著者
宇野 裕之 横山 真弓 坂田 宏志 日本哺乳類学会シカ保護管理検討作業部会
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-38, 2007-06-30
被引用文献数
15

ニホンジカ特定鳥獣保護管理計画 (2002-2006年度の期間) の現状と課題を明らかにするため, 29都道府県及び大台ケ原地域を対象に2006年6月から9月までの期間, 聞き取り調査を行った. 管理目標は主に 1)個体群の存続と絶滅回避, 2)農林業被害など軋轢の軽減, 3)個体数削減, 及び4)生態系保全に区分できた. 個体数や密度のモニタリング手法には, 1)捕獲報告に基づく捕獲効率や目撃効率, 2)航空機調査, 3)ライトセンサス, 4)区画法, 及び5)糞塊法や糞粒法が用いられていた. 航空機調査, 区画法及び糞粒法を用いた個体数推定では, 多くの事例 (30地域中の11地域) で密度を過小に評価していたことが明らかとなった. 個体数の過小評価や想定外の分布域の拡大によって, 個体数管理の目標が十分達成できていないと考えられる地域も多くみられた. フィードバック管理を進めていく上で, モニタリング結果を科学的に評価し, その結果を施策に反映させるシステムの構築が必要である. そのためには, 研究者と行政担当者の連携が重要である. また, 県境をまたがる個体群の広域的管理と, そのための連携体制を築いていくことが大きな課題だと考えられる. <br>
著者
千代 章一郎 横山 尚
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.594, pp.245-252, 2005

This paper aims to clarify the transformation of the landscape of tourism just after the World War II through the oral explanations by the tour guides in the reconstruction period of the sightseeing bus tours in Hiroshima. Analyzing the guide texts and the interview to the tour guides at that time, we can find out the process of the connection of the various information; the tradition of Hiroshima before the war, the historical evidences in the wartime and the postwar rehabilitation. That is to say, the atom-bombed city Hiroshima in the beginning intended to be the 'peace' city, integrating the landscapes of tourism of the various times and spaces.
著者
横山 恭子
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-38, 2011-07-31 (Released:2012-04-25)
参考文献数
21

生物多様性の保全に向けて,GISを利用し,都市近郊の里山における土地利用の変遷を定量的に明らかにした.対象地全域の面積は,14.7 km2である.顕著であった土地利用の変化は,以下の5つである.(1)昭和22年から平成18年に5.0 km2の針葉樹林が広葉樹林へと変化した.昭和22年の針葉樹林の面積7.6 km2の66%にあたる面積であった.(2)昭和22年から平成18年の間に1.9 km2の森林や田畑などが集落へと変化した.高度経済成長期と重なる昭和44年から昭和52年に,1.5 km2と最も多くの田や森林などが集落へと変化した.(3)昭和22年から平成18年を通じて2.1 km2の主として針葉樹林および広葉樹林がゴルフ場へと変化した.ゴルフ場に変化した針葉樹林と広葉樹林をあわせるとゴルフ場に変化した全土地利用の84%におよぶ.特に,昭和32年から昭和44年に,0.7 km2と最も多くの森林などがゴルフ場へと変化した.(4)昭和22年から平成18年に,3.1 km2の主として針葉樹林および広葉樹林が荒地へと変化した.荒地化が最も進んだのは,昭和52年から昭和61年にかけてであった.調査期間を通じてみても,減反や高齢化などによる放棄田から荒地の変化(0.4 km2)を樹林から荒地への変化(1.1 km2)が上回っていることがわかった.(5)調査期間においては,大幅な田の樹林化は進んではいないと解せられた.
著者
横山 潤
出版者
法曹会
雑誌
法曹時報 (ISSN:00239453)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.529-555, 2011-03
著者
玉田 芳史 河原 祐馬 木之内 秀彦 戸田 真紀子 木村 幹 岡本 正明 村上 勇介 藤倉 達郎 横山 豪志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

民主主義が政治のグローバル・スタンダードになった今日でも、軍事クーデタは生じうることを複数の事例の比較研究から確認した.1 つには、政治の民主化が進んで、軍があからさまな政治介入を控えるようになっても、軍が政治から完全に撤退することは容易ではないからである.もう1 つには、クーデタに対する国際社会からの歯止めは、軍首脳が国際関係よりも国内事情を優先する場合には、あまり強く機能しないからである.
著者
横山 勉
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.51, pp.285-288, 2008-07-27

自然環境を取り入れた遊び環境をもつ保育園にはいくつかの外遊び空間があり、今回は園面と基地における遊び場の比較による遊び空間特性を示す。基地は、自然環境を活かした遊び場を構築する図面と共通するものが多くあるが、もうひとつの遊び空間として独自性を示し、直接的な自然体験を通して幼児の成長に深く関わっている。園庭における日常的な遊び空間に対して基地は冒険的な遊び環境を提供していると考えられる。
著者
松本 淳 多田 隆治 茅根 創 春山 成子 小口 高 横山 祐典 阿部 彩子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,アジアモンスーン地域における過去の気候資料と,日本のさまざまな緯度帯から取得される地質試料(サンゴ年輪やボーリングコア等)の解析によって,過去数10年〜数千年の時間スケールでアジアモンスーン域の降水量変動および各流域洪水の洪水史をまとめ,モンスーンにともなう降水量変動と洪水の歴史の関係を長期的に復元し,地表環境の変化との関係を考察することを目的として研究を行なった。千年規模での変動として,日本海南部隠岐堆の海底コア三重県雲出川流域のボーリングコアを解析した。後氷期には約1700,4200,6200年前に揚子江流域で夏季モンスーン性降雨が強まり,雲出川流域において約6000年前には堆積速度が大変に速く,この時代には広域的に洪水が頻発していた可能性が判明した。また,琉球列島南端の石垣島で採集されたサンゴ年輪コアの酸素同位体比と蛍光強度の分析によって,過去の塩分変動を定量的に復元できることがわかった。20世紀後半の変動としては,近年洪水が頻発するバングラデシュにおいて,GISとリモートセンシングデータによってブラマプトラ川の河道変遷と洪水との関係を検討し,河道が約10年周期で河川の平衡状態への接近と乖離とを繰り返したことがわかった。また大洪水が雨季には稲作に大きな被害をもたらすものの,引き続く乾季には大幅な収量増加がみられることを見出した。流入河川上流域のネパールでの降水特性を検討し,ネパールで豪雨が頻発した年とバングラデシュにおける洪水年とが対応していないことがわかった。さらに日本においては,冬の終了や梅雨入り・梅雨明けが近年遅くなっていることを明らかにした。気候変動研究に多用されているNCEP/NCARの長期再解析データには,中国大陸上で観測記録と一致しない変動がみられることを見出し,アジアモンスーンの長期変動解析にこのデータを使用するのは不適切であることを示した。
著者
小林 傳司 山脇 直司 木原 英逸 藤垣 裕子 平川 秀幸 横山 輝雄 副田 隆重 服部 裕幸 沢登 文治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

現代社会における科学技術が、知的、物質的威力としてのみではなく、権力や権威を伴う政治的威力として機能していることの分析を行い、科学者共同体において確保される知的「正当性」と、科学技術が関連する社会的意思決定において科学知識が果たす「正統性」提供機能の錯綜した関係を解明し、論文集を出版した。また、このような状況における科学技術のガバナンスのあり方として、科学技術の専門家や行政関係者のみならず、広く一般人を含む多様なステークホルダーの参加の元での合意形成や意思決定様式の可能性を探求した。特に、科学者共同体内部で作動する合意形成様式の社会学的分析に関する著作、幅広いステークホルダー参加の元手の合意形成の試みのひとつであるコンセンサス会議の分析に関する著作が、その成果である。さらに具体的な事例分析のために、参加型のテクノロジーアセスメントにおける多様な試みを集約するワークショップを開催し、現状の成果と今後の課題を明らかにした。課題としては、全国的なテーマと地域的なテーマで参加手法はどういう違いがあるべきか、参加型手法の成果を政策決定とどのように接続する課などである。同時に、「もんじゅ裁判」を事例に、科学技術的思考と法的思考、そして一般市民の視点のずれと相克を記述分析し、社会的紛争処理一般にかかわる問題点や課題を明らかにした。本研究の結果到達した結論は、人々の現在及び将来の生活に大きな影響を与える科学技術のあり方に関しては、政治的な捕捉と検討という意味での公共的討議が必要であり、そのための社会的仕組みを構想していく必要があるということである。こういった活動の成果は、最終年度にパリで開催された4S(Society for Social Studies of Science)国際大会でセッションを組んで報告された。
著者
善木 道雄 伊藤 裕昭 姫野 新典 横山 崇
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.201-203, 2003 (Released:2003-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

A simple solid-phase colorimetry using polyurethane foam (PUF) for the determination of iron(II) has been proposed. The 1,10-phenanthroline (phen) method is selective and sensitive, and is widely used for the determination of Fe(II) in aqueous solution. It is worthwhile to develop this method, which is suitable for visual colorimetry. An iron(II)-phen complex and its ion-associates, such as Br−, SCN− and ClO4−, were not extracted onto PUF at all. In the presence of sodium dodecyl sulfate (SDS), we found iron(II)-phen complex was adsorbed onto PUF and the iron concentration was visually measured from the resulting color onto PUF. The recommended procedure is as follows. Five ml of a 1 M acetate buffer solution (pH 4.7), 1 ml of 10 w/v% ascorbic acid, 3 ml of 0.1 w/v% phen, and 4 ml of 5×10−3 M SDS were added to a 200 ml sample solution containing less than 200 ppb of Fe(II). A chip of PUF (2×2×2 cm) was put into the solution and stirred with a magnetic stirrer for 20 minutes. The chip taken up from the solution was rinsed with distilled water and squeezed to remove any water. The color intensity of the PUF was then visually compared by a standard series method.
著者
横山 伊徳 小野 将 松本 良太
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

史料編纂所が所蔵する島津家本『琉球外国関係文書』をハイパーテキスト化する作業を、巻之十まで行なった。現在巻之二十四迄のハイパーテキスト化を進行中である。(1)『琉球外国関係文書』(全51冊)のうち、巻之三十三まで全文入力した。このうち、巻之三十二まで校正完了。(2)『琉球外国関係文書』の内、巻之二十四まで、ftp://shipsnw.hi.u-tokyo.ac.jp/ryukyu/でその校正済みプレーンテキストを公開した。(3)史料編纂所wwwサーバhttp://www.hi.u-tokyo.ac.jp/personal/yokoyama/index.htmによって、巻之十迄の冊別目録・編年目録による閲覧が実現している。この結果、琉球の領有に関して、江戸幕府が対外的に「琉球は外国」という態度から、対外的にも「琉球は属領」という態度へと変化するその変化が、幕府内部や幕府と薩摩藩の間のどのような認識・論議の変化に基づいたものかを研究するための、基礎的データをWWWによって提供できるようになった。すなわち、琉球に来航した外国船や、琉球をめぐる諸外国との交渉、あるいは幕府や薩摩藩の論議に関する史料を、ネットワーク上で分析できるようになったのである。これらは、漢文史料まで含めた、www上の本格的資料集として、注目を集めている。
著者
千葉 克裕 吉本 啓 横山 悟
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本における英語学習において、初級学習者は L2 英悟の語彙を日本語の翻訳を介して理解しているか、また上級になると直接第2 言語を処理するようになるか、という習熟度の変化にともない第2 言語語彙処理プロセスが変化するかどうかを脳磁図(MEG)を用いて観察した。分析の結果から上級者は単語認知処理において処理速度が速く、また初級者は脳のより多くの部位を使用して意味処理を行っていると判断された。
著者
横山 雅彦 水谷 雅彦 山崎 康仕 三浦 伸夫 宗像 恵 片柳 榮一 櫻井 徹 山田 広昭
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

我々は平成6年度から平成8年度までの3年間にわたって本研究を行ない、その結果、概略的にほぼ下記のような成果を得た。片柳は、ヨーロッパの自然法思想に独自の緊張を与え続けた旧約聖書の宗教的法思想が、古代イスラエル民族の苦難にみちた歴史的体験と密接不可分に結びついていることを、聖書解釈学の視点から明確にした。横山は、古代末期から12世紀のシャルトル学派にいたるまでのプラトン主義的な思想的系譜の展開の中に、中世ヨーロッパにおける自然法則概念の確立の重要な契機があることを、具体的な史料分析によって明らかにした。桜井は、17世紀後半のイギリスの宗教家カンバーランド主著『自然法の哲学的探究』の緻密な分析によって、彼の自然法思想が、当時のイングランドの支配階級の利害関係を強く反映するとともに、また王立学会の重鎮たるボイルの自然法則観とも通底していたことを実証的に示した。宗像は、17世紀のデカルトから18世紀中葉のルソーにいたるまでの自然法と自然法則に関する様々な思想を概観するとともに、それらの思想全体の相互関係を哲学史的視点から明確にした。三浦は、イスラム文化圈における自然法則概念の歴史的展開という、これまで全世界的にほとんど無視されてきた研究テーマを開拓し、その歴史的展開が近代西欧科学に対するイスラムの現代的対応とも連関していることを示した。山崎は、近年ますます大きな問題となりつつある生命倫理の問題に対する多様な法学的対応の中にもしばしば自然法的な思想が隠れていることを、妊娠中絶論争や尊厳死問題論争という 問題と関連して具体的に分析した。水谷は、パソコン文化の急激な大衆化と絡む電子ネットワークの情報倫理的問題に着目し、旧来の問題とのアナロジーに依拠した伝統的な法律的対応が引き起こす混乱の諸相を具体的な事例に基づいて明確にした。
著者
浪江 巌 篠田 武司 宮本 太郎 横山 寿一 前田 信彦 北 明美 伊藤 正純
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

完全雇用は、どの先進諸国においても戦後福祉国家にとっての基本的な政策であった。しかし、現在のグローバル化と知識社会化のもとでは、完全雇用を実現することは困難になってきた。福祉国家の危機も進んでいる。では、こうした雇用と福祉の危機のなかで、各国はどのようにそれに対処しようとしているのか。それを高度福祉国家スウェーデンにおいてみながら、日本にとってのその意味を考察したのが本研究である。本研究で明らかになったことは、次のことである。(1)完全雇用を実現することを福祉国家スウェーデンの中心的政策として明確に位置付けてきたスウェーデンにおいても、その実現は難しくなっていること、(2)特に、社会的弱者ともいえる移民、青年層、女性、障害者などが労働市場から排除されるか、雇用の多様化が進む中で雇用の質が落ちていること、(3)しかし、現実には将来的に少子化の中で雇用をいかに確保するべきかがいまから大きな課題として認識されていること、(4)したがって、あくまで失業率を下げ、雇用率を上げるために政府は労働市場政策プログラムを様々な形で展開していること、(5)しかし、財政の関係、ならびにEU内でも進むワークフェアー的な労働市場政策の影響も受け、90年代以降その政策が変わりつつあること、などを確認した。では、どのように労働市場政策は変わりつつあるのか。ひとことでいえば、(1)労働市場政策の分権化、いいかえれば地方の役割を大きくしつつあることである。(2)多用な雇用形態が進むとともに、規制緩和が進み、民間企業による派遣事業が許可された。(3)労働市場弱者にたいするきめ細かい政策が実行されていることである。労働市場弱者を労働市場から排除しないことが社会結合にとって大きな課題であることが自覚されている。日本においても失業率の高止まり、また将来的には労働力不足を迎えるという事態はスウェーデンと変わらない。したがって、雇用対策がこの間、重視され、様々な政策が実行されてきた。しかし、まだスウェーデンと比べると危機感が少ないかに見えるし、対策の効用も十分あきらかにされていないかに見える。報告書は、12章から成り立つ。1章-「スウェーデン労働市場とG・レーン(宮本)、2章「労働市場の現状と政策の変化」(篠田)、3章「労働市場政策プログラムと職業訓練・教育」(伊藤)、4章「スウェーデンにおける雇用の男女平等」(北)、5章「保護雇用会社のサムハルの現状と未来」(福地)、6章「若年雇用政策の理念と現実」(櫻井)、7章「高齢者による人口問題の解決」(B・ヴィクルンド)、8章「障害者雇用の現実と課題」(横山)、9章「雇用対策における非営利セクターの役割」(中里)、10章「労働時間をめぐる政策動向」(浪江)、11章「分権化とクラスター・ダイナミクス」(G・ヨーラン)、12章「惨めなリーン生産方式か、豊な方式か?」(T・ニルソン)
著者
鷹野 和美 横山 孝子 古田 睦美 清水 貞夫 鷹野 和美
出版者
長野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

異なる社会層からなる地域コミュニティの助け合いのしくみづくりにおける、地域通貨の果たす役割を実証的に研究した。具体的には学生および卒業生からなるNPO組織「学生地域暮らしづくり考房こみっと」の交流施設「縁舎」を拠点都市て、長野大学の学生という若い世代の新住民と、長野大学が位置する上田市下之郷地区において住民の主要な構成要素である65歳以上の老人の組織「双葉会」との交流活動が行われたが、そこにおいて、同NPO団体が発行する地域通貨「イクタル」の導入実験が行われた。1.高齢者、地域住民、学生に対するニーズ調査が行われ、その結果に基づいて交流活動および定期的な「御用聞き訪問」、夏野菜の提供による野菜市、脳いきいきテストなどが「イクタル」を媒介として行われた。2.3年間の実験を通して、地域通貨イクタルの周知度、地域通貨の流通量が増大し、これまで交流のなかった異世代間の交流が促進された。交流活動や脳いきいきテスト、かなひろいなどを通じて、高齢者の引き込むりを予防し、助け合いを行うしくみが模索された。3.3年間の実験を終えて、高齢者が、継続的に若い世代と関わる場合の地域通貨のあり方について、利用者調査から考察をいった。異なる社会層が助け合う地域コミニティの形成に、地域通貨の導入が好意的に受け入れられ、威力を発揮することが実証されるとともに、地域通貨システムの改善点や課題も抽出された。
著者
横山 詔一 笹原 宏之 黒田 信二郎 澤田 照一郎 野島 伸一 石岡 俊明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.110, pp.47-54, 2004-11-05

いつでも,どこでも,だれでも,社会的に必要な漢字を使える漢字ユビキタス環境を実現するため,行政文字情報交換の基準となる「文字情報集積体(文字情報データベース)」の開発を進めている。社会的に必要な漢字の範囲を決めるには,科学的根拠のほかに国民的合意の形成が欠かせない。国立国語研究所,情報処理学会,日本規格協会の3者連合体は,経済産業省から委託を受けて,総務省住民基本台帳統一文字と法務省戸籍統一文字の間に存在する微妙な字形差の統一や,文字属性情報の調査に基づく情報付与作業を行い,併せて大漢和辞典の一部などの電子化を通した研究を行ってきた。また,漢字ユビキタス環境の実現を狙うという方向性そのものが国民のニーズに合致しているのかを検討するため,国立国語研究所は独自に「漢字環境学」の視点を導入して,世論調査データの解析を行った。A comprehensive and Standardized database of kanji characters is critical to ubiquitous computing in Japan. A project team of three institute and associations, the National Institute for Japanese Language, Information Processing Society of Japan, and the Japanese Standards Association, is developing a character information database under contract with the Ministry of Economy, Trade and Industry. The database unifies the variations in the forms of kanji characters as well as includes linguistic information of the characters and the data from Daikanwa (大漢和辞典) kanji dictionary. Furthermore, the National Institute for Japanese Language has conducted a study on language policies regarding kanji characters in a framework called "kanji environment studies" in order to identify the opinions and the demands of language users in Japan.
著者
久野 春子 横山 仁
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.530-541, 2003-05-31
被引用文献数
1 1

大気汚染物質の光化学オキシダントが,24樹種の各個葉の純光合成速度,蒸散速度および気孔コンダクタンスに与える影響を調べて,都市近郊の大気環境下における樹木の生理的特性をみた。1989年4月から10月初旬まで,東京都立川市内に設置された浄化空気室(FAC区)と非浄化空気室(n-FAC区)内で,落葉広葉樹12種,落葉針葉樹1種および常緑広葉樹H種を1/2,000aワグネルポットで育成した。清浄な空気のFAC区において,純光合成速度,蒸散速度および気孔コンダクタンスが高い値を示していた落葉樹は,n-FAC区で大気汚染物質の影響を受け,特に純光合成速度が著しく低下した。対照的に多くの常緑広葉樹は,FAC区において純光合成速度,蒸散速度および気孔コンダクタンスの値が低く,n-FAC区で大気汚染物質による影響はあまりみられない傾向があった。オキシダントによる純光合成速度の低下率を基準にして,大気汚染耐性の強弱をみると,落葉樹のトウカエデ,イチョウおよび常緑樹のサカキ,ヤマモモ,マテバシイは耐性の強い種とみなされた。一方,長期間大気汚染に曝されても,蒸散速度と気孔コンダクタンスが他の樹種よりも高い値を示した落葉広葉樹のポプラ,エゴノキ,ムクノキ,ケヤキ,ハナミズキ,ヤシャブシ,ガマズミ,ミズキそして常緑広葉樹のサンゴジュとシャリンバイは大気汚染物質を吸着する能力が比較的高い樹種であると推定された。