著者
西岡 千惠 (2008-2009) 西岡 千恵 (2007)
出版者
高知大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病細胞株HL60、NB4について、既存の抗癌剤(シタラビン、ATRA)とチロシンキナーゼの下流シグナル阻害剤(MEK阻害剤AZD6244)との併用により、単剤に暴露されたときよりも更に効果的に細胞増殖が抑制されることをMTTアッセイやコロニーアッセイで明らかにした。また、併用の際、薬剤の投与の順番を変えることによっても相乗効果の程度に変化が見られ、薬剤投与の順番も重要であることを確認した。またこれらの薬剤を併用することによって、相乗的に細胞増殖抑制やアポトーシス誘導能が高められることを明らかにした。さらに、MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病患者の末梢血から採取した白血病細胞においても、これらの薬剤の併用による相乗的な細胞増殖抑制効果を確認し、このような薬剤の組み合わせが実際の臨床の現場においても効果的ではないかと思われる。また、長期間のチロシンキナーゼ阻害剤投与による薬剤耐性化のメカニズムを検討し、臨床の現場における問題点の克服につなげていきたいと考えた。まず、チロシンキナーゼ阻害剤(sunitinib)を白血病細胞株に長期間投与し、薬剤耐性株を樹立した。そして、この耐性株を用いて耐性化の機序の検討を行った。その結果、親株ではsunitinibによって抑制されるJAK2-STAT5シグナル活性が耐性株では抑制されないことを確認した。また、耐性株では親株に比べてJAK2を活性化させるIL-6と、IL-6のプロモーター領域に結合する核内転写因子c-Junの量が増加していた。そこで耐性株をIL-6阻害剤やJAK2阻害剤で前処理しその後sunitinibを投与してみたところ、薬剤耐性株は親株同様suitinibへの感受性を取り戻した。以上の結果から、sunitinibによってc-Junを介してIL-6が誘導され、このIL-6によってJAK2-STAT5シグナルが活性化、薬剤耐性化を引き起こしたのではないかと考えられる。このようなケースでは、IL-6やJAK2の阻害によって耐性化が克服される可能性が示唆された。このように症例の状態に合わせて適切な薬剤を組み合わせることでより効果的な治療法となりえることを見出した。
著者
石塚 譲 因野 要一 西岡 輝美 出雲 章久 川井 裕史 山田 英嗣 大谷 新太郎 入江 正和 上脇 昭範 庄 澄子 高倉 将士 西田 祐子 大石 武士 安田 亮 おおちやまくじら生産組合 猟友会能勢支部
出版者
大阪府立食とみどりの総合技術センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

野生獣肉(ホンシュウジカ、イノシシ)成分は野生植生の影響を受けていたが、一般成分に捕獲時期の影響は少なかった。成分中では粗脂肪含量が家畜に比して少ないこと、イノシシ肉のα-Toc含量はブタ肉と同等であること、牛肉よりは酸化しやすいことが判った。利用先である西洋料理店は、年間を通じて野生獣肉を利用しており、肉利用にあたり品質や安全性を重視していること、購入価格が高いと考える店が多いことが判った。
著者
西岡 孝
出版者
高知大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本年度は,CeRu2Al10の相転移の異常性を明らかにするため,正常な反強磁性転移を引き起こすRFe2Al10(R=Ce以外の希土類元素)の磁性を調べて比較した。それを実行するために,7T横磁場無冷媒マグネットを用いた全自動角度回転磁化・ホール効果システムの開発を行い,RFe2Al10の単結晶を9種類フラックス法で作成し,それらの電気抵抗,磁化の測定を行った。RFe2Al10はCeRu2Al10と同じYbFe2Al10型結晶構造を持っている。CeRu2Al10の相転移の主要な特徴を列挙すると次のようになる。(1) 高い相転移温度 (2) 半導体的挙動 (3) 巨大な結晶場分裂 (4) 転移温度以下でギャップの解放 (5) 転移温度以下で電気抵抗のとび (6) 磁性は2次元的 (7) 磁気秩序の伝搬ベクトルはb軸 (8) 磁性は一軸異方性を示すがa,c両軸でメタ磁性。RFe2Al10の電気抵抗はすべて転移温度以下でとびを示した。また,それらの磁化測定はすべてac面内の2次元性を示した。特に,DyFe2Al10のac面内の磁化の角度依存性は,らせん磁性を反映して,結晶構造の4回対称性とは異なる2回対称性が現れていることが明らかになった。これらの測定結果はCeRu2Al10の上で述べた(4)~(8)の特徴はCe以外の希土類にも現れていることがわかった。一方でCeRu2Al10および関連物質のCeOs2Al10のNQR測定により(1)~(3) の特徴は大きな伝導電子とf電子の交換相互作用Jcfに起因するものであることがわかった。したがって,CeRu2Al10の相転移は全く新しいものではなくて,結晶構造に密接に関係した相転移が大きな伝導電子とf電子の交換相互作用Jcfによってエンハンスされたものと理解することができることが明らかになった。
著者
深沢 徹 西岡 泰弘 大嶺 裕幸 浦崎 修治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.941-952, 2002-06-01
被引用文献数
11

本論文では,携帯端末におけるフリップの内部に平行2線とダイポールアンテナを配置したモデルに対し,フリップを開いた状態では逆相励振,閉じた状態では同相励振を行う方法を提案する.フリップ開時には電力が平行2線を伝達するため,その長さの分だけアンテナの放射部を人体から遠ざけることが可能になり,人体による性能劣化の小さなアンテナが実現できる.また,フリップ閉時には平行2線とダイポールから構成される逆Lアンテナが形成され,該アンテナにより誘起される筐体上の電流からの放射を利用することで帯域を広げることが可能となる.本論文ではまず初めに,上記アンテナのフリップ開時,閉時における放射インピーダンス整合の設計法について述べる.次に,フリップ閉時における帯域幅について検討を行い,逆相励振の場合に比べ,同相励振することで帯域幅が3倍以上広がることを示す.次に,放射特性についてミュレーションを行い,従来のモノポールアンテナより高い利得が得られることを示す.更に測定値と計算値を比較し,計算の妥当性を確認する.
著者
佐藤 和人 宮坂 信之 谷口 敦夫 西岡 久寿樹
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.659-659, 1988-07-25

第6回学内病理談話会 昭和63年4月16日 東京女子医科大学中央校舎1階会議室
著者
成田 伸 大原 良子 鈴木 幸子 遠藤 俊子 齋藤 益子 吉沢 豊予子 野々山 未希子 水流 聡子 跡上 冨美 矢野 美紀 西岡 啓子 加藤 優子 森島 知子 齋藤 良子 角川 志穂 段ノ上 秀雄 黒田 裕子 工藤 里香
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

望まない妊娠や性感染症罹患の予防を専門的に支援する避妊・性感染症予防カウンセラー育成プログラムを構築した。プログラムは6日間の集合教育と専用のウエブサイトを活用した自己学習からなり、2008年度と2009年度の2回にわたって助産師を対象に開催した。育成プログラムの成果を評価するために、受講者と非受講の比較群で学習成果を比較した結果、受講者に知識の増加や態度の変容がみられた。また受講者のカウンセリング能力が向上した。今後は、育成されたカウンセラーの実践自体を評価する研究が必要である。
著者
竹野 忠夫 中村 祐二 朱 学雷 西岡 牧人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

現在,大きな環境問題の原因として挙げられるすすに関して,その生成機構および抑制方法は見つかっておらず,未だ不明な点が多い.すすはNOxと並ぶ2大燃焼排出物であり,火炎中のその生成機構を理解することは我々人類にとって重要な課題である.これまでの研究報告によれば,すすはその前駆物質であるPAH(多環芳香族炭化水素)からできるとされているが,PAHの生成機構さえも十分に理解されていない部分が多い.そこで本研究では,対向流拡散火炎中を対象として,数値計算および実験を通じてPAHの生成機構を理解することを目的とする.まず平成10年度においては,約100種の成分と正逆500組の素反応を考慮したHai-Wangにより開発された化学反応機構を用いた数値計算により,PAHの中で最も重要な働きを示すベンゼン生成に関する知見を得た.その結果,C3系の反応物がPAHの基であるベンゼン環の生成に最も顕著であることがわかった.平成11年度においては,対向流拡散火炎中のベンゼンおよびその生成に関わると言われているC3系およびC4系の成分に着目し,それらの濃度測定をGC/MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析計)を用いて行った.また得られた実験結果と数値計算で得た知見との比較・検証を行った.その結果,数値計算ではベンゼンおよびC3,C4系炭化水素の量を約半分以下にしか見積もらないことがわかった.また,ベンゼン生成領域は数値計算よりも定温領域に移り,それがすす発生に関係した影響であることも指摘できた.しかしGC/MSで得られる情報もまだ十分ではないので,上記で推測されたすす生成に関する物理を確実に述べるには,実験装置の工夫,または数値計算において別の反応モデルを用い,より総合的な評価をする必要がある.
著者
春木 敏 川畑 徹朗 西岡 伸紀 境田 靖子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ライフスキル形成を強化する第二次の食生活教育プログラム改訂,指導者マニュアル作成,授業担当者研修,意志決定スキル,目標設定スキル尺度開発,家族への働きかけを試み,以下の成果を得た.I.2005年6月〜2006年7月,大阪府下の6小学校と山口県2小学校を研究対象校とする準実験デザインのもと,健康的な間食行動と朝食行動を主題とするスキル形成に焦点をあてた食生活教育プログラム(18時間)を実施し,計810名が参加した.(i)プロセス評価より,意志決定の下位尺度「選択肢の列挙」「結果の予測」を踏まえたおやつ選択法を,「意志決定をすべき問題の明確化」を踏まえ,朝食で野菜を食べるために具体的な,実行可能な目標設定ができた.(ii)影響評価より,女子は,健康的な間食行動の態度,自己効力感が高まり,低油脂おやつの選択が増加した.野菜摂取に焦点をあてた朝食学習により,朝食の野菜摂取率はおよそ倍増し,栄養バランスを改善した.(iii)意志決定スキル形成群において介入校の児童は,広告分析に関する自己効力感や食品選択スキルに有意な成果が認められたが,対照校児童には規則性はみられなかった.II.大阪府下の3小学校と山口県3小学校を研究対象校とし,2007年5月〜7月に,保護者通信,朝食モニタリングシートの家族点検,家庭での朝食野菜料理など保護者への働きかけを強化した朝食プログラム(6時間)を実施した.計417名が参加した.(i)全児童は,目標達成率,朝食の栄養バランスともに有意に高くなった.(ii)授業実施6カ月後には,児童の学習成果は有意に低下したものの家族強化群は,対照群に比べ,朝食得点,野菜摂取率ともにやや高い維持率を示した.さらにプログラム効果を高め,持続するために,教材や指導者研修,家族強化の改善を図り,学校健康教育に普及していく.
著者
西岡 五夫 松尾 律子 大倉 洋甫 百瀬 勉
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1281-1285, 1968-10

A new colorimetric method for microdetermination of isothiocyanates was established, using 3,6-dinitrophthalic acid as a color developing agent in a potassium carbonatesodium thiosulfate solution. The reaction conditions were examined with allyl isothiocyanate as a model compound. The outline of the procedure is as follows : To 2.0 ml of allyl isothiocyanate solution (10-150 μg/ml), (dissolved in 50% ethylene glycol solution, 1.0 ml of 3,6-dinitrophthalic acid monopyridinium salt solution (0.1%), and 1.0 ml of alkaline solution (40% potassium carbonate and 30% sodium thiosulfate) are added and mixed well. The mixture is heated in a boiling water bath for exactly 10 minutes, cooled in running water, and diluted to 20.0 ml with water. The absorbance of the developed color is read at 400 mμ against the reagent blank. In this color reaction, 3,6-dinitrophthalic acid was assumed to be reduced to 3-amino-6-nitrophthalic acid by S^<2->, which was liberated from allyl isothiocyanate in the alkaline medium.
著者
西岡 昭博 香田 智則
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の結果、(1)従来にない斬新な米デンプンの変性法、(2)(1)の手法で得た改質デンプンと汎用プラスチック材料とのコンポジット技術の開発に成功した。具体的には、(1)において加熱とせん断を同時に印可することにより無加水で瞬時に米デンプンを非晶化できる技術を開発した。また、この技術を基盤に加熱・せん断型粉砕装置の開発に成功した。(2)では、(1)の研究結果から得られた非晶性デンプンと(a)エチレンメタクリル酸共重合体をNaイオンで中和したアイオノマー、(b)ポリブチレンサクシネート(以下、PBS)、(c)ポリ乳酸(以下PLA)の3種類の材料とのコンポジットを行い、分散性、熱安定性、機械特性、溶融物性を評価した。比較として米粉には、市販の米粉(結晶性デンプン)、市販の非晶性デンプンも使用した。本研究で得られた新規変性デンプンコンポジット材料の特徴は以下の通りである。(1) 結晶性デンプン、市販の非晶性デンプンと比較して、著しく分散性が優れる。(2) 重量分率10%までの添加では添加前のバージン材料と比較し、物性(機械的)が劣らない。このことは結晶性デンプンや市販の非晶性デンプンには見られない効果であった。(3) 重量分率50%までの添加が可能であり、本研究で用いた新規変性デンプンを添加した系は最も物性低下が少ない。(4) 新規変性デンプンは、優れた結晶核剤として作用することが分かった。本研究の結果、従来の手法と全く異なる手法でデンプン変性が可能であり、得られた変性デンプンが生分解性樹脂等の優れた添加剤となり得ることが明らかになった。
著者
青山 幹雄 西岡 健自 岸 知二 上原 三八 松岡 聡 中所 武司 深澤 良彰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.84, pp.89-96, 1995-09-08

1995年6月1日(木)?2日(金)に情報処理学会ソフトウェア工学研究会の主催で,慶応義塾大学三田校舎新館でオブジェクト指向'95シンポジウム(O'9)が開催され,326名の参加者があった.「オブジェクト指向によるシステム開発の理論実践」をテーマに,基調講演,チュートリアル,一般講演,パネル討論と内容の充実したシンポジウムであった.本稿では,同シンポジウムのもようを,初日の事例セション、2日目のパネル討論を中心に報告する.なお,本シンポジウムは来年も同時期に開催の予定である.The Object-Oriented '95 Symposium was held on June 1 - 2, 1995 at Mita Campus of Keio University in Tokyo. Under the theme of "Theory and Practice of Object-Oriented Systems Development", opening speeches, tutorials, general sessions and panel session have covered a wide spectrum of development technologies based on object-orientation. This report highlightens the major topics of the symposium as well as two special sessions; one session presented the experience of object-oriented systems development and another was a panel on the theory and practice of object-oriented development technology.
著者
西岡 弘晶
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

グラム陰性菌は、呼吸器、消化器、尿路、皮膚・軟部組織など、様々な部位に感染し疾病を引き起こし、その予防、治療は大変重要な課題である。グラム陰性病原細菌の多くは、宿主細胞へ接触すると、特殊な分泌機構を通じて、一群の分泌性機能蛋白質(エフェクターと呼ばれる)を宿主細胞質へ注入し、感染に必要な機能を誘導する。そこでグラム陰性菌の一つである赤痢菌から、感染に不可欠なエフェクター蛋白質を、ネイティブな形で精製する方法を確立し、そのエフェクター蛋白質どうし、あるいはエフェクター蛋白質と宿主因子の相互作用を明らかにすることを試みた。赤痢菌が宿主細胞へ感染する際に不可欠なエフェクター蛋白質は、IpaB、IpaC、IpaDと呼ばれる3つの蛋白質であり、IpaBとIpaCは複合体を形成することが知られているが、その詳細は明らかではない。本研究により精製したネイティブな形のIpaB/IpaC複合体は、安定した水溶性の複合体を形成しており、分子量はおよそ200kDで、IpaB : IpaC=1:3-5で結合していることが示唆された。またIpaB/IpaC複合体は、高度な二次構造を形成し、複合体を形成することで安定した構造をとることも示唆された。この複合体の形態は直径10-20nmの球状であり、電子顕微鏡でも可視できた。IpaB/IpaC複合体は、赤血球膜にコレステロール依存的に結合し、真核細胞形質膜にはコレステロール及びCD44依存的に結合した。その際IpaB/IpaC複合体は、リピッドラフトに存在した。またIpaB/lpaC複合体はリボゾームと結合し、小孔を形成した。同様にIpaD蛋白は35kDの蛋白として精製された。またIpaDの部分変異株の解析により、IpaB/IpaC複合体の真核細胞形質膜への挿入に、IpaDが関与していることを見出した。
著者
西岡 あかね
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度前半は主に、昨年度アメリカ合衆国で行った文書館調査(フランツ・ヴェルフェル関連資料と遺稿、カリフォルニア大学ロサンジェルス校及びペンシルヴァニア大学所蔵)の際に得た資料の整理と分析を行った。対象となった資料は以下の通り:1)フランツ・ヴェルフェルの書簡2)フランツ・ヴェルフェル宛ての書簡3)フランツ・ヴェルフェルの未発表原稿とノートこの資料調査・分析の結果の一部は、2007年10月にヴィラ・ヴィゴーニ、ドイツ・イタリアセンターでの国際シンポジウムで行った口頭発表の中で公表した。(この口頭発表の原稿は、来春出版予定のシンポジウムの論集に収録される。)また、この発表では公表しなかった資料については、今後、ドイツ表現主義の朗読理論や文学実践の諸相を研究する際に利用し、その成果は順次発表していく予定である。今年度の後半は、これまでの研究で得られた知見を様々な学会で口頭発表した。すなわち、上述のドイツ・イタリアセンターでの発表の後、日本比較文学会関西大会では、ドイツ表現主義の芸術実践と日本の大正期における新興芸術運動を、村山知義の初期戯曲を例に比較した。また、この発表から出発して、前衛運動の国際性に関する考察を、2008年3月、立教大学におけるフンボルト・コレークにおいて口頭発表した。その他、昨年度から進めていた、前衛芸術家の自己演出に関する研究を最終的にまとめ、この成果を、2008年3月、日本独文学会主催の第50回ドイツ文化ゼミナールで発表した。この発表原稿は今後、学術雑誌に投稿を予定している。
著者
西岡 純
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、冬季に砕氷船を用いた観測を実施し、得られたオホーツク海の海氷サンプルの化学分析を実施した。海氷中には高い濃度で大陸棚由来の鉄分が取り込まれており、オホーツク海の海氷が鉄など微量栄養物質を移送するのに大きな役割を果たしている事が示された。海氷が融解する際には、海洋表層の主要栄養塩は希釈されるが、鉄分は付加される傾向にある事が明らかとなった。本研究の結果から、海氷の広がりは、極域・亜極域の栄養物質の循環に大きな影響を与え、春季の生物生産の質や量を変化させている事が示された。
著者
大森 英之 守谷 直子 石田 三佳 大塚 舞 小橋 有里 本山 三知代 佐々木 啓介 田島 清 西岡 輝美 蔡 義民 三津本 充 勝俣 昌也 川島 知之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-200, 2007-05-25
被引用文献数
5 6

コンビニエンスストアから排出された消費期限切れ食品(コンビニ残さ)の肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料としての利用について検討した.コンビニ残さを分別し,弁当めし,おにぎり,菓子パンを主体とする発酵リキッド飼料を調製した.4頭を対照区(新豚産肉能力検定用飼料)に,10頭を発酵リキッド区(FL区)に割り当てた.さらにFL区を5頭ずつCa無添加区(FLN区)とCa添加区(FL+Ca区)に分けた.FL区の肥育成績は対照区と遜色なく,胸最長筋内脂肪含量は対照区(2.9%)に比べて有意に高い値を示した(<I>P</I><0.01,FLN区 : 4.9%,FL+Ca区 : 5.2%).またFL区の皮下内層脂肪中のリノール酸比率は対照区に比べて有意に低かった(<I>P</I><0.01).FLN区とFL+Ca区の肥育成績および肉質に大きな差はなかったが,FL+Ca区で血清中総コレステロール濃度は有意に低い値を示した(<I>P</I><0.05).以上の結果から,分別により粗脂肪含量を抑え,タンパク質源,ミネラル,ビタミンを適切に配合することで,コンビニ残さは肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料として利用できることが示された.
著者
吉本 佐雅子 鬼頭 英明 西岡 伸紀
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

49の高校(定点校)の生徒に,平成23年度(32,259名)と25年度(32,458名)の2回「高校生の喫煙,飲酒,薬物乱用の実態と生活習慣に関する全国定点追跡調査」を実施した。この2年間で薬物乱用経験者率は0.63%→0.51%に,飲酒の年経験者率は 40.0%→30.6%に,喫煙の年経験者は5.3%→3.6%と,減少していた。高校生においては「朝食摂取」,「学校生活の楽しさ」,「クラブの参加状態」,「アルバイトの週平均時間」,「大人が不在の状態で過ごす1日平均時間」,「悩みごと等を親に相談する方か」などのライフスタイルによる飲酒,喫煙の習慣化が薬物乱用に至る大きな要因として考えられた。
著者
江崎 雄治 西岡 八郎 小池 司朗 山内 昌和 菅 桂太
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、地域別の将来人口推計の方法について検討した。主な成果は以下の通りである。(1)世界各国の実状を調査し、コーホート要因法が標準的手法であることを確認した。(2)人口移動に関するより適切な推計モデルについて検討した。(3)独自の質問紙調査を実施し、将来の出生の見通しについて議論を行った。(4)外国人の出生、死亡の将来人口推計に対する影響は小さいことが確かめられた。(5)市町村別世帯数の将来推計について課題を整理した。
著者
高橋 誠一 野間 晴雄 橋本 征治 平岡 昭利 西岡 尚也 筒井 由起乃 貝柄 徹 木庭 元晴
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、南海地域における歴史地理的実体を多角的に解明することを主目的としたものであった。従来の地理学分野からの琉球研究は、都市、集落、民俗、交易活動などを個別的に扱い、かつ沖縄や奄美の一地方を対象としたものが多かった。しかしこれらの個別事例の蓄積のみでは、東シナ海や南シナ海全域にわたる琉球の実体の把握が困難であったことは言うまでもない。そこで本研究においては、中国沿海州・台湾・ベトナム・フィリピン、沖縄・奄美における現地調査を実施し、都市・集落景観、伝統的地理学観の影響と変容、伝統的農作物栽培の伝播過程、物流と交易活動、食文化の比較、過去と現在の当該地域における地理学教育に見られる地域差などに関して、立体的な分析を行った。以上の研究によって、琉球が果たしてきた重層的な歴史的役割の実態を、かなりの程度まで明らかにできたと考える。これらの成果の一部は各研究者による個別論文のほかに、2007年に沖縄県立公文書館において開催した国際研究集会報告書などにおいても公刊済みである。また全体的な成果の一部を報告書としても提示した。しかし、本研究によって解明できた点は、当初の目的からすれば、やはりまだその一部を果たしたに過ぎないと言わざるを得ない。すなわち南海地域における歴史地理的諸事象の伝播過程やその変容については、かなり解明したとはいうものの、本研究の成果は単方向的な文化事象の伝播や影響の摘出に終始したとの反省がある。文化の交流や伝播は、長い歴史的過程の中では、多方向的に複雑に錯綜することによって新しい様相を生み出すということができる。それらを明らかにすることによって、本究で対象とした地域に関する理解を深化することを今後の課題としたい。