著者
二宮 周平 KROGNESS K.J. KROGNESS K. J.
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度はワシントンDC(USA)の国立資料館において、戦後の戸籍制度の改編に係るGHQ/SCAPの資料の精査を行った。また、東京と京都において中国残留孤児の方々にインタビューを実施した。法務省、一宮市役所、京都府総合資料館において戸籍に関する資料の収集も行った。その成果として、ケンブリッジ大学(英国)で開催されたワークショップ"Workshop on the Comparative History of the Registration of Persons"(7-10 September,2010)において"A comparison of the Japanese and Korean Household Registration Systems since 2000"と題する講演を行った。また、ケンブリッジ大学の博士過程に在籍するG.M.Hansen氏とジェンダーに関連する共同研究も実施した。福井県立藤島高等学校においては、日本学術振興会のサイエンス・ダイアログ事業に係り"I Love You,I Love my Name: Marriage and surnames in Denmark and Japan."と題する招待講演を行った。この講演内容に手を加え、指導教員である二宮周平教授のアレンジで立命館宇治高等学校において再度講演を行った。この記事は2010年11月17日の朝日新聞に掲載された。同様の講義を立命館大学の学生サークルであるColor-freeにおいてLGBTI(lesbian, gay, bisexual, transgender, intersex)に焦点を当て行った。立命館ローレビューにデンマークの市民登録システムについての論文を執筆した。また、今後のより発展的な研究計画として、東アジアにおける家族をベースにした登録制度の比較研究のプランを京都大学、ボン大学、コペンハーゲン大学に提案している。Brill publishersより出版する予定の書籍"The Koseki Law and Koseki System 1868-2010"の原稿の執筆も進めた。
著者
飯本 武志 山西 弘城 藤本 登 吉川 肇子 三浦 竜一 林 瑠美子 掛布 智久 高木 利恵子 (森崎 利恵子) 尾崎 哲 三門 正吾 高畠 勇二 村石 幸正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

安全文化醸成のための基盤として、人材育成の中核となる教育者集団を主たるステークホルダーとし、彼らが必要とする教育モジュールを開発することを本研究の目的とした。放射線計測分野の視点では、大気圧空気GM計数管の仕組みを応用した教育用簡易放射線検出器を開発した。教育・社会心理学分野の視点では、さまざまな施設における放射線に関する情報の普及活動、諸外国における中高生やその教員に関する科学技術教育及び原子力・放射線教育の現状、専門家人材育成等の現状に関する調査を実施した。この情報を基に、放射線教育のための簡易ツールを開発し、それを用いての実践モジュールを策定、国内外の中学校、高校で試験運用した。
著者
松林 哲也 上田 路子 澤田 康幸
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では(1)自殺報道が一般の人々の自殺に与える影響、(2)これまでの自殺対策の効果の検証、(3)人々を取り巻く制度環境が自殺に与える影響、の3課題についての研究を推進してきた。統計分析の結果、著名人の自殺報道に対しツイート上で大きな反応があった場合にのみ自殺者数が増えること、経済状況の好転が自殺率の低下につながっている可能性があること、鉄道駅のホームドアには強い自殺防止効果があること、早生まれの若者の自殺率が高いこと、学年暦と若者の自殺数には強い相関があること、誕生日前後には自殺が増えることなどが明らかになった。
著者
内藤 芳篤 六反田 篤 分部 哲秋 松下 孝幸
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.人骨の発掘収集(1)長崎県対馬の上県郡峰町佐賀貝塚および壱岐の石田町大久保遺跡から合計7体の人骨を発掘収集し, 復原した.(2)対馬佐賀貝塚の縄文人骨および壱岐大久保遺跡の弥生人骨についてマルチン氏の方法により人類学的計測を行なうとともに, 長崎大学および他大学保管の両時代人骨と比較検討した.2.人骨の形質(1)対馬の縄文人骨, 男性における脳頭蓋の長幅示数は80.54で, 短頭型に属していた. 顔面頭蓋では, 上顔高が64mm, 中顔幅が103mmで上顔示数は62.14であった. 歯の咬合は鉗子状咬合であったが, 風習的抜歯は確認できなかった. ピアソン氏の方法による大腿骨からの推定身長は160.83cmであった. 他地方縄文人骨との比較では, 九州本土の縄文人骨と酷似し, 津雲, 関東の縄文人骨とも比較的近似していた.(2)壱岐の弥生人骨, 頭蓋諸径が著しく大きく, 男性における脳頭蓋の長幅指数は79.29で中頭型に属していた. 顔面頭蓋では, 上顔高が72mm, 中顔幅が119mmで, 上顔示数は60.50であった. また鼻根部は陥没し, 縄文人的形態をとどめていた. 歯の咬合は鉗子状咬合で, 右側上顎犬歯に風習的抜歯が認められた. 推定身長は158.20cmであった. 他地方弥生人骨との比較では, 低身・低顔を特徴とする西北九州の弥生人骨と近似し, 長身・高顔を特徴とする北部九州・山口地方の弥生人骨, あるいは朝鮮半島の同時代人骨とは異なっていた.3.今後の方針壱岐・対馬は地理的にみて人類学上きわめて重要な地域であり, 今後さらに人骨資料の収集, 研究につとめたい.
著者
塚原 丘美
出版者
名古屋学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

若年女性に多発する耐糖能異常の原因を解明するために、糖質制限によってインスリンの分泌能が低下するか検討した。健康な若年女性26名を被験者として、糖質30%の低糖質食を摂取する3ヶ月のオープン介入試験を行ない、介入前後の75gOGTTの結果を比較した。その結果、75gOGTTにおけるインスリン30分値及びインスリン初期分泌指数は有意に低下したが、インスリン感受性が有意に増加したために、血糖値に有意な差は認められなかった。一般化線形モデルを用いて検討した結果、インスリン分泌に影響を及ぼす因子は糖質摂取量の減少のみであった。3ヶ月間の低糖質食摂取により、インスリン分泌能が低下することが示唆された。
著者
藤井 麻湖(藤井真湖)
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究はモンゴル・フォークロアにおける馬の隠喩を『チンギス・ハーンの二頭の駿馬』をもとに考察したものである。チンギス・ハーンと密接な関係にあるため、モンゴルの古典『元朝秘史』研究と連動していることが本研究の特徴である。黄河湾曲部のオルドス地域は当該伝承の中心の地であるが、『元朝秘史』によればこの地を賜ったのはタタル部のイェスイ妃である。馬が女性、とくに非正妻を意味するという観点から二頭の馬をみるとき、チンギス・ハーンの非正妻であるタタル部出身のイェスイ妃とイェスゲン妃の二人の姉妹がモデルとして浮上してくる。
著者
宮澤 啓輔
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

瀬戸内海産下等底生動物におけるフグ毒(tetrodotoxin、TTXと略記)の分布起源、蓄積機構を解明する目的で、実験を行ない、以下の諸結果を得た。すでに他地域と同様、TTXの保有を確認した棘皮動物トゲモミジガイ(Astropecten polyacanthus)の毒性調査の結果、季節変動では生殖期に高毒性を示すこと、体内分布では卵巣の毒性が著しく高い(最高12700MU^^ー/g)こと等を認めた。また筆者らがすでにTTXによる毒化を確認している扁形動物オオツノヒラムシ(Planocera multitentaculata)では、成熟卵を含む輸卵管の毒性が高く、消化管がこれに次ぐことを認めた。さらにオオツノヒラムシの産出卵の毒性は極めて高く、最高10700MU^^ー/gに達し、親のwhole bodyの毒性の数10倍を示した。またトゲモミジガイでは卵巣の毒性が高いため、whole bodyの平均毒性で、雌は雄の約2.5倍を示した。このように卵巣あるいは卵の毒性が高いことは、フグやカリフォルニアイモリと同様、TTXが生体防御物質として存在する可能性を示唆した。次にオオツノヒラムシ消化管から、かなり強力なTTX産生能をもつ細菌、Vibrio sp.を分離し、これがヒラムシのTTXの起源である可能性を示した。また扁形動物と近縁の紐形物動のミドリヒモムシ(Lineus fusroviridis)、クリゲヒモムシ(Tubulanus punctatus)等ヒモムシ類にTTXとその関連物質の存在を初めて確認し、TTXの分布を紐形動物に拡大した。またヒモムシ類の部位別TTX含量を調べた結果、吻が最も高濃度であることを認めた。吻に高濃度のTTXを持つことは、TTXを餌動物の捕獲、敵からの防御の手段として使っている可能性がある。この外、環形動物のウロコムシ(Lepidonotus sp.)や腔腸動物のイソギンチャク(Actirua sp.)等にも初めてTTXを検出した。
著者
高橋 敏子 久留島 典子 山部 浩樹 高橋 慎一朗 金子 拓 馬田 綾子 池田 好信
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

中世東寺を統括していた長者・凡僧別当・執行などに関する史料を系統的に調査した結果、「東寺長者補任」の諸本、「東寺凡僧別当引付」、京都国立博物館所蔵「阿刀家伝世資料」、天理大学附属天理図書館所蔵「東寺執行日記」、「東寺過去帳」などの写真や情報を収集することができた。その上で、これまで行われてこなかったこれらの史料学的検討を行った。1.「東寺長者補任」諸本の調査とそれらの史料学的考察の結果、従来認識されていなかった長者補任の類型を抽出することができた。さらに、諸本それぞれの特徴を提示するとともに、いくつかの補任については作成者を確定することもできた。2.「東寺執行日記」については、これまで研究の素材として主に利用されてきたのは内閣文庫所蔵の二種類の写本であったが、今回の調査によって天理図書館所蔵のより良い写本を発見することができた。今後は、こちらが研究の基礎史料になると考える。3.「東寺文書」「東寺百合文書」「教王護国寺文書」など、これまで利用されてきた東寺関係史料に「阿刀家伝世資料」を加えて分析することによって、平安時代から近世初期に至る東寺執行職の歴代を確定し、その根拠となる史料を翻刻提示した。また執行の職務内容についても検討し、新たな知見をえた。4.東寺に伝来してきた複数の「過去帳」について、それぞれの性格を確定した。また、東寺と関係の深い醍醐寺の過去帳分析も行った。今後も収集史料の史料学的研究を継続するとともに、「東寺執行日記」のテキスト化を行う予定である。
著者
山口 二郎 マグル アンソニー ヘルド デヴィット 川崎 修 MCGREW Tony HELD David アンソニー マグル デヴィッド ヘルド アンソニー マグルー デヴィッド・ヘルド ヘルド
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

研究計画の最終年度に当たる今年は、経済のグローバル化が各国の国内政治体制に与える影響について総括的なまとめを行い、ポスト主権国家時代における民主主義体制の新たなモデルの構築を行うことが目標であった。プラザ合意およびガットからWTO(世界貿易機構)への移行と過去十年、先進国の政治システムを取り巻く国際環境は大きく変動し、各国の政策を規定する独立変数としてこれらの国際機構、非制度的な国際協力システム、さらに条約の存在がきわめて重要な意味を持つに至った。今回の比較研究の結果得られた最大の知見は、これらの国際的な政策の標準、規格が各国に浸透することによって、従来の政治的な対立軸とは違った次元で新たな政治的対抗軸が出現しつつあるという事実であった。経済政策の関する国際的標準の浸透をグローバル化と呼んでおく。グローバル化の主たる柱は、政府規制の縮小、財・サービスの貿易の自由化、企業に対する税制の下方への共通化である。一方で各国の指導者レベルでは、サミット、G7首脳会議、APECなどこれらの政策の国際的標準かを協議する機会が近年ますます増えており、指導者におけるグローバル化へのコミットメントは深まりつつある。しかし、グローバル化は各国の国内政治において強いリパ-カッションを引き起こし、それぞれの国の政党システムや政党の支持基盤を大きく揺るがすに至った。日本については山口が経済政策、財政・金融政策についてケーススタディを行った。そこでは、いわゆる55年体制の崩壊について、当時の与党の内粉など政党内の政治力学的要因によって説明できるとする一般的見解に対して、巨視的に見た場合、自民党政権による国内の各セクターに対する保護と引き替えに成立・持続してきた55年体制が、グローバル化によってその基盤を堀り崩されてきている点に注目すべきことを指摘した。もちろん、政治変動の引き金は与党内の権力抗争が引いたにせよ、グローバル化を推進することによって利益を得るセクターと政治力を使ってグローバル化を阻止することに全力を挙げるセクターとの間の矛盾の中で政党自体が意志決定不全状態に陥っている。この点は、55年体制以後の政党再編成の中でも中心的な争点となる。ヨーロッパ、アメリカについてヘルド、マグル-が事例研究をふまえた分析を加えた。ヨーロッパの場合、EUという地域レベルでのセミ・グローバル化が進み、国内政治へのショックが小幅なものになった。しかし、通貨統合については各国で国益優先主義と統合優先主義との対立が起こり、EUの統治能力が問われている。アメリカでは、NAFTAの締結によってグローバル化はさらに拍車がかかり、国内政治の基盤も変化した。農民組合、労働組合、製造業者など伝統的に影響力を持ったセクターは政治的に交代し、民生、共和を問わず新しい指導者はグローバル化によって利益を得るセクターを支持基盤に取り込もうとしている。グローバル化から落ちこぼれるセクターは第三政党の結成や、共和党内際保守派(孤立主義派)への支持に向かっている。いずれの場合でも、既存の政党はグローバル化に対して一致した対応をとることはできず、政党横断的な形でグローバル化に対する態度が分かれていることが共通している。1990年代後半に日本のみならず、ヨーロッパ、北米でそれぞれ政党政治の危機がいわれ、政党再編成の可能性が論じられる背景には、グローバル化に対して政党が共通の利益を発見できないという事実が損するという点で参加者の見解が一致した。こうした事態は、従来の政党政治や民主主義に関する古典的なモデルの限界を物語る。川崎はこうした変化を受けた民主主義、政治権力の再編成について試論を提示した。政治権力を2層に分け、古典的な資源配分にかかわる権力のシステムと、こうした各国の権力システムの存立の基盤自体を操作するハイパー・システムとしての権力を想定する必要があるというものである。
著者
山口 二郎 酒井 哲哉 村上 信一郎 新川 敏光 中北 浩爾 米原 謙 石川 真澄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1990年代後半には、英、独、仏の三カ国で社会民主主義政党の再生が起こり、イタリアでは政党再編成の中で中道左派連合が政権を獲得した。日本でも同じように政治改革を契機とする政党再編成の動きがあったにもかかわらず、社会民主主義政党の衰弱、事実上の退場という対照的な現象が起こった。その原因は次の諸点に求められる。第1に、日本社会党が1950年代後半に政権政党としての政策構想を放棄して以来、野党化の論理の中に埋没した。護憲平和主義が野党としての存在を正当化する最大の根拠となった。第2に、自民党政権時代に整備された地方重視の公共投資や弱小産業保護のための規制政策が、社会的平準化とセーフティネットの役割を代替し、本来の社会民主主義の出番がなくなった。この点はイタリアとよく似た状況であったが、イタリアの場合左翼政党の連合がEU加盟という国家目標に沿って自由主義的な改革を取り入れ、政権担当能力を示したのに対して、日本の場合社会党が規制緩和や官僚制改革について政策を示せなかったことで、90年代の政治において周辺的な地位に追いやられた。第3に、労働組合という旧来の支持基盤の衰弱、市民の台頭という有権者意識の変化に対応できなかった。これらの要因によって1990年代の日本で社会民主主義政党が衰滅していったが、新自由主義的な構造改革によって旧来の擬似セーフティネットが壊されたのちには、再び新たな社会民主主義的政策を軸にした政治勢力の結集が可能となる可能性もある。
著者
頼高 朝子 深江 治郎 渡辺 宏久 三輪 英人 志村 秀樹 河尻 澄宏 下 泰司 前田 哲也 大塚 千久美 山田 大介 富山 誠彦 阿部 隆志 平沢 基之 木原 武士 斎木 英資 鈴木 千賀子 風間 明日香 大野 欽司 伊藤 美佳子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

水素分子はパーキンソン病(PD)疾患モデル動物のドパミン神経細胞の減少を抑制した。この事実を基にレボドパ内服中のPD患者に対して水素水を48週間飲水させた無作為化二重盲検試験でその症状を改善させた。初期及び進行例を含めたPD患者に対象拡大し72週に延長し、無作為化二重盲検並行群間試験を14施設で実施した。レボドパ未内服の患者を含めた178例を登録し、水素水群91例とプラセボ群86例に試験水を1日1l飲水した。水素水による有害事象は認めなかった。主要評価であるPD評価スケールの開始時から72週目までの変化量は水素水群とプラセボ群で統計学的な有意差は認めず、有効性は認めなかった。
著者
室井 尚 佐藤 守弘 吉田 寛 吉岡 洋 秋庭 史典 島本 浣 安田 昌弘 小松 正史 吉村 和真 前川 修 大久保 美紀 丸山 美佳
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

本研究は5名の研究代表者、分担者を中心とした研究会を複数回開催するとともに、大規模な公開研究集会を年に一回開催し、その成果を映像記録や報告書にまとめることによって、一般からもその成果に対する広い関心を集めることができた。最終年度には報告書として論文集を公刊した。また2014年の国際記号学会においてはラウンドテーブルを組織して、海外の研究者との議論を深めることができた。これらの研究活動によって新しい理論的な枠組の構築に結びつけることができた。本研究はポピュラー文化に関する美学的アプローチの最先端の成果を挙げることができた。
著者
中村 靖子 大平 英樹 金 明哲 池野 絢子 重見 晋也 葉柳 和則 中川 拓哉
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-07-17

本研究は、独伊仏日の四カ国語圏にまたがって愛国的文化運動や、公共芸術や文化遺産保護運動、文芸誌とその検閲などを対象とし、ファシズム期のスイス、イタリア、日本、フランスにおける集合的記憶の構成過程を辿ろうとする領域横断型の学際プロジェクトである。四つの言語圏における文化運動のオラリティ資料を介して、人間の社会に情動が広範なムーヴメントを創り出すメカニズムを考察しようとするものであり、伝統的な人文学が培ってきた文献研究のスキルとテキストマイニング手法が共同することにより上記の目的を達成することが可能になると期待できる。
著者
荒谷 聡子 中島 利博
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

線維筋痛症 (FM) は全身性の強い慢性疼痛を主訴とする疾患である。発症原因は不明であり、根本的な治療法の確立されていない。我々は FM における小胞体ストレス分解、ミトコンドリア機能に注目してきた。本研究では神経特異的シノビオリン欠損マウス、FMの病態モデルマウスを作製また患者よりリンパ球を分離し、これらを用いて個体内での病因・病態解析を目的としている。臨床において FM 様の病態を引き起こすことが示唆されているワクチンを用いてモデルマウスの作製を試みたところ、尾の緊張および運動協調性低下を示すマウスが得られた。また FM 様の症状に視床下部の機能が関与していることが示唆された。
著者
渡邉 英幸
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の成果概要は以下の通り。まず里耶秦簡の「更名扁書」(公的用語の改定リスト)を読解することで、戦国秦から統一秦にかけての国制変革を検討し、秦の官職名における「邦」概念の廃止の背後にあった国制上の変革を明らかにし、また始皇帝期の避諱に関する条文が、始皇帝の父母の名である「楚」「生」を避けるものであったと考えられることを発見した。次に、戦国末の秦における国境を越える人の移動と帰属の諸相を解明した。さらに、戦国秦から統一秦にかけての畿内領域の呼称の展開と「邦」概念との関係を論じた。
著者
安藤 美樹
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を体外で増幅して再び患者体内に戻す養子免疫T細胞療法は、悪性黒色腫などの一部の腫瘍で持続寛解を得ることができるが、多くの腫瘍では慢性的な抗原暴露によりCTLが疲弊し、期待した程の効果を得ることができない。我々の研究グループでは抗原特異的CTLをiPS技術を用いて機能的に若返らせる技術を開発した。iPS細胞より再分化誘導されたCTLはもとの抗原特異性を保ったまま、より強い増殖能を持つ。2015年にはiPS細胞由来CTLがEBウイルス関連腫瘍を効率よく縮小させることをマウスモデルで証明し、現在医師主導型臨床研究を目指して前臨床試験を行なっている。現在までに13名のEBウイルス関連リンパ腫患者(節外性NK/T細胞リンパ腫鼻型3名、ホジキンリンパ腫2名、び漫性大細胞型B細胞リンパ腫3名、メソトレキセート関連リンパ増殖性疾患5名)と1名の健常人ドナーにご登録いただいた。最初にHLAを調べたところ、ほとんどのドナーがA2402もしくはA0201などの一般的なHLA型を持っていることがわかった。その後末梢血よりLMP1, LMP2, BZLF1など様々なEBウイルス抗原に特異的なCTLの誘導に成功し、更にT-iPS細胞樹立とiPS細胞由来CTLの誘導に成功した。誘導開始した患者で、CTLを誘導できなかった患者はステロイドを長期間内服している患者1名のみであった。臨床用プロトコールを作成し、作成期間を大幅に短縮することができた。現在マウスモデルを用いて,投与方法や投与量を検討している。
著者
奥村 弘 市沢 哲 坂江 渉 佐々木 和子 平川 新 矢田 俊文 今津 勝紀 小林 准士 寺内 浩 足立 裕司 内田 俊秀 久留島 浩 伊藤 明弘 松下 正和 添田 仁 三村 昌司 多仁 照廣
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

大規模自然災害と地域社会の急激な構造転換の中で、歴史資料は滅失の危機にある。その保存活用を研究する新たな学として地域歴史資料学の構築をめざした。その成果は、第1に、地域住民もまた保存活用の主体と考え地域歴史資料を次世代につなぐ体系的な研究手法を構築しえたことにある。第2は、それを可能とする具体的な地域歴史資料の保存と修復の方法を組み込んだことである。第3は、科研の中間で起こった東日本大震災での地域歴史資料保存について理念と具体的な方法を提示するとともに、全国的な研究者ネットワークによる支援体制を構築したことである。第4は、地域歴史資料学をグローバルイシューとして国際的に発信したことである。