著者
外川 佑 村山 拓也 岩城 直幸 山崎 佳与 﨑村 陽子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.372-379, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
20

自動車運転再開支援では,対象者の運転能力を包括的に捉えることが求められる.今回,過去3回の運転評価で全般性注意機能低下と危険運転行動により運転再開不可とされた70代男性に対し,交通心理学のアプローチを用いた介入を実施した.当院における院内初期評価ではSiDSのタイミング検査や反応時間の遅延,教習所内コース評価では一時停止やカーブ進入前のブレーキ操作の遅れ,自身の運転のモニタリングの不十分さが観察された.交通心理学のアプローチに基づくブレーキ操作の反復訓練と教習指導員による公道での実地走行の結果,ブレーキ操作や運転パフォーマンス,自身の運転に関するメタ認知に変化を認め,最終的に運転再開に至った.
著者
田村 糸子 高木 秀雄 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.360-373, 2010-07-15 (Released:2010-11-11)
参考文献数
54
被引用文献数
11 13

南関東の千葉県銚子地域から東京都江東区,神奈川県鎌倉市,愛川町にかけて分布する上総層群相当層に見出された,ざくろ石を多量に含むという特徴を持つテフラ層について,記載岩石学的特徴,ざくろ石の化学組成,テフラ層の層序学的位置づけなどを検討し,これらのテフラ層が明確に対比されることを示した.そして,ざくろ石の粒径の傾向などから,その給源火山が丹沢に求められることを明らかにした.このざくろ石テフラ層を丹沢-ざくろ石軽石層(Tn-GP)と呼ぶ.Tn-GPの堆積年代は,各地における生化石層序,テフラ層序,古地磁気層序などから,およそ2.5 Maと推定される.ざくろ石を多量に含む極めて特徴的なTn-GPは,今後,南関東の各地の更新統で見出される可能性が高く,新しい層序区分におけるP/P境界付近,あるいは黒滝不整合の時代の指標テフラとして貴重な時間面を提供し,関東平野の都市基盤解明に寄与すると期待される.
著者
湯川 慶子 石川 ひろの 山崎 喜比古 津谷 喜一郎 木内 貴弘
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.16-26, 2015 (Released:2015-02-27)
参考文献数
32

目的:慢性疾患患者の代替医療による副作用への対処行動や主治医とのコミュニケーションとへルスリテラシーとの関連を明らかにすることを目的とした.方法:2011年5月から7月に,全国の患者会の慢性疾患患者920名に自記式質問紙を用いた横断研究を行った.603通を回収し欠損が多いものを除いた570通のうち(有効回収率62.0%),代替医療の利用経験を持つ428名を対象とした.副作用経験の有無(副作用の経験あり群・経験なし群),副作用時の対処(利用中止群・利用継続群),主治医への副作用の症状と療法の報告(主治医への報告あり群・報告なし群)別のへルスリテラシーについて対応のないt検定を行った.さらに,属性とヘルスリテラシーを説明変数,利用中止,主治医への報告ありを目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:428名中88名(20.6%)が副作用を経験していた.そのうち45.9%が利用を継続し,61.6%は主治医に副作用の症状と療法を報告していなかった.利用中止群が利用継続群よりも,報告あり群が報告なし群よりもヘルスリテラシーが高かった.多変量解析でも,ヘルスリテラシーと利用中止か継続かとの関連(OR=2.75,95%CI 1.06-7.10),主治医への報告の有無との関連(OR=2.59,95%CI 1.01-6.65)が認められた.結論:へルスリテラシーは,代替医療による副作用への適切な対処,主治医への報告など,代替医療の安全な利用に重要である.
著者
山崎 柄根
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.95-102, 1981

日本産のヒナカマキリは, その分類学的位置や雄についての知見にいくつかの混乱があった。たとえば, 日本産の種類では雌個体しか現れず, 単為生殖をしているのであろう, という説である(古川, 1950; 日浦, 1977)。本報文では, その分類学的位置を明らかにし, 雄については, 日本列島の自然史科学的総合研究による伊豆の調査で良い標本を得たので, これによって今回はじめて記載し, またこの種が両性生殖種であることを示した。この種は, もともと1908年, 素木得一によって静岡および東京産の雌をもとに Gonypeta Nawai として記載されたものである。ついで素木はこの種の2度目の記載を行ったが, 原記載を無視して, 松村松年が1908年(素木の原記載の5ケ月後)用いた無効名 Gonypeta maculata を用いた。混乱はここにはじまるが, 原記載はなぜか素木自身ならびにその後の研究者によって無視されてしまい, 1915年に KARNY が属を Iridopteryx に変更してのち, 日本のヒナカマキリについてのすべての文献には Iridopteryx maculata が用いられるようになった。しかし, 今回細かに検討してみると, 属についてはこのカマキリは Iridopteryx 属には該当せず, 結局 Amelinae 亜科の Amantis 属に含ましめるのが妥当であるとの結論に達した。原記載における種名 nawai は有効名であるから, 結局日本産のヒナカマキリの学名は Amantis nawai とするのが正しいことになる。台湾産のものと異って, 日本産の雄は雌同様に微翅型であって, 雌よりやや体が小さいものの, 雌に大変よく似ている。これがおそらく今まで雄個体がみられないという説の起った原因であると考えられる。よく探せば, どこでもその分布地では雄は見つかるものと思う。ヒナカマキリの分布は, 本州では北限地と考えられる山形県の吹浦から日本海側に沿って南西へ, また太平洋側では東京都の自然教育園や小金井市などの位置あるいは千葉県木更津市から南西に分布し, 四国, 対馬, 九州, 奄美大島にまで分布している(図12)。この種はシイやタブ林をとくに好んで生息するが, 記録された地点を地図上にプロットし, 常緑広葉樹林(あるいは照葉樹林)の分布地と比較してみると, 顕著にその分布が一致していることが認められた。肉食性のカマキリで, しかもその行動は他種にみられないほど敏捷で, また好地性であるが, 本種はこの常緑広葉樹林の林床をほとんど離れないのである。かくして, ヒナカマキリ Amantis nawai は常緑広葉樹林に伴って分布する昆虫の典型的なもののひとつと言ってよいであろう。
著者
山崎 嵩拓 宋 俊煥 泉山 塁威 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.136-143, 2019-10-25 (Released:2019-10-28)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

2017年の都市公園法改正により、民間活力の導入を目的に公募設置管理制度(Park-PFI)が施行された。そのため今後は、全国各地で自治体主催の公募を通じ、飲食店等の収益施設を、都市公園内に設置・管理する事業者の選定が展開される見込みを持つ。ここで事業者は、自ら施設を整備し、公園使用料を支払うことで収益事業の実施が認められる。つまり、一般の商業施設と同様に立地条件の影響を受ける事が推察される。そこで本研究は、都市公園における公募を通じ設置された収益施設の実態が、立地条件から受ける影響を明らかにすることで、Park-PFIの普及時における留意点を考察する事を目的とした。研究対象は19都市公園に設置された25の収益施設である。研究の結果、固定資産税路線価や駅からの距離等を立地条件の指標とした場合に、立地条件の良し悪しに応じて、収益施設の業種や施設計画、事業者の応募数の傾向が変化することが明らかになった。
著者
山崎 晃男
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-28, 2016-09-30 (Released:2016-10-25)
参考文献数
11

Music often moves us and provides great pleasure. The origins of this ability of music remain a mystery. Recently, an increasing number of studies have proposed evolutionary theories of human musicality, although several researchers deny the adaptive value of music. In this paper, the origins of the pleasure that music provides were discussed in terms of human evolution and cultural adaptation. A possibility in which both evolutionary and cultural adaptation resulted in the pleasure of music was shown. Next, the relationship between music and visual stimuli was focused on. Owing to the development of music devices and the Internet, music is heard increasingly with visual stimuli, like background music in everyday life, films, drama, dance, computer games, music videos, etc. Based on the author's findings on the cross-modal effects between music and visual stimuli, the pleasure of listening to music with visual stimuli was discussed. It was emphasized that the meaning of music is strengthened, changed, and multi-layered by visual stimuli when it is enjoyed with the visual stimuli.
著者
小森 浩二 山崎 裕己 古前 竜平 玉登 まき 福田 洋 板橋 司 菊田 真穂 高田 雅弘 宮﨑 珠美 中野 祥子 三田村 しのぶ 首藤 誠 山本 淑子 塙 由美子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.186-192, 2014-03-10 (Released:2015-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Loxoprofen (Loxonin®) is a widely administered non-steroidal anti-inflammatory drug (NSAID) in Japan, with annual sales exceeding 50 billion Japanese yen. Although it is a very versatile drug and is often administered to breastfeeding women, the information available regarding its mammary gland transfer is inadequate.Therefore, in this study, we analyzed loxoprofen levels in the blood and milk of four breastfeeding women who received the drug for pain relief. These women visited the Obstetrics and Gynecology Department of Hanwa Sumiyoshi General Hospital for consultation or a cesarean section.One tablet of Loxonin® (loxoprofen 60 mg) was orally administered to each of the four women, and blood and milk samples were collected 0, 30, 90, 150 and 330 min after drug administration. Twenty microliters of ethanol was added to the blood and milk samples (10 μL), and the mixture was centrifuged at 12000 g for 15 min. The supernatant was analyzed by high-performance liquid chromatography (HPLC).Loxoprofen levels in blood peaked 90 min after its oral administration in all four patients, with the highest level being 4.5 μg/mL in patient II, whereas loxoprofen level in milk was below the detection limit (0.1 μg/mL) at all time points. Taken together, the data suggest low mammary gland transfer of loxoprofen, and thereby a low lactation risk.
著者
種村 一識 松永 哲郎 山崎 英恵 李 子帆 城尾 恵里奈 足達 哲也 近藤 高史 津田 謹輔
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.113-121, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1 1

コーヒーの様々な生理機能が注目されているが,消化管への作用に関しては不明な点が多い。そこで,コーヒー摂取による胃運動および自律神経活動への作用を検討した。検査日0時から絶食した男性(21.3±0.3歳;常飲者12名,非常飲者12名)24名を対象に,コーヒー,カフェインレスコーヒーまたはお湯(260mL)をロールパン(285kcal)とともに摂取させるクロスオーバー試験を実施した。評価は胃電図解析および心拍変動解析により行い,胃電図は空腹時18分間と食後45分間,心拍変動は空腹時と食後35分後の各10分間測定した。コーヒー摂取でお湯と比べて食後10-20分の胃電図の正常波パワーが有意に高値を示した。また,コーヒー摂取時のみ自律神経活動指標値が有意に増加し,この効果はコーヒー常飲者(≧1cup/日)で顕著であった。本結果から,コーヒーは胃運動と自律神経活動を亢進させることが示唆された。
著者
山崎 晃嗣 竹村 豊 有馬 智之 益海 大樹 長井 恵 井上 徳浩 杉本 圭相
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.359-365, 2020-08-05 (Released:2020-08-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【背景】食物経口負荷試験(OFC)の方法は各施設で総負荷量や摂取回数,摂取間隔を設定しており,この違いが結果に影響を与えることが考えられる.【対象・方法】卵白特異的IgE抗体価がクラス3,4の児に対し,20分加熱ゆで卵白8gを総負荷量として実施したOFCを対象とし,60分間隔2回漸増法と30分間隔3回漸増法を比較してOFCの陽性率,誘発症状時の陽性閾値量,誘発症状時の重症度等を検討した.【結果】2回法,3回法でOFCの陽性率はそれぞれ21例(30.4%),24例(38.6%)(P=0.72),誘発症状時の陽性閾値量は,8g,3gと統計学的有意差はなく(P=0.76),両法間とも認められた症状は全てmodified Sampson分類のGradeIII以下であった.統計学的な有意差は無かったが,2回法でのみ神経症状と循環器症状が出現した.【結論】卵白IgEクラス3,4の児に対する20分加熱卵白8gのOFCにおいて,2回法と3回法は安全性と有効性に有意差は認められない.
著者
遠藤 秀紀 山崎 剛史 森 健人 工藤 光平 小薮 大輔
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-25, 2014-03-31 (Released:2014-05-31)
参考文献数
12

ハシビロコウ(Balaeniceps rex)の咽頭腔と舌骨を三次元 CT画像解析により検討した。咽頭と頭側の食道は,左右両側へ著しく拡大していた。巨大な咽頭と頭側の食道,固定されていない柔軟な舌骨,退化した舌が観察された。これらはハシビロコウがその採餌生態に特徴的な大きな食魂を受け止めることを可能にしていると考えられた。ハシビロコウの咽頭腔領域の構造は,大きな食塊を消化管へ通過させる柔軟な憩室として機能していることが示唆された。また,舌骨,口腔,咽頭腔,頭側の食道腔に左右非対称性が観察された。この非対称性もハシビロコウが大きな魚体を嚥下することに寄与している可能性がある。

8 0 0 0 OA 津波と神社

著者
山崎 憲治
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100038, 2013 (Released:2014-03-14)

三陸沿岸部の被災地を廻れば、神社の被災が少ないことに気付く。神社は特別な位置にあったのか?津波防災をあらかじめ意図して、神社の立地を定めていたのか。しかし、三陸のリアス海岸を離れ、仙台平野に入ると神社の被災は少なくない。平野部の農村の神社と漁村の神社の立地の違いはどこにあるのか。そもそも神社と海、あるいは当該地域集落コミュニティと海とのかかわりは、神社を介しその位置に、かかわりの象徴が示されてはいないか考察を進めてみた。沿岸部で集落は津波によって壊滅状態に陥ったが、神社がぽっかりと被災を免れている光景にしばしば目にすることになる。コミュニティと神社の位置を検討してみる。本研究では、沿岸部に立地する神社を、海とコミュニティの関係から8つの類型に分け、それぞれの被災状況を示した。ここから当該地域の海と生活・生産の関わりを示す視点を明らかにしたい。神社が津波避難に対し有効であった事例を示し、避難所として、神社の有効性を検討すると共に、神社を積極的に活かす上での課題を明示したい。
著者
山本 実穂 野添 匡史 大西 晶 桝矢 璃央 大澤 摩純 久保 宏紀 山崎 允 間瀬 教史 島田 眞一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11639, (Released:2019-11-27)
参考文献数
34

【目的】慢性腎臓病(以下,CKD)を合併した心不全カヘキシア症例に対して,分岐鎖アミノ酸(以下,BCAA)を含むたんぱく質摂取を中心とした栄養療法と運動療法によって身体機能の大幅な改善が得られたので報告する。【症例紹介】心不全(CKD stage3b 合併)を発症後1 ヵ月間の中心静脈栄養管理となり20 kg の体重減少を招いた。身体機能の改善を目的に理学療法が処方されたが,第76 病日時点で疲労感が強く,運動耐容能(6 分間歩行距離150 m)も低下していることからカヘキシアの状態と考えられた。【経過】BCAA を含むたんぱく質の摂取量を1.2 g/kg/ 日まで漸増し,運動療法はレジスタンストレーニングを中心に行った。約3ヵ月間で体重は8.4 kg 増加し6 分間歩行距離は557 m まで改善した。【結論】CKD を合併した心不全カヘキシア例であっても,たんぱく質摂取量を増やした栄養療法と運動療法の併用は有効と考えられた。
著者
松野 陽一 長谷川 強 山崎 誠 鈴木 淳 小峯 和明 岡 雅彦 新藤 恊三 松野 陽一
出版者
国文学研究資料館
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1990

古典籍の成立事情と書写伝流の経路を究明する上で、写本の巻末に記載される奥書・識語を収集して、これを整理することは極めて重要、かつ有効な方法である。国文学研究資料館文献資料部では、可能な限り広範な古典籍の奥書を集成し、研究することに着手したが、2年間にわたる本研究において得られた具体的な成果は、以下に記すとおりである。1.国文学古典籍は日本各地の文庫・図書館等に所蔵されるが、質、量ともに豊富で、本研究の目的に合致するものとして、宮内庁書陵部本6,300点と陽明文庫本3,400点とを対象にして、奥書を抽出した。2.記載年時の明示されない奥書は、書写者の生没年時など周辺の事項から推定するなどして、抽出した奥書を年代順に配列して、文庫別にデ-タファイルに蓄積した。3.集成した奥書デ-タを、ジャンル別、作品名別、奥書記載者別などいくつかの要素に分析して、サンプリングデ-タの作成を試みた。4.サンプリングデ-タの一具体例として、文庫形成の面で独特の蔵書構成を示す真福寺本の奥書を悉皆調査して、書名による分析を通して書名索引を作成した。その成果は「研究成果報告書」に掲載した。5.奥書集成の具体例として、藤原俊成の家集『長秋詠藻』の諸本の奥書を写真版で収集し、書承経路をつきとめた。この作業では対象を書陵部本と陽明文庫本に限定せず、諸本を博捜して目的を達成することに務めた。この成果も「研究成果報告書」に掲載することができた。
著者
阿部 貴恵 近藤 美弥子 岡田 和隆 亀崎 良介 和田 麻友美 北川 善政 山崎 裕
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.127-131, 2014-03

口腔内セネストパチーは,口腔内の異常感を奇妙な表現で執拗に訴える病態で,難治性の疾患とされている.今回,口腔内にさまざまな異物の存在を訴え続けた75歳の女性に対し,心身医学的対応により症状の消失までには至らなかったものの,寛解が得られた症例を経験したので報告する. 主訴は,口の中から砂が出てきて口内全体に張り付くであった.カンジダ除菌後,口内には口腔乾燥以外の異常所見を認めなかったが,以後,「丸い塊」「フイルム」「六神丸」「セロハン」「ブドウ」様の異物が口内に出現すると感じるようになり,それを吐き出さずにはいられず,外出も困難になった.向精神薬や抗うつ薬を投与したが効果なく,精神科に紹介したが具体的な治療は行われなかった.当科での治療を引き続き希望したため,薬物療法は止め,発症の契機が疑われた長男の嫁との不仲を和解させ,好きなパチンコに行けるように生活指導を根気よく行ったことで,異物は完全には消失していないものの,症状は改善した.
著者
坂本 文徳 大貫 敏彦 香西 直文 五十嵐 翔祐 山崎 信哉 吉田 善行 田中 俊一
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-7, 2012 (Released:2012-02-15)
参考文献数
12
被引用文献数
8 10

The environmental behavior of radioactive Cs in the fallout from the accident of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant has been studied by measuring its spatial distribution on/in trees, plants, and surface soil beneath the plants using autoradiography analysis. The results of autoradiography analysis showed that radioactive Cs was distributed on the branches and leaves of trees that were present during the accident and that only a small fraction of radioactive Cs was transported to new branches and leaves grown after the accident. Radioactive Cs was present on the grass and rice stubble on the soils, but not in the soils beneath the grass and rice stubble, indicating that the radioactive Cs was deposited on the grass and the rice plant. In addition, the ratio of the radioactive Cs that penetrated into the soil layer by weathering was very small two months after the accident. These results indicate that trees and other plants are the reservoir of the fallout Cs and function to retard the fallout Cs migration with rain water.