著者
八木 由奈 東野 博彦 吉田 英樹 廣川 秀徹 奥町 彰礼 髙野 正子 信田 真里 松岡 太郎 笹井 康典 福島 若葉 田中 智之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.566-573, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
11

目的 大阪府における2014年の麻疹の流行状況を分析し,府内の今後の麻疹対策について検討を行う。方法 2014年に大阪府内で麻疹と報告された46例に府内集団発生事例で感染者の居住地が他府県であった 1 例を加えた47例について年齢分布,週別患者発生状況,推定感染経路,渡航歴,麻疹含有ワクチン歴,ウイルス検出状況,発症から届出までに要した日数について分析を行った。結果 患者は青年層成人(20~39歳)が24例(51%)と半数以上を占めていた。患者報告数は 2 週から27週にかけてピークを形成し,47週に終息した。主な感染経路としては,感染源不明の国内感染が47例中16例(34%)と最多で,次いで家族内感染(26%),渡航や海外からの輸入事例(21%)の順であった。また患者の83%が接種歴なし,または不明であった。検出ウイルスは B3,H1,D8 とすべて海外由来株であった。15歳以上群は15歳未満群に比べ,発症から届出までの日数が有意に長かった(P=0.001)。結論 府内の麻疹を制圧するためには発症から届け出の遅れを最小限にすることが求められる。医療機関,とくに成人を診療する医療機関への啓発が必要とされる。またすべての感受性者に対する麻疹含有ワクチン接種が必要である。
著者
井上 奈津美 井上 遠 松本 斉 境 優 吉田 丈人 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2019, (Released:2021-05-24)
参考文献数
61

樹洞は、多くの生物がねぐらや営巣場所として利用する森林生態系における重要なマイクロハビタットである。気候帯や地域に応じて樹洞の現存量や、樹洞の形成に関わる要因は大きく異なっており、樹洞利用生物の保全のためにはそれらを明らかにすることが重要である。本研究では、奄美大島の世界的にも希少な湿潤な亜熱帯照葉樹林を対象に、伐採履歴が異なる 2つの森林タイプ(成熟林と二次林)において、樹木サイズや樹種構成、樹洞の現存量を明らかにするとともに、樹種ごとに形成される樹洞の特徴を把握した。奄美大島の亜熱帯照葉樹林は、他の地域の熱帯林または亜熱帯林と比較して樹洞の現存量は多く、キツツキの穿孔による樹洞と比べて腐朽による樹洞が高い割合を占めていた。胸高直径( DBH)30 cm以上の樹木において、成熟林では二次林と比較して、ヘクタールあたりの幹数、樹洞を有する幹数、樹洞数が有意に多かった。いずれの森林タイプにおいてもスダジイが最も優占しており(胸高直径 15 cm以上の幹に占める割合は成熟林で 48%、二次林で 66%)、成熟林では次いでイジュ( 10.8%)とイスノキ(10.3%)、二次林ではイジュ( 9.9%)とリュウキュウマツ( 7.6%)が優占していた。記録された樹洞について、一般化線形混合モデルを用いて幹ごとの樹洞数に影響する要因を検討したところ、胸高直径が大きくなるほどそれぞれの幹が有する樹洞数が多かったほか、樹種ではイスノキで最も樹洞数が多く、スダジイ、イジュがそれに続いた。確認された樹洞の 90%はスダジイとイスノキに形成されており、イスノキに形成された樹洞はスダジイに形成された樹洞よりも地面から入口下端までの高さが有意に高かった。 CCDカメラを用いて一部の樹洞の内部を観察したところ、ルリカケスもしくはケナガネズミの利用の痕跡および、リュウキュウコノハズクの繁殖が確認された。樹洞が形成されやすいイスノキの大径木を含めて成熟した亜熱帯照葉樹林を優先的に保全することが、樹洞を利用する鳥類や哺乳類の重要な繁殖・生息場所の維持、保全につながると考えられた。
著者
木村 妙子 木村 昭一 自見 直人 倉持 利明 藤田 敏彦 駒井 智幸 吉田 隆太 田中 隼人 岡西 政典 小川 晟人 小林 格 小玉 将史 齋藤 礼弥 清野 裕暉 片平 浩孝 中野 裕昭 吉川 晟弘 上野 大輔 田中 正敦 大矢 佑基 前川 陽一 中村 亨 奥村 順哉 田中 香月 Kimura Taeko Kimura Shoichi Jimi Naoto Kuramochi Toshiaki Fujita Toshihiko Komai Tomoyuki Yoshida Ryuta Tanaka Hayato Okanishi Masanori Ogawa Akito Kobayashi Itaru Kodama Masafumi Saito Masaya Kiyono Yuki Katahira Hirotaka Nakano Hiroaki Yoshikawa Akihiro Uyeno Daisuke Tanaka Masaatsu Oya Yuki Maekawa Yoichi Nakamura Toru Okumura Junya Tanaka Kazuki
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要 = The bulletin of the Graduate School of Bioresources Mie University
巻号頁・発行日
vol.45, pp.11-50, 2019-09

Preliminary results of the deep-sea faunal survey conducted from the TR/V Seisui-maru of Mie University in April 2018 are presented. 18 taxonomists and ecologists working on a wide variety of animal taxa participated in this survey. Surveyed areas included the Kumano Sea (off Mie Prefecture) and south of the Kii Strait (off Tanabe Bay, Wakayama Prefecture), at depths of 80-821 m. Sampling gears employed were beam trawl and biological dredge. The collection is represented by macrobenthos and meiobenthos from 11 animal phyla, including arthropods, echinoderms, annelids and molluscans. The number of phyla occurring in each station varied from 3 to 7. The station with most diverse fauna at the phylum level was St. 3B (south of the Kii Strait, 421-543 m depth, sandy mud bottom). Meiofauna includes priapulids and small arthropods, such as ostracods, tanaidaceans, isopods, cumaceans and acarus. In addition to free-living species, parasitic crustaceans, platyhelminthes, acanthocephalans, annelids and cnidarians were also collected from fishes, ascidians, urchins, holothurians, crustaceans and polychaetes. Preliminary identifications are given for Ostracoda, Cirripedia, Amphipoda, Decapoda, Asteroidea,Ophiuroidea, Holothuroidea, polychaetes, Echiura, Mollusca and Xenoturbellida.
著者
吉田 誠 馬渕 浩司 佐藤 克文
出版者
Pro Natura Foundation Japan
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.150-161, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
23

近年琵琶湖では,在来生態系への影響が懸念される外来魚アメリカナマズの捕獲が相次いでいる.しかし,琵琶湖全体での分布の現状は不明で,未報告の捕獲情報もあると推察された.本研究では,本種の過去から現在までの動向を明らかにするため,研究・教育機関をはじめ,釣り人など一般市民の方にも広く情報提供を呼びかけ,琵琶湖における本種の捕獲状況を整理した.また,琵琶湖を含む淀川水系内での本種の分布拡大を予測するため,室内実験により本種の活動可能な水温帯を計測した.提供された情報を集計した結果,過去19年間に計314個体の捕獲が確認された.捕獲地点の大半は,琵琶湖流出部の瀬田川洗堰周辺に集中していたが,一部個体は京都府内の宇治川および木津川,大阪府内の淀川,奈良県内の布目川で捕獲されており,本種が水系内の下流側へ分布を広げつつあると考えられた.琵琶湖北湖では目撃・捕獲例は直近5年で3件と少なかったものの,室内実験で本種が夏季に水温40℃近くでも活動可能と判明し,夏の高水温化が進行しつつある琵琶湖でも,本種の分布拡大に注意が必要である.
著者
池上 龍太郎 清水 逸平 吉田 陽子 南野 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1652-1658, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
11

血管は,加齢に伴って構造的・機能的変化を来たし「老化」する.加齢に伴い,高血圧や糖尿病などが合併することで,血管老化はさらに加速し,心血管疾患が発症するリスクは大きく上昇する.老化のプロセスには未解明な点が多く存在するが,一定の制御機構を伴う生命現象であることが広く認識されるようになっている.最近の研究報告により,「細胞レベルの老化」が「個体や臓器の老化」,「老化疾患の発症」に深く関連することがわかってきた.本稿では,血管老化のメカニズムについて細胞老化を中心に概説し,老化そのものを治療標的とした次世代の治療戦略について考えてみたいと思う.
著者
大須賀 公一 衣笠 哲也 林 良太 吉田 浩治 大脇 大 石黒 章夫
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第8回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.D-2-4, 2017 (Released:2018-02-18)

In this note, we introduce our developed centipede like multi-legged robot named i-CentiPot. This robot is developed for showing our concept shown in the CREST project. In the project, we show that the existence of Implicit control is important. i-CentiPot plays a part of anchor example for our project.
著者
吉田 文 村澤 昌崇 濱中 淳子 二宮 祐 田中 正弘 福留 東土 黄 梅英 李 敏
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、文系大学院修士課程の修了者が労働市場においてどのように評価されるのかを、日米中の比較として実施した。分析の枠組みは、大学院教育―学生の資質・目的―労働市場の3点の関連構造を明らかにすることにあり、3者のサイクルのどこにネックがあるかを明らかにすることにある。分析の結果、中国やアメリカと比較して、日本においては、大学院教育は職業人教育をめざす工夫をせず、学生は大学院で獲得したスキルを職場で活用することを重視せず、労働市場は大学院教育よりも企業内訓練に対する信頼を置くという、3者が孤立し、関連性のサイクルが回らない構造があることが明らかになった。
著者
今井 俊輔 志水 陽介 吉田 憲司 石河 晃
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.3, pp.487-490, 2022-03-20 (Released:2022-03-22)
参考文献数
17

Pfizer/Modernaコロナワクチン接種後に帯状疱疹を発症した症例の論文報告は海外で散見されるが本邦では未だない.今回我々は症例を8例経験した.平均年齢66.5歳,男女比1:3と女性に多く,37.5%が初回投与から2回目接種までの間に発症.接種後発症までの日数は8.75日だった.また,帯状疱疹患者数も昨年と比し増加傾向であることが判明した.コロナ禍において帯状疱疹の診断にあたり,コロナワクチン接種日を記録し,症状を記載しておくことが今回の後向き調査を可能にすると考え,皮膚科医に向けて速報的な報告を行った.
著者
川瀬 佑司 吉田 成朗 鳴海 拓志 上田 祥代 池田 まさみ 渡邊 淳司 谷川 智洋 川本 哲也 廣瀬 通孝
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.483-492, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
16

We propose a system to prevent identification of an individual identity by changing the size and position of one's facial regions. Invasion of privacy and the right of publicity have been a problem along with the popularization of social media and improvement of image resolution. The mosaic and the blur have been used to prevent identification of a person's identity. These techniques, however, make people difficult to understand the context of the video, because the facial expressions of the characters and the background in the video are masked. In this paper, we focus on naturally conversing the facial appearance in images for protecting their privacy. We examined the proper degree of facial changing parameters, and performed user studies to evaluate these parameters.
著者
佐藤 翔 吉田 光男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.23-42, 2017-03-10 (Released:2017-05-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究では2006~2015年に日本の学協会誌に掲載された論文1,080,840本を対象に,日英の主要なオルトメトリクス計測サービスから得たデータに基づき,オルトメトリクスの付与状況を分析した結果について報告する.日本の学協会誌掲載論文のうち,ソーシャルメディアからの言及があるものは約1~2%とごくわずかであった.分野,言語,出版年とオルトメトリクスの関係については用いるデータ源により異なる傾向があるが,人文社会系の論文でソーシャルメディアからの言及が多いことは共通している.また,同一の論文を対象とした場合でも,データ源によって収集されているソーシャルメディア上の言及の範囲は異なっていた.
著者
吉田 正俊 田口 茂
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.53-70, 2018-09-05 (Released:2018-10-31)
参考文献数
53
被引用文献数
6 2

フリストンの自由エネルギー原理では,外界に関する生成モデルと現在の認識から計算される変分自由エネルギーを最小化するために,1) 脳状態を変えることによって正しい認識に至る過程(perceptual inference)と2) 行動によって感覚入力を変えることによって曖昧さの低い認識に至る過程(active inference)の二つを組み合わせていると考える.本解説の前半では自由エネルギー原理について,我々が視線を移動させながら視覚像を構築してゆく過程を例にとって,簡単な説明を試みた.本解説の後半では,このようにして理解した自由エネルギー原理を元にして「自由エネルギー原理と現象学に基づいた意識理論」を提唱した.この理論において,意識とは自由エネルギー原理における推測と生成モデルとを照合するプロセスそのものであり,イマココでの外界についての推測と非明示的な前提条件の集合である生成モデルとが一体になって意識を作り上げている.この考えはフッサール現象学における意識の構造についての知見と整合的である.
著者
吉田 祐子 矢野 理香
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.140-147, 2014-08-20 (Released:2016-06-06)
参考文献数
34

本研究の目的は,皮下注射施行前の皮膚消毒の必要性に関する先行研究の内容と動向を明らかにし,今後の課題を検討することである.Cooperの統合的文献レビューの方法を参考に文献検討を行った.PubMed,CINAHL,医学中央雑誌web版で,「注射」,「消毒」,「インスリン自己注射」,「糖尿病」,「インスリン」をキーワードとし,文献検索を行った結果,7件の国内文献と13件の海外文献が分析対象となった.その結果,国内の研究は7件中6件が実態調査であった.日本では,皮膚消毒の実施率は高い傾向にあり,実施の有無には医療者の指導方針が関連すると推測された.海外では,皮下注射前の皮膚消毒と感染の関連性がないことが検証され皮膚消毒を強く推奨していなかった.しかし,消毒不要の適応範囲は曖昧であり,今後,皮膚消毒を省略できる対象者の特性や条件を明らかにする必要がある.