著者
谷口 雄太
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本研究の目的は、中世後期の足利一門総体につき十分な理解を得ることにある。今年度はその第3年度であった。そこで得られた成果は以下の通り。第一に、足利氏・足利一門総体に関し、歴史学研究会大会で「足利時代における血統秩序と貴種権威」を報告し、『歴史学研究』963号に掲載された。また、「中世後期武家の対足利一門観」が『日本歴史』829号に掲載された。いずれも、足利氏を頂点とし、足利一門を上位とする中世後期武家の儀礼的・血統的秩序の形成・維持・崩壊過程について検討したものである。第二に、足利一門個別に関し、①「中世後期における御一家渋川氏の動向」が戦国史研究会編『戦国期政治史論集』西国編(岩田書院)に、②「今川氏と「足利一門」「吉良一門」」が大石泰史編『今川氏年表』(高志書院)に、③「足利成氏の妻と子女」が黒田基樹編著『足利成氏とその時代』(戎光祥出版)にそれぞれ掲載された。①は渋川氏の基礎的研究。②は今川氏の自他認識を足利一門・吉良一門をキーワードに考察したもの。③は関東足利成氏関係の基礎的研究。他に、書評類として「書評と紹介 松島周一著『鎌倉時代の足利氏と三河』」(『日本歴史』830号)・「書評 亀田俊和著『観応の擾乱』」(『週刊読書人』3208号)・「遠州飯尾氏は「両属」国衆か」(『静岡県地域史研究会報』213号)を書き、一般向け記事として「足利尊氏」(『南北朝』洋泉社)・「足利一族」(『足利将軍15代』洋泉社)・「関東吉良氏とその時代」(『世田谷往古来今』世田谷区)を認めた。なお、『世田谷往古来今』に関し、刊行後、拙稿部分を確認したところ、校正指示に従っておらず、内容改変もある等、種々の問題が見られた。また、コラムの一部には学術的・掲載媒体的に疑義のあるものがある。注意されたい。
著者
高橋 めい子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の主題は「放射線誘発甲状腺がんの発症リスクに関与する遺伝子多型性SNPsの同定」である。申請者らはチェルノブイリ原子力発電所の事故により乳幼児期に放射能被爆を受けたベラルーシ人から、早発型甲状腺乳頭がんの患者群の検体と、その患者と年齢、性別、被爆時の居住地が一致する健常者群の収集をし、全ゲノム関連解析GWASを実施した。
著者
東郷 俊宏
出版者
鈴鹿医療科学大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本課題の目的は、昭和15年前後に中国南京維新政府が推進していた国民暦(新東亜暦)編纂事業と、日本の東方文化研究所および京都帝国大学理学部宇宙物理学科のメンバーが主体となって推進していた東洋暦術調査との関連性を史料の上から明らかにすることにある。京都大学人文科学研究所には、昭和15年9月に南京において開催された国民暦編纂会議に、当時東方文化研究所の天文暦学研究室主任教授の地位にあった能田忠亮が招聘されたことを示す招聘状のほか、同会議の議事録や会議開催前後に掲載された新聞記事、また新東亜暦編纂事業に関わっていたと思われるメンバー(荒木俊馬、藪内清、高木公三郎、森川光郎)と能田の間に交わされた書簡、紫金山天文台修復作業の経過を示す書類などがあり、本課題ではこれらの資料の整理を行ってきた。その結果、新東亜暦は大東亜共栄圏共通の暦として採用されることはなかったものの、東方文化研究所の東洋暦術調査の研究成果をもとにその編纂事業が行われていたこと、また新東亜暦の問題が起こる以前より、森川光郎、高木公三郎など、京都帝国大学理学部宇宙物理学科のOB等が南京紫金山天文台修復作業に関わっており、その延長線上に昭和15年の会議が開催されていること、また京大宇宙物理学科卒のメンバーの間でも新東亜暦編纂の意義に対する考え方は微妙に異なっていることなどがわかった。本年度は最終年度に相当するため、現在人文科学研究所に残る上述の史料を翻刻し、資料集として報告書を作成する。
著者
金田 茂裕
出版者
東洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では,算数1年の減法の求残・求補・求差の場面理解,および,2年の乗法の被乗数と乗数に対する理解に焦点をあて,算数作問の認知過程とその難しさを明らかにした。さらに,算数の教科書に掲載されている作問課題の種類・特徴を明らかにし,算数作問の教育的効果として何が期待されているかを明らかにし,教材の種類・配列順序・新しい教材の開発・指導方法の教育実践のこれからのあり方を提案した。
著者
藤原 正寛 瀧澤 弘和 池田 信夫 池尾 和人 柳川 範之 堀 宣昭 川越 敏司 石原 秀彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究ではインターネットに代表される情報化技術の進展が経済的取引のガバナンスにどのような影響を与えるのかを、近年発展してきた経済学的手法(情報の経済学、組織の経済学、メカニズム・デザイン論、ゲーム理論など)を用いて分析することを目的としている。全研究期間を通じ研究会を開催することで、情報技術の進展と拡大がどのような経路をたどって、どのような形で経済活動や経済組織に影響を与えるかについて以下のいくつかの論点に分類して分析することができた。1.情報化革命とコーポレートガバナンス--情報化技術が進展することによって、情報量の爆発、経済のスピード化、グローバル化などの現象が発生し、それによって従来とはことなるガバナンス構造を持つ経済組織が活動できるようになった。2.アーキテクチャーとモジュール化--公開されたアーキテクチャーに基づいてインターフェイスを標準化することで、各分業をモジュール化することが可能になる。それによって、分業間の取引に市場原理が導入され、より分権的な分業が可能になる。3.モジュール化とオープン化--モジュール化はバンドリングやカプセル化の総称、オープン化はインターフェイスの共通化の動きを表す。カプセル化はアーキテクチャーを所与としたときに内生的に説明できることが示された。4.ディジタル化--財・サービスのディジタル化が進むことで、複製を作ることが容易になり、財・サービスを提供する初期費用が回収できないために、事前のインセンティブと事後の効率化が矛盾してしまっている。5.コーディネーションの電子化--情報技術の進歩はプログラムによるコーディネーションを可能にさせた。
著者
加野 芳正 矢野 智司 湯川 嘉津美 鳶野 克己 村上 光朗 古賀 正義 越智 康詞 松田 恵示 毛利 猛 櫻井 佳樹 西本 佳代
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マナーに関する理論研究と実証的研究を平行して進めてきた。その結果、以下のような知見が得られた。(1)法律や道徳と比較したときにマナーは独自の領域を構成している。(2)マナー(あるいは礼儀作法)は人と人を結びつけ、公共的な社会に参加していく上で不可欠なものである。(3)マナーは文明化や社会の近代化とともに私たちの社会に出現してきた。(4)日常生活におけるマナーとしては挨拶を重視する人が多い、また、家庭でのマナー教育に焦点を絞れば、食事の場面を重視する人が多い。(5)どのようなマナーが求められるかは、文化によって規定されている。
著者
岸本 直文
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

古墳時代の王権構造が、神聖王と執政王という二つの王位が並び立つ体制であったとする仮説を、倭国王墓の 2 系列の存在や、各地の地域首長墓のあり方から、十分な蓋然性をもつことを明らかにしえた。
著者
栗木 哲
出版者
統計数理研究所
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

今年度本研究では、以下のことを行った。(1)多次元の未知母数を持つ連続な確率分布において、階層的な仮説の族を考え、対応する尤度比検定統計量の帰無仮説の下での同時分布の漸近展開を与えた。その結果以下の結果を得た。・各階層の尤度比検定統計量は、帰無仮説の下で0(1/n)まで独立に分布する。・各階層の尤度比検定統計量は、独立にバ-トレット補正が可能である。すなわち、各階層の尤度比検定統計量にそれぞれある定数を掛けると、同時分布は0(1/n)の範囲で独立なカイ2乗分布となる。研究の後にこれらの結果は既にBickel & Ghosh (1990,Ann.Statist.)が得ていたことが判明したが、本研究のとったアプローチはBickel & Ghoshとは異なるものであり、計算技法の開発などの点で新たに得た知見も多い。本結果は、現在投稿中である。(2)連続な多変数指数分布族における単純帰無仮説に対する尤度比検定統計量の特性関数の任意の次数までの漸近展開公式を得た。得られた公式は、集合の分割(set partition)を用いて表現されている。展開公式の形自体は、上でも述べたBickel & Ghosh論文が示しているが、その具体的な形(各係数の値)はBickel & Ghosh論文の方法では与えることができない。本研究では、指数分布族という特殊な場合ではあるが、特性関数の表現を陽に与えることに成功した。また、研究の過程で、一般化エルミート多項式、多変数ラグランジュ反転公式に関して、いくつかの知見を得ることができた。本結果も、現在投稿中である。
著者
渡辺 憲司
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

まず最初に手がけたのは、地方遊里全体像の把握である。地方遊里は、公認の遊郭組織を持つものの他に、自治組織的名な集団によって監督下に置かれたものがあり、その分別はかなり難しい。「日本遊郭一覧」(昭和4年刊)を中心に、江戸時代の遊里番付などを参考に、警察・保健所資料を含め、地方遊里一覧を作成した。文芸との関連について、江戸時代前期は先行論文があるので、江戸時代後期の地方遊里と文芸について、滑稽本・浮世絵・洒落本・民謡等を中心にまとめた。又潮来を例にしながら地域文化と遊里の関連についてまとめ、伝承資料のお小夜説話にもふれた。地方遊里実地調査メモでは、日本各地で実地踏査した地域(鰺ヶ沢・新庄・鶴岡・酒田・新潟・長岡・分水・津川・柏崎・出雲崎・寺泊・来迎寺・直江津・高田・長野・坂城・岩村田・軽井沢・函館・島原・口之津・久留米・博多・萩・防府・徳山・宇部・柳井・上関・大垣)のメモをまとめた、又、中世の著名な遊女から、地方でのみ伝承されている遊女の墓を遊女の碑一覧として、60カ所を載せた。56カ所までの実地調査をおこなった。遊女墓群調査報告では、遊女の墓がまとまった形で残存している群馬県、倉賀野九品寺・木崎長命寺・石川県・串茶屋の報告をあげた。又遊女の墓のない沖縄に関しても、その特殊性についてリポートした。最後に、ほとんど紹介されていない資料を中心に、遊里文芸参考文献を掲載した。今後は、本研究で果たすことの出来なかった東南アジア地域の地方遊里の実態の調査へ拡大したい。
著者
砂田 茂 米澤 宏一 石田 良平 野中 聡 橋本 敦 坂上 昇史 浅井 圭介
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

低レイノルズ数(10の3乗のオーダ)、高マッハ数(翼端で0.5程度)で作動するプロペラ性能を、3つの風洞を用いた実験、数値計算による解析によって調べ、その設計法を検討した。主な得られた知見は以下の通りである。(1)高レイノルズ数で用いられるブレード形状設計方法が、当該レイノルズ数でも有効である。(2)当該レイノルズ数で高い最大揚抗比を持つ翼型を提案した。(3)低レイノルズ数における翼型性能に対するマッハ数の効果は、プラントルグラワート則で評価される効果よりも小さい。(4)低レイノルズ数で高効率を有するプロペラブレードのアスペクト比は、高レイノルズ数においてよりも小さい。
著者
一柳 廣孝 栗田 英彦 菊地 暁 吉永 進一 石原 深予
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本心霊学会は、1910年前後から20年前後まで活動した、当時最大規模の霊術団体のひとつである。その日本心霊学会の機関誌である「日本心霊」のほぼ揃いが、同学会の後進にあたる京都人文書院で奇跡的に発見された。近代日本の精神史を探るうえでの一級資料である「日本心霊」について、本プロジェクトは全資料の裏打ち処理、脱酸素処理を施してPDF化を進めるとともに、二度にわたるワークショップで近代科学史、仏教史、近代出版文化史、日本近代文学などの多様な観点から分析を進め、それぞれの研究成果については書籍、論文、学会発表の形で公表した。
著者
高橋 洋成 池田 潤 和氣 愛仁 永井 正勝
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、前二千年紀から前一千年紀にかけて、古代オリエント地方で広く親しまれたギルガメシュ叙事詩のデジタル・アーカイブを構築するものである。ギルガメシュ叙事詩は、前二千年紀初頭に成立した古バビロニア語版と、前二千年紀末に成立した標準版が、ある程度現存している。そこで、古バビロニア語版と標準版の異同をデジタル処理可能なかたちでアーカイブ化することで、テクストの対応関係ならびに発展段階をある程度まで可視化することができた。本研究で開発されたデジタル化の枠組みは、言語研究や文学研究に広く応用することが可能である。
著者
津崎 実 入野 俊夫 堀川 順生 宮崎 謙一 牧 勝弘 竹島 千尋 大串 健吾 加藤 宏明 倉片 憲治 松井 淑恵
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究は加齢による「聴力」の変化について知覚・生理現象観察と計算モデルを構築を目的とした。従来ほとんど関心を集めていなかった加齢性ピッチ・シフト現象について,十分な数の幅広い年齢層の聴取者を用いて,その現象が確実に生じることを突きとめ,さらに同じ聴取者に対する聴力検査,耳音響放射検査,脳波の周波数追随反応との相関分析を実施した。並行実施した非線形圧縮特性,聴神経の位相固定性などへの加齢による変容の基礎検討を通して,ピッチ・シフトはこれらの要因の変容によっては説明困難であること示し,新規の聴覚モデルの提案に至った。
著者
千田 有紀
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の最終的な目標は、以下の3点である。1.カルフォルニアにおける運動と日本における運動を比較し、日米社会の比較研究を行う。2.エコロジーとフェミニズムの関係を理論的・思想的に問い直す。3.アメリカのカリフォルニアでの反原子力運動を記録し、日本の運動と比較を分析を行う。また本研究は、母性に代表されるような家族に関する語彙の思想的意味を問いなおし、エコロジーとフェミニズムの関係を精査し、理論的に深化させることを目的としている。今年度はこの部分に集中的に取り掛かり、日本における「母性」、とくに「父性」との関係において、「母性」がどのように使われているのかについて検討した。とくに離婚後の家族における「母性」と「父性」の対立について、考察した。日本女性学会において「法律は、離婚後の親子関係に介入すべきなのか―面会交流は親の権利か、子どもの権利か、それとも義務か」というタイトルで、パネリストとして発表を行った。また『女性学』25号に「法律は、離婚後の親子関係に介入すべきなのか―面会交流は親の権利か、子どもの権利か、それとも義務か」という同名の論文が、掲載された。また家族にはらまれる暴力の問題がどのように日本社会で法的に制度化されているのかについて問い、「家族紛争と司法の役割──社会学の立場から」にまとめた。調査としては、今年度は日本において、福島からの女性避難者の聞き取り調査など、ライフヒストリーを聞き取ることを進めた。
著者
野上 元 西村 明 柳原 伸洋 蘭 信三 渡邊 勉 福間 良明 山本 昭宏 一ノ瀬 俊也 木村 豊
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は、5年間の研究計画の二年目であった。まず、4月14、15日に東京大学で行われた戦争社会学研究会第9回大会の場を利用して、野上は、東京大学文学部社会学教授・佐藤健二氏を招いて特別講演「「戦争と/の社会学」のために」を企画した。これもまた、学際的研究領域としての「戦争社会学」の内実を検討するものであり、活発な質疑を経て、戦争社会学の可能性を検討することができた。また西村は、テーマセッション「宗教からみる戦争」を企画した。宗教と戦争と社会の結びつきについて、多面的な議論が行われた。6月には、同研究会の研究誌『戦争社会学研究』の第二号が刊行された。特集となる「戦争映画の社会学」は、昨年度企画したシンポジウム「『野火』の戦争社会学」の活字化である。企画者の山本ほか、野上・福間が寄稿した。また、第二特集として「旧戦地に残されたもの」があり、西村が企画趣旨文を寄せている。8月12日には、京都女子大学で小林啓治『総力戦の正体』の書評会を開催した。歴史学の立場からの「戦争と社会」研究であるが分野をまたいだ議論を可能にする幅広い問題提起を行う書物であった。書評担当者の一人を野上が担ったが、「戦争と社会」研究における「総力戦」概念の重要性に照らした検討を行った。この2018年度より、筑波大学を所属機関とする非常勤研究員として木村豊氏を雇用し、研究会の事務手続きを手伝ってもらうことになった。こうした研究会の企画のほか、研究打ち合わせを12月に行い、プレ調査の実施計画を進め、科研メンバーだけのクローズドな研究会を行った。また、筑波大学大学院「歴史社会学」演習と合同で、深谷直弘『原爆を継承する実践』の書評会を筑波大学で行った。若手研究者による戦争社会学的研究の成果である。
著者
有賀 寛芳 有賀 早苗
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH,DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH,SO_2H,SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH,DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。
著者
千葉 華月
出版者
北海学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

北欧5カ国では、医療事故が生じた場合に、医療者の過失を問わず、「損害がさけられたか否か」という基準に基づき、被害者への給付の有無や補償額が決定される。医療事故に関する補償制度は、医療者の責任を問うための制度と分離されており、医療者と被害者との信頼関係を損なわない形での被害者への救済が行われている。本研究では、北欧における医療事故に関する補償制度を検討することにより、我が国における医療事故の被害者に対する救済の在り方について考察した。
著者
大須賀 公一 石川 将人 青沼 仁志 李 聖林 小林 亮 佐倉 緑 杉本 靖博 石黒 章夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本研究の「要」は,昆虫の脳(中心体)に薬剤を注入することによって脳機能と下部神経系との情報のやり取りを遮断する「ゾンビ化」であるので,研究期間の前半は,1)昆虫のゾンビ化手法の確立,2)ゾンビ化昆虫のゾンビ化程度の検証法確立,に注力した.同時に,それらのゾンビ化手法が確立した後のために,3)昆虫の適応的運動能力の発現メカニズムの同定手法理論の検討,4)高度な脳機能を持たない運動制御原理の考察,を行なった.以下,進捗状況を説明する.1)昆虫のゾンビ化手法の確立:コオロギの脳内の薬剤投与部位をより厳密に制御するため,頭部の3Dマップに埋め込むための「コオロギ標準脳の作成を進めており,約60%程度進捗した.また,ゾンビ化システム」の構築を完了した.2)ゾンビ化昆虫のゾンビ化程度の検証法確立:「ゾンビコオロギ」はどのような振る舞いがみられるのかを確認するために,二種類の運動解析装置を試作中であり,70%程度完成した.さらに多様な環境を再現できるような球状トレッドミルシステムも開発した.また,頭部のないコオロギの振る舞いや,各部神経接続を外科的に切断したコオロギの振る舞いを確認している.3)昆虫の適応的運動能力の発現メカニズムの同定手法理論の検討:ゾンビコオロギが完成するまでの基礎研究として,一般の昆虫が示す適応能力の中でも特に,a)歩行速度への適応,b)脚切断への適応,c)環境への適応という三つの適応的な振る舞いに着目し,これら能力を発現しうる制御メカニズムのミニマルモデルの構築を目的とした研究を行った.4)高度な脳機能を用いない運動制御原理の考察:ゾンビ化された昆虫と同じく高度な脳機能をもたない脚機構が,環境/身体間および身体内の脚間で調和のとれた運動を生成する制御モデルを構築した.