著者
清水 淳
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.438-445, 2017-05-01

オフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)の術中管理では,グラフト採取中に輸液により前負荷を維持し,吻合開始後は血管収縮薬を使用して血圧を維持するといった方法が一般的であろう。榊原記念病院(以下,当院)でも2005年当時は,収縮期圧80mmHgを目標にし,吻合開始までに3000mL程度の輸液を行い,吻合開始後はノルアドレナリンの持続投与で管理を行っていた。その後,ノルアドレナリンからフェニレフリンへの変更(ノルアドレナリンによるβ刺激作用が吻合の妨げとなる症例があるため),吻合開始までの輸液量の低減(メモ1)などを行うとともに,目標血圧を徐々に低下させ,現在の収縮期圧60mmHgを目標とする管理に至った。 近年OPCABでは,グラフト吻合のクオリティが低くなる可能性が指摘されている1)。この問題に対して,吻合のクオリティ維持を目指した管理が当院の現在のスタイルといえるかもしれない。一般的とはいい難い部分もあるが,筆者らが現在のやり方に至った経緯と管理上のtipsを紹介する。
著者
松本 宜明 清水 万紀子 福岡 正道
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.452-460, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
42

Recently, an increasing number of pharmaceutical scientists and clinical pharmacists have begun to focus on pharmacodynamics, which relates the time course of drug concentration to the time course of pharmacological effects. An integration knowledge of pharmacokinetics and pharmacodynamics is essential for the development of rational pharmacotherapeutics because pharmacodynamics and pharmacokinetics are able to determines the drug concentration required to produce the desired therapeutic effect and the drug dose regimen required to achieve the targeted drug concentration, respectively, by using various models. The general principles of the drug effect model are based on the reversible direct and indirect models. In this review, various models in terms of the time course of drug effects are presented and discussed.
著者
瀧井 一博 大久保 健晴 勝部 眞人 植村 和秀 永井 史男 谷川 穣 前田 勉 國分 典子 五百籏頭 薫 小川原 正道 松田 宏一郎 島田 幸典 佐野 真由子 塩出 浩之 福岡 万里子 中村 尚史 牛村 圭 今野 元 山田 央子 清水 唯一朗 岩谷 十郎 奈良岡 聰智 Breen John
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

明治維新から150年が経過した。日本は今、明治日本という西洋近代に対する稀有なキャッチアップを遂げた自らの歴史的経験を振り返り、その経験を学術的に分析して、その功罪を人類の歴史的遺産として今後似たような歩みをするかもしれない世界中の他の国々や地域に対して提供する使命を有しているといえる。本研究課題においては、明治日本の世界史的意義を学際的かつ内在的に把握するための研究ネットワークを構築することが掲げられた。そのために、海外の研究者とも積極的に連携して、明治史のグローバルな関心と日本の学界を接合することを促進した。
著者
三島 千穂 金重 里沙 長谷川 真梨 清水 直人 本木 由香里 野島 順三
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.9-14, 2021-01-25 (Released:2021-01-26)
参考文献数
11

慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome; CFS)は,これまで健康に生活していた人が,ある日突然,関節痛・筋肉痛・発熱を伴う極度の疲労状態に陥り,半年以上も健常な社会生活が送れなくなる原因不明の難病である。従来の臨床検査では,特異的な異常や病因を確定できず,治療法も確立されていない。本研究では,臨床徴候により診断が確定した慢性疲労患者28症例と一般人27名を対象に,相対的酸化ストレス度(oxidative stress index; OSI)評価および単核球細胞表面抗原解析を実施し,CFS患者の鑑別診断に有用なバイオマーカーを探索した。その結果,OSIは一般人に比較して慢性疲労患者で有意に上昇していた。一方,リンパ球分画解析では,一般人と比較して慢性疲労患者ではB細胞の有意な増加,NK細胞の減少傾向が認められた。また,単球の表面抗原解析において一般人と比較して慢性疲労患者ではCD14+/CD16−単球の割合が有意に減少し,CD14+/CD16+単球の割合が有意に増加していた。さらに,慢性疲労患者におけるB細胞およびCD14+/CD16+単球の増加は,OSIの上昇と関連していた。これらの結果から,酸化ストレス亢進によって引き起こされる慢性炎症がCFSの病態形成に関与している可能性が示唆された。
著者
小林 奈保子 下田 実可子 清水 綾音 川原 正博 田中 健一郎
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-9, 2021-02-05 (Released:2021-02-09)
参考文献数
17

皮膚は表皮(ケラチノサイト),真皮(ファイブロブラスト),皮下組織から構成されており,生体内部の保護や体温調節などの役割を果たしている。また,表皮最下層の基底層にはメラニンを産生するメラノサイトが局在している。一方,紫外線(UV)などの刺激に曝されると,皮膚障害(ケラチノサイトでの細胞死)・メラノサイトでの過剰なメラニン産生・ファイブロブラストでのコラーゲン産生低下が起こる。このように,皮膚がUVに繰り返し曝露されると,酸化ストレスによる障害が蓄積し,シミ・シワを特徴とする「光老化」が引き起こされる。そこで,本研究では,酸化ストレスによる皮膚障害を抑制する精油を網羅的スクリーニングにより発見することを目的として実施した。その結果,ラベンダー精油がケラチノサイト保護とコラーゲン産生低下の回復,ジャスミンAbs.がメラニン産生抑制とコラーゲン産生低下の回復という複数の保護作用を持つことを見いだした。また,これらの保護作用は抗酸化作用を介する可能性が示唆された。今後さらなる解析を行い,酸化ストレスによる皮膚障害を抑制する最適な精油を提案したい。
著者
藤岡 周助 岡 香織 河村 佳見 菰原 義弘 中條 岳志 山村 祐紀 大岩 祐基 須藤 洋一 小巻 翔平 大豆生田 夏子 櫻井 智子 清水 厚志 坊農 秀雅 富澤 一仁 山本 拓也 山田 泰広 押海 裕之 三浦 恭子
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景と目的】ハダカデバネズミ (Naked mole rat、 NMR) は、発がん率が非常に低い、最長寿の齧歯類である。これまでに長期の観察研究から自然発生腫瘍をほとんど形成しないことが報告されている一方、人為的な発がん誘導による腫瘍形成に抵抗性を持つかは明らかになっていない。これまでにNMRの細胞自律的な発がん耐性を示唆する機構が複数提唱されてきた。しかし、最近それとは矛盾した結果も報告されるなど、本当にNMRが強い細胞自律的な発がん耐性を持つのかは議論の的となっている。さらに腫瘍形成は、生体内で生じる炎症などの複雑な細胞間相互作用によって制御されるにも関わらず、これまでNMRの生体内におけるがん耐性機構については全く解析が行われていない。そこで、新規のNMRのがん耐性機構を明らかにするため、個体に発がん促進的な刺激を加えることで、生体内の微小環境の動態を含めたNMR特異的ながん抑制性の応答を同定し、その機構を解明することとした。【結果・考察】NMRが実験的な発がん誘導に抵抗性を持つかを明らかにするため、個体に対して発がん剤を投与した結果、NMRは132週の観察の間に1個体も腫瘍形成を認めておらず、NMRが特に並外れた発がん耐性を持つことを実験的に証明することができた。NMRの発がん耐性機構を解明するために、発がん促進的な炎症の指標の一つである免疫細胞の浸潤を評価した結果、マウスでは発がん促進的な刺激により強い免疫細胞の浸潤が引き起こされたが、NMRでは免疫細胞が有意に増加するものの絶対数の変化は微小であった。炎症経路に関与する遺伝子発現変化に着目し網羅的な遺伝子解析を行なった結果、NMRがNecroptosis経路に必須な遺伝子であるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異により、Necroptosis誘導能を欠損していることを明らかにした。【結論】本研究では、NMRが化学発がん物質を用いた2種類の実験的な発がん誘導に並外れた耐性を持つこと、その耐性メカニズムの一端としてがん促進的な炎症応答の減弱が寄与すること、またその一因としてNecroptosis経路のマスターレギュレーターであるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異によるNecrotpsosis誘導能の喪失を明らかにした。
著者
清水 忠 西村 奏咲 大原 隆司
出版者
日本リメディアル教育学会
雑誌
リメディアル教育研究 (ISSN:18810470)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.29-37, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本実践研究では,初年次導入科目で高校化学と有機化学が薬学臨床に活かせるという内容についてチーム基盤型学習による授業をデザインした。受講生の知識習得度の変化と受講後に行ったリフレクションペーパーの記述について解析した結果,受講後に有機化学の知識が向上し,さらに,有機化学の知識が臨床に活かせることを初年次学生に意識付けられ,学習意欲の向上を図れたことを明らかとした。
著者
野志 保仁 宇多 高明 清水 達也 熊田 貴之 冨澤 和雄 川瀬 栄 下木 豪
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1209-I_1214, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
2

九十九里浜南端部に位置する一宮海岸は有名なサーフスポットのひとつである.とくに一宮海岸に設置されている7~10号ヘッドランド間では,夏季の南東からの入射条件下でサーフィンに都合のよい波が立つと言われている.本研究では,太東崎沖に発達する広大な岩礁帯(器械根)による屈折回折効果を波浪場の計算により検討することにより,当該区域のサーフスポットの成立理由を明らかにした.この結果,夏季には,沖合にある器械根による屈折・回折が著しいことから,一宮川河口から太東漁港までの全域でサーフィンに都合のよい波が立つことが分かった.
著者
清水 大地 岡田 猛
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.240-243, 2012 (Released:2014-07-22)
参考文献数
5
著者
河村 美穂 小清水 貴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.49, 2005

研究目的 数多くの実践がある調理実習に関しては、児童生徒の実習中の行動分析やグループにおける学びの様態について様々な知見が示されている。近年では、家庭科の学習を振り返る感想文分析から役立ち感と学習意欲の関連も明らかにされており、さらに生徒の側から学びの実態を明らかにすることが求められている。 そこで、本研究では生徒が調理実習の直後に何を学んだと感じているのかを生徒自身の記録から読み取り、さらに実施後約1ヵ月後の振り返りをあわせて検討することにより、生徒が調理実習で学んだことを明らかにすることを目的とする。研究方法表に示す調理実習3回を高校家庭科「家庭基礎」において実施し、実習直後に記述した実習記録をデータとして、生徒が学んだと考えることについて検討を加えた。○調査対象:国立大附属高校1年生(40名)。○調査時期:2005年1月_から_2月。○データの収集:毎回の授業後に生徒40名が記述した実習記録、 および、実習後約1ヶ月に記述した振り返りシートをデータとし て用いた。この他、生徒の実態を把握するために事前アンケート 調査を実施した。また、10班のうち2班を抽出し、実習中の様子 を観察、ビデオ録画、録音により記録し補足データとして用いた。全体的な目標<br>●1日に食べる食品の量と質を体験し、朝・昼・夕食に食べるものを理解する●包丁で切る技術を学ぶ。●料理にあう皿を選んで盛り付ける。●班で協力して作業を行い、時間内に手早く調理・試食・片づけをする。●食材を大切に扱い、できるだけ生ごみを出さないように工夫をする。<br>題材<br>オムレツ・ミネストローネ・ヨーク゛ルト・ロールハ゜ン・ハ゛ナナ<br>本時の目標●卵の調理性(熱凝固性)を理解する。(オムレツ)●食材の形をそろえて切ることを理解する。(ミネストローネ)●調理実習室に慣れる。<br>題材 スハ゜ケ゛ティミートソース・ク゛リーンサラタ゛・ハ゜ンナコッタ(いちご添え)<br>本時の目標●ミートソースを手作りする方法を知り、味わう。(スハ゜ケ゛ティ)●ハ゜スタのゆで方を知る。(スハ゜ケ゛ティ)●ゼラチンの調理性と取り扱い方を知る。(ハ゜ンナコッタ)●ドレッシングを手づくりできることを知る。(サラタ゛)<br>題材 肉じゃが・ほうれん草の胡麻和え・米飯・味噌汁(豆腐とワカメ)・うさぎりんごと木の葉りんご<br>本時の目標●混合だしの取り方を理解する。(肉じゃが・味噌汁)●調味料の浸透性を理解し、手順よく調味料を扱うことができる。(肉じゃが)●無洗米の扱い方を知る。(米飯)●青菜のゆで方を理解する。(ほうれん草の胡麻和え)●肉じゃがが簡単にできることを知る。(肉じゃが)●りんごの飾り切りができる。(りんご)<br>結果と考察<br> 生徒が調理実習で身についたと考えていることは、「実習した料理そのものの作り方」「その後に応用可能な知識・技能」「グループ学習としての学び」の3つに大別できる。「その後に応用可能な知識・技能」のうち多くを占めるのは「材料を切る」など包丁を使う技能であった。包丁を使う技能は、調理実習で多く使用されるだけでなく、生徒にとっては技能の習得を実感しやすいと考えられる。また、振り返りにおいて調理に対する自信を持つようになった生徒は、直後の記録においては「その後に応用可能な知識・技能」を多く記述していた。これは、調理を一つ一つの料理を作る方法としてではなく、複数の調理方法や知識・技能が複合して成立するものとして捉えていることを示していると考えられる。
著者
清水 貴夫 中尾 世治 伊東 未来 小林 広英 亀井 哲也
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.90, pp.97-107, 2016-12-31 (Released:2017-12-31)
参考文献数
21

報告1 フォーラムの趣旨とカッセーナの屋敷地の構造 清水貴夫/報告2 村長の屋敷の不均衡な変容 中尾世治/報告3 家屋の装飾と住まいかたの変遷 伊東未来/報告4 伝統住居の在来建築技術とその継承 小林広英/コメント 亀井哲也
著者
清水 寛太 山田 義智 古賀 志門 平野 修也
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.265-272, 2021

<p>本研究は高流動コンクリートのスランプフロー試験を対象として、機械学習の一種であるランダムフォレストによりフレッシュ性状(スランプフロー値、500mmフロー到達時間、空気量等)の推定を試みた。ここでの学習は、使用材料、混和剤の成分、調合、練混ぜ条件、経過時間などの特徴量(説明変数)を60項目からスタートして、その重要度を評価した。その結果、重要度の高い10項目の特徴量(説明変数)でフレッシュ性状の各値が推定できることを示した。また、推定したスランプフロー値、500mmフロー到達時間より既往の研究成果を基にレオロジー定数を推定し、目視材料分離判定や数値解析による高流動コンクリートの充填シミュレーションに用いることが期待できる。</p>