著者
鈴木 登紀子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
薬学雑誌. 乙号 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.12, pp.1335-1340, 2015
被引用文献数
3

&nbsp;&nbsp;Adenosine and its precursors, ATP and ADP, exert various physiological effects <i>via</i> binding to purinergic receptors. We previously used co-immunoprecipitation, bioluminescence resonance energy transfer (BRET) and immunoelectron microscopy to demonstrate the hetero-oligomerization of purinergic receptor subtypes. Furthermore, pharmacological studies found significant changes in receptor-mediated signaling in human embryonic kidney (HEK) 293T cells co-transfected with these receptors. These findings suggest that heterodimers of purinergic receptors may have distinct pharmacological profiles, possibly due to dimerization-induced conformational changes, further suggesting that hetero-dimerization may be employed to &ldquo;fine-tune&rdquo; purinergic receptor signaling. Adenosine A<sub>2A</sub> receptor (A<sub>2A</sub>R), P2Y<sub>1</sub> receptor (P2Y<sub>1</sub>R) and P2Y<sub>12</sub> receptor (P2Y<sub>12</sub>R) are predominantly expressed on human platelets. ADP activates human platelets by stimulating both P2Y<sub>1</sub>R and P2Y<sub>12</sub>R, which act sequentially and in concert to achieve complete platelet aggregation. In contrast, adenosine stimulates Gs-coupled A<sub>2A</sub>R, followed by activativation of adenylate cyclase, leading to an increase in intracellular cAMP levels, which potently inhibits platelet activation. We examined the hetero-oligomerization and functional interactions of A<sub>2A</sub>R, P2Y<sub>1</sub>R, and P2Y<sub>12</sub>R. In HEK293T cells triply expressing all three receptors, hetero-oligomerization was observed among the three receptors. Additionally, P2Y<sub>1</sub>R agonist-evoked Ca<sup>2+</sup> signaling was significantly inhibited by co-treatment with an A<sub>2A</sub>R antagonist in HEK293T cells. In human platelets, we identified endogenous A<sub>2A</sub>R/P2Y<sub>1</sub>R and A<sub>2A</sub>R/P2Y<sub>12</sub>R heterodimers. We also observed functional Ca<sup>2+</sup>-signaling-related cross-talk similar to those found in HEK293T cells, and found that they appeared to affect platelet shape. These results collectively suggest that intermolecular signal transduction and specific conformational changes occur among components of the hetero-oligomers formed by these three receptors.<br>
著者
武田淳子 松本 暁子 谷 洋江 小林 彩子 兼松 百合子 内田 雅代 鈴木 登紀子 丸 光惠 古谷 佳由理
出版者
千葉大学看護学部
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
no.19, pp.53-60, 1997-03
被引用文献数
8

本研究は,小児科外来受診中の2歳から6歳の小児を対象として,採血時に小児がとる対処行動の特徴を明らかにする事を目的とした。28名のべ33の採血場面を観察し,以下の結果が得られた。1.処置前・中・後と経過がすすむにつれて小児のとる対処行動は減少した。2.処置の全経過を通して自己防衛行動が最も多く,中でも目で見て確認する行動が最も多かった。3.2〜3歳の年少幼児に比して4〜6歳の年長幼児は,処置時にとる対処行動数が多く,多様であった。4.処置に主体的に参加する行動を示した小児は,泣かずに処置を受けていた。
著者
相本 啓太 太田 進 上田 誠 鈴木 康雄 元田 英一 木村 宏樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.90-96, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

【目的】膝歩きは臨床で骨盤に対するアプローチとして使われることがあるものの,その動作特性の解析に関する報告は少ない。そのため本研究は骨盤に着目し,膝歩きを歩行と比較することで,膝歩きの運動特性を解析することを目的とした。【方法】対象の健常者24名(22 ± 2歳)に三次元動作解析装置用マーカーを貼付し,歩行と膝歩きの1歩行周期における骨盤可動域の平均変化量,重心移動を解析し,比較を行った。また,体幹・骨盤近位の7筋での立脚期,遊脚期における% MVC(% Maximum Voluntary Contraction:最大随意収縮に対する割合)を求め,歩行と膝歩きの比較を行った。【結果】骨盤前後傾・水平回旋可動域の平均変化量において,膝歩きの方が有意に高値を示した。筋活動量は立脚期,遊脚期において計測した多くの筋で歩行と比較し,膝歩きの方が有意に高値を示した。【結論】膝歩きは,骨盤の可動性・近位筋の活動性を高める運動療法として有用である可能性があると考えられた。
著者
荒井 美紀 鈴木 優太 中野 恒明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.391-396, 2010-10-25
参考文献数
7

本研究においては映画の舞台ともなった柴又帝釈天参道について街並みの現状と形成の変遷を調査し、その特徴と価値を明らかすることを目的とする。同時に現状より今後の保全整備の可能性を考察した。得られた知見は以下の通りである。1)地域住民の生活の場、帝釈天への信仰の街から映画の舞台となったことを契機に商店主等を中心として地元発意的に映画の観光地として街並みが創造されている。2)映画公開後には街並み整備事業が導入され映画の舞台としてだけでなく街並みの観光地化が目指されている。3)街並みは歴史的木造建築物が多くを占めるため、その防災対策が課題としてあり、また防火地域であるため仮に街並みが消失した際に復元は困難であることも課題としてある。
著者
鈴木 紀子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2018, no.28, pp.82-96, 2018

<p> 本報告は,アメリカ人作家パール・バック(Pearl S. Buck)原作の短編小説,『大津波』(<i>The Big Wave</i>, 1948)と日米両国の戦後の関係を追究する研究の初期報告である.『大津波』は,1962年,日本とアメリカの合同製作により映画公開されている.ノーベル賞受賞作家で世界的知名度を誇るバックが日本を描いた作品として,その映画化は当時日米両国で話題となった.だが,残念ながら現在日本ではこの映画は視聴可能なフィルムが残っておらず,今や一部の人に「幻の映画」として知られるのみで,人々の記憶から消滅しようとしている.本稿は,筆者のアメリカでの調査を基に,この「幻の映画」の製作過程と内容に係る詳細を記録することを主眼とする.</p><p> 本研究の最終目的は,原作および映画,そしてテレビドラマとしての『大津波』の,第二次世界大戦後アメリカの対日民主化政策および冷戦文化外交政策との関係性を明らかにすることである.この作品は,戦後占領下日本およびドイツで民主化政策のための教育材料に選ばれていた.また,戦後1950年代終わりまで,アメリカではアジアを主題とする文学や映画などのアジア表象が多数創作され「冷戦期オリエンタリズム」を形成していたが,1956年にテレビドラマ化,そして1962年に映画公開されたこの『大津波』は,同時代アメリカの冷戦文化を形成する一役割を持っていたと考えられる.一方日本でも,この作品は津波が戦後の日本人にとって敗戦と占領の象徴となり,日本人読者に特殊な受容と解釈をもたらす.</p><p> このように,『大津波』は日本とアメリカの「戦後」に密接な関係性を持つと考えられる.本稿は,その研究の初期段階報告として,現在までに明らかとなった情報の記録と考察を行い,最後に今後の課題と研究の展望を示す.</p>
著者
小机 敏昭 鈴木 茂 新井 達太
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.971-974, 1981

Postoperative hemodynamics of 36 patients who underwent valve replacement was evaluated. The 17 patients underwent AVR (BS11, SJM5, H1), the 6 patients, AVR+CNC (BS) and the 13 patients, MVR (BS6, SJM2, H1, ISL).<br>In AVR group, the Björk-Shiley valve was stable hemodynamics at tachycardia state, for example when the heart rate was 120/min, cardiac output showed 5.08±0.27L/min in the Björk-Shiley valve, 4.77±0.43L/min in the SJM valve.<br>In MVR group, the Ionescu-Shiley valve was good hemodynamics as the heart rate increased, for example the cardiac output showed 3.95±0.35L/min at spontaneous rate, 4.86±0.32L/min at 80/min, 4.91±0.33L/min at 100/min and 4.94±0.51L/min at 120/min.<br>In conclusion, the Björk-Shiley valve was better for the aortic valve replacement, and the Ionescu-Shiley valve was better for the mitral valve replacement.
著者
鈴木亮
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.81-85, 2019-01-01

インスリンは,インスリン様成長因子(IGF)と同様に,細胞増殖作用を持つ。2004年の後ろ向きコホート研究で,インスリン治療を受けている2型糖尿病患者の結腸直腸がんの発症リスクは有意に高く,また年数が長いほどリスクは上昇していた。2009年には,欧州糖尿病学会誌Diabetologiaに4本の論文が同時掲載され,インスリングラルギン長期使用時の発がん性の懸念が大きく注目された。現在もインスリン製剤とがんの関連性に結論は出ておらず,継続的に検討が行われている。2016年のグラルギンに関する系統的レビューでは,観察期間の短さや時間関連バイアスなど,方法論的な限界が指摘されると同時に,特に乳がんリスクについては不確実さが残るとしている。
著者
鈴木 充 阮 儀三 徐 民蘇 丸茂 弘幸 三浦 正幸 呉 凝
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.241-250, 1990 (Released:2018-05-01)

中国の住宅建築は明清時代を通じて大きな変化をみせなかったといわれている。蘇州市は前514年に建設され,それ以後城市の輪郭線を変えずに現在まで続いてきている都市である。特に1130年に兵火に遭い,再興されてからはほとんど都市構造を変えないまま,近代を迎えたといわれている。本研究はそのような蘇州市を文献資料と民居遺構の両面から解析して,中国都市住宅の歴史的背景を解明しようとするものである。研究は,まず,文献と1239年ごろ刻まれた〈平江図〉を資料にして,現地形に1229年時点の蘇州の市街を再現し,前街后河といわれる水郷都市としての特徴ある敷地割が,宋時代に始まったという推論を得た。従って唐時代以前の住宅地は現在大規模住宅の敷地になっている部分に集約されることになる。遺構面での追及は,民国時代に書かれた建築書〈営造法原〉の分析から,殿庭と呼ばれる富豪達の住宅も基本的には民居の構成方法と変らないことを確かめた。また,実際の住宅建築遺構では,しょう門西北の山塘街揚安浜で明初期から中末期にかけての遺構3棟と,清時代の遺構7棟を発見し,明時代から堂と天井(中庭)と廂防を組み合わせる三合院を基本単位(進)にして,その単位を奥行方向に繰返すことにより,第宅を形成していることがはっきりした。また,これら一串の住宅を落と呼び,主落の両脇に2落3落と並べ1屋を形成することによって大宅が形成され,各落は年代的に異なっているものもあり,周囲の住宅を買取することによって大宅が形成されて行くものと考えられる。山塘街は主として2進程度の小宅からなり,街路空間の構成は,十数メートルおきに道幅の狭広による節づけが成されており,その南に続く揚安浜には明清建築からなる5進3落の大宅があり,更に5進1落系の密集地もあり,前街后河の山塘街と合わせ,水郷都市蘇州の民居を代表する建築空間を有する地区であることが判明し,保存の措置が講ぜられることになった。
著者
鈴木 迪諒 西村 幸男
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.584-587, 2017-08-10 (Released:2017-08-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
土田 寧恵 林 直輝 利川 千絵 山下 祐司 鈴木 高祐 山内 英子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.480-485, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
16

目的:転移再発乳癌の根治はほぼ不可能と言われてきたが,HER2陽性転移再発乳癌に対しては化学療法とペルツズマブ,トラスツズマブ併用療法(PER+HER併用療法)により完全消失例が認められるようになった.当院での経験を報告する.方法:2014年3月から2017年8月に当院でPER+HER併用療法により臨床的完全消失(cCR)を認めたHER2陽性転移再発乳癌症例について,治療効果と効果,臨床病理学的因子を検討した.結果:PER+HER併用療法を施行した93例中10例(10.8%)でcCRを認めた.10例中,乳房手術を施行した3例はいずれも病理学的完全消失を認めた.手術未施行7例中5例は中間観察期間12カ月でcCRを維持していたが,2例では脳転移が出現した.結語:HER2陽性転移再発乳癌においてPER+HER併用療法により完全消失,および長期CRを得る可能性が示された.
著者
田辺 和俊 鈴木 孝弘
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.247-267, 2019

<p> 近年のわが国の重大社会問題の一つである自殺には地域差が存在するため,都道府県別の自殺死亡率に有意な影響を与える要因の解明を目的とする実証研究を試みた.47都道府県の男女別年齢調整自殺死亡率を目的変数,それとの関連が推測される健康,経済,社会,自然分野の指標54種を説明変数としてサポートベクター回帰分析を行い,自殺死亡率に対する決定要因を探索し,その相対的影響度を推定した.その結果,男女別にそれぞれ12種の要因が得られ,男性では精神保健福祉士数,家計収入,患者数などの要因,女性では悩み相談,出生率,残業時間などの要因の影響が大きいことを見出した。また,これまで未検証の精神保健福祉士数や残業時間,精神状態が有意の影響を与えるが,自殺率との関係が深いとされてきた失業率や離婚率は決定要因にはならなかった.さらに,自殺率が最も高い秋田県について決定要因の結果に基づき自殺対策の提言を試みた.</p>
著者
矢野 隆 魚里 博 鈴木 博子 嶺井 利沙子 根本 徹 清水 公也
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.95-102, 2002-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

眼軸長測定には散瞳下・無散瞳下(自然瞳孔)のどちらの条件が適しているか。また新しい光学式の眼軸長測定装置ZEISS社製IOLMaster™(以下IOLMaster)を従来の超音波Aモード装置NIDEK社製US-800™(以下Aモード)と比較し、その有用性について検討したので報告する。対象は正常有志10名20眼(年齢22歳~28歳)。散瞳前後の眼軸長及び前房深度をAモードとIOLMasterで測定比較した。眼軸長及び前房深度の各測定において無散瞳下のAモードに対する3群(散瞳下のIOLMaster・無散瞳下のIOLMaster・散瞳下のAモード)の間で有意差を認めた。また前房深度測定においてIOLMasterは散瞳前後でも有意差を認めた。眼軸長及び前房深度の各測定の標準偏差値はIOLMasterは散瞳前後では小さく、無散瞳下のAモードでは一番大きかった。瞳孔径別の眼軸長及び前房深度測定の標準偏差値はIOLMasterでは、ほぼ一定であった。Aモードでは瞳孔径が小さいと標準偏差値は大きく、瞳孔径が大きくなるほど標準偏差値は小さくなった。Aモードでは散瞳下での測定、IOLMasterでは散瞳下・無散瞳下のどちらの条件でも測定に適していると考えられた。新しい光学式の眼軸長測定装置IOLMasterは、臨床においても極めて有用な装置であると考えられる。
著者
鈴木 桂輔 宮本 康弘
出版者
The Society of Life Support Engineering
雑誌
ライフサポート (ISSN:13419455)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.152-158, 2011 (Released:2013-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The effectiveness on the muscle expansion and the mechanism of "slow training" which puts a slow burden on muscles in slow operation were investigated. In this research, the frequency analysis of electromyography and investigation of the density of oxygenated hemoglobin in muscles were conducted to clarify the characteristics of the slow training which are different from the conventional training with high burden on muscles, in terms of the activation level of the fast-twitch fiber in muscles of legs. In these investigations, it was clarified that the cumulative value of electromyography during the training is relatively high, and the effectiveness of muscular expansion by the slow training is remarkable, like the conventional training. In addition to this, it was clarified that the fast twitch fiber was activated during the slow training because the power level of high frequency in the FFT analysis of electromyography is relatively high and the oxygenated hemoglobin is relatively low in muscles.
著者
鈴木 哲
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学学芸学部研究紀要 = JSLA (Journal of the School of Liberal Arts) (ISSN:18849865)
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-44, 2020-11-30

中島敦(1909-42)は格調高い表現,学識,厭世観を特徴とする東京生まれの小説家で(Kodansha, 1993, p. 1038),1951年以後高等学校国語教科書採用の「山月記」(1942)で知られる。夫人の中島(旧姓橋本)タカ(1909-84)は愛知県碧海郡依佐美村(1906-55)の出身である。本稿は敦が1931年と1942年に依佐美村大字高棚字新池(現安城市高棚町)のタカの生家を訪問したとする従前説を検討, 1933年3月と1942年8月であったことを明らかにする。また, 敦の万葉歌「あをみづら,よさみの原」 (7:1287)への関心,敦が依佐美の「無線電信の高い塔が立っている風景」にあったとする1942年8月のタカ回想を紹介する。タカが東京で33歳の小説家を看取ったのは里帰りの4カ月後である。
著者
山田 浩之 新田 清一 太田 久裕 鈴木 大介 南 隆二 松居 祐樹 中山 梨絵 上野 真史 菅野 雄紀 此枝 生恵 大石 直樹 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.1380-1387, 2020-12-20 (Released:2021-01-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

宇都宮方式聴覚リハビリテーション (以下聴覚リハ) とは, 済生会宇都宮病院聴覚センターで新田らが行っている補聴器診療法で, 主な特徴に「初日から常用を促し, 診察と調整を装用開始から3カ月間頻回に行うこと」「聴覚専門の言語聴覚士が補聴器外来を担当していること」がある. 本法を取り入れた補聴器外来を開設し, 3年間が経過したためその成績について検討した. 対象は2016年4月~2019年3月までに補聴器外来で聴覚リハを行った174例 (男86例女88例, 平均年齢75歳) で, 検討項目は聴覚リハ脱落率, 購入率, 音場検査と語音明瞭度検査による適合率 (補聴器適合検査の指針2010に準ず), 補聴器の型式, 平均価格, 補聴器購入における助成の有無とした. 聴覚リハ脱落率は3%, 購入率は95%, 音場検査による適合率は98%, 語音明瞭度検査による適合率は95%であった. 補聴器の型式は耳掛け型が91%, 耳あな型が8%. 購入された補聴器の平均価格は11.6万円で, 補装具費支給制度を利用して購入した割合は7%であった. 結果は良好で本法の適応 (難聴による生活の不自由があり, 聴力改善の意志がある) となる難聴者にとっては優れた補聴器診療法であることを改めて示すことができた. 一方でわが国の補聴器購入に対する助成と補聴器診療制度に関しては諸外国と比較すると十分とは言えず, 今後は補聴器の調整を扱う国家資格として言語聴覚士の活躍が期待される.
著者
斎藤 民 近藤 克則 村田 千代栄 鄭 丞媛 鈴木 佳代 近藤 尚己 JAGES グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.596-608, 2015

<b>目的</b> 生きがいや社会的活動参加の促進を通じた高齢者の健康づくりには性差や地域差への考慮が重要とされる。しかしこれらの活動における性差や地域差の現状は十分明らかとはいえない。本研究では高齢者の外出行動と社会的・余暇的活動の性差と地域差を検討した。<br/><b>方法</b> Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES)プロジェクトが2010年~2012年に実施した,全国31自治体の要介護認定非該当65歳以上男女への郵送自記式質問紙調査データから103,621人を分析対象とした。分析項目は,週 1 日以上の外出有無,就労有無,団体・会への参加有無および月 1 回以上の参加有無,友人・知人との交流有無および月 1 回以上の交流有無,趣味の有無を測定した。性,年齢階級(65歳以上75歳未満,75歳以上),および地域特性として都市度(大都市地域,都市的地域,郡部的地域)を用いた。年齢階級別の性差および地域差の分析にはカイ二乗検定を実施した。さらに実年齢や就学年数,抑うつ傾向等の影響を調整するロジスティック回帰分析を行った(有意水準 1%)。また趣味や参加する団体・会についてはその具体的内容を記述的に示した。<br/><b>結果</b> 年齢階級別の多変量解析の結果,男性は有意に週 1 回以上の外出や就労,趣味活動が多く,団体・会への参加や友人・知人との交流は少なかった。ほとんどの活動項目で都市度間に有意差が認められ,郡部的地域と比較して大都市地域では週 1 回以上外出のオッズ比が約2.3と高い一方,友人との交流のオッズ比は後期高齢者で約0.4,前期高齢者で約0.5であった。性や都市度に共通して趣味の会の加入は多い一方,前期高齢者では町内会,後期高齢者では老人クラブの都市度差が大きく,実施割合に30%程度の差がみられた。趣味についても同様に散歩・ジョギングや園芸は性や都市度によらず実施割合が高いが,パソコンや体操・太極拳は性差が大きく,作物の栽培は地域差が大きかった。<br/><b>結論</b> 本研究から,①外出行動や社会的・余暇的活動のほとんどに性差や都市度差が観察され,それらのパターンが活動の種類によって異なること,②参加する団体・会や趣味の内容には男女や都市度に共通するものと,性差や都市度差の大きいものがあることが明らかになった。以上の特徴を踏まえた高齢者の活動推進のための具体的手法開発が重要であることが示唆された。
著者
西原 賢 久保田 章仁 丸岡 弘 原 和彦 藤縄 理 高柳 清美 磯崎 弘司 河合 恒 須永 康代 荒木 智子 鈴木 陽介 森山 英樹 細田 昌孝 井上 和久 田口 孝行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0675, 2007

【目的】運動時の活動電位を観測する研究は多いが活動電位の伝導方向や神経筋の部位まで調べる試みは少ない。現在、画像診断で筋構造を大まかに観測することは可能であるが、神経または筋の神経支配領域までを調べるには不十分である。これらが調べられることによって、運動に関る神経・筋の機能的評価が可能となり、臨床上大変有用となる。さらに、神経の走行部位を予測して、筋肉注射時に神経損傷を予防する場合にも役立つ。そこで、これまでわれわれが開発した筋電図処理技術を応用して、神経や筋の組織解剖学的研究と照し合せながら本研究の検証を行う。<BR>【方法】19-22歳の健常人男性12人を対象にした。被験者は右手首に1kgの重垂バンドを装着し、肩屈曲30°肘屈曲90°で上腕二頭筋収縮、肩外転45°で三角筋収縮を1分間持続させた。上腕二頭筋では、被験者の内側上腕二頭筋の中心に双極アレイ電極を筋の方向に沿って取り付けた。三角筋では、肩峰から腋窩横線までの距離から下3/8の地点を中心に筋の方向に沿って取り付けた。各筋から4チャネルの生体アンプで検出した筋電図を計算機に保存した。筋電図原波形のうちの5秒区間を、本研究のために開発した計算機プログラムを用いて、設定閾値以上のパルスのピークを検出して加算平均した波形を算出した。チャネルによる加算平均パルスの向きの逆転(+側か-側か)や遅延時間の方向から(パルスが順行性か逆行性か)、電極装着部位を基準にした神経支配領域の位置を推定した。<BR>【結果】上腕二頭筋において、12被験者のうち8人で、加算平均パルスの向きの逆転があった。4人はパルスの向きの逆転は観測されなかったが、遅延時間が順行性に変化した。三角筋において、12被験者のうち、加算平均パルスの向きの逆転があったのは2人だけであった。残りのうち2人は遅延時間が順行性に、3人は逆行性に変化し、4人は解析困難であった。<BR>【考察】(1)上腕二頭筋の神経支配領域の推定:加算平均パルスの向きが逆転されたチャネル付近に神経支配領域が存在する。結果により、12被験者のうち8人の神経支配領域の位置が特定された。残り4人は電極装着部の近位に神経支配領域あることが考えられる。(2)三角筋の神経支配領域の推定:12被験者のうち2人だけが神経支配領域の位置の推定ができた。残りのうち2人は電極装着部の近位に、3人は遠位に神経支配領域があると考えられる。(3)上腕二頭筋と三角筋の比較:三角筋は上腕二頭筋と比較して神経支配領域の位置の特定が困難であった。上腕二頭筋は紡錘状筋で、筋線維は筋の方向に沿って均一に走行している。それに比べて三角筋は羽状筋に近く、筋線維は筋の方向に対して斜めで不規則に走行している。三角筋の場合はさらなる調査が必要であるが、かなり詳細な筋構造が皮膚表面で調べられることが明かになった。
著者
萩谷 功一 安宅 倭 河原 孝吉 後藤 裕作 鈴木 三義 白井 達夫 渥美 正
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.345-351, 2004 (Released:2006-07-26)
参考文献数
17
被引用文献数
8 8

ホルスタイン種における月1回の検定記録から乳期全体の記録を予測する方法について比較検討した.データは,1990年から2002年までに独立行政法人家畜改良センターの4つの牧場で飼養されたホルスタイン種における771個体からの232,337の初産次の乳量における検定日記録である.乳期あたりの乳量は,分直後から分後305日までの乳量(以下,305日乳量)の合計とした.分析では,検定日間隔(Test Interval ; 以下,TI)法,最良予測(Best Prediction ; 以下,BP)法および多形質予測(Multiple Trait Prediction ; 以下,MTP)法からの推定値と真の305日乳量を比較検討した.MTP法における泌乳曲線の説明には,WoodまたはWilminkのモデルを採用した.TI法およびBP法を比較した場合,泌乳初期から中期の検定日記録に対してBP法が優れており,泌乳末期の検定日記録に対してTI法が適していた. MTP法は,Wilminkのモデルを採用した場合に,Woodのモデルを採用した場合よりも乳期全体において推定精度が高かった.Wilminkのモデルを採用したMTP法の推定精度は,泌乳初期から中期にかけてBP法と同程度であり,泌乳末期で他との比較において真の値にもっとも近似した.このことより,Wilminkのモデルを採用したMTP法は,乳期全体を通じて優れた推定法であることが示唆された.
著者
栁澤 節子 小林 千世 山口 大輔 上原 文恵 吉田 真菜 鈴木 風花 松永 保子
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌 (ISSN:18822312)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.107-113, 2018-03

本研究の目的は、主観的健康感と生活形態、健康維持への意識、および地域社会活動との関連を検討することであった。2015 年7 月にM 市内の総合球戯場でゲートにいた成人と、2016 年9 月から10 月にM市内の商業施設の成人の来店者とS 大学医学部主催の健康講座に来た成人の参加者を調査対象者とした。調査内容は対象者の属性、主観的健康感、生活形態、直接スポーツ観戦の有無などであり、無記名式質問紙調査を実施した。分析は、主観的健康感について「主観的健康感高群」と「主観的健康感低群」に分けて、それらを従属変数とし、「地域活動に関する事柄」、「生活習慣に関する事柄」、「健康維持に関する意識」、「直接スポーツ観戦の有無」を独立変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。その結果、「夢中になれるもの」(OR=3.41、95% CI=1.270─9.167)、「規則正しい生活」(OR=2.64、95% CI=1.251─5.585)、「直接スポーツ観戦」(OR=2.584、95% CI=1.158─5.766)が、主観的健康感を高める要因であった。これらのことから、人生において、夢中になれるものがあることや、規則正しい生活を送ること、直接スポーツを観戦することが、主観的健康感に大きな影響を与えていることが分かった。また、直接スポーツを観戦することや、直接スポーツをすること以外にも、スポーツに関わる、あるいは携わることが、健康に対する意識を高め、健康の保持増進に影響を与えることが推察された。したがって、スポーツができない高齢者や患者においても、スポーツを観戦することで、主観的健康感が高まり、人生における楽しみや生きがいにつながり、「近隣の人との交流」、「地域での活動に参加する」などの社会的活動やその役割、意識をも高め、主観的健康感も高まると考えられた。今後、健康寿命の延伸に向けた健康づくりのためには、今回明らかになった主観的健康感を高めるような要因が充実する介入や支援ができる体制を作り上げることが重要であると考えられた。