著者
塚本 勝男 佐藤 久夫 大島 嘉文
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

月や火星なので人類が長期間生活することを想定すると、生活維持に必要な酸素と水をつくるだけでなく、居住に必要なコンクリートの安定性を保証する必要がある。コンクリートの主成分は水酸化カルシウムの結晶であり、この安定性を高分解光学系で”その場”観察をおこなって調べた。居住空間では生成される炭酸ガスと水によりコンクリート内に炭酸水が存在し、主成分の炭酸カルシウムを溶かすだけでなく、新たなアラゴナイトやカルサイトをつくり、体積変化のきっかけをつくる。この一連の反応を、分子レベルで観察できる”その場”観察でしらべると、溶解と析出が同時におこるメカニズムであることが分かった。
著者
望月 通子 阪上 辰也 船城 道雄 田中 雄一郎 田中 舞 牛尾 佳子 手塚 まゆ子 萩野 里香 アックシュ ダリヤ 芦 媛媛 アン ジュンミン
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

(1) ICLEAJ(International Corpus of Learner Japanese「国際学習者日本語コーパス」)の構築・分析、(2)産出過程を分析対象に含めた認知的側面からの分析、(3)学習者コーパスに基づく作文技術教育のweb教材の開発について報告する。(1)はすでに構築してあった日本語作文コーパス「KCOLJ_NNS」「KCOLJ_NS」を大幅に拡充し「ICLEAJ」を構築、そのβ版をweb上で配布している。正式版を2013年8月に配布予定。モダリティ、「思う」、有対自他動詞、外来語などの研究に進展がみられた。(2)は、実験装置の事情で産出過程の記録採集は不可。 (3)教材開発の予備調査として作文の学習過程の質的研究・分析を行った。
著者
高橋 博巳 安藤 隆穂 玉田 敦子 鷲見 洋一 伊東 貴之 川島 慶子 長尾 伸一 逸見 竜生 寺田 元一 渡辺 浩 堀田 誠三 渡辺 浩
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

当プロジェクトは、18世紀の公共知の東西比較を中心に、内外の研究者と共同研究を行ってきた。とくに朝鮮通信使を介しての日朝比較には、韓国の研究者と知見を共有し、当時の文芸共和国的な側面を解明することによって、これまで国ごとに分断されていた文学や思想の研究に新生面を開くことができた。これに比べると、清朝の文人や思想家とのより広範な知的交流の解明はなお道半ばと言わざるを得ず、より一層の深い解明が期待される。個別には伊東は『心身/身心と環境の哲学』、寺田・逸見らは『百科全書の時空 典拠・生成・時空』、長尾は『複数世界の思想史』において、従来の視点を大きく転換したり深化させて、新生面を開いている。
著者
原田 一敏
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

自在置物は、動物や昆虫など、それらが本来的に持っている体を動かせる機能までも動かせるように作った置物である。本研究は、自在置物の歴史の探求と、それがいかにして動かすことができるかを理解するための復元にある。歴史の研究については、昨年度、メトロポリタン美術館、フライングクレインアンティークス、オリエンテーションギャラリー、ボストン美術館、ヒギンス・アーマリー博物館など海外の作品を調査したが、17年度は日本国内の遺品調査に重点を置いた。石川県立美術館では蛇、佐賀県鍋島報公会では龍、清水三年坂美術館では鯉、鯱、蝉、かまきり、蝶、蜂、カミキリムシなど総計で15点調査をするとともに、写真撮影を行った。これらの調査により明珍性の甲冑師の作品については、作者によって得意とする分野があり、たとえば明珍宗長は手長海老やヤドカリ、明珍吉久は鯉を複数製作していることなどが確認できた。また京都の高瀬好山工房の歴代の作家の作品を知ることができた。復元的研究については、16年度、明治時代以来自在置物を作っている工人の家に生まれた京都在住の冨木章(工人名は宗行)氏に伊勢海老の部品の制作を依頼するとともに、その制作過程を映像記録した。17年度はその完成品の制作を依頼し、完了した。これによって伊勢海老については、その制作法が明らかとなり、今後鍛金、彫金の専門家であれば、だれでもこの伊勢海老が作れることとなり、技術の伝承が可能となった。
著者
宮竹 貴久 岡田 賢祐
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

オオツノコクヌストモドキの闘争行動の勝敗と記憶力の関係を調べた。本種のオスは勝利の経験は覚えないが、敗北の経験は4日間覚えていた。人為選抜実験によって闘争の記憶時間には遺伝変異のあることを明らかにした。本種では敗北期間中は戦いに投資しないが、射精への投資を増やした。オスは敗北経験による学習によって、交尾後のオス間競争である精子競争の投資を調整した。さらに雄同士が後脚を用いて配偶者獲得のために闘争するホソヘリカメムシを用いて闘争行動に明瞭な日内パタンのあることを明らかにした。
著者
李 景みん
出版者
札幌大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は主として、北朝鮮における大戦の終結について研究した。ソ連軍は一般に言われるほど、参戦当初において、破竹の勢いで北部朝鮮に進撃したのではなかった。日本軍の抵抗は根強く、日本が降伏した8月15日の時点で、ソ連軍は成鏡北道で足踏み状態であった。しかし、戦争が終結し各地において戦闘が停止すると、その先遣隊は順調に南下を始めた。そして、8月24日には平壤に進出した。8月30日までには北朝鮮のほぼ全域を制圧するに至った。ソ連軍の進駐と同時に日本軍の武装解除が行なわれ、北朝鮮の各地はソ連軍の占領状態に入った。日本の植民地行政機関はソ連軍によって接収され消滅したが、それに取って代わり、朝鮮民衆の自治機関が占領軍当局の力によって新たな権力機関として誕生した。確かに、ソ連軍は、米軍とは異なり、表面的には朝鮮民衆の自発的な行動を認め、間接的な占領統治体制を施いた。長年民族の独立を希求してきた朝鮮民衆は、こうしたソ連軍を解放軍として歓迎したのである。しかし、ソ連軍は社会主義者を中心に「人民政治委員会」を樹立し占領政策に臨んで行った。それは朝鮮民衆の反発をかうものとなった。
著者
山崎 正勝
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

この研究の発端となったのは,1994年放映のNHKの番組,「原発導入のシナリオ〜冷戦下の対日原子力戦略〜」である.原子力問題に関する柴田秀利(『戦後マスコミ回遊記』)の役割を,その番組ではじめて知ることができた.初年度は,アイゼンハワー図書館の資料を調査整理することに費やされた.同図書館で得られた重要な資料は,国家安全保障会議の原子力関係文書である.翌年,国立公文書館で国務省関係の資料を収集した.これらの資料から,アメリカ政府はビキニ事件の直後から,日本への原子力の平和利用計画を積極的に展開しようとしていたことを理解することができた.目的は,ビキニ事件で日本国内の反米,原水爆禁止活動を相殺することだった.柴田秀利の活動は,このアメリカの戦略に助けられたのではないかというのが,その時の感想だった.第3年度には,柴田秀利氏が残した文書の調査を行った,日米の資料をつき合わせることで,柴田秀利の活動の背後に,アメリカ政府の対日政策が存在していた事実をあらためて実証的に確認できた.また,柴田の『戦後マスコミ回遊記』で,柴田とアメリカとの橋渡しをしたとされているダニエル・スタンレー・ワトソン氏が,当時,国連軍の指揮官の任務に就いていたジョン・ハルの部下であった事実も明らかにできた.この関連で,柴田秀利氏の手紙から,氏の「毒をもって毒を制する」(原子力{平和利用}という毒によって日本国内の原水爆禁止運動と反米感情という毒を牽制するという意味)発言の時期が,1954年12月末であったことがほぼ確定できた.
著者
福田 朝生
出版者
中央大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

石礫群と水の三次元運動を詳細に解析することが出来る数値移動床水路を用い,混合粒径の石礫による数値移動床実験を実施した.混合粒径中の粒径毎の相互干渉機構を考察するため,移動中の粒子が河床と衝突する際に受ける力を粒径毎に計測した.その結果,大きな粒子ほど鉛直上向きの力を受けて移動していることが明かとなった.球群を用いた数値移動床実験を実施し,球と石礫の両数値移動床実験結果の比較から,粒子運動に及ぼす粒子形状の効果を考察した.球と石礫の粒径別流砂量の比較より,石礫形状の粒子の方が,球と比較し,粒径別流砂量の差が小さくなることがわかった.
著者
猪股 孟 猪俣 盂 (1992) 向野 利彦 STEPHENJ、RYA ヘライアン NARSINGADUPA ラオ NARSING Adupa Rao STEPHEN J.Ry NARSING A.Ra
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究は、日本人をはじめとして有色人種には多発するが、白色人種にはあまりみられないという人種差の大きな疾患であるフォークト・小柳・原田病について、その病因および発症機序を日米共同で研究し、本症の予防および治療法の確立に寄与することを目的としたものである。まず、アメリカ合衆国南カリフォルニア大学のRao教授が平成3年2月11日から同年3月20日までの38日間、九州大学眼科を訪問し、日本におけるフォークト・小柳・原田病患者の臨床像と病理組織像について共同研究を行った。日本人に多いもうひとつのぶどう膜炎であるベーチェット病についても、その患者の臨床症状と病理組織学的特徴について検討した。次いで、猪股孟が平成3年8月12日から31日までの20日間と平成3年10月8日から20日までの13日間、南カリフォルニア大学を訪問し、フォークト・小柳・原田病患者、ベーチェット患者、さらにエイズ患者の臨床像を観察して、日本におけるぶどう膜炎の臨床像と比較検討した。また、同時に南カリフォルニア大学眼科に収集されているぶどう膜炎患者の摘出眼球やエイズで死亡した患者の剖検眼球を病理組織学的に検討した。さらに、南カリフォルニア大学のRao教授が平成4年12月20日から平成5年1月2日までの13日間、九州大学眼科を訪問し、日本におけるフォークト・小柳・原田病患者の臨床像と病理組織像について共同研究を行った。同時に、フォークト・小柳・原田病の臨床および病理学的特徴について討論し、共同研究の結果をまとめた。この共同研究で下記の点を明らかにすることができた。1.フォークト・小柳・原田病の臨床像はわが国の患者およびアメリカ合衆国の患者(主としてアメリカ合衆国に移住したメキシコ人や東洋人)で著しい差はみられなかった。2.アメリカ合衆国ではエイズ患者に日和見感染としておこるサイトメガロウイルス網膜炎、トキソプラズマ網脈絡膜炎が多発していた。この種の網脈絡膜炎はわが国でも今後重要な問題となる疾患である。3.フォークト.小柳・原田病発症後数年して悪性腫瘍のために死亡した患者の眼球を剖検時に摘出し、病理組織学的および免疫組織学的に検討した。臨床的には夕焼け状眼底を示し、ぶどう膜の炎症は治っているかに見えたが、病理組織学的にはぶどう膜にリンパ球の浸潤を伴った炎症が残存していた。ぶどう膜のメラノサイトは著しくその数が減少していた。このことは、フォーク・小柳・原田病では、ぶどう膜メラノサイトが炎症の標的になっていることを示すものであり、本症における夕焼け状眼底の発生機序を解明する上で非常に重要な知見である。4.フォークト・小柳・原田病患者の皮膚白斑を生検して、免疫組織化学的に検討しぶどう膜おけるものとほぼ類似の炎症反応がおこっていることを証明した。5.べーチェット病患者眼球の病理組織学的な特徴として、初期には網膜血管炎を伴った眼内の炎症がおこり、末期には毛様体扁平部からの新生血管形成を伴った増殖性変化がみられることを明らかにした。6.実験動物としてラットを使用して、視細胞間結合蛋白Interphotoreceptor Binding Protein:IRBP)を構成するペプタイドの一部(R4)をぶどう膜炎誘発物質として用い、内因性ぶどう膜炎をおこすことができた。この実験ぶどう膜炎モデルを使ってぶどう膜炎でしばしば観察される角膜後面沈着物を免疫組織化学的に検討した。その結果、角膜内細胞面における細胞接着分子(Intercellular Andhesion Molecule-1:ICAM-1)の発見を証明することができた。7.今回の共同研究の結果を成書"Ocular Infection Immunity"(分担執筆)にまとめた。本書は現在印刷中で1993年中に出版社"MosbyYear Book"から発刊の予定である。
著者
田丸 浩
出版者
三重大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ゼブラフィッシュをモデル動物として、受精卵(1細胞)からの発生・分化過程という「時間的・空間的な動態」におけるミリスチル化脂質修飾酵素ならびにその標的タンパク質を介した時空間動態の定量的解析法の確立を目指した。最終年度となる今年度は、ミリスチン酸(myr)-グリシン(Gly)残基に対する抗体を作製し、ミリスチル化ペプチドに対する抗体の免疫学的力価の検討を行った。その結果、50ng以上のミリスチル化ペプチドに対して直線的な相関が得られた。さらに、大腸菌発現系を用いてゼブラフィッシュzNMT1遺伝子の組換え体酵素を精製し、標的ペプチドに対するミリスチル化の反応産物を質量分析器を用いてMyr付加の有無を検討した。その結果、組換えzNMT1は標的ペプチドをミリスチル化し、ミリスチル化ペプチドに予想通りの分子量の変動が確認された。最後に、ゼブラフィッシュ遺伝子発現系を用いて蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるタンパク質間相互作用について検討を行った。当研究室で開発したpZexベクターならびに全身細胞で発現するpXIを組み合わせて、孵化腺細胞におけるFRETを観察した。その結果、受精後24-48時間において強いFRETが観察され、高等動物におけるタンパク質間相互作用解析が可能となった。今後は、発現が困難である膜タンパク質についてのミリスチル化とタンパク質間相互作用解析を組み合わせることで、タンパク質ミリスチル化が関与する生命現象の解明を進めていく予定である。
著者
大串 和雄 月村 太郎 本名 純 SHANI Giorgiandr 狐崎 知己 千葉 眞 武内 進一 元田 結花 SHANI Giorgiandrea 酒井 啓子 竹中 千春
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、現代世界の武力紛争と犯罪について、グローバル化、アイデンティティ、デモクラシーという3つのテーマを軸にしてその実態を解明するとともに、実態に即した平和政策を検討した。武力紛争はアイデンティティとの絡みを中心に研究し、犯罪については東南アジアの人身取引をめぐる取り組みと、中央アメリカの暴力的犯罪を中心に取り上げた。平和政策では平和構築概念の軌跡、「多極共存型パワー・シェアリング」、移行期正義における加害者処罰の是非を中心に検討し、それぞれについて新たな知見を生み出した。
著者
畠山 昌則 谷口 維紹 瀬谷 司 大島 正伸 松岡 雅雄 下遠野 邦忠 東 健 秋吉 一成
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

新学術領域研究「発がんスパイラル」は、単一の微生物感染による発がんを中心に、がんの発症・進展に関わる微生物側因子の役割を明らかにするとともに、発がん微生物感染が局所に誘起する炎症・免疫応答が発がんを加速する機構の本態を解明し、革新的ながん予防・がん治療法開発への道を拓くべく平成22年度に開始された。本取り纏めでは、新学術領域研究「発がんスパイラル」の研究成果を以下のように取りまとめた。1.領域研究報告書の作成研究代表者ならびに連携研究者による会合を2回行い、過去4回にわたり発刊したNews Letterの集大成として、5年間の成果をまとめた領域研究報告書を発行した。報告書では、発がん微生物が保有するがんタンパク質の作用機構、微生物がんタンパク質と宿主生体応答系の相互作用ネットワーク、「発がんスパイラル」場形成を担う免疫系細胞の同定とゲノム不安定性を増強するエフェクター分子の作用機構、自然免疫系細胞のがん細胞認識とがん細胞破壊を促進する分子群の同定、など本領域研究から得られた多くの新たながん生物学的知見を記述するとともに、新規ナノゲルやDNAワクチンの開発を通して拓かれつつある「向がん」から「制がん」への宿主応答ベクトル変換を誘導する次世代のがん予防・治療法開発へのプロセスを記載した。インパクトの高い国際一流誌に報告された研究成果も報告書内に別刷として収集した。2.領域公式ウェブサイトの運営:ウェブサイトを通じ、社会・国民に向けた積極的な情報公開を維持した。これまでに公開してきた情報に加え、新たに「研究成果」として過去5年間に進めてきた基礎研究の成果の社会への還元状況を発信した。さらに領域公式ウェブサイトから、各研究者個別のウェブサイトへ相互リンクを図り、利用者はリンク先からさらに詳細な情報を得ることが出来るように工夫した。
著者
大串 健吾
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

ストループ効果とは、色と文字の意味が一致していないカラーワードに対して、被験者に色の反応を求めたとき、色と文字の認知の間に干渉が生じ、反応時間が増大するという視覚心理学の分野における効果である。この研究の目的は、「色」と「文字の意味」に対して、絶対音感保有者の認知する歌声の「音高(音名)」と「意味(単語)」を対応させ、聴覚の分野においても視覚におけるストループ効果と同様の効果が生じるかどうかを調べることである。音声刺激としては歌手に1オクターブ内のハ長調のド音からシ音までの音高をもつ7音をそれぞれ、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、という単語(発音)で発声してもらったものを用いた。被験者は絶対音感を保有している音楽専攻学生である。実験方法としては、被験者は音声刺激を聴取し、できるだけ速く音刺激の音高を口頭で答えた(音高反応)。音声刺激の始めから口頭反応の始めまでの反応時間(RT)を測定した。次に、音名にかかわらず、発声した単語をそのまま答えさせる実験(単語反応)も行った。実験結果のうち、音高反応に関しては、すべての被験者について、音声刺激の音名と発声した単語の一致した条件における反応時間RTsは異なった条件における反応時間RTdよりも有意に短かかった。単語反応についてもほとんどの被験者について、RTs<RTdとなったが、全体的には有意差はなかった。なおこの研究は、平成11年9月に日本音響学会、11月に日本音楽知覚認知学会のそれぞれの研究発表会で発表した。さらに平成12年8月に英国で開催される第6回音楽知覚認知国際会議において発表する。
著者
永原 陽子 浅田 進史 網中 昭世 粟屋 利江 石川 博樹 今泉 裕美子 大久保 由理 愼 蒼宇 鈴木 茂 難波 ちづる 中野 聡 眞城 百華 溝辺 泰雄 飯島 みどり 松田 素二 上杉 妙子 丸山 淳子 小川 了 ジェッピー シャーミル サネ ピエール テケステ ネガシュ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、20世紀の戦争において植民地と他の植民地との間を移動した人々(兵士・軍夫、軍に関連する労働者、「売春婦」等の女性)に着目し、とくに世紀転換期から第一次世界大戦期を中心に、これらの人々の移動のメカニズム、移動先での業務と生活の実態、様々な出自の人々との接触の内容、移動の経験が帰還後の出身地社会においてもった意味、などについて検討した。その結果、植民地の場における労働と戦争動員との連続性(「平時」と「戦時」の連続性)、兵士の動員と不可分の関係にある女性の自発的・強制的な移動の事実、さらに従来の研究の中心であった知識層の経験とは大きく異なる一般労働者・女性の経験が明らかになった。
著者
石原 邦雄 松田 苑子 田渕 六郎 平尾 桂子 永井 暁子 西野 理子 施 利平 金 貞任 加藤 彰彦 西村 純子 青柳 涼子
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本、中国、韓国の研究者がそれぞれ自国での家族の総合調査のミクロデータを提供し合い、共同利用する体制を作って比較分析を積み重ねるという新たな試みとなる国際共同研究に取り組み、最終的にChanging Families in Northeast Asia : China, Korea, and Japan. Sophia University Pressという、共同研究者12名の論文を含む出版物の形で成果をまとめた。多彩な分析結果を大きくくくると、(1)人口の少子高齢化と経済社会のグロ-バル化および個人化という同一方向での変化のインパクトのもとで、3カ国の家族が、遅速の差はあれ、共通方向での変化を遂げつつあること、(2)しかし同時に、各国の社会文化的伝統の影響の強弱によって、3カ国の家族の世代間関係と夫婦関係のあり方や変化の仕方に違いが生じていることも併せて明らかにされた。
著者
石原 邦雄 松田 苑子 田渕 六郎 平尾 桂子 西野 理子 永井 暁子 稲葉 昭英
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、日本家族社会学会が5年ごとに実施し、ミクロデータを公開している全国家族調査(NFRJ)を基礎として、中国、韓国の有力な家族研究者たちとの協力関係のもとに、家族の国際比較研究を発展展開させようとする試みである。韓国については、韓国女性開発院が実施した全国規模の家族調査(KNSFS03)のミクロデータを活用し、適切なデータのない中国については、日本調査(NFRJ)との比較のための大規模調査を新規に実施することによって、東北アジアに隣接する3カ国の家族を、クロデータのレベルで比較分析する道を開いた。これは、家族研究において画期的なことと言って良い。そして、3カ国の分析チームが、個々人の研究成果の英文ペーパーを持ち寄って、2007年12月に国際研究集会を開き、さらにこれを彫琢して英文論文集の形で最終報告書をまとめた。内容としては、世代間関係、夫婦の役割関係や結婚満足度、家族生活とストレス、家族意識や家族形成パターン、子どもへの教育投資と階層化など、多岐にわたる家族の諸側面における3カ国での家族の異質性と共通性が浮き彫りにされた。しかし、国際間のデータ相互利用に関わる諸問題をクリアするのに時間を取られ、分析研究段階での時間不足となった面は否めず、個々の分析は、2カ国比較にとどまったものや、未だ初歩的な分析段階にとどまったものも散見される。幸い、基盤研究(C)での研究費補助が継続して得られることになったので、比較分析の幅と深さを一層推し進めた成果に結びつけていきたい。
著者
出口 近士 吉武 哲信
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成22年の宮崎県での口蹄疫では403箇所の消毒ポイントが設置されたが、消毒による交通渋滞の誘発が懸念され、その発生抑制を考慮した消毒ポイント設置法が課題として残された。本研究では、川南町、えびの市、都城市の口蹄疫発生地点から半径0.5,1,3,5,10,20㎞の円周を切断する道路の地理的分布状況を分析し、半径5km付近の道路交通センサス対象道路の混雑度や交通量等を検討した。その結果、交通容量に余裕がある道路区間の存在が把握できるなど同データの利用性を確認した。また市町では10箇所程度の消毒用資材の備蓄があり、5km圏内で交通規制を実施しながら消毒ポイントを設置できることの可能性を確認した。
著者
猪子 英俊 岡 晃 遠藤 高帆 大塚 正人 良原 栄策 平山 令明
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

摂食障害は90年代後半より若年層を中心に急増した精神疾患であり、治療法や予後予測法の確立が待ち望まれる。我々は、マイクロサテライトを用いたゲノムワイドな相関解析法により新たに見出した拒食症感受性遺伝子群について、その分子機能解明の鍵となる多数の相互作用を同定するとともに、83アミノ酸から成る領域等、創薬ターゲットとして有望な機能ドメインを特定した。
著者
阪口 弘之 井上 勝志 沙加戸 弘 林 久美子
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、学界で懇望されている『古浄瑠璃年表』編纂にむけての総合的な基礎調査研究を目的としたもので、国内外に所蔵されている正本をはじめ、絵巻・奈良絵本・写本(奧浄瑠璃を含む)などの総合調査を通じて、多くの新出本文を発掘して、古浄瑠璃史の更新にむけての基礎資料の整備充実を果たした。また、これら新出資料の年代考証と併せ、初期段物集や当代諸日記等の記録類の調査整理をも重ね、総合的な古浄瑠璃年表作成にむけての研究作業環境を整え、今後へ引き継ぐべき研究基盤の強化を果たした。
著者
折山 早苗 宮腰 由紀子 小林 敏生
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

12時間交代制勤務に従事する看護師の夜勤時の休息・休憩状況と眠気や疲労を明らかにした。12時間夜勤者は16時間夜勤者よりも勤務前の仮眠時間が長かった。日勤は,長日勤より負担は大きく,特に,長日勤は,17:00以降に眠気や疲労が増加することが示された。以上より,16時間夜勤から12時間勤務にスムーズに移行する為には,長日勤時の17:00以降の疲労の軽減が重要であると考える。