著者
春日 敏測
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

2006年12月から2008年5月まで、ハワイ大学のInstitute for Astronomy(IfA)に滞在した。ハワイ大学の所有する口径2.2メートルの大型光学望遠鏡を使用して、過去に彗星活動のあったと考えられる近地球型小惑星3200番フェートン(ふたご座流星群の母天体)と軌道力学進化的に関連し分裂破片の可能性のある小惑星2005UD、そして小惑星1999YCについて、多色測光(カラー観測)、ライトカーブ、自転周期、サイズを導出してきた。1999YCと2005UDの表面的特長とフェートンのそれと比較した結果、始原的な部類であるC,Bタイプであることが明らかにされた。1999YCもフェートンからの分裂破片である可能性がある。ライトカーブ観測からは、歪な形状であることが明らかにされた。得られた結果から、フェートンの分裂・枯渇化の可能性について追及した。流星研究から推測されているフェートンの表面と内部との熱的進化の違いについての知見も加え(Kasuga et al.2007)、総合的に枯渇彗星の進化について議論した。結果、フェートンの母天体は内部に氷を含んだ比較的サイズの大きい小惑星であった可能性を提案することができた。参考 Kasuga & Jewitt 2008,Astronomical Journal,Vol.136,pp.881-889
著者
仲地 博 江上 能義 高良 鉄美 佐藤 学 島袋 純 宗前 清貞 前津 栄健 徳田 博人
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、2001年より続いた3年間の研究であり、まず、その研究軌跡を記しておく。初年度上半期は、理念的・基礎的テーマについて研究成果の交流(報告書No1)を行い、初年度下半期は、市町村自治基本条例のモデル素案の作成(報告書No2)を行った。2年目上半期は、市町村自治の実態の分析とともにモデル条例の深化(報告書No3)をはかった。2年目下半期は、沖縄県レベルの自治の在り方に主たる焦点をあて、自治の理念と動態を広い視野から検討すべく、この分野の第一線の研究者を招き研究の交流を行った(報告書No4)。最終年度の上半期は、沖縄の自治構想の歴史的研究を集中的に行った。同時に研究会を3つの班(主として政治学研究者からなる班、憲法研究者からなる班、行政法研究者からなる班)に分けそれぞれの分野からの自治構想を研究した(報告書No5)。下半期は、その成果を受け、3つの構想を中心とするシンポジウム、さらに、それを踏まえ、「沖縄自治州基本法」の研究会が継続的に行われた。それは約半年の議論をへて、県レベルの新自治制度の構想案としてまとめ上げられた。他方で、研究者一人一人の自治基本条例及び自治基本法に関する研究成果を最終的な研究論文の取りまとめが行われた。それは、構想案とともに最終報告書(報告書No6)に掲載されている。本研究は、住民自治の基本原則を明文化するという目的を有する自治基本条例もしくは基本法であるという性質上、住民、自治体職員や議員の参加を広く呼びかけ、今期も広く一般に公開した。合併問題、財政危機のように自治の大きな転換期にあたって、本研究に関連する地元メディアの関心も高く3年間で約90本に及ぶ関連記事が掲載された。また、80回に及ぶ研究定例会等への学外者・市民の参加は、延べ5千人を超え、確実に自治に対する意識の転換をもたらした。そのような成果を、科学の地域貢献としても評価可能である。
著者
田尾 亮介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は、研究論文の作成、判例研究会における報告、外国語文献の書評を行った。研究論文については、前年度から継続して、アメリカとイギリスの「Business Improvement Districts(BIDs)」制度を手がかりに民間主体の地域管理制度の研究を行ってきた。具体的には、それらの国の裁判例や立法資料から法的問題点を整理するとともに、我が国における制度設計の可能性を検討してきた。今国会(第171回常会)には、地域の構成員による自主協定に法的効力を付与することを目的とした都市再生特別措置法等改正案が提出されており、BID制度とはやや異なる立法が目指されているものの、地域の公的サービスに必要な財源の確保と当該地域の管理の手法という点において、本研究はなお意義を有していると考えられる。今後は、以上の分析をまとめて、研究題目である「都市の財源確保に関する法制度の研究」の成果の一部とすることにしたい。判例研究については、日本財政法学会財政法判例研究会において、土地区画整理組合への職員派遣と給与支出の違法性が争われた裁判例を報告した。地方公共団体が行政施策を遂行していくうえで、公益的法人や民間の団体との連携は不可欠であるが、かつては、そのような団体への職員派遣については法制度が整備されていなかった。本件は、公益法人等派遣法施行後の事案であるが、判例評釈においては、同法の適用範囲を厳格に解すべきではないこと、同法の適用がなくても依然として地方公務員法の職務専念義務との関係で法的疑義が生じる場合がありうることを指摘した。書評については、フランスにおける公物理論に関する文献をとりあげた。本書は、フランスにおける公物の理論と制度の発展を、所有権の概念を軸に、歴史的かつ比較法的に論じており、国有財産の在り方などが問題となっている我が国から見ても示唆に富む内容であった。
著者
中山 智子
出版者
京都外国語大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

近代フランスの舞台芸術における女性の表象を衣裳との関係から描き出すことを目的に、本年度は、昨年度に引き続き、戯曲の校訂版の作成を行うと共に、1)異性装の文化的・文学的背景の研究、2)当時の演劇状況における意義の研究を中心に行った。とりわけ、Les Amazones Modernes(Legrand,1727)の校訂版作成と分析により、男装と並んで十七、十八世紀の文芸に大きな影響を与えたアマゾネス神話のテーマの重要性を明らかにした。アマゾネス神話は、十七、十八世紀のフランスで再び脚光を浴び、男装と並んで「戦う女」「強い女」を描くための主要な芸術的テーマの一つとなった。2007年8、9月に渡仏し、国立図書館にて、十七世紀末から十八世紀にかけて発表されたアマゾネス関連の主要な文献と当時の演劇状況の調査を行った結果、Legrandは、当時のアマゾネスのブームを現実社会の批判に巧みに利用していることが分かった。加えて、「アマゾネスが男装する」という荒唐無稽な設定を用い、作品中のヴォードヴィルの歌詞に女性の権利主張を盛り込むことで、ライバル劇団の特色の一つであった男装及びヴォードヴィルを活用し、テーマ性と娯楽性の両立を可能にしていることが明らかになった。この研究結果を論文としてまとめ、フランス語で発表した。なお、本年度前半には、十七世紀末から十八世紀にかけての衣裳と性の関係についての意識の変化を、多数の戯曲の分析から検証した論文をフランスで出版された国際学会研究論文集に発表した。さらに、異なったジャンルにおける異性装の位置づけを検討するため、悲劇の例としてZaide(LaChapelle,1681)の校訂版を作成し、現在分析を行っている。今後、これまでの研究成果をジャンルごとに比較検討し、上演の形態が異性装の表象と受容にどのように関連しているかを論文にまとめ発表する予定である。
著者
掛川 武 長瀬 敏郎 中沢 弘基 関根 利守 長瀬 敏郎 中沢 弘基 関根 利守
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、初期地球の海洋に隕石が衝突し、そこでアミノ酸が生成され、そのアミノ酸が地球内部で重合し、やがて生命に進化したことを実験的に検証する課題である。隕石の海への落下実験に成功し、世界で初めて衝撃環境でのアミノ酸生成に成功した。地殻内部での高温高圧条件でアミノ酸重合にも世界で初めて成功し、タンパク質前駆体のペプチドを生成した。
著者
吉富 巧修 三村 真弓 大西 潤一 水崎 誠
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、25年前と現在の幼児の歌唱能力と幼児をとりまく音楽的環境との比較を行うことを目的とした。25年前と同一の幼稚園で、25年前と同一の幼児の歌唱能力の調査と幼児をとりまく音楽的環境に関する質問紙調査を行い、両者を比較した。その結果、以下の知見を得た。(1)「メリーさんのひつじ」の無伴奏歌唱の評価は、有意差はないが、25年前の方が好成績であった。(2)音楽的な習い事をしている幼児は、25年前は35.7%、現在は40.0%であった。(3)25年前の習い事をしている幼児としていない幼児の無伴奏歌唱の評価は、3.36と3.84であった。現在の習い事をしている幼児としていない幼児の無伴奏歌唱の評価は、3.97と3.48であった。25年前では習い事をしていない幼児の無伴奏歌唱の評価が高かったのは、当時の幼稚園教育での音楽的活動によって幼児の歌唱能力が高められたからであるといえる。(4)無伴奏歌唱の開始音高の平均は、男児は25年前にはD#4+12cent、現在はC#4+36centであり、25年前のほうが有意に高かった(t(23)=2.56,p=.02)。女児は25年前にはE4+35cent、現在ではD4+88centであった。男児は25年前のほうが176cent(1.76半音)高く、女児も25年前のほうが147cent(1.47半音)高かった。この原因としては、幼児をとりまく音楽的環境のうち,家庭的環境には大きな変化はなく、音楽的な習い事をしている幼児はむしろ現在の方が多いことから、幼稚園での音楽的活動が25年前には非常に充実しており、現在では音楽的活動が質・量ともに不足しているからではないかと推察される。(5)幼児のピッチマッチングは、刺激音の種類によって成績が異なる可能性がある。ピアノ音<女声<女声での「こんにちは」、の順に成績が高かった。(6)幼稚園児の2年間・4回の縦断的調査の結果から、次の知見を得た。無伴奏歌唱の開始音高は、第2回調査<第3回調査<集中的な練習を行った第1回調査<第4回調査の順に高かった。音高弁別能力は、第1回調査<第2回調査<第3回調査<第4回調査であり、発達の道筋を示すものであった。
著者
森山 俊介 高橋 明義 天野 勝文 内田 勝久
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、成長ホルモン遺伝子が無脊椎動物に起源する仮説およびサケ成長ホルモンがエゾアワビ稚貝の成長を促進する発見に基づいて、軟骨魚類と無顎類の成長促進に関与するホルモン受容体を同定した。また、アワビの脳神経節にサケの成長ホルモン抗体に対する免疫反応陽性細胞群を検出し、その組織から成長促進因子および遺伝子を単離するとともに成長促進因子受容体を探索した
著者
西部 忠
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

研究代表者は『地域通貨のすすめ』(北海道商工会連合会,2004年)で,地域通貨の二大目的である「地域経済の活性化」と「地域コミュニティの活性化」を同時達成するため,社会福祉やボランティアのような非商業取引を商業取引が補完する地域通貨循環スキームとして「ダブル・トライアングル方式」を提唱した。この制度設計に基づく地域通貨流通実験が北海道苫前町で2004年11月22日から2005年2月20日まで行われ,その調査研究成果を西部忠編著『苫前町地域通貨流通実験に関する報告書』として今年度に発表した。そこでは,二つの研究手法を駆使して,地域通貨が実施される地域の特徴や背景を記述し,地域通貨の経済的効果を評価しようと試みた。一つは,数回にわたるインタビュー、2回のフォーカス・グループ・ディカッション、および、3回実施したアンケートの結果を利用する定性的分析であり,もう一つは,地域通貨の経済活性化効果を評価するために,ネットワーク理論を応用して流通ネットワーク分析である。この調査の結果,地域通貨の流通速度が法定通貨の6-7倍であることがわかり,経済活性化効果について顕著な有効性が確認された。また,ネットワーク分析により,個々の地域通貨の流通ネットワークの特徴,例えば、どの地区や主体が中心的役割を果たしているか,ボランティア活動はネットワークの形成にどの程度の影響を与えるかなどを明らかにした。これは、地域内部のミクロ主体レベルでの観察情報を提供するもので,人体に対するCTスキャン技術のような役割を果たす。こうした情報を定性的情報とともに利用することで、地域の経済面とコミュニティ面についての診断(「地域ドック」)を行うことが可能になり、それを元にして,経済的自立とコミュニティ的豊かさを備えるまちづくりのための処方箋が書けるものと期待できる。他方,地域通貨の経済思想,政策思想の研究も発表した。
著者
遠山 一郎 丸山 裕美子 久冨木原 玲 中根 千絵 宮崎 真素美 山村 亜希 犬飼 隆 桐原 千文 下村 信博 山口 俊雄 福澤 将樹 高橋 亨 吉田 永弘 小谷 成子
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

古代から近代に渡り、戦が文化・文物に影響したさまを広く研究し、中国・朝鮮との関わり、さらにヨーロッパとの比較の視点をも取り入れて、総合的な研究を実現した。2007年から2011年の5年間にわたって催した研究集会・講演会、文物の展示会、伝統芸能の実演によって約2, 200名の参加を得、学術研究を広く地域の人々とも共有するという当初の狙いを具体化した。これらの成果をもとに単行本5冊と、語りの実演にその語りの本文に索引を付けたDVD1つを刊行し、研究集会と伝統芸能の映像記録も2つのDVDに残した。
著者
登倉 尋実 飯塚 幸子 奥窪 朝子 田口 秀子 田村 照子 大野 静枝
出版者
奈良女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

"健康・快適"をキャッチフレ-ズとして,様々な特殊機能を付記していることを誇大な表示と広告で示した衣料品について,平成元年度に実態調査を行った結果,着用効果が確認されていないものや弊害が考えられるものが含まれていた。広告の実態が,果して表示通りの機能を有しているかどうかを,また人体生理に与える影響について,実験室及びフィ-ルドにおける着用実験で,平成2年度から3年度に調べ,得られた主な実見は女下の通りである。登倉はウォタ-ベットについて,使用時には通常のベット使用時よりも深い睡眼が得られるが水温設定には注意を要することを報告し,飯塚は睡眼実験によって,特殊機能を付記した部位別温度制御可能電気毛布の問題点をあげ,伊藤は拘束衣服の着心他と整容効果は数gf/cm^2の被服圧によって影響を受けることを,大野は女子大生約50名について,サポ-トタイプパンストの使用実態,着用感のアンケ-ト調査結果と,市販のサポ-トタイプパンストを収集分類して10種を選んで行った着用実験の結果を,奥窪は成人女子被験者及び発汗マネキンによるサウナス-ツ着用実験の結果をス-ツ下に着用する肌着素材及び発汗量レべルとの関連について,田村は,パンストによる過度の身体圧迫は血流を抑制することを,出口は健康サンダルには明確な仕様書や品質表示がないこと,またサンダル底面の刺激点と使用者の土踏まずとの適合性は個人差が大きいことを,栃原はー5℃の人工気候室内で一般のスキ-ウエアと,特殊加工し保温性に優れると称しているスキ-ウェア-とを着用した実験結果を,緑川は寒冷環境において特殊下半身加温用足温器を着装時には非着装時よりも作業能率低下が少なくなることを,中谷は衛生加工は洗濯によりその効力が失われることなどを,綿貫はハイサポ-ト型パンテイストッキングを着用すると心臓への静脈還流量が増し血行が改善された可能性があることを報告した。
著者
首藤 伸夫 三浦 哲 今村 文彦
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

標準的には、津波は海底地震にともなって発生するものとされており、その初期波形を断層パラメーターに基づいて計算するのが現在の一般的な手法である。しかし、断層運動と海底地盤の変動の大小とに一定の関係が存在するという保証はない。(1)2枚の断層からなる1983年の日本海中部地震では、断層運動から推定される津波と現実の津波の間に矛盾があった。その最大の難点は、現実の津波が深浦地点で約2分、能代辺りで約10分早く到達することである北断層では主断層と共役である方向に副断層の存在した可能性があり、これを考慮すると深浦への到達時間は説明できた。南断層では、通常の地震計では記録できない地盤変動が生じたとすると能代周辺の津波到達時間を説明できた。しかし、この時、何故この第1波が能代の検潮記録に記録されなかったかの疑問が残る。当時の写真から第1波のソリトン波列への発達が確認され、検潮所の水理特性により記録されないことが確認された。(2)1992年のニカラグァ津波では、陸地で感じられた地震動が震度2(気象庁震度階)であった。津波発生のメカニズムを検討した結果、地震動を伴ってはいたが、津波地震とするのが適当であることが判った。(3)1993年の北海道南西沖地震で発生した津波の内、北海道西岸を襲った津波第1波は、その襲来が早かった。断層位置から発生した津波は、現実の津波より5分ほど到達が遅い。断層と海岸の間で、地震とは直接関係の無い津波発生機構があった事が強く示唆された。(4)地震動を伴わない津波発生の内、犠牲者3万人を越えると言われている1883年クラカトア島陥没による津波発生を再現した。発生箇所での急激な陥没を不安定を起こさずに計算できる手法を開発した。
著者
飯田 敏行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高純度サファイアの電気的特性を放射線照射下で調べた。その場測定の為の実験装置を製作し、中性子とγ線の照射実験を行った。一定のバイアス電圧下では、サファイア試料の放射線誘起電流はフラックスにほぼ比例し、単位呼吸線量率当りの電気伝導度増加係数は〜1.0×10^<-10>(S/m)(Gy/Sec)であった。また照射開始直後には大きな過渡電流が、そして、照射停止後には非常に遅い電流回復成分が観測された。さらに、外部バイアス電圧が無い状態でも放射線誘起電流が観測され、サファイア試料内部に電圧発生機構があることがわかる。これらの過渡電流やオフセット電圧の発生原因としては、試料の電荷蓄積や電荷キャリアの捕獲・再放出機構が考えられる。また、無機絶縁(MI)ケーブルについても同様の測定を行った。パルスX線照射実験では、ケーブル芯線に誘起される電荷量がパルス当りの吸収線量と芯線-シース間電圧にほぼ比例した。この事は、絶縁性低下の主要因が絶縁層内における電荷生成量とそのドリフトである事を示唆している。実験値を基にケーブル芯線に誘起されるパルス電荷量のシミュレーション計算を行った結果、絶縁材中の生成電子の平均ドリフト距離は、芯線-シース間電圧100Vに対して約15nmと推定された。この値の物理的妥当性については別方法によるクロスチェックが必要である。
著者
新宮 学 岡村 敬二 熊本 崇 谷井 俊仁 吉田 公平
出版者
山形大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

(E)班「出版政策研究」では、昨年度の東洋大学で行った研究会(白山学会)につづき、平成16年10月にキャンパスプラザ京都で、(B)班「出版物の研究」と合同で研究会(下京学会)を開催した。全体で10本の研究報告が行われた。(E)班の班員の報告は以下のとおりである。報告1 清乾隆期にみる出版の権威性 谷井 俊二(三重大学)報告2 清代官界における先例情報の共有と出版 寺田 浩明(京都大学)報告3『皇明資治通紀』の禁書とその続編出版 新宮 学(山形大学)報告4 明代科挙における「試録」の「程文」をめぐる問題について 鶴成 久章(福岡教育大学)報告5 印刷文化の大衆化と地域社会の受容 五代 雄資(元興寺文化財研究所)報告6 「満洲国」の出版体制 岡村 敬二(京都ノートルダム女子大学)報告7 『欧陽文忠公集』の出版について 熊本 崇(東北大学)(E)班では、研究課題遂行のための研究方法として、それぞれの研究代表者の個別研究を基礎にしながらも、その成果を報告しあって課題の共有化を進めるための研究会を毎年に開催してきた。とくに最終年度となる今回の研究会では、研究代表者のほぼ全員が報告し、共同研究の進展と深化を図ることができた。そこで共有された認識の一端は、ニューズレター『ナオ・デ・ラ・チーナ』7号掲載の「出版政策史料集」としてまとめられている。本史料集は、時代や地域的な偏りが見られ必ずしも全般的なものではないが、これまで類例を見ない新たな試みである。さらに、その後の研究成果を補充した「東アジアの出版政策史料集」を、調整班(E)の成果報告書の中に収めた。
著者
藤崎 洋人
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

閉塞性黄疸例に対し、しばしば胆管ステントによる治療が行われているが、その欠点として細胞増殖によるステントの再狭窄がある。マウスを用いてステント内にtumor ingrowthするモデルを作製、超高性能高周波磁界発生装置と非接触型温度センサーを用いた、温度制御化温熱療法を施行することを目的として実験を進め、900kHzの磁場装置を用いることにより市販のステントで十分な発熱が得られることを示した。しかし磁場装置と非接触型温度センサーとの連動した温度制御は達成に至らなかった。
著者
宮本 大
出版者
流通経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年の日本企業の成果主義的な賃金分配システムの変容において、企業の経営組織・経営戦略のあり方は人材管理の面にまで整合的に影響を及ぼし、全体的な経営管理システムは一貫してスピード(短期性)・効率性重視という方針の下で調整が進められてきた。しかし、その結果、人材育成という個別システムが軽視され、それが従業員および企業パフォーマンスに悪影響を及ぼしていることが明らかとなった。このことは全体的な管理システムの一貫性とは別に能力開発のような個別システムの重要性を示唆している。
著者
吉村 豊雄 三澤 純 稲葉 継陽 足立 啓二 山田 雅彦 松本 寿三郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の中心をなす日本史研究班は、16・17年度に引き続いて、熊本大学が収蔵する日本最大の前近代組織体文書たる永青文書所蔵の細川家文書(細川家の大名家文書)のなかで、藩制の基幹文書となっている「覚帳」「町在」の系統解析に全力をあげつつ、前近代日本社会・日本行政の到達形態について実態的な成果を出すことに努めた。その結果、「覚帳」の系統的解析を通して驚くべき成果を得た。すなわち、本研究で明らかになってきたのは、日本近世の領主制が農村社会の自律的運営能力の立脚する方向で、次第に農村社会からの上申事案・上申文書の処理を業務とする割合を強め、ついには農村社会からの上申文書を中央行政機構における稟議制の起案書として、地方行政に関わる政策形成を行うに至るという、従来、想像もされてこなかった19世紀、幕末の行政段階である。熊本藩では、18世紀以降、こうした傾向を強め、中央行政機構では、こうした状況に対応した行政処理・文書処理のシステムを整備し、19世紀段階には農村社会からの上申文書を起案書とし、中央行政機構の稟議制に基づく地方行政を展開している。本研究において主対象とした熊本藩の中央官庁帳簿たる「覚帳」は、こうした歴史的推移をたどる。同時に、中央行政機構の稟議にかかった上伸事案は、農村社会で無数に生成される要望・嘆願の類いのごく一部であり、その多くは中央行政機構に上申されることなく、農村社会の段階で処理・解決されている。18世紀後半以降の地方行政は、農村社会の政策提案能力に依存しつつ、領主支配の根幹に関わる事案について上申させ、これを稟議処理し、執行することで成り立っていたと言える。
著者
笠 浩一朗
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、英日同時通訳者の発話速度について定量的に分析した。分析では、名古屋大学同時通訳データベースを利用した。また、分析には17人の通訳者が、22講演のデータに対して、4人ごとに通訳を行ったデータを用いた。その結果、同時通訳者の話す速さと講演者の話す速さにはほとんど相関関係がないことを確認した。また、講演者の発話が完了する前よりも、完了した後の方が発話速度が速くなることなどを確認した。
著者
長岡 慎介
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、現代イスラーム金融に関する以下の2点について研究を行った。(1)現代イスラーム金融の地域的差異と多様性についての研究本年度は昨年度に引き続き、現代イスラーム金融理論およびそれにもとづいて行われている現代イスラーム金融の実践がどのような地域的差異を持っているかについての研究を行った。本年度の研究では、検討の対象とする金融商品およびタイムスパンを広げた。金融商品については、金融機関が顧客に提供する消費貸借手法および金融機関自らが取り扱うリクイディティ・マネジメントのための手法に特に注目した。また、タイムスパンについては、昨年度までは1990年代に注目していたが、本年度の研究では、それ以前および以後の理論的展開とそれにもとづいた実践の状況を検討対象に加えた。検討の結果、現代イスラーム金融の地域的差異と呼ばれる状況は、1990年代に特有の現象であることが明らかとなった。(2)現代イスラーム金融の理論的特徴からみたその歴史的意義についての検討近年の現代イスラーム金融における研究では、現代イスラーム金融の理論的特徴を「Asset Backed Finance」という形で論じているものが多くみられる。しかし、この特徴は、デット系の金融手法にのみ通用するものであるため、本年度の研究では、昨年度までの理論研究の成果をまとめながら、エクイティ系の金融手法にも通用し、さらに、経済学および経済理論の枠組みの中で広く理解できるような特徴を明らかにすることをめざした。その結果、現代イスラーム金融の理論的特徴は、「実物経済に埋め込まれた・埋め込むことを志向した金融」であることが明らかとなった。そして、この特徴は、特に経済システムの安定性を考える際に、いわゆる資本主義システムと大きな差異が現れることが明らかとなった。
著者
吉田 裕 糟谷 憲一 池 享 渡辺 治 加藤 哲郎 李 成市 中村 政則
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.平成14〜17年度の各年度に、分担研究者がそれぞれの分担研究を推進するために、韓国及び日本各地において史料調査・収集を行った。2.分担研究者が集う共同研究会を18回開催し、日本史、朝鮮史、日朝関係史に関する報告・討論を行った。また研究の進め方、総括のために分担研究者による会議を7回行った。3.共同研究の総括と、韓国の日本史・朝鮮史研究者(ソウル大学校等に所属している)との研究交流のために、2002年8月23日〜25日、2003年8月22日〜24日、2004年8月20日〜22日、2005年8月26日〜28日に、第5回〜第8回の日韓歴史共同研究プロジェクトシンポジウム(2002年・2004年は一橋大学において、2003年・2005年はソウル大学校において)開催した。日韓両国における歴史研究の現状と課題に関して相互に認識を深めるため、日本史、朝鮮史、日朝関係史上の重要な論点を逐次取り上げて、率直に議論を行っていくという方針により、毎回の準備と報告・討論が行われた。報告数は第5回〜第8回を通じて20本であり、韓国側は12本、日本側は8本である。4.シンポジウムを通じて、日韓両国の研究者のあいだで、「東アジア世界」という視座を設定して、日本社会と朝鮮社会を比較するという方法が有効であることを確認しあうことができた。今後も比較研究をさらに推進・深化させるために、平成18年度に向けて「日本・朝鮮間の相互認識に関する歴史的研究」という共同研究を準備することとなった。5.糟谷憲一が編集担当となり、第5回〜第8回シンポジウムの報告書を作成し印刷した。