著者
鄭 忠和 山口 昭彦 増田 彰則 宮田 昌明 枇榔 貞利
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

慢性心不全・閉塞性動脈硬化症・慢性疲労症候群・慢性疼痛・慢性呼吸不全に対して、60℃の遠赤外線乾式サウナ装置を用いた温熱療法の効果を検討した。心不全に関しては、2週間の温熱療法は心室性期外収縮総数、連発性心室性期外収縮、心室頻拍を有意に減少させた。ノルエピネフリン濃度は有意に低下し、24時間ホルター心電図による心拍変動解析(SDNN)は30%有意に増加した。さらに、2週間の温熱療法で、グレリン及び成長ホルモンは有意に増加し、質問表による食欲の改善が認められた。温熱療法は慢性心不全患者で増加した酸化ストレスを減少させることも明らかにした。心不全発症ハムスターを用いた実験において、温熱療法非施行群と比較し、温熱療法群では、生存率を35%有意に改善し、eNOSのmRNA及び蛋白の発現や血清nitrate濃度を有意に増加した。温熱療法による血管新生に関する検討では、アポ蛋白E欠損マウスの下肢虚血モデルにおいて、5週間の温熱療法は下肢血流と血管密度を増加させた。L-NAMEやeNOS欠損マウスを用いた実験により、温熱療法の血流改善作用にeNOSとNOが重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、10週間の温熱療法により、閉塞性動脈硬化症(ASO)患者の下肢疼痛、6分間歩行距離、ABI、体表温度、レーザードプラ血流計による下肢血流、下肢血管造影、皮膚潰瘍に関して有意な改善を認めた。4週間の温熱療法は、軽症うつ患者の愁訴や食欲低下を改善させた。また、慢性疼痛患者の疼痛を軽減し、その後の社会復帰率を高めた。さらに、2名の慢性疲労症候群患者に対して温熱療法を施行し症状の改善を認め、社会生活に復帰した。温熱療法は慢性閉塞性肺疾患患者におけるRV dP/dt、運動中の肺高血圧、運動耐容能、QOLを改善することが示された。温熱療法は、これらの疾患に対する新しい治療法として期待される。
著者
大江 朋子 高田 剛志 小川 充洋 古徳 純一
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

人は自らの身体と環境の状態を監視し,その時々で処理した情報を瞬時に統合させている。この情報統合において身体や環境の温度が社会的反応を導く可能性や,それに体温調節システムが関与している可能性はすでに論じられてきたものの,体温調節システムが社会的反応に影響するかは直接検討されないままであった。本研究では,身体の深部温や皮膚表面温の測定によりこれを可能にするとともに,温度情報が統合される過程で情報処理モード(攻撃と親和)の切り替えが生じるとするモデルを提案し,唾液中ホルモン(テストステロン,オキシトシン)などの生理的反応の測定とVR(virtual reality)技術を用いた実験を通してモデルの実証を試みる。
著者
段 智久 松村 千里 岡村 秀雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、木タールや舶用重質油などねばりけの高い物質が燃える状態をよくするためにジメチルエーテルという物質を液化させて混合し、混合燃料として使用することを試みた。その結果、微小な残留物が多く残る木タールは、ある程度運転は可能であるが、長時間運転が困難であるという結果となった。また二種類の物質を連続的に混合しながら供給できるシステムを構築した。液体と液体の混合送油は、その実用性を確認できたが、揮発性の高い液体と液体の混合については十分な試験が行えておらず、今後の継続的な課題としたい。
著者
堀 進悟 佐野 元昭 鈴木 昌 太田 成男 林田 敬
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、水素吸入療法の院外心停止蘇生後患者に臨床応用を目指したトランスレーショナルリサーチである。まず、ラット心停止蘇生後モデルを用い水素吸入の有用性の検証した。水素吸入群では、脳機能スコアおよび生存率が対照群と比較して改善した。水素吸入と低体温療法を併用することにより最も改善効果を認めた。さらに、蘇生後患者に対し水素吸入の安全性と有効性の評価を行った。事前に設定した予測しうる心停止発症後7日間以内の臨床的異常変動を観察し、副作用および臨床上の不利益をみとめなかった。対象全5例中4例が独歩退院した。今後、多施設無作為化試験により心停止後症候群患者に対する水素吸入の効果を検証する予定である。
著者
島村 恭則 周 星 山 泰幸 桑山 敬已 岩本 通弥
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、アメリカ・イギリス・フランスが頂点として君臨する「知の覇権主義的構造」とは異質の、世界中のすべての地域の民俗学が対等な関係で連携、協働することを理想とした「対覇権主義的(counter-hegemonic)な学問ネットワークとしての『世界民俗学』」を構築することを目的とする。そのための方法として、「知の覇権主義」とは異なる次元で個性的な民俗学が展開されている中国、韓国、台湾、インド、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、アイルランド、ブラジルを対象に、それぞれの民俗学の特性とそれをふまえた世界連携の可能性について、実態調査と共同討議を実施する。
著者
葛 崎偉 中田 充 呉 靭 松野 浩嗣 北沢 千里
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

経脈とは東洋医学における人体の代謝物質(気と血)の通り道であり,経穴(ツボ)の連絡系(道)を指す.鍼灸治療は鍼や灸で経穴を刺激することにより,気や血の流れを良くする治療法であり,世界保健機関(WHO)にも認められている.本研究では鍼灸治療を支援するシステムに関する三つの技術を開発する.その一つ目は東洋医学における五行説,臓腑の表裏関係,経穴の補瀉(ほしゃ)役割等に基づいた人体モデル構築の手法である.二つ目は東洋医学の診察法である四診(望診・聞診・問診・切診)のデータ解析の手法である.三つ目は四診の解析結果と人体モデルを用いて鍼灸治療法を推定するシミュレーションシステム設計の手法である.
著者
山岸 常人 平 雅行 藤井 雅子 坪内 綾子 永村 眞 中川 委紀子 冨島 義幸
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本の密教寺院に関しては、事相中心の古義真言教団と、教相中心の新義教団という図式的区分がある。古義教団の醍醐寺では、灌頂や諸尊法の伝授だけではなく、教相聖教の作成・書写・修学・法会が行われていた。一方の新義教団の寺院の実態は、これまで史料が乏しかったが、既往研究を踏まえつつ、智積院所蔵史料を調査することによって一挙に実態が明瞭となった。これらの史料蒐集の結果、高野山・醍醐寺・根来寺、さらに周辺の多くの地方寺院の間での聖教の書写・貸借を踏まえた修学・伝授のネットワークが確認され、事相・教相を総合的に受容する中世密教寺院の実態が明らかになった。新義・古義の教団理解にも修正を加えることとなった。
著者
松浦 史子 喜多 藍 楢山 満照 水口 幹記 大形 徹 齋藤 龍一 下野 玲子 山本 尭
出版者
二松學舍大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

漢~唐代に成立発展した瑞獣の図とその東アジアへの伝播について多分野の祥瑞研究従事者により考察する学際的研究である。龍・鳳凰など多様な種が知られる瑞獣は、王権の正当性を保障する象徴として政治利用されたのみでなく、東アジアの世界観・死生観など文化の基底にも存在するが、従来の祥瑞研究ではとくに図像の研究成果を活用しきれていない。そこで本研究では文献・図像を統合すべく王権との関わりを一つの中心的課題として、研究者間で方針の一貫性を図り、新出の祥瑞図を現地調査し、関連の文献を読解し、①漢~唐代の主要な瑞獣とその図像の名称・機能の検討、②瑞獣図のデータベース化、③唐代の重要な祥瑞文献の翻刻と出版を目指す。
著者
安田 雅俊 田村 典子 関 伸一 押田 龍夫 上田 明良
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

大分県の無人島(高島)において特定外来生物クリハラリスの個体群を対象として①いかに個体数を減少させるか、②いかに残存個体を発見しするか、③外来リス根絶後の生態系の回復過程をいかに把握するかを検討した。異なる防除オプション(生捕ワナ、捕殺ワナ、化学的防除)の組合せが迅速な根絶達成に必要と結論した。クリハラリスの化学的防除の試験を行い、生態系への負の影響を最小化する技術を開発した。ベイト法は低密度個体群において有効と結論した。防除開始直後の高島の生物群集(鳥類と昆虫類)に関するデータを得ることができた。これは高島におけるクリハラリス地域個体群の根絶後における生態系回復の理解において重要となる。
著者
中村 和之 酒井 英男 小林 淳哉 小田 寛貴 浪川 健治 三宅 俊彦 越田 賢一郎 佐々木 利和 瀬川 拓郎 中田 裕香 塚田 直哉 乾 哲也 竹内 孝 森岡 健治 田口 尚 吉田 澪代
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、14~16世紀のアイヌ文化の状況を明らかにすることである。この時期は、近世のアイヌ文化の成立期であるが、文献史料と考古学資料が少ないため、状況がわかっていない。そのため、漢語・満洲語・日本語史料の調査を行うと同時に、遺物の成分分析や年代測定、それに遺跡の電磁探査など、さまざまな分析方法で情報を収集した。その結果、14~15世紀の北海道でカリ石灰ガラスのガラス玉が発見された。本州でほとんどガラス玉が出土しないので、アムール河下流域からの玉と考えられる。この時期は、元・明朝がアムール河下流域に進出した時期に重なるので、北方からの影響が強くアイヌ文化に及んだことが推定できる。
著者
竹内 賢吾 杉谷 巌
出版者
公益財団法人がん研究会
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

日本人の甲状腺乳頭癌における既知ドライバー変異分布に関して、BRAF V600Eが約80%、NRAS Q61Rが約1%、融合遺伝子が約6%に存在することが判明した(ドライバー変異不明 約13%)。未分化癌では、BRAF V600Eが約84%に存在することが明らかとなった。甲状腺葉切除術(LT)とするか甲状腺全摘出術(TT)とするかについて明確な適応基準が確定されていない1~4cmの甲状腺内乳頭癌(PTC)において、TERTプロモーター変異が陰性であれば、TTではなくLTを施行することで、治療成績を落とすことなく過剰治療の防止および術後の合併症の低減が期待できることを示した。
著者
横谷 謙次 高橋 英之 高村 真広 山本 哲也 阿部 修士
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

行動嗜癖(過度な賭博行動やインターネットゲーム使用)は日本でも人口の約9%が経験しており、適切な治療が求められている。本研究の目的は1.ユーザーの嗜癖行動からの離脱と連動するキャラクター(以下、アバター)とその離脱を賞賛するキャラクター(以下、自律エージェント)によって行動嗜癖を治療し、2.その神経基盤を解明することである。1.の目的を達成するためにロボットとスマートフォンアプリでアバターと自律エージェントを作成し、ギャンブル障害者及びインターネットゲーム障害者に対する治療効果を検証する。また、2の目的を達成するために、fMRIを用いて、1.の治療効果に関与する神経回路を特定する。
著者
宮沢 孝幸 上田 真保子 入江 崇
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ネコ白血病ウイルス(feline leukemia virus:FeLV)は猫に免疫不全や白血病を引き起こす。猫はFeLV感染後数年でほとんどが死に至るため、FeLV感染症は獣医臨床上大きな問題となっている。FeLVに対するワクチンは90年代から市販されているものの感染防御能は低い。感染防御能の低さは、ワクチンが中和抗体を誘導しにくいことによるが、その原因はFeLVの外被糖タンパク質のグリカン(糖鎖)にある。本研究ではグリカンによって隠されていた中和エピトープを露出させたシュードタイプウイルスを作製することに成功した。本研究により、感染防御能の高いFeLVワクチンの開発に道を拓いた。
著者
高松 薫 石井 直方 田中 喜代次 後藤 一成
出版者
流通経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、有酸素運動の途中に休息を挟みながら間欠的に行う「分割法」による運動が、糖・脂質代謝や体組成に及ぼす影響を検討した。その結果、「分割法」による運動は休息を挟まずに行う「連続法」による運動に比較して、脂質代謝の亢進に対する効果が大きいこと、食後における血中グルコース濃度の調節に有効であること、長期のトレーニングに伴う体脂肪量の減少や体力の改善に対する効果の大きいことが明らかになった。
著者
中根 俊成 池田 徳典 佐藤 伸一 田村 直人 樋口 理 鈴木 隆二 坪井 洋人 伊原 栄吉 宋 文杰 川上 純 佐藤 和貴郎
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自己免疫性自律神経節障害は自律神経系が免疫異常の標的となる比較的新しい疾患概念である.本症では抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体は病原性自己抗体として病態の鍵となる役割を果たす.自己免疫性自律神経節障害は自律神経系外の症候や膠原病などの併存,小児症例が存在する.こういった「多様性」が本症の診断しにくさ,難治化につながっている.本研究では1)自己抗体の病原性検証,2)病態モデル開発,3)小児症例,膠原病症例における臨床的特徴の解析,を遂行する.「複雑な病態と臨床像=多様性」への多角的アプローチが自己免疫性自律神経節障害の診断基準作成,治療ストラテジーの確立に貢献すると考えられる.
著者
諫早 庸一 大貫 俊夫 四日市 康博 中塚 武 宇野 伸浩 西村 陽子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、「14世紀の危機」に焦点を当てるものである。「14世紀の危機」とは、「中世温暖期」から「小氷期」への移行期にあたる14世紀に起きたユーラシア規模での、1)気候変動、2)社会動乱、3)疫病流行、これら3つの複合要素から成り、ユーラシア史を不可逆的に転換させた「危機」を意味する。本研究では、気候の変動は人間社会にとって特に対応の難しい20年から70年ほどの周期で「危機」を最大化するという仮説に基づいて議論を進める。100年単位の生態系の長期遷移と、社会や気候の短期のリズムとのあいだにある中間時間を、気候データと文献データとの組み合わせによって危機のサイクルとして析出する。
著者
藤本 由香里 Jaqueline BERNDT 椎名 ゆかり 伊藤 剛 夏目 房之介 ルスカ レナト・リベラ トゥルモンド フレデリック
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究期間中に北米各地、アルゼンチン、北欧・東欧・ロシア、その他欧州、東南アジア、東アジア、中東…計22の国と地域を調査。またローマ・上海・バンコク等8都市で図像アンケート・集計を行った。最終年度に、①ストックホルム国際コミック祭で「コミックとMangaの間」②ストックホルム大学での3日間の国際学会"Manga, Comics and Japan: Area Studies as Media Studies" ③明治大学でヨーロッパとアメリカから作家を招いての国際シンポジウム、④藤本・伊藤・夏目・ベルント・椎名・レナトによるまとめの研究発表と共同討議、計4回の国際会議を開催。研究を締めくくった.
著者
吉永 進一 安藤 礼二 岩田 真美 大澤 広嗣 大谷 栄一 岡田 正彦 高橋 原 星野 靖二 守屋 友江 碧海 寿広 江島 尚俊
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、仏教清徒同志会(新仏教徒同志会)とその機関誌『新佛教』に関して、基礎的な伝記資料を収集しつつ、多方面からモノグラフ研究を進めた。それにより、新仏教運動につながる進歩的仏教者の系譜を明らかにし、出版物、ラジオ、演説に依存する宗教運動という性格を分析した。新仏教とその周辺の仏教者によって、仏教の国際化がどう担われていたか、欧米のみならず他のアジア諸国との関係についても論証した。