著者
長谷川 達也
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.465-480, 1997-10-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
50
被引用文献数
1 3
著者
中村 雅俊 長谷川 聡 梅原 潤 草野 拳 清水 厳郎 森下 勝行 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0153, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】頸部や肩関節の疾患は労働人口の30%以上が患っている筋骨格系疾患であると報告されている。その中でも,上肢挙上時の僧帽筋上部の過剰な筋収縮や筋緊張の増加は肩甲骨の異常運動を引き起こし,頸部や肩関節の痛みにつながると報告されている。そのため,僧帽筋上部線維の柔軟性を維持・改善することは重要であり,その方法としてストレッチングがあげられる。一般的にストレッチングは筋の作用と反対方向に伸ばすことが重要であると考えられている。僧帽筋上部線維の作用は肩甲骨の拳上・上方回旋と頸部伸展・反対側回旋・同側の側屈であるため,ストレッチング肢位は肩甲骨の拳上・上方回旋を固定した状態で,屈曲・同側回旋・反対側の側屈が有効だと考えられる。僧帽筋上部線維に対するストレッチングの効果を検証した報告は散見されるが,効果的なストレッチング肢位を検討した報告は存在しない。そこで本研究では,筋の伸長量と高い相関関係を示す弾性率を指標に,僧帽筋上部線維の効果的なストレッチング肢位を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は上肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない若年男性16名の非利き手の僧帽筋上部線維とした。先行研究に従って,第7頚椎と肩峰後角の中点で,超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,弾性率を測定した。弾性率測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた。弾性率は筋の伸張の程度と高い相関関係を示すことが報告されており,弾性率が高いほど,筋は伸張されていることを意味している。測定肢位は,座位にて肩甲骨の挙上・上方回旋を徒手にて固定した状態で対象者が痛みを訴えることなく最大限耐えうる角度まで他動的に頸部を屈曲,側屈,屈曲+側屈,側屈+同側回旋,屈曲+側屈+同側回旋を行う5肢位に,安静状態である頸部正中位を加えた計6肢位とし,計測は無作為な順で行われた。統計学的検定は,頸部正中位と比較してストレッチングが出来ている肢位を明らかにするため,頸部正中位に対する各肢位の弾性率の比較をBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。また,頸部正中位と比較して有意に高値を示した肢位間の比較もBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。【結果】頸部正中位に対する各肢位の比較を行った結果,全ての肢位で有意に高値を示した。また有意差が認められた肢位間での比較では,屈曲に対し,その他の全ての肢位で有意に高値を示したが,その他には有意な差は認められなかった。【結論】肩甲骨の挙上・上方回旋を固定した状態で頸部を屈曲することで僧帽筋上部線維をストレッチング出来るが,屈曲よりも側屈する方が効果的にストレッチングすることが可能であった。また,側屈に屈曲や同側回旋を加えても僧帽筋上部線維をさらに効果的にストレッチング出来ないことが明らかになった。
著者
長谷川 大和 勝田 仁之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.137-140, 2013-09-06 (Released:2017-02-10)

高等学校物理では,力学的エネルギー保存則を学んだ後に運動量保存則を学ぶ。これらを学習後に取り組む典型的な問題として,動くことのできる斜面台上での物体の運動がある。このような問題では,台と物体で及ぼし合う垂直抗力がそれぞれ仕事をすることになり,これらがちようど打ち消し合うことを説明しなければ,力学的エネルギーの和が保存されることに対して生徒は違和感を持つ可能性が生じる。この問題の高等学校での取り扱いについて考察する。
著者
長谷川 幹子 小林 道太郎
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.10-21, 2019-07-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
58
被引用文献数
1

看護師は、苦悩を抱える患者にかかわらなくてはならないが、その関わり方を考えるにあたって必要となる、「患者の苦悩」の概念の明確化は十分行われていない。本研究の目的は、「患者の苦悩」の概念について、概念分析の手法によって先行要件、属性、帰結を明らかにし、定義を明確化することである。Walker & Avantの手法を参考に、データベースから抽出された文献および関連書籍の36件を対象として分析を行った。その結果、7つの定義属性、7つの先行要件、5つの帰結が見出された。「患者の苦悩」は「全人的で自己の存在そのものに関わるものとして主観的に経験される、不快な感情や情動を伴うコントロール不可能で複雑な耐え難い体験」と定義された。また類似概念の苦痛と比較を行った。本研究の結果は、今後、苦悩する患者に対する看護師の関わり方を考えるため、またそのために必要な調査研究を計画し実行するための基礎となる。
著者
中村 満 繩田 隆生 松岡 憲二 小田原 良誠 長谷川 汪 田和 宗徳 池内 隆治 大田 信太郎 西牧 紀子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.177-184, 1983-11-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

うつ病は近年増加の一途をたどり, 鍼灸の臨床においても仮面うつ病の患者にしばしば遭遇する。これらの患者には症状の原因である抑うつ感情に対する治療が必要である。今回, 仮面うつ病スクリーニングテストを行い, うつ傾向の者を選び出し鍼治療を行った。方法: Actual Group として百会, 身柱, 心兪, 巨闕, 神門, 三陰交, Placebo Group として陶道, 風門, 水分, 下廉, 懸鐘を選び金鍼にて置鍼10分, 週3回の治療を行った。結果: Actual Group は4週後には71%が正常域に達し, 精神症状と身体症状ともに改善された。Placebo Group では4週後でも64%が抑うつ領域にあった。結論: 精神疾患によく用いられる経穴による鍼治療で精神症状と同時に身体症状の改善をもたらし, うつ状態の寛解か認められた。
著者
尹 智暎 大藏 倫博 角田 憲治 辻 大士 鴻田 良枝 三ッ石 泰大 長谷川 千紗 金 勳
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.313-322, 2010 (Released:2010-07-15)
参考文献数
25
被引用文献数
8 14

The purpose of this study was to investigate the relationship between cognitive function and physical performance in Japanese older adults. Ninety four older adults, aged 65 to 87 years (mean age 71.9±5.3 years), were recruited as participants. Cognitive function was evaluated by Five-cognitive Function Test (FCFT). The FCFT, which was developed specially for Japanese older adults, consists of 5 subscale elements: attention, verbal memory, visuospatial cognition, word fluency, and associate learning. Hand dexterity (3 items), muscle strength (2 items), balance (3 items), flexibility (2 items), walking ability (2 items) and reaction ability (2 items) were defined as lifestyle-related physical performances. After adjusting for age, educational level and systolic blood pressure the FCFT score was significantly correlated with observed data of hand dexterity (hand working with a peg board, r=0.485, p<0.001), lower-extremity muscle strength (5-repetition sit-to-stand, r=-0.231, p<0.05), walking ability (5-m habitual walk, r=-0.225, p<0.05; timed up and go r=-0.304, p<0.01), and reaction ability (simple reaction time, r=-0.415, p<0.001; 4-way choice reaction time, r=-0.401, p<0.001). Multiple regression analysis revealed that the FCFT score was explained by the hand working with a peg board (F=42.36, p<0.001) and 4-way choice reaction time (F=29.62, p<0.01). The contribution rate on this model was 42%. These results suggest that cognitive functions were associated with some physical performance. Especially, hand dexterity (hand working with a peg board) and reaction ability (4-way choice reaction time) may be the useful synthetic indicators of cognitive functions in Japanese older adults.
著者
吉野 博 飯野 由香利 瀧澤 のりえ 岩下 剛 熊谷 一清 倉渕 隆 長澤 悟 永田 明寛 長谷川 麻子 村松 學
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.74, no.639, pp.643-650, 2009-05-30 (Released:2009-11-30)
参考文献数
14
被引用文献数
6 5

This study aims to clarify the actual installing conditions of heating, ventilating, and air-conditioning (HVAC) systems and their operations in public elementary schools based on 568 school data obtained from a nation wide investigation. Some results are shown as follows: 1) Insufficient thermal insulation and air tightness were provided in many school buildings in warm climate areas, 2) Heating systems were provided in almost all rooms but their installing conditions varied with respective areas, 3) Air-conditioning systems for cooling are on the increase in many areas, especially urban areas, and 4) Ventilating systems are not operated under optimum conditions because of inadequate management. We suggest that the building envelope systems should be improved and it is necessary to make guidelines and inform teachers of the essentials of maintenance for HVAC systems for efficient operation.
著者
関根 達人 榎森 進 菊池 勇夫 中村 和之 北野 信彦 深澤 百合子 谷川 章雄 藤澤 良祐 朽木 量 長谷川 成一 奈良 貴史
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世・近世の多様な考古資料と文献史料の両方から、津軽海峡・宗谷海峡を越えたヒトとモノの移動の実態を明らかにすることで、歴史上、「蝦夷地」と呼ばれた北海道・サハリン・千島地域へ和人がいつ、いかなる形で進出したかを解明した。その上で、「蝦夷地」が政治的・経済的に内国化されていくプロセスを詳らかにし、そうした和人や日本製品の蝦夷地進出が、アイヌ文化の形成と変容にどのような影響を与えたか考察を行った。
著者
添田 泰弘 北本 拓磨 長谷川 光司
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.239-245, 2014 (Released:2014-02-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Oshibori is a small wet towel to wipe hands before meal in Japan. Most of researches on oshibori have investigated the towels from the perspective of cleaning and sanitation. Few studies have assessed the qualitative and sensory characteristics associated with oshibori. In this paper, subjective evaluation experiments were carried out using cotton oshibori of different temperatures such as 5, 15, 30, 45, 60, and 75 °C in the laboratory temperature at 20, 25 and 30 °C over four seasons. 29 males and 33 females evaluated oshibori on following properties such as “favorite,” “rare,” “hot,” “feel-smooth,” “high-grade,” “comfortable,” “soft,” and “moist,” according to five point grading. As results, the oshibori at the temperature of 5, 15, 45 and 60 °C were evaluated to be comfortable. Contrary, those of 30 and 75 °C were evaluated uncomfortable. Moreover, sexual specificity of the evaluation was observed.
著者
伏木 ももこ 太田 和希 長谷川 孔明 大島 直樹 岡田 美智男
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.443-456, 2020-11-25 (Released:2020-11-25)
参考文献数
27

“Nudge theory,” an approach to influence people’s decision making, channels people’s behavior by designing environmental cues. We have been studying driving agents that encourage drivers to drive safely and make better behavioral choices for gently driving. Therefore, we attempted to apply a type of Nudge theory called default effect to driving agents. An example of the default effect is an instance wherein people need to make decisions immediately. They are more likely to follow other people’s opinions instead of considering the optimal choice. In this paper, we discuss the research outline of NAMIDA0, a multi-party interaction driving agent, and its application based on the Nudge theory.
著者
鈴木 彩子 長谷川 貴通 泉川 洋亮 岡野 知道 佐藤 安信 米山 雄二
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.104, 2005 (Released:2005-12-08)

〔目的〕近年、住宅設備の進化に伴い、トイレは快適でキレイな空間と進化しつつあるが、生活者の多数は、トイレ空間に対して潜在的に不衛生感を抱いていると考えられる。そこで、本研究ではその潜在的な不衛生意識を探るため、尿ハネに着目、便器外側への飛散実態とそれに伴う微生物・臭気汚染の相関を明らかにした。〔方法〕尿ハネの飛散実態は、感水紙を用いて液滴計測により実施した(n=7平均)。また、菌分布については、実家庭にテストパネルを設置し、ふきふきチェック_II_(栄研器材)で拭き取り、TSA(トリプトソイアガー)およびマンニット食塩寒天培地にて培養、菌種別に定量調査した。尿の乾燥状態と臭気成分の関係については、6段階臭気強度表示法に従い官能評価を行った(n=3平均)。〔結果〕第56回大会にて、男性のトイレスタイルと便器のふち裏への尿ハネについて報告したが、さらに尿ハネは便器外側にも派生しており、特に、便器の手前部分の床で非常に多く、便器から20cm・幅50cmの範囲で、1回の小用あたり直径2mm以下の尿滴で平均約230個計測された。不衛生要因の実態については、菌汚染は実家庭のトイレでStaphylococcusやMicrococcus属の球菌やグラム陽性菌が検出され、尿の臭気は液状の時よりも乾燥状態に近づくほどその強度が、「明らかに感じる臭気レベル(3点)」から「耐えられない程度の強い臭気レベル(5点)」へと変化することを官能評価で確認した。さらに、尿ハネによって引き起こされる菌の増殖や臭気成分の変化との相関についても検証したので併せて報告する。
著者
中島 尚登 星 順隆 浅井 治 山本 純子 竹内 直子 神谷 昌弓 加藤 敦子 長谷川 智子 山崎 恵美 中山 一
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.795-802, 1991-12-25 (Released:2010-03-12)
参考文献数
18

A new red cell preservation solution is described in which the red cells may be stored for 42 and 49 days. An in vivo and vitro study of 42 and 49 days stored red cells with saline, adenine, glucose, mannitol (SAGM) preservation solution (OPTISOL, Terumo Corporation) was conducted using 20 healthy volunteers to document in vivo efficacy and analyze the validity of the 51Cr technique. Standard in vitro parameters of OPTISOL red cell concentrates were well preserved with low levels of hemolysis and high levels of red cell ATP which is compatible with their survival after 42 and 49 days storage. Osmotic pressure at hemolysis ending point of 42 and 49 days stored red cells did not change, while osmotic pressure at hemolysis starting point increased on 49 days. The red cell viscosity increased and scanning electron-microscopic studies showed that the majority of them became echinocyte and spherocyte on 49 days. In vivo autologous post-transfusion recovery was measured by using a 51Cr-labeled red cells. After 42 days of storage, post-transfusion 24-hour recovery averaged 82.3±8.4% and 48-hour recovery was 79.1±9.1%, and after 49 days, 24-hour recovery was 75.9±3.6%, but 48-hour recovery, which averaged 69.9±5.2%, was significantly lower.The present study reports in vivo and in vitro evaluation of a new red cell storage medium which allows high levels of post-transfusion recovery and permits without significant hemolysis. The results suggested that 42 days if a more suitable shelf life than 49 days.
著者
長谷川 瞬 國貞 雄治 坂口 紀史
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.413-418, 2020-08-10 (Released:2020-08-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

We investigated oxygen reduction reaction (ORR) activity of Pt single atoms and Pt sub-nano clusters (Pt1, Pt2 Pt3) on pristine and various light-element doped graphene using first-principles calculations based on density functional theory. We revealed that ORR activity of these systems shows so-called volcano plot with adsorption energy of an OH which is an ORR intermediate as well as bulk metal catalysts. Additionally, we note that ORR activity of Pt1 is higher than those of Pt2 and Pt3, and a support effect caused by light-elements doped graphene is more clearly observed in the cases of Pt1. Therefore, the combination of Pt1 and proper light-element doped graphene support is a promising candidate for designing a new catalyst that competes with the current fuel cell catalyst ; bulk Pt catalyst.
著者
長谷川 功 北西 滋 宮本 幸太 玉手 剛 野村 幸司 高木 優也
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.19-00028, (Released:2019-12-10)
参考文献数
77
被引用文献数
7

サクラマスとヤマメは,降海するか河川に留まるかというように生活史は異なるが,同種Oncorhynchus masou masouである。ただし,それぞれが利用される水域や目的はサクラマスは主に沿岸漁業,ヤマメは内水面の遊漁と異なる。また,現在の資源管理体制は両者の生物学的な共通・相違点は十分に考慮していない。そのため,一方の放流種苗が他方と交雑し,生活史の変化すなわちサクラマスとヤマメの資源組成が変化し得る等という懸念もある。本総説では,サクラマスとヤマメに関する先行研究から両者の性質を整理し,野生魚主体の包括的な資源管理を提言する。
著者
馬場 幸 寺本 信嗣 長谷川 浩 町田 綾子 秋下 雅弘 鳥羽 研二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.323-327, 2005-05-15 (Released:2011-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
9 10

嚥下障害のスクリーニングのために, ベッドサイドで実施可能な簡便な検査法がいくつか提唱されてきている. しかしながら, 痴呆を持つ高齢患者においては, それらの検査法の臨床的な有用性や限界について十分に検証されているとはいえない. 今回, 37例の入院患者 (平均年齢81.8±12歳) を対象として, 嚥下機能評価を, 反復唾液嚥下テスト (repetitive saliva swallowing test, 以下RSSTと略す) および簡易嚥下誘発試験 (simple swallowing provocation test, 以下SSPTと略す) を用いて実施し, 同時に認知能と言語コミュニケーション能力について, 改訂長谷川式簡易知能評価スケール (以下HDS-Rと略す) およびミニコミュニケーションテスト (以下MCTと略す) を用いて評価した. RSSTが実施できたのは22例のみであり (59%), 一方, SSPTは全例に実施可能であった. HDS-RスコアおよびMCTスコアは, RSST実施不可能群において, 実施可能群に比べ有意に低値を示した(HDS-R: 7±1 vs 15±3, p<0.01; MCT: 47±8 vs 81±5, p<0.01). また, RSSTにて異常反応は14例 (64%) に, SSPTでの異常反応は5例 (14%) に認められた. 異常反応を示した患者では, 認知能 (p<0.05) および言語コミュニケーション能力 (p<0.05) は有意に低下していた. また, SSPTにおいてむせのあるなしは, 認知能の影響がみられた. この結果より, RSSTは高齢患者における嚥下障害の検出に有用であるが, その適応については患者の認知能と言語コミュニケーション能力に影響されることが示唆された. 高齢者の嚥下障害についてその検査法を選択するうえで, 老年医学的総合評価を行うことは有用であると考えられた.
著者
長谷川 昌士 河井 秀夫 西脇 健司 向井 公一 北山 淳 三谷 保弘 高見 栄喜 Masashi Hasegawa Hideo Kawai Kenji Nishiwaki Kouiti Mukai Atsushi Kitayama Yasuhiro Mitani Hidenobu Takami
雑誌
四條畷学園大学リハビリテーション学部紀要 = Annual reports of Faculty of Rehabilitation, Shijonawate Gakuen University
巻号頁・発行日
vol.6, pp.13-18, 2010

高校吹奏楽部所属の1~3年生160名に、楽器の練習が影響していると考えられる身体症状についてアンケート調査を実施した. 結果は、チューバ奏者の多くが腰痛を訴えていた. サックス奏者やチューバ奏者には顎関節の痛みが発生していた. サックス奏者やチューバ奏者ならびにパーカッション奏者では利き手側の手関節や手指関節に関節痛が集中していた. また、整形外科的症状以外にも、頭痛、めまい、過呼吸、耳なり、倦怠感などの内科的症状が多くの学生に発生していた. これらの症状が改善できないまま学生は練習を継続していることもわかり、予防や対処法を検討していく必要があると考える.
著者
清水 厳郎 長谷川 聡 本村 芳樹 梅原 潤 中村 雅俊 草野 拳 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0363, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】肩関節の運動において回旋筋腱板の担う役割は重要である。回旋筋腱板の中でも肩の拘縮や変形性肩関節症の症例においては,肩甲下筋の柔軟性が問題となると報告されている。肩甲下筋のストレッチ方法については下垂位での外旋や最大挙上位での外旋などが推奨されているが,これは運動学や解剖学的な知見を基にしたものである。Murakiらは唯一,肩甲下筋のストレッチについての定量的な検証を行い,肩甲下筋の下部線維は肩甲骨面挙上,屈曲,外転,水平外転位からの外旋によって有意に伸張されたと報告している。しかしこれは新鮮遺体を用いた研究であり,生体を用いて定量的に検証した報告はない。そこで本研究では,せん断波エラストグラフィー機能を用いて生体における効果的な肩甲下筋のストレッチ方法を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人男性20名(平均年齢25.2±4.3歳)とし,対象筋は非利き手側の肩甲下筋とした。肩甲下筋の伸張の程度を示す弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,肩甲下筋の停止部に設定した関心領域にて求めた。測定誤差を最小化できるように,測定箇所を小結節部に統一し,3回の計測の平均値を算出した(ICC[1,3]:0.97~0.99)。弾性率は伸張の程度を示す指標で,弾性率の変化は高値を示すほど筋が伸張されていることを意味する測定肢位は下垂位(rest),下垂位外旋位(1st-ER),伸展位(Ext),水平外転位(Hab),90°外転位からの外旋位(2nd-ER)の5肢位における最終域とした。さらに,ExtとHabに対しては肩甲骨固定と外旋の有無の影響を調べるために肩甲骨固定(固定)・固定最終域での固定解除(解除)と外旋の条件を追加した。統計学的検定は,restに対する1st-ER,Ext,Hab,2nd-ERにBonferroni法で補正したt検定を行い,有意差が出た肢位に対してBonferroniの多重比較検定を行った。さらに伸展,水平外転に対して最終域,固定,解除の3条件にBonferroniの多重比較検定を,外旋の有無にt検定を行い,有意水準は5%とした。【結果】5肢位それぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はrestが64.7±9.1,1st-ERが84.9±21.4,Extが87.6±26.6,Habが95.0±35.6,2nd-ERが87.5±24.3であった。restに対し他の4肢位で弾性率が有意に高値を示し,多重比較の結果,それらの肢位間には有意な差は認めなかった。また,伸展,水平外転ともに固定は解除と比較して有意に高値を示したが,最終域と固定では有意な差を認めなかった。さらに,伸展・水平外転ともに外旋の有無で差を認めなかった。【結論】肩甲下筋のストレッチ方法としてこれまで報告されていた水平外転からの外旋や下垂位での外旋に加えて伸展や水平外転が効果的であり,さらに伸展と水平外転位においては肩甲骨を固定することでより小さい関節運動でストレッチ可能であることが示された。