著者
中島 貴子 山崎 和久 齋藤 淳 森田 英利
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

歯周病は動脈硬化性疾患、代謝性疾患、自己免疫疾患などのリスクを高めるといわれている。また、それらの疾患は腸内細菌の乱れとも関連するという報告がある。これまでの動物実験で示した、嚥下した歯周病原細菌が腸内細菌を変化させるというデータに基づき、ヒトでの実証を試みた。本研究課題では歯周炎患者腸内細菌叢が健常者と有意に異なることを初めて明らかにし、歯周病と全身疾患を関連づける新たなメカニズムを示した。
著者
佐藤 洋一郎 伊藤 敏雄 加藤 鎌司 河原 太八 藤岡 利生 万年 英之 鞍田 崇 西田 英隆 細谷 葵
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「人類世」という新しい地質年代を提唱されているが、これは産業革命以降の急速なエネルギー消費により、人間活動が地球環境に大きな影響を及ぼすようになったことを、地質学的にも記述すべきとの判断による。しかし、環境の歴史を丁寧に調査すると、人間活動の影響は産業革命のはるか前から、われわれの想像を超えてはるかに大きかったことがわかってきた。
著者
佐藤 光夫 長谷 哲成 湯川 博 田中 一大 川口 晃司 川井 久美 横井 香平
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

【本課題の目的】肺癌のドライバー癌遺伝子の一つ変異KRASは腺癌の20%程度に認められるが、その標的治療の開発は未成功である。これは変異KRASの癌化シグナルの薬物的な遮断が困難なためである。応募者は正常気管支モデルであるHBEC実験系を確立し(Sato, Cancer Res 2006)、さらに、変異KRASをHBECに導入すると悪性度の増強にもかかわらず細胞分裂を停止する現象を発見した(Sato, Mol Cancer Res 2013)。これは正常細胞が癌化を防御する機構の一つ癌遺伝子誘導細胞老化(oncogene-induced senescence; OIS)である。以上より、応募者は変異KRAS肺癌の新たな治療として変異KRASシグナルの遮断ではなく、OISを活用する治療を着想した。その実現のために、まず、HBECを用いて、OIS抑制作用を表現型とする機能的なプールshRNAスクリーニングを実施し、複数の標的候補を特定した。特に、肺癌細胞株が高発現する遺伝子Xは小分子化合物による治療標的となる可能性があるため、学内創薬産学協同研究センター(ラクオリア創薬株式会社)化合物スクリーニングを予定した(機密保持契約締結済み)。本研究はこれらの研究を発展させ、変異KRASならびに変異EGFRやALK遺伝子によるOIS誘導治療の開発を目的とする。【2018年度の成果】遺伝子Xのターゲットバリデーションを完了した。5万化合物のハイスループットスクリーニング(HTS)を実施しヒット化合物の再現性や化学構造に基づき、2018年12月までに候補化合物を10個まで絞り込んだ。また、遺伝子X阻害による増殖抑制のメカニズム解明のための実験を実施した。
著者
馬場 昌範 西條 政幸
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成 29 年度までの研究により,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の原因ウイルスである SFTSV に対する in vitro 抗ウイルスアッセイ系を確立し,それを用いた薬剤のスクリーニングにより,アモジアキンに選択的な抗 SFTSV 効果を同定した。さらに,種々のアモジアキン誘導体について,それらの抗 SFTSV 効果を検討したところ,アモジアキンと比較して,抗ウイルス活性が 10 倍程度高い新規誘導体(# 90)を同定することに成功した。そこで,平成 30 年度の本研究では,# 90 について,研究代表者が in vivo 実験用に必要な量の薬剤を準備するとともに,研究分担者が国立感染症研究所において SFTSV に感受性を有する1型インターフェロン受容体ノックアウトマウスを用いた in vivo 投与実験を行った。その結果,SFTSV 感染マウスに対し,# 90 の最大量(100 mg/kg)の経口投与群においても,非投与群と比較して,有意な致死率の減少をもたらさなかった。一方で,非感染マウスの最大量投与群においても,体重減少などの有害事象が全く認められなかったため,# 90 については in vivo における薬物体内動態(経口吸収性など)に問題があるのではないかと思われた。そこで # 90 の体内動態を改善することを目的に,原体から塩体(塩酸塩)への変換を行った。次年度は #90 塩酸塩を用いて,in vitro 活性試験および in vivo 活性試験を行う予定である。また,本研究から派生した研究成果として,米国のテキサス・バイオメディカル研究所の BSL4 施設を用いた国際共同研究を実施し,# 90 に強い in vitro 抗エボラウイルス効果を有することも明らかにした。
著者
野杁 由一郎 恵比須 繁之 薮根 敏晃 朝日 陽子 阿座上 弘行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は,ヒトのデンタルバイオフィルムに対する化学的制御・抑制法の確立を最終的な目標して行われた。クオラムセンシング(QS)誘導物質であるオートインデューサーの1種であるアシルホモセリンラクトン(AHL)の類似化合物をターゲットにしたが, 10種のAHL類似化合物は検出限界(6. 32~7. 33ng/ ml)以上の濃度では検出されず,デンタルバイオフィルム中にはほとんど存在しないことが明らかとなった。一方, QSを撹乱し抗バイオフィルム作用を示していると推察されるAHL類似化合物や抗菌剤を発見し,これらによる化学的なバイオフィルム抑制法の臨床適用に向けた緒を築いた。この研究成果は,バイオフィルム感染症の新たな治療戦略の開発に有意義な示唆を与えるものであると自負している。
著者
西村 雄一郎 瀬戸 寿一 金杉 洋 吉田 大介
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-07-18

本研究は,近年活発化しているクラウドソーシングと呼ばれる一般市民からの情報によって,インターネット上の地図を編集するプロジェクトに着目し,そのようなクラウドソース型地理情報のトラストに関して,多角的な視点による研究を行う.研究実施計画に設定した5つの研究フェイズのうち、主に以下の2つを中心に研究を実施した.・クラウドソース型地理情報の理論的位置づけに関する研究(西村・瀬戸):クラウドソース型地理情報に関する先行研究・論文は,主に英語圏におけるGISと社会に関する地理学的な研究を中心に存在するが,クラウドソース型地理情報に関する理論的な位置づけ・学術的な議論に関するレビューを行い,従来の研究を包括的に整理した.また,クラウドソース型地理情報の実践的な取り組みにも着目し,作成方法やデータの編集方法の進展について調査を行うとともに,それらを整理した.・日本におけるクラウドソース型地理情報の正確性や網羅性に関する分析(西村・瀬戸・吉田):クラウドソース型地理情報は、地理情報に関する専門的な知識や技能を必ずしも持っていない一般の市民によって作成されている.日本におけるクラウドソース型地理情報に対して,公的な組織が測量によって作成した地理情報や,商用の地理情報とその正確性や網羅性を比較した.また,クラウドソース型の地理情報の編集の特徴の一つである,コミュニティによる正確性や網羅性を実現するための試みや,データの相互チェックなど実態に関しての分析を行った.
著者
藤井 健太郎 秋光 信佳 藤井 紳一郎 加藤 大 月本 光俊 成田 あゆみ 横谷 明徳 丹羽 修 小島 周二
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

リボ核酸の一種であるアデノシン三リン酸(ATP)は、生体エネルギー供与物質として様々な生化学反応へエネルギーを供与している。また同時に、遺伝情報の仲介物質であるメッセンジャーRNAを合成するための基質として、さらには細胞間情報伝達物質としても働く。本研究では、放射光軟X線により、ATPに生じた放射線障害が、ATPの持つ生物学作用にどのように関わっているかに注目して、その生物学的効果への寄与を解析することを試みた。そして、ATP分子の構造変化はガン細胞の放射線感受性に変化を生じさせている可能性を示唆する結果を得た。
著者
内川 隆志 三浦 泰之 長谷 洋一
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

① 「物産会」研究プロジェクトでは、石水博物館所蔵資料(山本亡羊・榕室主催「読書室物産会」他)の調査、西尾市岩瀬文庫調査を実施し、事業計画に明記した関連文献の調査を実施した。② 1) 好古家蒐集古物資料の調査研究プロジェクトでは、静嘉堂文庫・松浦武四郎記念館その他における松浦武四郎関連古物の調査研究を実施した。武四郎が出版した調査日誌に挿まれた絵画や詩歌、武四郎が文人などの様々な人びとから揮毫してもらった渋団扇などを通じて、武四郎による好古家ネットワーク形成を探る調査を実施。合わせて函館市中央図書館所蔵資料の調査も実施した。静嘉堂では、特に連携研究者の川村佳男氏による静嘉堂所蔵中国古代青銅器の調査を実施した。2) 好古家ネットワーク研究プロジェクトでは、近代初期の好古根岸武香関係資料調査のため熊谷市の根岸家と同市江南文化財センターにおいて関連資料調査を敢行した。③シーボルト父子蒐集古物調査研究プロジェクトでは、昨年度実施した大英博物館収蔵のH.v.シーボルト蒐集日本考古関連資料の整理と関連情報の収集を行った。平成30年度は、好古家松浦武四郎生誕200年、北海道命名150年にあたり松浦武四郎ゆかりの北海道、生誕地の三重県で大きなイベント、展示会が開催され本科研メンバーも多くの講演会やシンポジウム、フォーラムに登壇した。特に分担研究者の三浦泰之は、北海道博物館・松浦武四郎記念館・帯広美術館において実施した連携展示「松浦武四郎 - 見る、集める、伝える」の企画を担当し、本科研の成果を発信した。平成30年9月29日には三重県生涯学習センターにおいて、本科研メンバーによる公開研究会「武四郎研究の最前線」実施し、その成果を『好古家ネットワークの形成と近代博物館創設に関する学祭的研究Ⅱ』(平成31年2月28日)として刊行した。
著者
鈴木 勉
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では比較的選択的NR2Bサブユニット構築型N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬であるイフェンプロジルおよび新規κオピオイド受容体作動薬であるTRK-820の覚せい剤依存症治療薬としての可能性を検討した。覚せい剤であるメタンフェタミンを慢性処置し、その後休薬期間を設けると、通常では精神依存を示さない用量のメタンフェタミンにより有意な精神依存の増強、すなわちヒトにおけるフラッシュバック現象を一部反映した逆耐性現象が認められる。そこで、こうした現象に対するイフェンプロジルならびにTRK-820の影響について検討したところ、それぞれの皮下あるいは脳室内へ慢性併用処置することにより、メタンフェタミン慢性処置による精神依存の逆耐性形成は著明かつ有意に抑制された。また、TRK-820の前処置においてはメタンフェタミン慢性投与による側坐核でのドパミン遊離に対する逆耐性形成を有意に抑制した。これらのことから、NMDA受容体拮抗薬イフェンプロジルと新規κオピオイド受容体作動薬TRK-820は、覚せい剤依存症の治療薬として有用である可能性が示唆された。一方本研究では、メタンフェタミン慢性処置による逆耐性形成の分子機構として、側坐核におけるドパミン神経終末のプレシナプス側において、PKCによる促進的なドパミン放出機構の修飾とポストシナプス側におけるNR2Bサブユニット構築型NMDA受容体の増加に伴う細胞内情報伝達機構の変化によって引き起こされている可能性を明らかにした。さらに本研究では、メタンフェタミンが単に神経だけでなく、グリア細胞の中でも特にアストロサイトに対しても作用していることが明らかとなり、これに伴い、メタンフェタミンの逆耐性形成時には、側坐核および帯状回のアストロサイトの形態変化を伴う活性化が顕著であり、アストロサイトの活性化はPKC依存的に引き起こされ、長期に持続することも明らかとなった。以上の結果は、今後、薬物依存患者の治療や乱用の撲滅に繋がる治療薬の開発と治療法の確立に貢献できるものと考えられる。
著者
粟生 修司 大村 実 大嶋 雄治 長谷川 健 河合 啓介 片渕 俊彦
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)ビスフェノールAやトリブチルスズの周産期や胎生期曝露の行動の性分化に及ぼす影響を調べた。探索行動の性差は周産期間曝露と同様に消失した。強制水泳試験では、ストレス対処行動の指標であるstruggling時間の性差(雌>雄)が、出産前1週間曝露で消失した。うつ反応の指標であるimmobility時間は、対照群および曝露群ともに性差はなかったが、ビスフェノールA曝露群で有意に延長した。本研究により、内分泌撹乱物質が、探索行動、ストレス対処行動、青斑核、扁桃体内側核領域の喚覚応答の性差を消失させることが明らかになった。さらに、ビスフェノールAがうつおよび不安を増強し、捕食者のニオイに対する警戒応答を増強することを見い出した。2)みどりの香りのストレス応答に対する作用を調べた。捕食者のニオイに曝露した時には、みどりの香りは高架十字迷路試験において総移動距離、平均移動速度を増加させ、活動性を上げた。心理的ストレスに関しては、ストレスに曝露した翌日の飲水量をみどりの香りが著しく減らしていた。高架プラス迷路試験による不安レベルや活動性には差はなかった。身体的ストレスに関しては、ストレスに曝露した翌日の摂食量および飲水量は減少していた。さらに翌々日の摂食量および飲水量も減少していた。高架プラス迷路試験による不安レベルや活動性には差はなかった。以上のことからみどりの香りは、活動性を上昇すること、摂食、飲水量をストレス強度に依存して抑制することがわかった。3)内界環境に応じて変動する摂食調節物質であるオレキシンA、レプチン、2-buten-4-olideが摂食行動だけでなく、学習記憶機能を調節する作用を示すことを水迷路試験や海馬長期増強試験で明らかにした。
著者
八木 君人 伊藤 愉 大石 雅彦 安達 大輔
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、20世紀前半のロシア・ソ連文化、とりわけロシア・アヴァンギャルドという芸術運動における、文化現象としてあらわれる「音」を横断的に検証し、それを可能とした感覚・知覚の時代的布置を明らかにすることを目的とします。そのことを通して、たとえば、音の複製技術の登場、電子音楽等の音楽装置の発明、環境音への自覚化など、技術革新や音の概念の拡張が、同時代の社会及び諸芸術や文化に与えた影響を詳らかにします。また、積極的に、ここで得られた研究成果のアウトリーチにつとめ、当時の音響実験装置や電子楽器等の実物展覧会やそれにあわせたシンポジウムの開催なども予定しています。
著者
鳥居 朋子 岡田 有司 高橋 哲也 林 透 村上 正行 山田 剛史 串本 剛 大山 牧子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、4年間の研究期間において下記の5点を一体的に進める。(1)教育プログラムの評価と改善の好循環システムの先進事例を検討するため、米国・英国等の大学への訪問調査を行い、優れた循環システムの要件を抽出、(2)日本の大学の全国的な量的調査により、教育プログラムの評価と改善に関わる実態分析や主要な問題を特定、(3)学習成果測定や教育プログラムの評価を推進している日本の大学への訪問調査、(4)日本の大学において教育プログラムの評価と改善の好循環システムを形成する際に考慮すべき点やシステム構築上の要件等の抽出・整理、(5)好循環システムを組織的に構築するための具体的な手法をティップスの形式にまとめ公表。
著者
高橋 哲哉 山脇 直司 黒住 眞 北川 東子 野矢 茂樹 山本 芳久 古荘 真敬 信原 幸弘 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

旧約聖書の「殉教」物語の検討から、ユダヤ教的「殉教」観念が靖国思想に酷似した犠牲の論理から成り立っていること、キルケゴールがアブラハムによるイサク犠牲の物語に読みこんだ「悲劇的英雄」と「信仰の騎士」の区別は厳密には成り立たないことを確認した。ニーチェがナザレのイエスに見た「根源的キリスト教」は、罪からの解放のためにいかなる贖いも求めない「犠牲の論理なき宗教」だという結論を得た。
著者
上野 修 米虫 正巳 近藤 和敬
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1960年代後半から80年代にかけて、現代フランス哲学思想に到来したスピノザ・ルネッサンスの源流を、フランス・エピステモロジーの系譜上に位置づけた。カヴァイエスからカンギレムへと続くエピステモロジーの系譜上に、アルチュセールととラカンの強い影響下にあった60年代後半のエピステモロジー・サークルがある。彼らの『分析手帖』は構造主義を背景に科学・主体・生命に関する理論的問題の分析を展開したが、これを活気づけていたのがカヴァイエスの「概念の哲学」という理念であり、この理念がスピノザ主義の名のもとに当時のアルチュセール派やラカン派を様々な仕方で活気づけていたことが明らかとなった。
著者
原田 隆史 高久 雅生 小野 永貴 杉岡 秀紀 真山 達志 逸村 裕 江草 由佳 岡部 晋典 小泉 公乃 山本 順一 安形 輝 桂 まに子 岸田 和明 佐藤 翔
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,「資料」「来館者」「非来館者」「知の拠点」「図書館制度・経営」という5つの観点を研究する5 つのグループを設定して,日本の公共図書館全体を対象とする大規模な質的・量的調査を実施する。これによって日本の公共図書館に関して,それぞれの機能・サービスの基準とし,規模や地域経済など,図書館の状況に応じたベースラインを明らかにする。本研究により日本の公共図書館すべてに適用可能な評価パッケージを開発可能にすることが可能になると考えられる。
著者
次山 淳 松村 恵司 松村 恵司 次山 淳 池田 善文 梅崎 恵司 江草 宣友 小畑 弘己 神崎 勝 北野 隆亮 木村 理恵 小泉 武寛 小林 義孝 栄原 永遠男 芝田 悟 関口 かをり 高橋 照彦 田中 大介 永井 久美男 濱崎 真二 降幡 順子 古田 修久 松崎 俊郎 松村 恵司 宮崎 貴夫 森岡 秀人
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

3カ年にわたる研究により、銅銭を基軸に据えた貨幣制度の導入が、中国式都城の建設と一体的に企画され、富本銭が発行された歴史的経緯が明らかになった。和同開珎の発行時には、銭貨の規格性を維持しつつ発行量の増大を図るために、鋳銭体制の整備と鋳銭技術の改良が図られていること、地金貨幣である無文銀銭を駆逐するために和同銀銭が発行されるなど、7世紀末から8世紀初頭にかけての貨幣関係記事が、名目貨幣である国内通貨の定着に向けた一連の貨幣政策として整合的に理解できるようになった。
著者
根岸 一美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1923年から1935年まで関西に在住したオーストリア人音楽家、ヨーゼフ・ラスカと、彼が宝塚少女歌劇の管弦楽団員たちとともに創設し、指揮者として定期演奏会活動を展開した宝塚交響楽団に関する研究において、当該研究期間に力点を置いたのは、とりわけ作曲家としてのラスカの活動と意義を解明することであった。この目的のために、毎年、オーストリア国立図書館音楽部門(ウィーン)、ウィーン市立州立図書館音楽部門、およびリンツ・ブルックナー音楽院を訪ね、自筆譜・筆写譜・出版譜を複写ならびに写真撮影し、そうして得られた資料をもとに、音楽家たちや、音楽学専攻で楽器の演奏力を有する大学院生等に演奏してもらい、CDを作成し、作品研究のための資料整備を進めた。主な作品は《万葉集歌曲》、《日本組曲》、《7つの俳句》である。また、すでに神戸女学院で入手していた《詩編第13篇》の筆写譜についても、演奏とCD作成を行った。これらのほか、ラスカの伝記作成にむけて資料の収集に力を注ぎ、王立ミュンヘン音楽院時代の学内演奏会の曲目内容や彼自身の演奏曲目などについても重要な情報を得ることができた。美学会での各種発表においては、ラスカの作品の歴史的意義と美的特性について論じた。研究代表者の仕事を通じてラスカの名前が比較的知られるようになり、2002年9月には宝塚歌劇団の管弦楽団によって《日本組曲》が部分的ながら演奏され、ラスカと宝塚交響楽団の活動の意義が改めて見直されるにいたった。