著者
山川 勝史
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ウイルスに関する特性データを取り入れることで気流とは異なるウイルスの動きを利用し、インフルエンザ感染ルートの特定を目指した。人の呼吸による影響まで含めた詳細な室内流れを用いて、満員電車内や教室内における空気感染の特定に成功した。また一旦人間が吸い込んだウイルスの振る舞いについても、気管内流体計算により、ウイルスの毒性の違いによる感染の可能性についてまで言及できるレベルにまで到達することが出来た。
著者
安冨 歩 深尾 葉子 脇田 晴子 長崎 暢子 中村 尚司 生田 美智子 千葉 泉 西川 英彦 中山 俊秀 葛城 政明 苅部 直 渡辺 己 星 泉 小寺 敦 上田 貴子 椎野 若菜 與那覇 潤 黒田 明伸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

人間を含む生命の生きる力を「神秘」として捉え、その発揮を阻害する要因たる「暴力」を合理的に解明する研究戦略を「合理的な神秘主義」として見出した。こうして発揮される神秘的な力こそが秩序形成の原動力であり、それは個々人の魂の脱植民地化を通じて実現される。この側面を無視した秩序論は必然的に暴力を正当化することになる。
著者
前野 浩太郎
出版者
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

サバクトビバッタの母親は群生相化すると産卵数を減らす代わりに、大型の卵を産むことが知られており、本申請者はこの相変異が関係した繁殖能力の生理・生態学的研究に従事してきた。その中で、大型の卵から孵化した幼虫の方が小型のものよりも飢餓条件に強いことなどを明らかにしてきた。本種の生息地であるアフリカのサハラ砂漠で行ったフィールドワーク中に雌成虫が産卵する現場に遭遇した。一連の観察の中で、どのように群生相が行動し、交尾・繁殖しているのかを調査した。
著者
神谷 宣広
出版者
天理大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

ペルテス病(小児大腿骨頭壊死症)は大腿骨頭への血流不全により大腿骨頭の変形・圧潰をきたすとされ、歩行・起立困難となる難治性疾患である。国際的な報告から換算すると我が国では毎年小児600人に発症することが推定されるが本国での正確な疫学調査はない。発症の年齢幅は4歳から10歳に多く活発的な男児に多い傾向があるとされるが、スポーツ活動との因果関係も全く不明である。療育施設に入所して治療に3~4年を要したり、また、学童期に長期の免荷が必要となるため、学校生活・活動が制限されるだけでなく患者を支える家族に大変大きな負担を与える。それでも完全に治るとは限らない。これら病態発症や進行の機序は全く分かっておらず、有効な治療薬もない。対症療法として行われる免荷や手術方法はこの100年間大きく変わっておらず、有効である場合とそうでない場合が混在する。臨床的には病態が大きく悪化・進行する症例が多くあり、その予測が困難であることが挙げられる。本研究は、ペルテス病の病態を解明し、病態に基づいた治療薬を将来確立することを目的とした。本申請書では、その第一段階として、採取したペルテス病患者関節液を網羅的に解析することにより炎症起因物質(サイトカイン)の一種であるインターロイキン6が特異的に上昇していることが確認された。この知見は、ペルテス病患者の股関節MRI検査所見において、関節液貯留や滑膜炎が見られる結果を強く肯定するものであった。さらに、股関節関節液にインターロイキン6を分泌する組織として、関節液に接する関節軟骨が大きく関与している可能性が示唆された。ペルテス病の病態に炎症起因物質が関与している報告は世界的に初めてであり、本研究により今後ペルテス病の病態の理解が大きく進歩することが期待される(これらの新知見は国際論文にて発表した)。
著者
野口 晴子 田中 隆一 川村 顕 牛島 光一 別所 俊一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,2015年を「子どもの貧困対策元年」として,現場でのさまざまな取り組みが行われている足立区との協働の下,(1)足立区教育委員会・学力定着対策室・学力定着推進課によって,平成21~29年度に足立区の公立小・中学校に通学していた児童生徒全員を対象とした学力・体力・就学支援等に関する情報をパネルデータ化すること;(2)当該データに基づき,足立区における学力向上を目的とする多様な支援策の効果,並びに,教員の固定効果に対する実証分析を行うこと;(3)就学支援の状況から,子どもの人的資本の蓄積過程に対する,家計の経済状況の影響を定量的に詳らかにする.当該自治体において,首長や行政担当者,子どもの人的資本の蓄積の場である家庭や学校等とのネットワークを構築し,本研究が得た実証的知見の実行可能性について現場での検証を行うことであった.本研究により,足立区教育委員会が保有する子どもに関する様々な情報を統合し,異時点間での推移を観察・追跡することが可能な,2009-2018年における延べ約50万人のlongitudinal/panel dataを構築した.結果,就学援助状況と学力や肥満,及び,学力と体力や生活習慣との間には相関があること,学校や教師の学力に対する寄与度にはばらつきがあること,小学生基礎学習教室などによる早期の介入が学力向上につながること,さらには,小学校から中学校への進級に際し成績上位20%の児童の約30%強が区外の私立中学校へ進学すること,などが明らかにされた.こうした成果は,2018年9月学習院大学で開催された日本経済学会2018年度秋季大学特別セッション「東京都足立区公立小中学校全児童のパネルデータを用いた分析」をはじめとする国内外のセミナーやワークショップにおいて報告された.また,本成果は,政策に資するエビデンスとして議会等の政策決定の場でも議論された.
著者
山室 信一 小関 隆 岡田 暁生 伊藤 順二 王寺 賢太 久保 昭博 藤原 辰史 早瀬 晋三 河本 真理 小田川 大典 服部 伸 片山 杜秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究においては、女性や子ども更には植民地における異民族までが熱狂をもって戦争に参与していった心理的メカニズムと行動様式を、各国との比較において明らかにすることを目的とした。そこでは活字や画像、音楽、博覧会などのメディアが複合的に構成され、しかも複製技術の使用によって反復される戦争宣伝の実態を明らかにすることができた。そして、このメディア・ミックスを活用する重要性が認識されたことによって、外務省情報部や陸軍省新聞班などが創設されることとなった。戦争ロマンの比較研究から出発した本研究は、戦争宣伝の手法が「行政広報」や「営利本位の商業主義」に適用されていく歴史過程を明らかにすることによって、総力戦という体験が現代の日常生活といかに直結しているのかを析出した点で重要な成果を生んだ。
著者
冨山 毅 重田 利拓
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二枚貝の水管はカレイ類の稚魚にとって再生可能な食物として利用されることから、カレイ類による水管の利用実態および二枚貝水管の再生力を評価した。広島湾周辺の干潟域においては二枚貝の分布密度が低く、水管はわずかに利用されるだけであったが、仙台湾周辺の干潟域では高い割合で利用されていた。また、水管の短いアサリも量的に水管を再生させることが初めて証明されたが、その再生力は水管の長い二枚貝に比べて低いことが明らかとなった。
著者
澤田 昭三 中村 典 田中 公夫 李 俊益 美甘 和哉 佐藤 幸男
出版者
広島大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1988

ヒトのリンパ球は末梢血中では分裂しないので放射線の線量率依存性を調べるのには最適である。そこで細胞死を指標としてトリチウム水とガンマ線を同じ線量率、2Gy/hrと2Gy/day、つまり線量率を24分の11に下げた時の細胞生存率を調べたが、トリチウム水でもガンマ線と同程度の細胞生存率の上昇がみられた(中村)。同じくヒトのリンパ球染色体に及ぼすトリチウム水の影響を調べ、ガンマ線に対するRBEを求めた。今回は特に観察誤差の少ない=動原体染色体のみを指標として10〜50cGyの低線量域のRBEを正確に求め2.6(含水率70%)を得た(田中)。ヒト精子染色体に及ぼすトリチウム水の影響について前年度に引きつづいて調べた。線量も25〜17.3cGyの低線量域に主力をおき、2年間で合計3132精子の染色体分析を行った。染色体異常頻度は線量の増加とともに193cGyまでは直線的に増加したが、それ以上の線量では飽和に近ずき、直線にのらなくなった。これらの結果と今までに得ているX線のデータと比較してRBEを求めた。出現する種々の染色体異常を指標としたRBEは吸収線量を最低に見積った時は1.9〜3.0、最大の場合は1.04〜1.65となった(美甘)。マウス胎仔脳の発育に対するトリウチム水の影響を調べるための予備実験がガンマ線を使ってつづけられているが、脳細胞の致死を指標とする場合は、トリチウム水のような低線量率被爆の影響を正確に把握することは困難なことがわかった(佐藤)。マウスの妊性低下に及ぼすトリチウムの影響を調べたが、線量・効果が明確でないこと及びデータにばらつきがあって今後の研究が必要と思われた(李)。有機結合型トリチウムのマウス初期胚に与える影響を調べ、吸収線量を基礎としたLD_<50>は核酸結合型で約1/20、アミノ酸結合型では1/5ほどトリチウム水に比べて低かった(山田)。体内トリチウム水の排泄促進剤として二種類の利尿剤の併用効果をねらったが十分な結果はえられなかった(澤田)。
著者
牧野 利明 大澤 匡弘
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ハナトリカブトの根を減毒処理のために加熱加工した生薬である加工ブシの有効成分としてneolineを単離し、その神経障害性疼痛に対する有用性を明らかにしようと試みた。加工ブシ熱水抽出エキスは、指標成分であるbenzoylmesaconine (BM)を0.042%と最も多く含み、次いでneoline 0.026%、benzoylaconine (BA) 0.010%を含んでいた。この加工ブシをラットに経口投与後、経時的に採血し、各アルカロイドの血中濃度を測定したところ、15分後の血中からはその順で高濃度に検出された。一方、9時間におけるBM、neoline、BAの血中濃度曲線下面積は、それぞれ64、65、32 ng/mL・hrと、neolineとBMは同等の値を示したことから、BMと比較してneolineの生物学的利用能は比較的高いことが推測された。市販されている13種類の加工ブシ製剤中のneolineの含量は、0.042 ± 0.016%と高いバラツキがあり、また修治前のウズを減毒のために加熱加工処理しても、neolineの含量は変化しなかった。以上のことから、neolineのトリカブトの根中の含量は、加熱加工(修治)によるものではなく、トリカブトの栽培条件によることが推測された。Paclitaxicelによるマウス神経障害性疼痛に対して、加工ブシ末およびneolineは有意な緩和作用を示したものの、BMは有意な緩和作用を示さなかった。Neolineの作用機序の1つとして、Nav1.7に対するアンタゴニスト作用が認められた。以上のことから、加工ブシの神経障害性疼痛に対する有効成分は、指標成分であるBMではなく、neolineである可能性が示唆された。
著者
小田 裕昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

栄養・運動・睡眠は健康の要である。この3つの要素は生物時計という観点で見ると,統合的に制御できると考え、臓器間時計ネットワークの同調を介して代謝を正常化させて健康に結びつけるための分子的基盤を明らかにすることを目指した。摂食リズムが不規則になるモデルとして,ダラダラ食いや,夜食症候群モデルを作成してきたが,ヒトでも起きうる不規則な摂食タイミングとして朝食欠食を取り上げた。朝食欠食は,休息期から最初の食事が数時間だけ遅れるだけであるが,代謝異常が起きることが多くの研究で明らかになっている。朝食欠食モデルを作成して,様々な実験食を与えて,実験を行ってきた。高脂肪食では,肝臓時計と肝脂質代謝のリズムが数時間遅れるが,高コレステロール食では,肝臓時計が変化せずに肝脂質代謝が遅れた。いずれの場合も活動期の体温上昇が遅れることは同じであり,摂食タイミングの数時間の遅れが,脳視床下部の体温中枢へは同じ影響を与えていることがわかった。何を食べるかということと,そのタイミングが相乗的な効果を生んでいることが初めてわかったためその因子を検討しはじめることにした。時計リセット食品の探索の一貫として,まず三大栄養素の中でほとんど検討されてきてこなかった糖質について検討した。スクロースでは,肝脂質代謝の異常が生じることが知られているが,肝臓時計に影響を与えることはなかった。ところが,肝脂質代謝酵素のリズムを大きく変動させていた。これまで脂質代謝酵素のリズムは,肝臓時計の支配下にいると考えてきたが,食事成分が代謝のリズムを独立に制御することが明らかとなった。
著者
高田 礼人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

エボラウイルスは、ヒトまたはサルに急性で致死率の高い感染症(エボラ出血熱)をひき起こす病原体である。現在のところ、ワクチンや治療薬は実用化されていないが、2014年の西アフリカでの大流行と欧州や米国を含めた他国への拡散によって、予防・治療法開発が急務となった。中和抗体による受動免疫および既存の化合物が緊急的に用いられたが、実用化には大きな課題が残されている。(1)これまでに作製された治療用抗体は全てZaireウイルス特異的であり他の種のエボラウイルスには効果が無い。(2)投与された化合物の有効性がサルモデルで確認されていない事に加え、それらは細胞内で作用するウイルスポリメラーゼ阻害薬であるため、大量投与に伴う副作用が大きい。そこで、本研究では全てのエボラウイルス種に有効な抗体療法開発に繋がるマウスモノクローナル抗体の作出を試みると共にエボラウイルスの細胞侵入を阻害する新規化合物を探索し、エボラ出血熱治療薬の実用化を目指す。エボラウイルス(Zaire species)の表面糖蛋白質(GP)の遺伝子をゲノム内に組み込んだ増殖性の水疱性口炎ウイルスに感染させ回復したマウスに、エボラウイルス(Sudan species)のGPを持つウイルス様粒子を腹腔内投与してブーストする方法によって、昨年度得られた交差中和活性を示すモノクローナルIgG抗体2クローンおよびIgM抗体1クローンのエピトープ解析を行った。その結果、IgG抗体2クローンは既存の交差反応性中和抗体とエピトープを競合した。IgM抗体クローンは、異なるエピトープを認識すると予想されたため、IgG化し、エボラウイルス感染ハムスターモデルで受動免疫による効果を調べたが、治療効果は認められなかった。他方、fusion loopを認識する交差反応性抗体とGPとの結合構造の解析に着手し、Fabの結晶解析を終了し、GP-抗体複合体の電子顕微鏡による観察に成功した。
著者
伊川 正人
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

エネルギー産生などに重要な細胞内小器官であるミトコンドリアには、細胞核と独立したゲノムDNAが含まれる。また、ミトコンドリアDNAに変異があると、様々な病態を引き起こすことが知られている。今回、我々は最新の標的遺伝子組換え技術であるCRISPR/CAS9システムを活用することで、ミトコンドリアDNA (mtDNA) の標的遺伝子組換え技術を開発することを試みた。ES細胞でのミトコンドリア遺伝子破壊を試みたが、残念ながら、標的遺伝子が破壊された細胞株を得ることができなかった。今後は、ES細胞を用いて処理数を増やすと同時に、ミトコンドリア移行効率を上げるなどの、戦略変更の必要があると結論した。
著者
岡本 晶子 岩田 岳
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

視覚は生活の質の維持に重要な要素であり、視機能の再生・維持を目的として、iPS細胞を用いた細胞移植、チャネルロドプシンを用いた機能回復、人工網膜などの研究が進んでいる。一方で、網膜の内在性幹細胞を利用した神経細胞の再生源として、ミュラーグリア細胞が注目されてきた。本研究ではアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた遺伝子導入により、傷害時のミュラーグリア細胞の増殖とその後の神経細胞への分化を促進することを目的とし、候補因子の比較、網膜へのAAV導入効率を検討した。
著者
湯地 晃一郎 中田 はる佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

日本のHPVワクチン公費助成施策は、諸外国と比べ短期間で決定された。政策決定過程に影響を与えた因子について、国内の新聞・ウェブページ報道記事から関連キーワードを抽出解析した。キーワードの出現数は2010年に2峰性のピークを認め、肯定的なキーワードは新聞記事に多く、ウェブページ掲載記事では少なかった。接種推進運動と肯定的報道記事が、公費助成施策に大きな影響を与えたことが示唆された。
著者
岡村 敬二 米井 勝一郎 鞆谷 純一
出版者
京都ノートルダム女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、戦前期、外地に存在していた図書館や資料室において活動を展開した図書館員について、その履歴や職歴、活動の実績などを総合的に調査・研究しようとするものである。その目標に掲げたのは、これら図書館員の人名辞典的なデータベースを完成させることであった。それがこの3年間の研究により、この人名辞典の過半を完成させ、それを冊子体の科研報告書として刊行することができた。そしてこの研究により、戦前期外地の図書館・調査機関で活動した図書館員の全体像をおおむね明らかすることができた。さらに、かれらが、図書館員としての仕事とは別に活動を繰り広げた文学・美術・出版・演劇などの領域にあってもその活動実態が明確となり、それらの領域の研究に対しても文献的・書誌的な貢献ができるものと考えている。
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトに最も系統的に近いチンパンジーにみられる「妊娠しにくい」形質の進化の解明のため、ウガンダ共和国カリンズ森林保護区に生息する野生チンパンジーを対象に、直接観察によるメスの性行動のデータと、ヒト用妊娠検査キットを用いた妊娠時期の判定とをあわせて分析した。さらに、妊娠検査キットによる妊娠判定を一歩進め、2009年度より尿や糞試料によるホルモン分析の予備調査を行った。
著者
坂西 友秀
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究は、次の3点に焦点を当てて行った。(1)「人種ステレオタイプの経年変化を明らかにするために、1998年と2006年の学生の実験データを比較し、分析した。その結果、依然として多くの実験参加者は、伝統的な「人種」ステレオタイプを強く持っていた。「人種」デフォルメされた絵本「ちびくろさんぼ」の挿絵を5割の実験参加者が好み、ストーリーにふさわしい絵として選択した。また、1998年の実験では、年齢の高い社会人は学生に比べ、「人種」ステレオタイプを強く持つことが明らかになった。学生では、1998年と2006年の間に「人種」ステレオタイプの有意な減少は認められなかった。(2)日本における「人種」「民族」差別・偏見の歴史的背景を、社会心理学の視点から考察した。民族差別・偏見と民族のアイデンティティ形成の問題は、日本の旧植民地韓国における「創氏改名」を取りあげ分析を行った。また、日本の「黒人」差別の問題は、戦後の日本人女性とアメリカ人兵士の問に生まれた「混血児」問題を取りあげて分析を行った。(3)現代のマイノリティに対する偏見は、「障害者」に対する態度の調査を実施し分析を行った。ほとんどの学生は、自らはマイノリティに対して差別することはなく、偏見も持っていないと回答した。しかし、社会一般の人は、マイノリティに対して差別し、偏見を持つと回答する割合が高かった。これらの結果を統合し、心理-歴史的視点から、現代日本の「人種」「民族」ステレオタイプと偏見の形成過程と現状を報告書にまとめた。
著者
石黒 直隆 本郷 一美 寺井 洋平
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ニホンオオカミは古くからオオカミやヤマイヌと呼ばれてきた。江戸時代にシーボルトが蒐集した標本も含め海外の博物館に保管されている標本6点と日本で確認されたニホンオオカミの標本についてミトコンドリア(mt)DNA解析を行った。その結果、シーボルトのヤマイヌと呼ばれた標本のmtDNAは、ニホンオオカミ型であった。一方、ヤマイヌの標本は、形態的にニホンオオカミと少し異なることから、イヌとの交雑の可能性を強く示唆した。