著者
山本 晴彦 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.163-170, 1998-03-31
被引用文献数
2

近年の凶作年および豊作年の気象的特徴、水稲収量を比較するとともに、水稲の豊凶作を夏季平均気温の気温偏差から解析を試みた。1993年の夏の1980年以来の異常低温であり、福岡市では夏季平均気温の気温偏差-1.4℃、暑冷指数-36日の大冷夏年で、福岡県の水稲単収は363kg、作況指数74の大凶作年であった。1994年の夏は記録的な猛暑で、福岡市では夏季平均気温の気温偏差+1.8℃、暑冷指数56日で高温・少雨年であった。福岡県の水稲単収は過去最高の545kg、作況指数111の大豊作年であったが、潅漑用水の不足した地域では生育遅延、稔実障害などが発生し、高温年にもかかわらず単収が大きく低下した。福岡管区気象台管内の気象官署を対象とした夏季の平年気温の偏差と水稲の平均収量との比率との関係から、とくに冷夏年で夏季の気温偏差が著しいマイナスを示す年は水稲収量平年比が大きく低下した。
著者
成田 伸 齋藤 良子 小川 朋子 角川 志穂 段ノ上 秀雄 野々山 未希子 鈴木 幸子 野々山 未希子 工藤 里香 水流 聡子
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本科研の避妊・性感染症予防カウンセラー育成プログラムを受講した助産師の実践評価を目的に、プログラムに参加しその後病院で産後の女性へのケアを行ってきた助産師 9 名を対象にグループインタビューを行い分析した結果、産後入院期間が短く、避妊に関しては集団で簡単に話すのみで、性感染症の話題はない等の現状が明らかになった。今後は、これらの対象者により近い場で活動している薬局の薬剤師との連携等、情報アクセスで新たな展開が必要と明らかとなった。
著者
鈴木 慎一朗 奥 忍
出版者
岡山大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岡山大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13463705)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-67, 2005

本稿の目的は、黒澤隆朝・小川一朗編『標準師範学校音楽教科書』(1938)の歌曲を概観することによって、国定師範学校教科書が発行される直後の検定済教科書における歌曲の特徴と傾向を明らかにすることである。『師範音楽 本科用巻一』(1943)との比較を通して、以下の3点が明らかとなった。①『標準師範学校音楽教科書』は、歌曲の他、器楽、鑑賞、音楽理論、音楽基礎の分野を含み、編纂された教科書である。②8割近くの歌曲は、西洋の作品ないしは西洋の民謡であり、それらの歌詞は原曲の翻案か、新しく作られた日本語の詩である。③ミリタリズム志向の歌曲教材には、4/4拍子、 、弱起、長調の行進曲が適用されている。The purpose of this study is to examine the characteristics of songs in "Hyojun Shihan Gako Ongaku Kyokasho (Music Standard Textbook for normal schools)"(1938) authorized by the Ministry of Education normal schools. The following results were obtained by comparing with "Shihan Ongaku"(1943) designated by the goverment: 1) "Hyojun Shihan Gako Ongaku Kyokasho" was a textbook which contains songs materials, instrumental music, listening, music theory, and sight singing. 2) About 80 percent of the song materials were occupied by Western folk songs and songs composed by the European composers. However, lyrics of these songs were adapted from the originals or newly written in Japanese. 3) Regarding military-oriented materials, Western marches with 4/4, doted rhythm, beginning in up-beat, and in major key were adopted.
著者
鈴木 唯史 米倉 達広
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-03-06

仮想現実の実現において視覚的要素の果たす役割は大きく、中でも我々は仮想空間の中の点光源とその反射光が、人間の立体感の知覚の手がかりとなり得ることを確認した。[1] このことをリアルタイムCGに応用することは現実感の向上をもたらすものとして期待ができる。そこで本稿では、仮想空間の中で扱う対象を線香花火としそれを実現するシステムを開発したので報告する。
著者
額尓 徳尼 堀田 紀文 鈴木 雅一
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.338-350, 2009 (Released:2010-07-27)
参考文献数
54
被引用文献数
2 1

内蒙古自治区全域における砂漠化と緑化事業がもたらした植生変化の実態を把握するために,NOAA/AVHRR の衛星リモートセンシングデータから求めたNDVI(正規化植生指数)を用いた検討を行った。まず,文献から植生変化の実態が明らかな地域において,NDVI の変化と植生変化について比較し,1982~1999 年までの約18 年間における植生の変動を調べた。植生変化が少ない地域でのNDVI の変動から,植生増減を判断するNDVI 変化の閾値を検討し,1982~1986 年と1995~1999 年の夏季NDVI の差を ΔNDVI とし,植生の増減を8km 分解能のピクセル毎に求めた。そして,ΔNDVI により植生が変化した地域を抽出して図化した。その結果,内蒙古自治区全体としては,NDVI が増加した地域の割合が減少した地域の割合を大きく上回り,植生増加の傾向が示された。赤峰市(特に敖漢旗)の植生増加が顕著であり,次いでシリンゴル盟,フフホト市,バヤンヌール市の一部にまとまったNDVI 増加が示され,内蒙古全域においてNDVI が増加した面積が約20 万km2 程度見られた。北半球の高緯度地域では温暖化によるNDVI の増加が報告されているが,行政区毎に求めたNDVI が増加した地域の面積と,統計資料に基づいて集計した造林面積と耕地化された面積の合計に良好な比例関係が見られ,内蒙古自治区における夏季のNDVI 増加は主に緑化と農耕地の拡大という人為的な要因による植生増加である。一方で,NDVI 減少が抽出された内蒙古自治区西部(アラシャ盟),東北ホルチン砂地周辺などでは,もともと植生が乏しい地域であり,これらの地域では砂漠化による植生減少が指摘された。
著者
鈴木 和博 南 雅代 加藤 丈典
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

・電子プローブマイクロアナライザを高性能・高機能化して分析値の精度と確度を高めた.・トリウムやウランを含む鉱物のコンコーダントな分析値を選別する化学的基準を確立して、CHIME年代の確度を高くした.・氷上花簡岩、領家帯ミグマタイト、肥後変成岩、韓国京畿地塊の準片麻岩、中国南東部の花商岩類、中国吉林省の東清花簡岩のCHIME年代を再検討して、地質学的推定年代や同位体年代との矛盾を解明した.矛盾の原因は肥後変成岩と東清花商岩では同位体年代、氷上花商岩と京畿地塊では地質学的解釈、領家帯ミグマタイトと中国南東部花商岩ではCHIME年代にあった.
著者
鈴木 健治 高橋 卓 岡本 英二 井家上 哲史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.95, no.514, pp.1-6, 1996-02-16
被引用文献数
5

3日5周回で回帰する準回帰軌道をとる楕円軌道の周回衛星となったETS-Uの各種回線を用いた通信実験を行うためには,時々刻々変化する距離変化率に伴うドップラーシフトを補償する必要が生じた.そこで,軌道要素から計算したドップラーシフト量の補正を加えるオープンループ制御と,パイロット信号を毎分観測して補正を加えるクローズドノレ-プ制御を併用した周回衛星好Cシステムを開発した.これにより士100Hz以内に制御でき各種通信実験が可能となった.
著者
樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-39, 2003-02-20

背景.野口の分類A,B型の微小肺腺癌の予後は良好であり,この型の肺癌に悪性胸水を認めたとする報告はない.症例.42歳,女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され当院受診.胸部CTにて左S^<1+2>に径4mm大のGGO(ground glass opacity)を認めた.全身検索では他病巣を認めなかった.2000年8月11日,術直前にCTガイド下に腫瘍近傍にマーキングを行った後,左上大区区域切除術(ND0)を施行した.この際,胸腔内に漿液性の胸水を少量認め,細胞診にてclass V (高分化型腺癌)と診断された.主病巣はlocalized bronchioloalveolar carcinoma (野口の分類A型)と診断された.術後補助化学療法を施行し,1年9ヶ月経過した現在,局所再発・遠隔転移の兆候なく生存中である.野口A,B型では悪性胸水を認めたとする報告はなく,本症例ではその発生機序に疑問が残る.検体の再評価では上皮性マーカーに陽性であり,悪性所見は否定できなかった.結論.整合性のない病理所見に対しては検体の再評価を行い,臨床経過も考慮して総合的に診断する必要があると思われた.(肺癌.2003 ; 43 : 35-39)
著者
南 優子 鈴木 貴 角川 陽一郎 大内 憲明 立野 紘雄 多田 寛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

閉経後乳癌62名の血中・乳腺組織中ホルモン濃度と乳がんリスク要因との関連を解析した。ホルモンレセプター陽性の場合、エストラジオール(E2)の組織中濃度は血中濃度の43.7倍、陰性では14.5倍。また、ホルモンレセプター陽性では「授乳歴あり」で組織中E2濃度が高くなる傾向が認められた(p=0.01)。これらよりホルモンレセプター陽性乳癌組織内ではE2が生合成または血中から集積され、その機序に授乳歴が関与している可能性が示唆された。
著者
大政 正武 鈴木 和夫 福田 正樹 柴田 久夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの3種のイグチ類の菌根性きのこの培養菌糸体からプロトプラストの調製方法を開発した。2. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチのプロトプラストの培養方法を開発した.この際通常プロトプラストの培養に使われる寒天が良くないことを明らかにし、その代わりにゲランガムが良いことを示した。3. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの培養に対する培地成分、培養温度など各種条件の影響を合成培地を用いて明らかにした。4. ハナイグチを中心にイグチ類の遺伝資源を26株収集した。5. ハナイグチの11系統のミトコンドリアDNAのRFLP分析によりこれらが3つのグループに分けられることを明らかにした。これはミトコンドリアDNAの大きさの違いによる分類とも一致した。6. ヌメリイグチのプロトプラスト再生株に形態変異や酸化酵素活性の変異が表われ、これらの間に関連性があることを明らかにした。7. ヌメリイグチの細胞学的な性質を明らかにした。8. 以上の知見から、プロトプラストや交配を用いることによりヌメリイグチの育種が可能なことが明らかになった。9. アカマツの無菌的に育成した実生に、ヌメリイグチ、ハナイグチの菌根を合成することに成功した。10. イグチ類のキアミアシイグチから、新しいマクロライドフェノール性物質を抽出し構造決定した.又、菌根菌のケロウジからはこれまでにない新しいタイプの抗細菌性物質を抽出し、構造を決定した。
著者
木村 清志 中村 行延 有瀧 真人 木村 文子 森 浩一郎 鈴木 清 Kimura Seishi Nakamura Yukinobu Aritaki Masato Kimura Fumiko Mori Koichiro Suzuki Kiyoshi
出版者
三重大学水産学部
雑誌
三重大学水産学部研究報告 (ISSN:02875772)
巻号頁・発行日
no.10, pp.p71-93, 1983-10
被引用文献数
3

1980年4月から1982年5月までの期間に,三重県英虞湾湾口部のアマモ場で,ビームトロールにより魚類の採集を行い,このアマモ場の魚類相とその季節的変化について,次のような結果を得た。1. 採集された魚類は13目53料117種27,293個体であった。個体数はゴンズイ,ギンポ,アミメハギ,ハオコゼ,ヨウジウオ,アナハゼの順に多く,この6種で全体の8割程度を占める。 2.各魚種の出現状態から,これらを周年定住種,季節的定住種、偶発種に分け,さらにいくつかのグループ,サブグループに細分した。 3. 種数は夏から秋に増加し,冬に減少する。4. 個体数のピークは5,6月,8月,10,11月,1,2月の年4回みられ,これらほスジハゼ,アミメハギ,ハオコゼ,アナハゼ,アサヒアナハゼ,ゴンズイ,ギンポ,サビハゼ,カワハギなどの変動に起因している。 5. このアマモ場の魚類相は,ヨウジウオ,ハオコゼ,アミメハギの周年にわたる出現,冬から春のギンポ,アナハゼ,6月のサビハゼ,8月のゴンズイの大量出現,夏から秋にかけてのベラ料やヒメジ科魚類の多種にわたる出現によって特徴づけられる。このような魚類相は暖流外海性の特徴で,黒潮沿岸各地のアマモ場の魚類相と共通性が高い。しかし,一方でほそれぞれのアマモ場の魚類相には特異性もみられる。 6. ギンポの大量出現ほ伊勢湾周辺のアマモ場の特徴である。 7. 英虞湾湾口部のアマモ場では有用椎幼魚の出現比率が低い。したがって魚類生産に関する限り,このアマモ場の水産的価値は小さいと判断される。Fish fauna of the Zostera bed at the mouth of Ago Bay, Mie Prefecture were studied by monthly samplings with a small beam trawl from April 1980 to March 1981 and from June 1981 to May 1982. The results obtained are summarized as follows : 1 ) 27,293 individuals (13 orders, 53 families, 117 species ) were collected in the Zostera bed. Plotosus lineatus, Enedrias nebulosus, Rudarius ercodes, Hypodytes rubripinnis, Syngnathus schlegeli,and Pseudoblennius percoides were dominant species. About 80 percent of the specimens collected belonged to these six species. 2 ) Each species of fish collected was divided into three categories, i. e. residents, seasonal residents, and casual species. Residents and seasonal residents were subdivided into a few of groups and subgroups as follows : (I) Residents ; fishes appearing in the Zostera bed all the year round. Group A ; fishes residing during the major part of their life cycle, and using the Zostera bed as their nursery, feeding and spawning grounds. Group B ; fishes inhabiting mainly during juvenile stage, and using the Zostera bed principally as a nursery ground. Group C ; fishes inhabiting chiefly during adult and subadult stages, and using the Zostera bed primarily as a feeding ground. Group D ; fishes universally distributed in the bay and commonly appearing in the Zostera bed. Group E ; fishes which may reside during all seasons in a very small number in the Zostera bed. (II) Seasonal residents ; fishes which spend a certain definite season in the Zostera bed. Group F ; fishes residing during juvenile and young stages and using the Zostera bed only as a nursery ground. Subgroup a ; fishes which spend a long perid of time ( more than four months) in the Zostera bed. Subgroup b ; fishes which spend a short period of time ( less than three months) in the Zostera bed. Group G ; fishes residing from juvenile to adult or subadult stages. Subgroup c ; fishes which inhabit the Zostera bed in a large number, and which use the Zostera bed as nursery, feeding, and spawning grounds. Subgroup d ; fishes which reside in the Zostera bed principally as a nursery ground. (III) Casual species ; fishes appearing casually in the Zostera bed. 3 ) Number of species increased from summer to autumn by recruitment of juveniles belonging to seasonal residents and casual species, and then decreased in winter. 4 ) Total number of individuals increased in May or June, August, October or November, and January or February. This fluctuation was caused by seasonal changes of populations of the following nine species ; Acentrogobius pflaumi, Rudarius ercodes, Hypodytes rubripinnis, Pseudoblennius percoides, P. cottoides, Plotosus lineatus, Enedrias nebulosus, Sagamia geneionema, and Stephanolepis cirrhifer. 5 ) The fish fauna of the Zostera bed at the mouth of Ago Bay was chracterized by the following : ( 1 ) Syngnathus schlegeli, Hypodytes rubripinnis, and Rudarius ercodes residing all year round. ( 2 ) Appearance in great number of Enedrias nebulosus and Pseudoblennius percoides from winter to spring, of Sagamia geneionema in June, and of Plotosus lineatus in August. ( 3 ) Subsistence of many species of fishes belonging to Labridae and Mullidae from summer to autumn. 6 ) Appearance of Enedrias nebulosus in large number was a peculiar feature of the fish fauna of the Zostera bed in and around Ise Bay, central Japan. 7 ) As far as the fish production in concerned, the Zostera bed at the mouth of Ago Bay had little significance for inshore fishery because there the juveniles of useful fishes were very few.
著者
鈴木 健司
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.198-134, 2008-09-29

本稿は「宮沢賢治文学における地学的想像力」というテーマの下に企図された、連作論文の一つである。これまで、(一)「基礎編・珪化木(I)及び瑪瑙」(「文学部紀要」文教大学文学部第21-2号)、(二)「基礎編・珪化木(II)」(「言語と文化」第20号、文教大学言語文化研究所)、(三)「基礎編・<まごい淵>と<豊沢川の石>」(「注文の多い土佐料理店」第12号、高知大学宮沢賢治研究会)を発表している。本稿では、前半の四-一で、「地学的想像力」を、国内産蛋白石(オパール)との関連において追及する。特に童話「楢ノ木大学士の野宿」の成立に関し、明治末から大正初めにかけ「東京宝石株式会社」として良質のオパールを産出していたオパール鉱山(福島県宝坂)の存在に注目し、作品生成の契機となった可能性の立証を試みる。後半の四-二では、「地学的想像力」を外国産蛋白石(オパール)との関連において追究する。童話「貝の火」における<貝の火>とは何か。さらには、童話「銀河鉄道の夜」における<鳥捕り>と「貝の火」の主人公ホモイとの連関性を、ジャータカとの視点から分析し、賢治文学において、地学的想像力と仏教思想とが深く関わりあっている事実を立証する。
著者
山本 道雄 森 匡史 嘉指 信雄 松田 毅 喜多 伸一 鈴木 泉 山本 道雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では認識における超越論的立場と自然主義的立場との対立を、概念史的・問題史的方怯によって研究した。とりあげた哲学者は主として、スピノザ、カント、フッサール、ジェイムズ、ドゥルーズである。スピノザについては、自然主義的と解釈される彼の哲学における超越論的契機が、「原因」概念を中心に考察されている。カントについてはその超越論哲学の可能性が予定調和説という形而上学原理に依っていて、この形而上学的原理を避けるには自然主義的還元か、あるいは演繹論の意味論的転回をとる他ないことが論じられている。フッサールについては、最近の志向性概念の自然主義化の試みに対して、その「還元主義の誤謬」がD.W.スミスの議論を手がかりに批判的に論究され、志向性を自然主義的還元から守るために、それが因果的依存性と区別されるという主張に着目されている。ジェイムズに関しては、「非超越論的現象学」としてのジェイムズ根本的経験論とフッサール現象学との類似性および差異性を明らかにすることによって、「非超越論的」哲学の一つの可能性が、最近の研究成果をふまえながら探求されている。ドゥルーズについては現代フランス哲学における超越論的原理の考察という目的の下に、ドゥルーズにおける超越論的経験論の解明が試みられている。さらにこれらの研究に加え、実験科学である心理学の分野から、人間の記憶の再生と再認を比較に関する研究成果が寄与されている。この比較のために新しい方法が考案され、この方法によって、再認成績の方が再生成績よりもすぐれているという結果が判明した。この結果から、検索空間が同一であっても,検索の手がかりの差さえあれば,再認の方が再生よりも好成績となること知見が獲得された。
著者
鈴木 郁真 池内 康樹 津邑公暁 中島 康彦 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.46, no.16, pp.129-143, 2005-12-15
被引用文献数
5

遺伝的アルゴリズムにおいて最も処理時間を要する適合度計算に対し,再利用を適用することで高速化する手法を提案し,再利用の有効性を示す.適合度計算の入力となる遺伝子が,前世代で処理された遺伝子と多くの共通部分を持つことから,適合度関数を分割することで再利用の効果を引き出す手法について述べる.GENEsYs を用いて評価した結果,2 点交叉で最大83%,平均27%のサイクル数を削減できた.さらに,関数分割などの改良を施すことにより,最大86%,平均38%までこれが向上した.特に適合度計算に要する時間が長い適合度関数について,再利用の効果がより大きくなることが分かった.This paper describes a speedup technique with computational reuse for the fitness calculation of GA programs. A genotype has many genes in common with its parental genotypes. Therefore, partial results of fitness calculation are reusable. Through the result of an evaluation with GENEsYs, a well-known GA software, we show that the maximum ratio of the cycle reduction reaches 83%, while accomplishing average reduction of 27% with 2-point crossover. Futhermore, dividing fitness procedures raises the maximum ratio to 86% and average ratio to 38%.