著者
山下 暁美
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

日系ブラジル人就労者日本語上級話者のインタビューの収録結果を、好井裕明ほか(1999)と、BTSJ(宇佐美まゆみ、2007)によって文字化した。ただし、BTSJについては現在まだ分析中である。1.あいづちを、(1)感声的(エー・ソウ)(2)概念的(ホント・ナルホド)(3)あいづち的(アー・ウン・エーソウデスネ)(4)繰り返し、言い換え(5)先取り(6)その他の6分類で分類してみると、日系ブラジル人上級日本語話者のあいづちは「感性的」なあいづちが、母語話者にくらべて倍近くに増える。ただし、あいづちの回数は母語話者にくらべて少ない。なかでもfハイ」「ソウ」「フーン」「エー」がよく用いられる。「あいづち的」は、「アー」系に集中する。「概念的」あいづちは用いられなかった。「言い換え、繰り返し」は、聞き取れないとき、用いられる傾向があり、母語話者と内容がやや異なる。以上から、談話中の聞き役としての役割が十分に機能せず、主張ばかりの話し手という印象が強くなる可能性があるといえる。2.敬語は「デス」「マス」以外の表現が用いられない。初対面で日本語能力があっても、「デス」「マス」なしの頻度が高い。3.特定の表現の頻度が高い。例えば、強調は「すごい」、思い返しのポーズは「やっぱり」、説明したい気持ちは「ですよ」、「ますよ」、あいづちは「ア」系、仲間語「〜ちゃうのね」「〜じゃないですか」、古めかしい言い方「商売(ビジネス)」、「やる(する)」「おやっさん」、崩した言い方「どっか」、「来てた」、「ちっちゃい」、付け加え「〜あと」、理由「どうしてかていうと」などで、表現が限定されパターン化している、などの特徴が認められるが、まだ分析は数値化されていない段階である。以上のような結果が明らかになり、目本語母語話者と日本で社会生活を営む上で、日系ブラジル人上級話者は、さらにコミュニケーション能力を高める必要があると考えられる。特に、聞き手の立場の表現、仲間語と公的な場面での表現の使い分け等に重点をおいて教材を開発する必要がある。
著者
南 保輔
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

インタビューで収集された語りデータに基づいて、社会科学はなにをどこまで主張しうるのだろうか。これを根源的な問いとして研究を進めてきた。とりわけ、ひとの「変化」をどのようにとらえうるのかが関心であった。「いまここ」におけるインタビューやおしゃべりにおける談話が、過去の経験や思い出、その・それにともなう「変化」とどのような関係にあるのか。女性3人組に昔の写真を見ながら「思い出」おしゃべりをしてもらい、それを録画してミクロ相互作用分析するということを行った。20歳代2組、30歳代から60歳代までそれぞれ1組ずつの6組のセッションを行った。その結果、容貌などが「変わった」という発言は散見されたが、あるひとの「内面的」なものが変わったという発言はほとんど聞かれなかった。状況設定上の制約であろうという示唆が協力者から得られた。2度の学会発表を通じて研究成果を報告し、フィードバックを得ることができた。テレビのトーク番組を素材とするミクロ相互作用分析も行った。NHK総合の『スタジオパークからこんにちは』と『徹子の部屋』で、同じゲストが数ケ月の間隔で出演した番組を取り上げた。「同じ」話題の語られ方に違いが見られ、その「構築性」を感じることができたが、差異よりも類似性のほうが大きかった。「オリジナルなイベント」とその「語り」との関係については、「真」や「偽」といった二分法的な真理値というとらえかたが不適切であることが示唆された。この結果は紀要論文としてまとめ発表した。ビデオカメラを複数台使用してのミクロ相互作用分析の方法についても実績を蓄積し、方法的な検討も行った。技術と機器の進歩にともない、同期がやっかいな複数台使用ではなく、ハイビジョンカメラ1台での録画が便利で有効であることが判明した。(752字)
著者
吉田 毅
出版者
常葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

後天的身体障害者がスポーツへの社会化を遂げていくプロセスで寄与する他者について、車椅子バスケットボール男女競技者および車椅子バスケットボールと車椅子マラソンの男子競技者の差異に着目し、インタビューで得た語りに基づき具象的レベルで解明することを試みた。ここで導出された他者は主に、スポーツに参加できる状態になるまでは、気を許せる他者、かけがえのない他者、癒す他者であった。その後スポーツに励むようになるまでは、スポーツ活動へ誘う他者と導く他者、それにスポーツ活動のサポート役というべき仲間であった。このうち誘う他者は、車椅子バスケットボール女子と車椅子マラソンでは数少なく上記のような差異が認められた。
著者
政岡 伸洋 岡田 浩樹 小谷 竜介 加藤 幸治 蘇理 剛志 沼田 愛 遠藤 健悟 大沼 知
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、民俗学の立場から、以前の暮らしや他地域の事例も視野に入れつつ、東日本大震災の被災地で起こるさまざまな現象を調査検討し、新たな理解と課題を提示するものである。今回得られた知見として、①震災後の早い段階から民俗行事が行われ注目されたが、これは混乱の中での必要性から、震災前の民俗を活用し、新たに創出されたものであったこと。②暮らしの再建という点からみれば、4年経った被災地の現状は、やっと出発点に立った段階であり、今後もその動きを注視していく必要があること。③被災体験の継承については、災害のみならず地域の歴史や暮らし全体に関心を持つ地元研究者の育成が必要である点などが明らかとなった。
著者
長瀬 文昭 田中 靖郎 石田 学 高橋 忠幸 満田 和久 井上 一 宇野 伸一郎 HOLT S. 伊藤 真之 SERLEMITSOS P. 松岡 勝 北本 俊二 WHITE N.E. 林田 清 MADJSKI G. 田原 譲 CANIZARES C. 大橋 隆哉 MUSHOTZKY R. 紀伊 恒男 PETER R. 国枝 秀世 山内 茂雄 堂谷 忠靖 村上 敏夫 常深 博 牧島 一夫 小山 勝二 山下 広順 三原 建弘 小川原 嘉明 吉田 篤正 槙野 文命 HUGHES J. 宮田 恵美 鶴 剛 粟木 久光 石崎 欣尚 藤本 龍一 上田 佳宏 根来 均 田代 信 河合 誠之 RICKER G. HELFAND D. MCCAMMON D.
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

「あすか」は、日米共同で製作されたX線天文衛星であり、1993年2月に打ち上げられた。そして、その後の観測運用も両国の緊密な協力によって遂行されている。これまで衛星は順調に運用され、装置は正常に稼し、所期の性能を発揮しており、試験観測・公募観測とも順調に行われてきた。本研究の目的はこの衛星の観測・運営を日米協力の下で行い、中性子星やブラックホールを含むX線連星や、超新星残骸、活動的銀河核、銀河団等からのX線放射、宇宙X線背景放射等の研究を行うことであった。この目的に沿って研究を進め次の各項目に述べる成果を挙げた。(1) 専門科学者グループの会合を定期的に開催し、観測計画の評価・ターゲットの選択、衛星の運用、適切な検出器較正等の衛星観測運営上の基本方針について討議をおこなった。(2) X線望遠鏡および各測定装置の精密な較正を行うとともに、各検出器の諸特性・応答関数の時間変化を明らかにし、すべての観測に対し正確な解析を可能とした。(3) データ解析ソフトウエアーの改良・拡充、科学データの編集、管理を両国研究者が協力し且つ継続的におこなった。(4) 観測から得られたデータを共同で解析、討議を行って、その科学的成果をまとめた。さらにこれらの得られた成果を各種国際学会・研究集会において発表し、また学術専門誌に公表した。(5) 観測者の占有期間を過ぎたデータを統一的に編集・管理し、またその観測記録を整備して、これらの観測記録、アーカイブデータを広く公開し、世界中の研究者の使用の便に供した。特に、「あすか」によるX線観測では、その高感度、高帯域、高分光撮像特性により、宇宙論研究に重大な寄与をするX線背景放射の解明、遠方のクエーサーや原始銀河からのX線放射の発見、銀河団の進化および暗黒物質の解明、活動銀河核、ブラックホール天体、ジェット天体、強磁場中性子星等の特異天体の解明、激変星、高温白色わい星、超新星残骸等における高温プラズマ状態の研究等において重要な成果を得ることが出来た。これら「あすか」の成果は国際的にも高く評価されている。以上、本研究課題に対する科学研究費補助金により、国際協力の下での「あすか」衛星の観測・運営が円滑に行われ、また十分な科学的成果を挙げることが出来た。
著者
柳本 哲 渡邉 伸樹 大竹 博巳 深尾 武史 谷口 和成 安藤 茂樹 河崎 哲嗣 佐伯 昭彦 池田 敏和 松嵜 昭雄
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本で初めての中高生を対象とした数学的モデリング・チャレンジのプログラムを京都で開催し,その教育的効果を検証するとともに,実施上の問題点について考察した。1回目は2013年2月に中学3年生8名が,2回目は2014年2月に高校1年生21名が,3回目は2015年2月に中高生33名が,それぞれ参加し,ボブスレー問題や電力会社収支問題などの現実問題に数学を使って挑戦した。その結果,参加した生徒は数学の有用性を再認識するとともに数学を使った問題解決に挑む楽しさを感じ取っていた。そして,このプログラム実施によって,周辺の数学科教員に数学的モデリング教材についてより明確に認知してもらうことにも繋がった。
著者
水野 智博
出版者
名城大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

1.腹膜透析液暴露による膜補体制御因子の発現変化・申請者は、腹膜における膜補体制御因子の破綻によって、組織障害が惹起され、高浸透圧下、低pH下では、さらに増悪することも明らかにしてきた。この結果から、腹膜透析液の暴露が補体制御能を低下させていると考え、本研究を着想した。本年度の成果として、中皮細胞表面に発現する膜補体制御因子を、フローサイトメトリー法を用いて解析することに成功し、高浸透圧かつ低pHの腹膜透析液暴露により、細胞表面の補体制御因子発現が低下していることを見出した。以上の結果から、腹膜透析液暴露により補体制御能が低下していることが示され、臨床応用に向けた重要な成果となった。2.補体制御機構の破綻を介した腹膜障害に対する抗C5a療法の有用性・申請者は、膜補体制御因子の機能を抑制することで急性腹膜障害が惹起されることを報告している。本研究では、上記した急性腹膜障害に対して抗C5a療法が有用であるか検討を行った。C5aを不活化する低分子ペプチド(以下AcPepAとする)を0.33,0.67,1.33mg/bodyで経静脈内投与したところ、1.33mg/bodyの用量で組織障害が有意に抑制された。1.33mg/bodyの投与量を用いて、AcPepA投与から6,12,24時間後の組織変化を確認したところ、各時点での組織障害軽減作用が認められた。さらに、C5a受容体アンタゴニストとAcPepAを用いて、その作用を比較したところ、同等の組織障害軽減作用が認められた。以上の結果から、腹膜組織障害に対する抗C5a療法の有用性が示唆され、臨床応用に向けた重要な成果が得られた。これらの結果を取りまとめ、学術誌へ論文投稿中であり、日本透析医学会、補体シンポジウム、国際補体ワークショップにて学会発表も行った。
著者
武田 佐知子 池田 忍 脇田 晴子 太田 妙子 堤 一昭 井本 恭子 千葉 泉 福岡 まどか 三好 恵真子 宮原 暁 住村 欣範 深尾 葉子 生田 美智子 松村 耕光 藤元 優子 宮本 マラシー 竹村 景子 中本 香 藤原 克美 古谷 大輔 村澤 博人 鷲田 清一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の成果は大きく分けて二つある。一つは、従来のカタログ的な着衣研究ではなく、個別地域の具体的な文脈から引き離さず、着衣、身体、女性の関係を読み解くための共通の枠組を構築し、ローカルな視点とグローバルな視点の接合によって開ける多様性のなかの着衣研究の可能性を提示したことである。男性身体の周縁に位置づけられた女性身体の可変性、着衣による身体のイコン化と増殖現象、共同体による着衣身体の共有と変換、ジェンダー秩序のなかで受容される女性身体の意味とその操作、そして既存の共同体の集合的に実践や意識/無意識が、視覚表象と深く関わり相互交渉がなされていることを明らかにした。二つめは、日本では「着衣する身体の政治学」と題し、タイでは「着衣する身体と異性装-日・タイの比較-」と題した国際シンポジウムを開催し、単に抽象的、モデル的に着衣研究の事例を理解するのではなく、現場に即した肌に触れる知を通して、実践知と暗黙知を提示したことである。
著者
小崎 隆 舟川 晋也 伊ヶ崎 健大 大山 修一 杉原 創
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

サブサハラ・アフリカでの慢性的な食糧問題の解決には、作物の養分要求特性に土壌の養分供給特性を一致させる必要があり、その実現には時空間変動を考慮した養分動態モデルの構築が不可欠である。そこで、生態環境が異なるニジェール・タンザニア・カメルーンにおいて2~4年間の圃場試験を実施し、①土壌有機物動態モデルの構築、②土壌微生物の増殖・死滅に伴う可給態養分量の時間変動、③土壌侵食に伴う土壌有機物と可給態養分の水平方向の空間変動、④溶脱に伴う同垂直方向の空間変動を明らかにした。これらの結果に基づき、地域ごとの気候・土壌特性に特徴づけられた養分の時空間変動特性を考慮した新たな養分動態モデルを構築している。
著者
小路 淳 高須賀 明典 三田村 啓理
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

沿岸生態系における魚類群集の主要な捕食者―被捕食者を特定するための魚類群集調査と胃内容物解析を広域的に実施した.コアサイトとして季節別調査を実施した瀬戸内海と北海道では,季節に関係なく捕食者のバイオマスが夜間に増大することが明らかとなった.日中に比べて夜間に藻場を利用する大型魚食性魚類が増加することにより,小型魚類の被食リスクが高まる傾向が南北サイト,季節で共通して認められたことは,夜間の藻場において日中よりも捕食圧が高まることが普遍的なものであることを支持している.一連の結果から,沿岸域の食物網構造は,小さい時空間スケールで大きく変動する特性を備えていることが明らかとなった.
著者
浅井 清文 加藤 泰治
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1、ヒトGMFB、GMFGの特異的抗体の作製。大腸菌で発現させたヒトリコンビナントGMFB、GMFGを、ウサギに免疫しポリクロナール抗体を得た。さらに、GMFB、GMFGは相同性が高いため、通常のポリクローナル抗体では互いに交差反応を示した。そこでGMFB、GMFGを固定化したアフィニティーカラムを利用し特異的に反応する抗体だけを精製した。ウエスタンブロットで検討したところ、ヒトGMFB、GMFGに対しては、特異的に反応したが、ラットについては、反応しなかった。2、ラットGMFB、GMFGのcDNAのクローニング。ラットGMFB cDNAについては、すでに報告されている塩基配列をもとにRT-PCR法を用いてタンパク質をコードしている部分のみクローニングした。ラットGMFG cDNAについては、ヒトGMFG cDNAをプローブとして、ラットBrain cDNA Libraryをスクリーニング、クローニングした。ラットGMFG cDNAは、ヒトと同様142アミノ酸をコードしており、アミノ酸レベルで91.5%の相同性があった。3、ラットGMFB,GMFGリコンビナント蛋白の発現。ラットGMFB、GMFG cDNAを発現ベクターpAED4に組み込み、大腸菌BL21(DE3)に導入した。発現したタンパク質は、カラムクロマトグラフィーにて精製した。4、ラットGMFB、GMFGの特異的抗体の作製。大腸菌で発現させたラットリコンビナントGMFB,GMFGを、ウサギに免疫しポクローナル抗体を得た。ヒトの時と同様にして交差反応を示す抗体成分をアフィニティーカラムを利用し除去し、特異的に反応する抗体だけを精製した。ウエスタンブロットで検討したところ、ラットGMFB、GMFGに対して特異的に反応した。5、ユーザンブロット、ウェスタンブロットによる検討。ラット臓器におけるGMFB、GMFGの発現を検討するためにノーザンブロットおよびウェスタンブロットを行った。ノーザンブロットは、市販のMultiple Choice Tissue Northern Blotを購入し検討した。GMFBは、脳に特に多く、他の臓器にも一様に発現していた。一方、GMFGは、胸腺、脾臓、睾丸に多く発現していた。ウェスタンブロットには、妊娠ラットより、大脳皮質、脾臓、胸腺を採取し、蛋白を抽出し使用した。GMFGは、胸腺、脾臓に発現しており、ノーザンブロットの結果とほぼ一致した。
著者
沢田 有香
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

生徒の人間関係力を向上するねらいで,選択理論心理学を用いた教材を開発活用し,あらゆる機会を通じ,コミュニケーションスキルを向上させる支援を行い,その効果を検証した。2年生に実施した薬物乱用防止講座の中で,タバコを吸うか吸わないかは自己の欲求からの選択であるというプレゼンテーションを行った後,グループでタバコを吸わない宣言のキャッチコピーを作るワークを行った。この感想の内容をまとめてみたところ,これからの選択への責任,決意,達成感などが多く見られた。このことから,自分たちが作り出した喫煙防止キャッチコピーを自分たち自身のこれからの選択への宣言として取り入れるという効果がみられたと考察する。3年生に実施した思春期講座では,オリジナル教材として「人間関係を『ぴと』で考えると」を開発した。これは人間関係をより良くしていくための教材であり,友人関係や異性関係に役立つようにと考えたものである。人間関係の距離感を「ぴと」という単位で概念化した。いずれの距離においても役立つ人間関係の持ち方としてレクチャーした。この講座への生徒の評価は,おおむね良好なものであった。また,「Happy Cakeをつくろう!」というコミュニケーションワークを開発し,全校生徒の中から希望者に行った。このワークをすることで,相互の関係の距離感が縮まったり,自己の内的統制感が高まったりする効果も期待できるということが調査から若干みることができた。「心の授業」として過年度から実施していた2年生対象の選択理論心理学をレクチャーする授業では,高野和子氏とともにTTで行った。内容は,心の宝石箱「上質世界」を公開し共有するワーク,「基本的欲求」との関連づけ,そしてその中から自分自身の目標への「全行動」のプランニングのワークで構成した。これについての生徒の評価および内的統制感との関連は現在分析中であり,選択理論心理学研究に論文として投稿予定である。
著者
木村 琢麿 佐々木 隆志 善積 康夫 飯島 淳子 寺 洋平 堀田 佳文 佐々 木隆志 大塚 成男 善積 康夫 飯島 淳子 寺洋 平 堀田 佳文
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,公的セクターのガバナンスについて,法的観点を中心として,会計学や経営学の観点を交えながら,日仏ないし日米の制度を比較しつつ考察を行った。その成果として,フランス公法学の古典的学説を再評価し,現代のガバナンスに関する公法理論を再構築した。また,具体的な問題として港湾の管理を取り上げ,ガバナンスの視点から,現行の港湾法上の諸制度について立法論や解釈論を展開し,効率的で効果的な行財政のあり方を提示した。
著者
荒井 悠介
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

平成26年度は、ギャル・ギャル男を中心としたユース・サブカルチャーズ「イベサー」のメンバーとその引退者、彼らをとりまくメディアに対する調査・研究を行った。研究内容は以下の2点に集約される。1点目はユース・サブカルチャーズの普遍的な要素とその背景の社会に関して考察するもの。2点目は彼らを取り巻く近年の社会環境の変化に伴う彼ら自身の変化を考察するものである。1点目では、彼らは勤勉さと悪徳を併せ持った価値観及びそれに結びついたサブカルチャー資本を持ち、それを一般経済社会における社会的な成功に結びつく資本として捉え、実際に社会に出た後に活用し続けることを明らかにした。またこの知見を通じ、ある種のプロテスタント的美徳に加え、悪徳も現在の資本主義社会に分かちがたく結びついているということを考察し、以上の知見をそれぞれInternational Sociological Association、European Association for Japanese Studiesにて発表した。2点目では、近年発達したソーシャルネットワーキングサービスは、彼らにとって監視と、不良性が永続的に記録され拡散される可能性をもたらすものとして認識されており、将来に繋がるリスクのある不良性のある行動を忌避させることに繋がっていること。また、ポジティブな情報発信を行うことが、将来の成功に結びつくと捉えるようになっていることを明らかにした。そして彼らの活動と楽しみを、現実の空間に集まり不良行為を楽しむという「ギャザング」から、多くの人間に評価される楽しそうでポジティブなリアリティをシェアするという「シェアリング」へと変化させたということを明らかにし、The Japanese Studies Association in Southeast Asiaにてその知見を発表した。
著者
徳山 美知代 田辺 肇
出版者
静岡福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

里親と里子を対象としたアタッチメントに焦点をあてたプログラムを作成し、その有効性の検討を行った。4組の里親と里子を対象に測度と内省報告による検討を行った結果、里子の問題行動の減少と里親のストレス軽減などに肯定的な変化が見られた。さらに、里親のプログラムへの内省報告と里子の行動との関連を検討した結果、プログラムの要素である里親の敏感性の向上と、里子に対する安全感・安心感を高める働きかけによって、里子の里親を安全基地とした自律的な探索行動が促進されたこと、そういった肯定的な変化がアタッチメントに関連する問題行動の減少につながる可能性が示唆された。
著者
窪田 隆裕 渡辺 正仁 森 禎章 相馬 義郎 竹中 洋 相馬 義郎 竹中 洋
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

(1)蝸牛内リンパ腔電位(endocochlear potential, EP)の発生源は辺縁細胞の側基底膜のNa^+拡散電位である。(2)EPの変化は、主として内リンパ腔周囲細胞における種々のCa^<2+>チャネル(主としてL型Ca^<2+>チャネルやTRPCチャネル)から細胞内へのCa^<2+>流入によって引き起こされる細胞間タイト結合の電気抵抗の低下によるものである。(3)EP変化の一部は辺縁細胞内のCa^<2+>濃度の上昇による側基底膜のNa+拡散電位の低下によって引き起こされている。以上、EPの発生機序とその調節におけるCa^<2+>の役割に付いて研究成果を得た。
著者
新城 道彦
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の課題は、韓国併合で王公族を創設したことによって天皇制が変容していった過程を解明することである。そこで、①旧韓国皇室たる王公族をどのように日本に編入したのか、②王公族の法整備と歴史書の編纂はどのようになされたのか、を中心に調査を進めた。調査の結果、以下の点が明らかとなった。①韓国併合に際して東アジアにおける国際関係の伝統、すなわち冊封体制は否定され、李王は天皇に対して臣下の礼をとらなかった。②王公族が離婚・離縁した場合の戸籍の移動に関して、皇族の前例に準じた法律を制定して解決したため、共通法という帝国法制の基盤が破綻した。
著者
堀 勝彦 桑原 史郎 石澤 末三 土居 潤子 山田 克宣
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、経済環境の変化がもたらす技術革新(および経済成長)と企業退出への影響を分析することを目的として、企業の「市場への参入→生産活動と技術開発→市場からの退出」というライフサイクルを明示的に導入した経済成長モデルを構築した。この枠組みの下で、新技術を開発した企業の参入が直接既存企業の退出を意味する従来の見方では捉えることができない、より多様で複雑な技術開発と企業退出の関係を示すことができた。