著者
上田 芳孝 倉田 純一 内山 寛信 山口 淳
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
福祉工学シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.62-63, 2008-09-17

Many elderly people find rehabilitation training pleasurable at first, but difficult to continue. One of the causes is the monotony of the training. In order to reduce this, we developed a foot-operated wheelchair called the "Step Walker" for walk rehabilitation training which allows the patient more freedom of movement. The Step Walker has a pedal with a linkage mechanism and can move forward when the patient performs the step movement. Musclar power can be improved by using this wheelchair, without the patient being conscious of training. Measurement of the action potential of the muscles during Step Walker use and walking showed the muscles of the leg required for walking could be effectively trained by using this Step Walker.
著者
鎌倉 哲史 馬場 章
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.47-57, 2011

本研究は小学校6年生85名を対象として,情報技術の記録性の特性に関する実体験に基づく情報モラル教育を実施し,その教育効果を検討したものである.実験の結果,MMORPGの実体験と行動ログのフィードバックを受けた実験群は,統制群と比較して記録性に関するテスト成績が有意に大きく向上した.また,実験群の子ども達は事前と比較して事後にインターネットの利活用意識と利用不安感が有意に増加していた.上記の教育効果は5ヵ月後にも持続しており,本研究の方法に一定の教育効果があることが示された.
著者
池上 幸江 山田 和彦 池本 真二 倉田 澄子 清水 俊雄 藤澤 由美子 由田 克士 和田 政裕 坂本 元子
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.285-302, 2008-12-10
被引用文献数
3 7

食品成分表示・栄養教育検討委員会ではこれまで栄養成分表示に関する調査を行い,報告書として発表し,また栄養成分表示や健康強調表示に関するシンポジウムなどを開催してきた。前期の委員会では栄養成分表示と健康強調表示に関する意識調査を多様な対象者について行った。今期はこの調査結果を以前の調査と比較しながら,報告書としてまとめることとした。また,今後は新たな調査も加えて,栄養教育の観点から栄養成分表示や健康強調表示のあり方について,一定の見解をまとめた。本調査では,栄養成分表示,健康強調表示については,特定保健用食品や栄養機能食品,「いわゆる健康食品」について,認知,利用,情報源などについて調査した。その結果,<br>(1) 栄養成分表示は広く見られており,健康維持や増進のために利用されている。しかし,現状の表示は分かりにくく,また対象食品が限られていることから,消費者は改善を望んでいる。これらの結果は前回調査と同様であった。<br>(2) 特定保健用食品の認知度はきわめて高く,利用もされていた。とくに若い世代,学生での認知や利用が高いが,高齢者や生活雑誌読者での利用は低かった。他方,関心のある保健の用途は「体に脂肪が付きにくい」や「お腹の調子を整える」,「腸内環境を整える」などであった。しかし,保健の用途の関心と成分の関連には十分な認識がなく,消費者への情報提供が十分ではないと思われた。<br>(3) 栄養機能食品に対する認知や利用は特定保健用食品に比べると低かったが,世代間の傾向は(2)の特定保健用食品と同様であった。<br>(4)「いわゆる健康食品」の利用については特定保健用食品の利用とは異なる傾向を示した。すなわち年齢階層による差異が少なく,高齢者による利用も高く,特定保健用食品とは異なっていた。<br> 「いわゆる健康食品」に関する情報源はテレビや知人・友人からのものが多く,科学的な根拠の入手が困難な状況にあることを反映している。今後「いわゆる健康食品」の有用性や安全性の確保についてどのような制度を作るかが課題と思われる。
著者
喜田 宏 伊藤 壽啓 梅村 孝司 藤田 正一 前出 吉光 中里 幸和 高田 礼人 岡崎 克則 板倉 智敏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ウイルスの病原性発現機構を宿主側の要因を詳細に解析することによって究明することを目的とした。そのため、ウイルス感染によって誘発される宿主細胞由来病原性因子の検出を試みた。インフルエンザウイルス感染発育鶏胚の奨尿膜を超音波破砕し、その可溶性画分をニワトリの静脈内に注射した。ニワトリは汎発性血管内凝固により数分以内に斃死した。この致死活性はヘパリンを静脈内に前投与することによって抑制されたことから、本因子は血液凝固に関与する物質と推定された。陰イオン交換体を用いた高速液体クロマトグラフィーおよび塩析法によって病原性細胞因子を濃縮精製する系を確立し、粗精製致死因子をマウスに免疫して、モノクローナル抗体11クローンを作出した。ニワトリの鼻腔内にインフルエンザウイルス強毒株と弱毒株を実験感染させ、経過を追及した。強毒株はウイルス血症を起こしたが、弱毒株はウイルス血症を起こさなかった。すなわち、強毒株を接種したニワトリでは全身臓器の血管内皮細胞でウイルス増殖が起こり、血管炎を招来した。強毒株の標的が血管内皮細胞であることが明らかになった。損傷した血管内皮細胞から血液凝固因子ならびにサイトカインが放出された結果、汎発性血管内血液凝固を起こし、ニワトリを死に至らしめるものと結論した。この成績はインフルエンザウイルス感染鶏胚奨尿膜から抽出した細胞因子がニワトリに血管内凝固を起す事実と一致する。汎発性血管内血液凝固症候群は様々なウイルス感染症で認められる。したがって、この細胞因子はインフルエンザのみならず他のウイルス感染症においても病原性発現に重要な役割を果たすものと考えられる。ウイルス感染症の治療法を確立するため、本致死因子をコードする遺伝子を同定する必要がある。
著者
名倉 秀子 大越 ひろ 茂木 美智子 柏木 宣久
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.361-369, 1999-04-15
被引用文献数
7

A questionnaire survey was conducted annually on the meal times during the first 3 days of New Year for the period 1986-1995. A total of 1,435 questionnaires to female college students were returned during the 10-year period, and the data were subjected to a time-series analysis. The ratio of persons eating per responder on each hour were analyzed by the Bayesian smoothing method to identify meal-time trends on a yearly and daily basis. The meal time on the first day indicated 2 peaks at about 10 A.M. and 7 P.M., and on the second and the third days showed 3 peaks at 9 A.M., 12 AM. and 7 P.M. These peaks tended to become less prominent year by year. Special New Year dishes were often eaten at about 10 A.M. on the first day, indicating a different dietary habit in food type and timing from the normal daily one. By the third day, however, the meal time and food type had almost returned to the daily dietary habit. The trend over 10 years moved closer to the daily dietary habit.
著者
佐藤 奨 坂野 秀樹 板倉 文忠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.97, pp.41-46, 2011-06-16

本研究は,楽曲推薦の特徴量に利用出来るような音響特徴量,特にラウドロック系の楽曲を特徴付ける音響特徴量の提案をする.ラウドロック系の楽曲は,歪んだ音を出すエレキギター及びベース,激しく叩くドラムの音が特徴的であり,上記の楽曲と,それ以外の楽曲とを混在させた曲順で聴くことはほとんどない.よって,両者を分類できる特徴量は,有用な特徴量となることが期待できる.本稿では,提案した音響特徴量を用いて,ラウドロック系,J-pop,ニューエイジ系の自動ジャンル分類実験により客観評価を行った.最も良い条件の場合,ラウドロック系の楽曲とそれ以外の楽曲とを区別する2ジャンルの識別率が97%,3ジャンルの識別率が87%となった.さらに,この音響特徴量が楽曲の印象とどのような対応があるのか,印象尺度を用いた主観評価実験を行った.その結果,音響特徴量と「激しい」「騒々しい」「優しい」といった印象との間に,強い相関があることが確認され,提案する音響特徴量が,主観的尺度と対応することが明らかになった.
著者
板倉 昭二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究課題では、乳幼児が、他者にも自分と同様に「心」があることを理解し、そうした他者の心の概念の発達過程を分析することを目的とした。そして、それに関連する複数の実験的分析をおこなった。以下、おもな成果を概略する。まず、1)ロボットを対象とした誤信念課題の実験から、幼児は、ヒトに対するのと同様にロボットにも誤信念を帰属させたが、「考える」といったような心的動詞は帰属させないことがわかった。そこに、ヒトとロボットに対する評価の違いが明確になった。2)「他者の心」を表象するためには、シンボルの二重表象性を理解する必要がある。そのことを検討するため、スケールモデル課題を用いて、2歳児と3歳児を対象に、その発達を調べた。その結果、シンボルの二重表象の理解は、2歳半から3歳にかけて劇的に発達することが明らかになった。3)テレビに映った映像と実際の映像はどのように関連づけられるのだろうか。ヒトと同じ霊長類のテナガザルを対象として、選択課題の手がかりを映像の中で呈示する条件と、実際に呈示する条件で正答率を調べたが、どちらの条件でも差は見られなかった。同様のことをヒト幼児で検討するため、データを収集している。4)乳児を対象として、コンピューター画面に呈示されるアニメーションオブジェクトに心的状態を帰属させるか否かの検討を通して、基礎的な「心」の想定条件を調べた。その結果、ある物体の行為を邪魔しているように見える物体よりも、その行為を達成するために援助しているように見える物体のほうを好んで見ることがわかった。
著者
名倉 豊
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

現在、最も安全な輸血とされている自己血輸血の問題として凝集塊形成による返血不能や、返血時の発熱反応・血圧低下などの非溶血性副作用の発生が挙げられる。これらの主な原因として、自己血中に含まれる白血球の関与が考えられる。同種血輸血製剤による非溶血性副作用の防止策として、赤十字血液センターでは全ての同種血製剤に対して、保存前白血球除去を導入している。本研究では、自己血の保存前白血球除去(以下、白除)の有用性について検討を行った。その結果、白除処理により白血球および血小板は効率よく除去されていた。一方、赤血球は白除処理の影響を受けず、高い回収率であった。白除した自己血では凝集塊形成を認めず、返血時に問題も認めなかった。自己血中のサイトカイン・ケモカイン濃度を測定したところ、白除処理により、不変のものから顕著な減少を示すものまで様々であった。さらに、これらのサイトカイン・ケモカインが血小板凝集塊形成に及ぼす影響を検討するため、白血球の存在下及び非存在下において血小板に添加し、凝集塊形成を評価した。その結果、白血球非存在下で血小板凝集は認めないものの、白血球の存在下でサイトカイン・ケモカインを添付すると血小板凝集が認められた。また、血小板と白血球の接着について検討を加えた結果、サイトカイン・ケモカイン処理により、接着率が増加した。このことから、サイトカイン・ケモカイン刺激による血小板凝集には、白血球の存在必要不可欠であることが確認された。したがって、自己血の保存前白除により、白血球および血小板が効率よく除去され、これらが産生するサイトカイン・ケモカイン濃度の上昇を防止することが可能であり、その結果として凝集塊形成の抑制及び非溶血性副作用の防止が可能と考えられた。自己血の安全性向上に、保存前白除の導入は重要と考えられる。
著者
小倉 宗
出版者
法制史学会
雑誌
法制史研究 (ISSN:04412508)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.57, pp.85-122,en6, 2007 (Released:2013-04-01)

本稿では、近世中後期の江戸幕府において、公事方御定書とともに最重要の法源であった御仕置例類集を主にとりあげ、仕置に関することがらを中心に、関東とならぶ幕府の拠点地域である上方の支配を検討した。その際、上方の内部や江戸との間において、幕府役人が行政・裁判を処理する過程や権限に注目した。(1)幕府の上方役人は、伺とそれに対する指示という同じ過程のなかで、行政と裁判を一体的・連続的に処理し、すでに発生している問題を個別的に解決するとともに、今後発生する問題について一般的に対処するための規則や制度を設定・変更していた。(2)上方役人の伺には、上方の奉行より京都の所司代や大坂城代への伺(上方奉行伺)、所司代や大坂城代より江戸の老中への伺(所司代伺・大坂城代伺)、上方奉行より老中への伺(江戸上り伺)、の三通りがあった。また、上方奉行と老中のやりとりは、伺とそれに対する指示との両面において、所司代や大坂城代による監督・仲介のもとになされた。(3)所司代や大坂城代は、老中と同じ形式の文書を用いながら、上方奉行の伺に対して自ら決定・指示し、仕置をはじめとするさまざまな問題が上方の内部で処理されていた。延享元年(一七四四)に、仕置をめぐる所司代・大坂城代と上方奉行との関係が確立され、天明八年(一七八八)には、所司代や大坂城代が自ら指示しうる仕置の範囲は大幅に拡大された。(4)京都・大坂町奉行は、所司代や大坂城代のもと、それらの監督・担当する業務の全般にわたって調査・答申するという特別な役割を果たしていた。そうしたあり方は、老中のもとにある評定所のあり方と同様であり、上方における、所司代・大坂城代と京都・大坂町奉行の関係は、江戸における老中と評定所の関係と相似であった。
著者
山下 則子 武井 協三 神作 研一 小林 健二 井田 太郎 浅野 秀剛 延広 真治 加藤 定彦 佐藤 恵里 原 道生 キャンベル ロバート 倉橋 正恵
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

この研究は、日本の近世の文学・芸能・絵画に共通して見られる表現様式を明らかにすることを目的としている。研究成果は、2013年に開催された展示とシンポジウム、それらも含めた研究成果報告書『図説 江戸の「表現」 浮世絵・文学・芸能』(全349頁・2014年3月・八木書店)である。この本は、近世的表現様式を持つ作品の歴史的な背景や、学術的な位置づけなどを論じたものである。これらの解説や論文は、最新の研究を踏まえて、更に新しい発見を加えたものである。
著者
近藤 雅樹 佐々木 史郎 宇野 文男 宮坂 正英 熊倉 功夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

平成17年度は北欧・東欧・ロシア(サンクトペテルブルグ)に所在する博物館のコレクションを重点的に調査し、近藤・佐々木・水口千里(研究協力者)・宮坂がその中心となり、コペンハーゲンとストックホルムでの調査に伊藤廣之(研究協力者)・藤井裕之(同)が参加した。また宮坂と小林淳一(研究協力者)がライデンとミュンヘンにおいて川原慶賀の作成した動植物の標本画と風俗画の調査をおこなった。ストックホルムでは国立民族学博物館が所蔵するツンベリーの収集資料(100点余)を調査し、金属製ボタン12点などを確認した。彼が持ち帰ることができた資料は小さなものばかりだった。日本資料とされる秤量器具の中には干の中国製品が混在していた。彼以後の収集に係る能面約50点をはじめとする工芸品類、和蝋燭、刻煙草、海藻などの産業資料も確認した。コペンハーゲンでは国立博物館において非公開資料の特別閲覧が許可され、和紙のコレクションや人力車とその乗客の生人形1体などを確認した。同館の常設展示は目本展示が非常に充実している。これは、同館のカイ=ビルケット・スミスと岡正雄の親交が深かったことにもよるが、民族学・考古学資料に限らず美術工芸資料と科学・産業技術資料にも見るべきものが多い。ドレスデンでは民族学博物館と衛生博物館に20世紀初期の衛生博覧会に日本が出品した資料が多数残されていた。明治時代末期に坪井正五郎が三越百貨店と提携して開発した教育玩具もあった。サンクトペテルブルグでは前年度に続きクンストカメラの所蔵資料を調査した。駅舎や鉄橋など近代初期の建造写真を多数収録した大阪製の「のぞきからくり」を発見したほか、江戸時代の望遠鏡などを確認した。ヨーゼフ・クライナー(海外研究協力者)は国際シンポジウムの成果を編集し『ヨーロッパ博物館・美術館収蔵の日本関係コレクション』2巻を刊行した。
著者
倉橋 洋子
出版者
一般社団法人大学英語教育学会
雑誌
JACET中部支部紀要 (ISSN:18815375)
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-38, 2007

According to the concept of World Englishes, Japanese English has been admitted as one of the English varieties. However, it seems that Japanese people in general still do not have enough confidence in their English to determine by themselves whether the English is correct or not. Kachuru asks who is "the judge for determining intelligibility in various varieties of English -the users of the varieties themselves, or the idealized native speakers" (1992, p.65). It is important who judges Japanese English. The purpose of this paper is to find whether the intelligibility of Japanese English depends on who judges it or not, and what is the criterion of judging it. For this purpose, various English speakers judged the intelligibility of erroneous English written by Japanese university students. The result was that Japanese were stricter than other English speakers regarding grammatically incorrect Japanese English.
著者
白倉 幸男
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.57-70, 1986-11-20 (Released:2009-03-01)
参考文献数
36

数理社会学の古典としてのSimon-Homansモデルは、本質的部分は図形による質的推論を用いる。Simonの方法では、より一般的な定式化を進めると2つの難点に直面する。「(1)システムは、2つの内生変数のみ限られる.(2)測定単位の影響を被る。」この難点は、Simon=Homansモデルに一貫した解析性がないことに起因する。 Simonの方法では、調整速度の概念により、多変数システムを2変数システムへ帰着させ、位相図を用いる。かつては、これ以外に、質的な推論を行う方法がなかった。この桎梏からSimon=Homansモデルを解放し、新たな解析的展開の方法を提示する。このために、Jeffries(1974)の二色点法と質的比較静学が用いられる。二色点法は、サイクルテスト、彩色テスト、マッチングテストからなり、質的安定性を識別する。Simonの定式化は、Homansのいう内部体系を充分に把握しない。それゆえSimon=Homansモデルは、質的安定でない。Homansの下位モデルである南洋諸島の呪術と不安の相互連関は、飽和性の想定により集団の安定を保証する。Homansの小集団論の一般化の可能性をあわせて指摘する。
著者
白倉 一由
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.15-28, 1995-12-10

近松世話浄瑠璃のこの期の作品の特色は内容の複雑化と人物の性格・思考・行動の現実化である。主人公善人、副主人公悪人の構想ではなく、主人公副主人公共に実存的・現実的になっているのである。この作品は主人公中心でなく、副主人の貞法・由兵衛が重要の人物であり、特に貞法の見解はテーマの構成に大きく関わっている。貞法の考えは個人的な愛より、家を存続させ維持させる事であった。主人としての世俗的の発想であった。二郎兵衛おきさの愛は初めは自己中心的なエロスの愛であった。二郎兵衛のおきさへの愛は男の一分であり、人間として誇りを持って菱屋に居る事であった。このおきさへの愛は貞法の考えと対立するようになっていく。家の存続と維持は大切な事であったが、人間性の立場に立てば、限界があり、全面的に肯定する事は出来なくなる。二郎兵衛おきさの愛は次第に罪の意識と共に献身的な他者への愛に生きるようになり、宗教の発想と共に死の通行となるのである。自己を罪の意識において他者への献身的愛と家の存続と維持のモラルとの葛藤が主題である。
著者
松尾 定憲 天野 定雄 櫻井 健一 榎本 克久 阿部 英雄 小倉 道一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.175-178, 2006-04-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

症例は16歳女性。15歳頃より神経性食思不振症を指摘され, 拒食と過食を繰り返していた。過食し, 通常は自ら嘔吐していたが, 来院前日過食後は嘔吐できず腹痛出現したため, 近医受診し加療目的に当科へ紹介受診となった。来院時, 腹部は著明な膨満を認め圧痛, 腹膜刺激症状を認めた。腹部単純レントゲン, 腹部CT検査では大量の残渣のため骨盤腔まで拡張した胃を認め, 少量の腹水も認めた。経鼻胃管を挿入するも内容の吸引が不十分であった。以上より急性胃拡張, 胃穿孔の疑いにて緊急手術を施行した。開腹所見としては残渣による著明な胃の拡張を認め, 広範囲に筋層の断裂を認めた。胃内容をドレナージし, 筋層の断裂は漿膜筋層縫合にて修復した。術後経過良好なため術後16日目に経口飲水開始し, 術後25日目より経口摂取開始した。その後も全身状態良好で術後32日目に退院となった。
著者
十倉 好紀
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.621-627, 1994-08-05

遷移金属酸化物が物性科学的に興味深い対象であることは,古くから認識されてはいたが,理論的な取扱が困難な強い電子間相互作用-電子相関効果-をあらわに考慮しなければならないこともあって,その電子物性の研究は半ば冬眠状態にあった.しかし,銅酸化物系高温超伝導の熱病を契機として,強相関電子系の物理の理解が進みはじめ,いまや「強相関電子」は物質科学のみならず,次々世代電子材料の可能性を語るうえでの,不可欠なキーワードとなりつつある.そのプロトタイプとしての3d遷移金属酸化物を例にとり,価数(電子数)制御によって出現するモット転移近傍の異常金属相の物性とその材料物理としての展開の可能性を探りたい.
著者
新井 良彦 柏倉 健一
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-53, 2012-03

目的:バック・グラウンド・ミュージック(BGM)が単純作業の作業効率に与える影響を,クラシックとポップスを用いて脳科学的に評価する.方法:被験者は成人大学生8名(男女各4名,平均年齢22±0.7歳).単純作業の評価スケールとして内田クレペリン検査を用いた.同一被験者において無音時及びBGM聴取時に内田クレペリン検査を行った.BGMとして,クラシック及びポップス各1曲を用いた.各試行時に,近赤外計測装置を用いて前頭前皮質の機能測定を行った.結果:内田クレペリン検査の作業量は,クラシック音楽聴取時に有意に上昇した.また,脳機能計測において単純作業時及び音楽聴取時に賦活を示す部位を特定した.結論:単純作業に対するBGMの効果は,左外側前頭前皮質に観察された.実験に用いた音楽では,ポップスよりもクラシックの方が賦活は大きかった.