することが知られている。この点について、pull-downアッセイ法やタンパク質架橋法などを用いて検討した結果、AQP11が4量体を形成すること、この多量体形成にCys-101が関わっていることなどを見出した。(3)小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割についてAQP11発現量が減少したマウスに、虚血再灌流による小胞体ストレスを負荷したところ、そのマウスの表現型には、変化は認められなかった。しかし、今回の系は、AQP11の発現を完全に抑えた系ではなかったため、小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割については、今後も検討する必要がある。以上の成果の一部は論文としてまとめ、現在投稿中である。
著者
早渕 仁美 井上 厚美 池田 正人
出版者
福岡女子大学
雑誌
福岡女子大学家政学部紀要 (ISSN:02883953)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.41-50, 1985-12-25
被引用文献数
2

個人の平均的な食生活実態を, 簡便かつ数量的に把握する手段として, 簡易食生活実態調査票を考案した。調査内容は, 個人情報, 食事状況, 摂取状況に分かれており, 食事状況は10点満点で点数化し, 摂取状況は日頃よく使用する食品(76品目)の平均摂取頻度と1回当たりの目安摂取量から, 1日当たりの摂取栄養量および食品群別摂取量が推定できるようにした。なお, 塩分摂取量は調味や料理の好みなども考慮して推定している。本調査方法と思い出し法による食生活実態調査を行った佐賀県農村婦人(40歳代, No.=121)の事例を上げ, その簡便性と妥当性について, 若干の検討を加えた。
著者
祐森 誠司 桑山 岳人 池田 周平 吉田 豊 佐藤 光夫 半澤 恵 門司 恭典 渡邊 忠男 近江 弘明 栗原 良雄 百目鬼 郁男 渡邉 誠喜 Luis MAEZONO Enrique FLORES 伊藤 澄麿
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.49-53, 2002-06-20

本研究は,日本国内におけるラマ属の被毛生産の可能性を検討するうえで基礎的な知見と考えられるラマ属家畜の被毛形態について検討した。ラマの被毛は,日本とペルー国で飼育される動物から採取した。アルパカの被毛は日本で飼育される動物から採取した。グアナコとビクーナの被毛はラ・モリナ農業大学の共同研究者から提供されたものを用いた。メンヨウ(サフォーク種)の被毛は,我々の研究室で飼育されている個体から採取した。伸張率,クリンプ数,太さ,キューティクルの面積と形について肉眼あるいは電子顕微鏡による観察を通じて測定された。ラマ属の被毛の伸張率(1.3-2.1)はメンヨウのもの(3.2)よりも低い値を示したが,逆にラマ属の被毛のクリンプ数(5.4-8.9)はメンヨウのそれ(2.4)よりも多かった。このことは,ラマ属の被毛の柔軟性がメンヨウよりも劣っていることを示唆している。太さに関する結果は,ラマの粗毛が他の動物の普通の毛の2〜3倍太いことを示した。また,ビクーナの被毛の太さは他の動物の普通の毛の1/2倍であった。電子顕微鏡での観察結果から,キューティクルの形は2種類に分類され,1つはラマ,アルパカ,グアナコ,メンヨウのように幅の広いタイプであり,もう1つはビクーナのような長さの長いタイプであった。ビクーナの被毛はキューティクルの面積(47.4-70.0μm^2)が最も小さく,他の日本国内飼育動物のそれはそれぞれ近似した値を示した。