著者
大西 淳児 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.3020-3028, 1997-11-25
被引用文献数
36

画像データの著作権保護のために, 権利者の署名を埋め込む電子透かしの研究が進められている. しかし, 画像データの高能率・高圧縮符号化のもとで署名が消失若しくは削除されない秘匿度の高い方法は少ない. そこで, この論文では, ウェーブレット変換の階層性とスペクトル拡散の高秘匿性を利用した簡便な一方法を提案する. まず, 対象画像を3〜4段の階層にウェーブレット分解し, スペクトル拡散により, 各段の直流成分に周波数領域で署名を埋め込む. この合成データを逆変換すれば, 署名情報を画像領域全体に秘匿拡散することができる. 拡散信号は非常に弱く, 画像信号に対して大きなノイズとならない. 従って, 署名を含んだ画像は見かけ上原画像とほぼ同一である. また, 署名情報は画像に加わるノイズに対しても強いという特徴をもつ. 一方, 拡散符号は暗号の乱数鍵と同様の働きをするため, 署名の改ざん等の攻撃にも強く, マルチメディアにおける画像の著作権保護のための強固な署名を隠し込むことが可能となる.
著者
松井 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.251, pp.75-83, 2010-10-20

アドホックネットワーク技術の研究は1970年代に米国国防関係で開始された.1997年にはIETF MANET WGで標準化活動が開始され,現在,標準化の一歩手前まできている.また,メッシュネットワークの標準化もIEEE802.11sで行われており,これについても,標準化が見えてきている.一方,アドホック/メッシュネットワークの実用化に向けての実証実験も行われている.主な,適用先は,イベント監視システム,災害対応システム,農地監視システムなどである.更に,実システムへの適用も始まっている.アドホックネットワークの実システム適用に向けた課題として,通信の信頼性向上や,マルチホップ時のスループット低下防止等が上げられるが,これらについても,無線品質を考慮したルーティング方式や,複数チャネル使用等の技術開発が進んでおり,解決のめどがたってきている.最近,アドホックネットワークの新たな適用先として,スマートメータや車車間通信等が注目されている.スマートメータについては,限られたリソースを前提に,500-1,000程度のメータからなる大規模アドホックネットワークを構築する必要がある.これについては,このような環境を想定した新たな標準を作るため,IETF ROLL WGが設立され,RPLというルーティング方式が議論されている.また,車車間通信については,エリアに向けたマルチホップ通信を行うGeoCastルーティングが必要であり,是についても,いくつかの提案がなされている.スマートメータや車車間通信では,500-1,000台規模のアドホックネットワークが構築する必要があり,隠れ端末問題が今まで以上に顕在化してくると考えられる.これについては,TDMA方式の導入が検討されているが,実用化に向けては,まだ,課題が多いと考えられる.
著者
松井 理直
出版者
大阪保健医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

関連性理論の中心的な概念である関連性の認知原理および関連性の伝達原理のうち、認知的関連性の数学的性質について研究を行った。その結果、回帰係数の特性を持った多値論理の枠組みが適切であり、情報の既定性と関連性が日常推論や日本語の様々な条件文の理解過程に重要な影響を与えていること、また各種認知バイアスが特に否定情報のフレームの大きさに強く影響されていることを明らかにした。また、この主観的確率の生成過程に関する数学的性質から、先入観や固定観念といった誤りの信念形成や、事実であっても信じられない現象について、その事実を排除してしまう数学的な性質の一部も解明できた。
著者
松井 邦彦 小島 淳 小川 久雄
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、日本人の急性心筋梗塞患者に関した前向き多施設共同研究である Japan Acute Coronary Syndrome Study (JACSS)のデータベースをもとに、1)データマイニングの手法や統計手法を用いて、治療法の選択を含めた判断の影響、その効果を評価する。さらに、2)予後予測モデルの作成を試みた上で、得られた結果について妥当性の検証を行った。急性心筋梗塞患者に対して、30 日後での死亡に関する侵襲的な再還流療法の効果についての評価を行ったところ、中程度のリスクと考えられた群に対して、もっとも効果は高かったと考えられた
著者
橋田 洋二 中島 欣也 関口 自然 松井 弘次
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.180-183, 1970
被引用文献数
1

オルト効果に関する知見を得る目的で, (1) 式のような構造を持つベンゼンジアゾニウム塩とR酸 (2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸) とのカップリング反応速度を測定した。<BR>X : オルト置換基 (H, CH<SUB>3</SUB>, OCH<SUB>3</SUB>, Cl, NO<SUB>2</SUB>)<BR>Y : 4あるいは5位の置換基 (H, CH<SUB>3</SUB>,OCH<SUB>3</SUB>, Cl, NO<SUB>2</SUB>)<BR>同じオルト置換基を有するおのおののジアゾニウム塩の携合において自由エネルギーの直線関係が認められるが, しかし Hamnett の反応定数 (ρ) は置換基 (X) の種類により, かなり変化する。<BR>テトラゾ化置換ベンジジン (2) の場合の速度定数の比 (<I>k</I>1/<I>k</I>2)(<I>k</I>1,<I>k</I>2 はそれぞれ第1段, 第2段反応の速度定数) の相違は, この反応定数の変化のためと考えられる。
著者
松井 有恒
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

口腔病原性細菌群に対する免疫応答評価ならびにバイオフィルム構築等の細菌の活動性を評価する際、円筒型のPDMS製チャンバー(Pore size100-200um)が最も効率良く細胞回収、評価ができることを確認した。本デバイスでは特に好中球の挙動観察に有利であった。チャンバー内部のバイオフィルムの形成状況を評価すべく、ホルマリン固定の上パラフィン包埋し評価を行ったところ、チャンバー内表面よりバイオフィルム様の構造を確認しそれらは24hの時点で4種の細菌を混合した系においては、コントロール群と比べ肥厚している傾向を呈した。定量化および安定した構造解析にはなんらかの内表面処理が必要なことが示唆された。
著者
松井 徳光 田畑 麻里子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヤマブシタケは小さめの粒度、シイタケは大きめの粒度で、生理活性やイソフラボン濃度、核酸濃度が高くなることが判明した。また、マウスを用い発酵黒大豆が安全であることを明らかにした。発酵することで新たな機能性が付加され、また、スエヒロタケにおいて抗酸化活性が著しく高値を示す味噌を作成することができた。さらに、アレルゲンタンパク質の低下も観察され、機能性を有する黒大豆味噌の試作に成功した。スエヒロタケで発酵させた発酵黒大豆中に、エクオールを検出することができた。つまり、腸内の乳酸菌でなければ作ることができないと考えられてきたエクオールを、担子菌発酵で製造することの可能性を示唆した。
著者
松井 利一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.889-898, 1996-05-25
被引用文献数
24 5

視覚系の基本現象(ボケと視野の相互依存作用)に着目して定式化した視覚モデルは, 提示画像の性質や提示条件に依存して変化する視覚系の視知覚応答特性を正確かつ定量的に再現する能力をもっている. しかし, 今の視覚モデルそのままでは画面サイズに依存してコントラスト感度特性が変形する視覚現象の理論的再現は困難であり, 視覚系の他の基本的特性を導入し, より汎用的なモデルに拡張する必要がある. 本論文では, 視覚系の一つの基本的特性として, 空間周波数弁別能力の限界(空間周波数弁別不可能領域の存在)という画面サイズ依存特性とは一見何の関係もなさそうに見える特性に着目し, この特性を視覚モデルに導入すれば画面サイズ依存特性に関しても理論的に再現可能な視覚モデルに拡張でき, 実測結果ともよく一致するようになることを示す. また, シミュレーションから得られた空間周波数弁別不可能領域の理論幅と実測で得られている値とが同程度であることからも, 画面サイズ依存特性が空間周波数弁別能力の限界により生じている可能性が強いと判断できる.
著者
荒川 正晴 町田 隆吉 松井 太 舩田 善之 荒川 慎太郎 佐藤 貴保 坂尻 彰宏 赤木 崇敏 高橋 照彦 武内 紹人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

各班における資料調査の成果にもとづき、シルクロード東部地域の民族や文化の交流および政治・社会・経済などの具体的な姿を、各分担者の研究領域から明確にするとともに、「出土史料学」の基盤作りを行った。すなわち当該地域より出土した各文字資料の分類とそれぞれの性格と機能を検討し、このうち公文書については、各文書群の間で相互比較することを通じて、唐~宋~元にいたる公文書の長期間にわたる通時的な展開と、周辺国家・地域への公文書の空間的な波及と受容のあり様を明らかにした。研究成果は、既に国際ワークショップを開催して公表し、今はその成果をまとめた本を準備中である。
著者
松井 利之 岩瀬 彰宏
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

FeRh金属間化合物は,室温附近で反強磁性状態から強磁性状態へと変化する物質である.我々は,この物質にイオンビームを照射し,反強磁性が安定となる温度域で,強磁性状態を安定化させることに成功している.本研究ではこの成果を利用し,物質の磁気構造を3次元的に制御することにより,従来にない磁気構造を構築し,新規なデバイス応用を検討した.その結果,マイクロイオンビーム装置を用い2次元の磁気構造描画を可能にしたこと,多様なエネルギー域のイオン照射と熱処理を併用することで層状の磁気構造を構築したこと.クラスターイオンビーム照射により,際表面層の磁気構造を選択的に変化させ得ることなどを明らかにした.
著者
松村 栄久 三宅 淳史 石田 直 松井 保憲 石川 真也 池上 直行 松倉 規 小阪 真二 玉田 二郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.349-355, 1993-06-20
被引用文献数
4 2 1

肺癌における癌性髄膜炎の合併は極めて予後不良とされてきた1今回我々はこれに対しOmmaya reservoirを用いて治療した2症例を経験し,非使用5症例と比較検討を行った10mmaya reservoirを用いMethotrexateの脳室内注入を行った2例(腺癌)では,重篤な意識障害をきたさず,他の合併症が予後を決定した.一方非使用5例(腺癌3例,小細胞癌2例)では全例が短期問に意識障害を来たし,癌性髄膜炎が死因に直結した.癌性髄膜炎の診断後予後はOmmaya reservoir使用2例で各々168日,56日で,非使用5例の9〜21日(平均16日)に比べて延長が認められた.Ommaya reservoirに起因する明らかな合併症は認めなかった.自験7例の癌性髄膜炎の診断時には全例髄膜以外にも転移が生じていた.従って,これらの病巣が落ち清いていれば,Ommaya reservoirを用いた局所的な髄膜播種の治療を積極的に考慮してよいと思われた.
著者
松井 美帆 森山 美知子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.65-74, 2004-09-17
被引用文献数
4 5

本研究の目的は、終末期ケアの啓発活動への高齢者の関心とその規定要因を明らかにすることである。対象は中国地方の老人クラブ会員258名で、医療保健専門家による終末期ケアに関する教育講演については58.9%に関心がみられた。関連要因として年齢があり、前期高齢者に関心が高い傾向であった他、終末期ケアに関する家族や医療従事者との話し合いをはじめ、かかりつけ医の有無、家族機能、手術経験などが関連していた。一方、延命治療の意向では医師や家族に判断を任すとした非自己決定群が58.6〜61.1%であり、リビング・ウイルをよく知っているものは12.2%であった。以上のことから、前期高齢者の世代から家族や医療従事者との関係に配慮した上で、自分の意向を事前に周囲と話し合っておくことやアドバンス・ディレクティブについて啓発活動を行なうことの重要性が示唆された。
著者
水野 健一 松井 敦男
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.ピレン微粒子を分散したメリクリル酸メチル高分子(PMMA)膜試料をオスミウム処理し、濃淡をつけたものについて電子顕微鏡観測し、微粒子の粒径分布を求めた。その分布はおおよそガウス型でり、分布の山は32Å、半値幅は15Å、上限は約50Å、下限は約15Åであった。2.バルク・ピレン結晶では、低温において結晶構造が2相存在するので、まず、140K(高温相)において波長幅40cm^<-1>以下の光を用いて、蛍光スペクトルを測定した。我々が得られる粒径分布の範囲内では、確固たる自己束縛励起子発光は確認できなかった。続いて、2K(低温相)において、発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルからも確固たる自己束縛励起子発光らしき物は見られなかった。このことは、微結晶において励起子は自己束縛しにくいことを意味している。最近、これを支持する結果が、我々のグループと協力関係にある竹島研究所で理論的に得られている。3.励起スペクトルのモニター波長依存性より、励起子帯幅の粒径依存性を調べた。それは、励起子帯幅は粒径が大きくなるに従い励起子帯幅が増し、粒径は約30Åで飽和が始まり、粒径47Åで、330cm^<-1>の最大値を示した。その後粒径が50Åのところで励幅が急降下し消失した。この最大値はバルク結晶の励起子帯幅と見なすことができることから、バルク結晶について今までに求められている励起子・格子相互作用の大きさや状態間の定性的な上下関係を考慮すると、v状態(自己束縛状態)が^1Lb状態(自由励起子状態)より下に15cm^<-1>以下にはならないという結果を得た。4.弱結合系に属するアントセランにおける微粒子の励起子帯幅の粒径依存性とピレンのそれを比較検討した結果、アントラセンでは分散体であるPMMAとの相互作用が強く、微粒子表面での励起子の散乱効果が見られるのに対し、ピレン微粒子ではその効果は無視できることがわかった。
著者
日野 正輝 富田 和暁 伊東 理 西原 純 村山 祐司 津川 康雄 山崎 健 伊藤 悟 藤井 正 松田 隆典 根田 克彦 千葉 昭彦 寺谷 亮司 山下 宗利 由井 義通 石丸 哲史 香川 貴志 大塚 俊幸 古賀 慎二 豊田 哲也 橋本 雄一 松井 圭介 山田 浩久 山下 博樹 藤塚 吉浩 山下 潤 芳賀 博文 杜 国慶 須田 昌弥 朴 チョン玄 堤 純 伊藤 健司 宮澤 仁 兼子 純 土屋 純 磯田 弦 山神 達也 稲垣 稜 小原 直人 矢部 直人 久保 倫子 小泉 諒 阿部 隆 阿部 和俊 谷 謙二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1990年代後半が日本の都市化において時代を画する時期と位置づけられる。これを「ポスト成長都市」の到来と捉えて、持続可能な都市空間の形成に向けた都市地理学の課題を検討した。その結果、 大都市圏における人口の都心回帰、通勤圏の縮小、ライフサイクルからライフスタイルに対応した居住地移動へのシフト、空き家の増大と都心周辺部でのジェントリフィケーションの併進、中心市街地における住環境整備の在り方、市町村合併と地域自治の在り方、今後の都市研究の方向性などが取組むべき課題として特定された。
著者
松井 達也
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.341-352, 2011 (Released:2011-01-31)
参考文献数
29
被引用文献数
1

2005年に医療観察法が施行され触法精神障がい者に対する看護が注目されている。触法精神障がい者に適切な看護を提供する上で彼らに対する態度を理解することが必要であるが,その態度についての構成要件については明らかにされていない。そこで触法精神障がい者に対する看護師の態度の構成要件を明らかにすることを目的に触法精神障がい者のケアを行っている3つの精神科病院で12名の看護師を対象に面接調査を実施した。そしてBerelsonの内容分析を用いて質的・帰納的分析を行った結果,15個のカテゴリーが抽出された。まず看護師は触法精神障がい者と出会い彼らと関係作りを行うが,これに関するカテゴリーが5個あった。次に臨床場面において治療的関わりを持つがこれに関するものが4個あった。さらに治療を進める中で退院に向けた関わりを持っていたがこれに関するものが2個あった。そしてそれらの関わりの中で患者に対する様々な感情が生じていたがこれに関するものが4個あった。触法精神障がい者に対する態度の構成要件は相反する価値観が矛盾しながら存在するので,そのバランスをいかにとるかが重要である。また触法精神障がい者に対する消極的態度を克服するためには彼らを深く理解し,彼らの看護に関する専門的な知識を持つことが大切である。さらに看護師は彼らの退院後の地域支援システムの構築に寄与することが求められている。