- 著者
-
武田 憲昭
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.116, no.11, pp.1185-1191, 2013-11-20 (Released:2014-01-16)
- 参考文献数
- 33
- 被引用文献数
-
1
本稿では, 以下の難治性めまいへの対応について解説した. 1) 回転性めまいを繰り返す難治性めまい: 保存的治療が無効の難治性メニエール病確実例は, ガイドラインに基づいて中耳加圧治療, 内リンパ嚢開放術, 選択的前庭機能破壊術に進む. 蝸牛症状を伴わず回転性めまいを繰り返す難治性めまいの病態には, 内リンパ水腫, 循環障害, 神経血管圧迫が含まれる. 発作性の回転性めまいを繰り返す場合は, 内リンパ水腫が病態のメニエール病非定型例 (前庭型) の可能性が高い. 一過性の回転性めまいを繰り返す場合は, 脳幹・内耳循環障害が病態の可能性が高く, hemodynamic VBIや片頭痛関連めまいと類似した病態である. 神経血管圧迫によるめまいは, 瞬間的な回転性めまいを群発する. 病態に応じた治療を行う. 2) 頭位めまいを繰り返す難治性めまい: BPPVは予後良好であるが, 再発を繰り返す難治性BPPV患者も存在する. 特発性BPPVは, 同じ頭位で寝ていると再発しやすいため, 避けるように指導する. 二次性BPPV, 特に外傷性BPPVやメニエール病に続発するBPPVも再発しやすい. 3) 単発性回転性めまいの後, 浮動性めまいが持続する難治性めまい: 前庭神経炎などによる回転性めまいが改善した後, 浮動性めまいが持続する難治性めまい患者が存在する. 前庭代償が不十分な場合, 体動に伴い浮動性めまいが誘発されるためである. 発症早期にステロイド治療を行うと前庭障害が改善し, 浮動性めまいの持続を予防できる可能性がある. 平衡訓練は前庭代償を促進するが, 長期間の訓練が必要である. 4) 所見のない難治性めまい患者や治療に抵抗する難治性めまい: このような難治性めまい患者には, 前庭障害のない狭義の心因性めまいが含まれており, 不安神経症や抑うつ神経症を合併していることが多い. 一方, 日常診療では, 前庭障害によりめまいが発症し, 不安神経症や抑うつ神経症によりめまいが増強されている患者の方が多い. 抗うつ薬が著効する場合がある.