著者
富張 瑞樹
出版者
帯広畜産大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では、犬の悪性黒色腫における免疫寛容誘導因子Gpnmbに関して、その遺伝子配列を解析するとともに、Gpnmb mRNA発現量が著しく高い犬悪性黒色腫細胞株が存在することを明らかにした。また、悪性黒色腫の自然発症犬では、GpnmbのmRNA発現量がすべての症例(n=4)において増加しており、他の免疫寛容誘導因子と比較して最も高い発現量を認めた。これにより、Gpnmbの犬悪性黒色腫における発現動態が初めて明らかにされるとともに、免疫寛容誘導因子として主要な役割を果たしていることが示唆された。
著者
中野 賢太郎
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

多くの細胞の機能発現においては、細胞の極性情報が重要である。例えば、神経軸索では方向性を伴った細胞の極性成長が、その活動に不可欠である。また細胞極性情報をもとに上皮細胞は組織を形成することができる。本研究では、細胞形態が最もシンプルでよく調べられている分裂酵母Schizosaccharomyces pombeを研究対象に用いて、細胞極性情報の発信と、その下流での細胞形態の形成機構について研究を行った。これまでに私たちは分裂酵母の低分子量Gタンパク質Rhoとその活性制御因子について解析してきた。それらのうち、Rga4がCdc42のGTP加水分解活性を促進することに着目した。米国カルフォルニア大学の塩崎研究室の建部恒博士らとの共同研究により、Cdc42は極性成長をしている細胞端に強く集積することが確かめられた。同時に、Rga4は細胞の胴体部分に集積し、細胞端への局在性が排除されていることが観察された。このRga4の局在様式にはPom1キナーゼが関わる可能性が示唆されている。以前から、pom1遺伝子変異株では分裂酵母の両極性の成長が単極生成長に置き換わることが知られていたが、この原因は不明であった。興味深いことに、今回の建部博士との研究により、pom1遺伝子変異株においてRga4の活性を抑制するとCdc42の局在が単極性から両極性に回復することが判明した。つまり、Pom1はRga4の局在性を制御することでCdc42の細胞端への局在様式を調節していたと考えられた。Pom1は微小管細胞骨格系の支配下でその局在様式が決定されること、Cdc42はアクチン細胞骨格の形成制御に中心的な役割を果たすことを併せると、本研究成果は微小管からアクチン細胞骨格へ、細胞内の空間的構造を配置化する分子機構の一端を解明した点で重要である。
著者
柴田 幹
出版者
富山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は太陽追尾制御をベースにした高効率太陽光発電システムを目指すものである。天空輝度測定機能をもつ光センサ(5PD光センサ)を用いて最適発電方位を自動追尾させるため以下の基礎実験及び装置試作を行った。1.太陽からの直接光が多い晴れの日と間接光(散乱光)が多い曇りの日に軌道計算による太陽方位を追尾した場合と5PD光センサを使った追尾での比較実験を屋外で行った。晴れの日では二つの追尾方式に大きな差は無かった事から5PD光センサによる自動追尾が正常に機能している事が確認できた。曇りの日では太陽軌道追尾より5PD光センサによる自動追尾が発電量の多い事が確認された。このことから5PD光センサによる自動追尾が日照条や天候の変化に影響されず最大発電方位を追尾できる事が確認された。2.遠隔操作可能な観測システムの開発を目指して以下の装置を製作した。方位角(θ)、仰角(φ)駆動できるステージに5PD光センサを取り付けた可動型5PD光センサユニットを試作した。この可動型5PD光センサユニットに制御用パソコンを接続し、Microsoft Windowsのリモートデスクトップ機能を利用してネットワーク上のパソコンから遠隔操作を実現するものである。本研究で製作した可動型5PD光センサユニットの動作試験を行い、正常に動作することを確認した。今後、ネットワーク上から遠隔操作するためのプログラム開発及び実際のネットワーク環境での動作試験が必要である。
著者
塚本 泰司 三熊 直人 舛森 直哉 宮尾 則臣 伊藤 直樹
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

‘老化'と前立腺肥大症の発生との関係の一端を解明するために、1)ヒト前立腺の加齢による形態変化、2)前立腺平滑筋の機能、3)前立腺上皮、間質細胞の増殖と抑制、について臨床的、生理学的および分子生物学的検討を行った。その結果以下の知見を得た。1) Community-based studyにおける検討により、加齢にともなう経直腸的超音波断層上の前立腺の形態は、一部の男子では50歳前後にかけて、それまで均一であった前立腺が結節を呈するようになり、これらのうちの一部の男子でさらに肥大結節が増大するという経過を辿ると推測された。したがって、臨床的な前立腺肥大出現のtumingpointは50歳にあると考えられた。2) 前立腺平滑筋細胞の培養細胞株をguinea-pig前立腺より確立した。この細胞は形態学的および機能的所見からも平滑筋細胞であり、今後のin vitroの実験モデルとして有用と考えられた。3) 前立腺平滑筋の加齢による機能的変化の検討から、8週齢の若年guinea-pigと比較すると12か月の高齢guinea-pigでは収縮張力の低下が認められ、加齢が前立腺平滑筋の機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。4) 前立腺肥大症の一部には下部尿路閉塞に対する治療のみでは排尿障害を改善できないことがあり、膀胱平滑筋の機能を改善させる治療が必要であることが示された。5) 前立腺の上皮および間質細胞はandrogenおよび各種の成長因子regulationを受けているが、TGF-betaを中心とするこれらの間のネットワークの解明を試みた。今回の結果とこれまでの知見を総合すると、androgen存在下では増殖に作用する成長因子により上皮および間質の恒常性が保たれ、androgen低下時にはTGF-beta発現が亢進し上皮細胞はapoptosisにより減少する。一方、TGF-beta発現増加によりFGF産生が刺激され間質の増殖が起こる。これが加齢にともなう前立腺肥大の発生機序の一つと推測された。
著者
松井 利郎 佐藤 匡央 津田 孝範 南部 伸孝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-05-31

低分子ペプチドの生体調節機能を明示し、先端的食科学の構築を図ることを目的として、血管及びその他組織での生理作用発現性について詳細な解明を試みた。その結果、塩基性ジペプチド類は内皮非依存的に血管を弛緩させること、その作用は細胞内でのカルシウムシグナル系の抑制であることを細胞並びにMDシミュレーション法により明らかにした。さらに、この血管弛緩作用は加齢に伴い、また高血圧進展に伴い減弱するとの新たな知見を得た。さらに、体内吸収過程の可視化に成功するとともに、筋肉組織においてAMPK活性化を誘導し、抗糖尿病作用を発現する可能性を初めて明示することができた。
著者
石坂 幸人 高橋 雅英 長尾 美奈子
出版者
国立がんセンター
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1991

乳頭状甲状腺癌細胞株TPCー1に検出された新しい活性型ret(以下ret^<TPC>)の関与を種々のヒト腫瘍をもちいて解析した。ret^<TPC>mRNAは、遺伝子再配列の結果生じたキメラ転写物として、切断点を境に3'側はプロト型ret、5'側は非プロト型retからなる構造を有している。この性質を利用してreverse transcriptionーpolymerase chain reaction(以下RTーPCR)法を行った後、切断点を中心に持つオリゴプロ-ブを用いたサザンプロット法により転写物を同定した。検体として肺癌23例、胃癌22例、乳頭状甲状腺癌11例、甲状腺腫19例、腺腫様甲状腺腫2例、子宮頚癌7例など計13臓器142例のヒト腫瘍を用いた。乳頭状甲状腺癌1例、甲状腺腫4例、腺腫様甲状腺腫1例にret^<TPC>mRNAが検出され、甲状腺以外の腫瘍には検出されなかった。本研究により、ret癌遺伝子の活性化が甲状腺腫瘍発生に重要な働きをしていることが示唆された。RTーPCR法による解析により、腺癌だけでなく良性腫瘍にもret^<TPC>mRNAが検出された。陽性腺癌では、組織のどの部分にもret^<TPC>mRNAが検出されるのに対して、良性腫瘍では、ret^<TPC>mRNAが陽性の部分と陰性の部が認められた。日本人では甲状腺組織に潜在癌が高率に認められるとの報告があり、高い検出感度を有するRTーPCR法によりret^<TPC>陽性潜在癌が検出されている可能性が考えられた。また、プロト型ret遺伝子産物に対する家兎抗血清が得られ、ret^<TPC>遺伝子産物は57kDaのリン酸化タンパク質として細胞質可溶性画分に検出された。この抗体を用いた免疫組織化学的検索の展開が期待される。
著者
山内 典子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

術後せん妄が遷延した場合、終末期せん妄により家族の体験は一部異なっていた。前者では《見通しのつかない不安と疲労》、《医療者に対する申し訳なさと怒り》、《患者に対する不憫さ》、後者では《元気だった頃の患者との遠ざかり》、《幻覚・妄想に戸惑う》、《妄想の中にある安寧を知る》、《妄想の世界に入り対応する》などのテーマが抽出された。今後、多様なせん妄の体験に即した家族ケアを考案していく必要性が示唆された。
著者
岡崎 隆
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

科学史解説一般に流布している金星太陽面通過観測による太陽視差確定法に対して、ハレーの原論文に基づいて彼のオリジナルな提案を解読しその相違を明らかにした。力学法則に基づくシミュレーション、視差による距離測定の教材検討、太陽観測・記録法の検討など理科(科学)教育の教材としての有用性、活用法を提示することができた。物理教育誌、大学の物理教育誌に解説論文を掲載し、報告・解説書を作成するなどこのテーマの理科教材としての普及に取り組んだ。
著者
竹内 彰継
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は市販の光学機器だけを用いて安価に太陽の彩層の速度場を観測する望遠鏡を製作し、それを太陽プロミネンスの振動・波動現象の研究などに利用することにある。本望遠鏡は口径8cmの屈折望遠鏡の後に半値幅0.3AのHαフィルタと冷却CCDカメラを取り付けたもの3本を同一架台に搭載したものから構成される。Hαフィルタは設定温度を変えると透過波長帯をずらすことができるので3本の望遠鏡でHα線の線中心、短波長側ウィング、長波長側ウイングの光の強度を観測し、Hα線のドップラーシフトの2次元情報を得て、彩層速度の2次元分布図を作ることができるというのが本望遠鏡の特長である。次に、望遠鏡の性能の検定を行うため国立天文台三鷹キャンパスの分光器を利用してHαフィルタの分光・温度特性の測定を行い、各フィルタの波長λ(A)-温度T(℃)関係を求めた。続いて、京都大学理学研究科附属花山天文台のシーロスタットと水平分光器を利用してHαフィルタの透過波長帯のムラの有無を調べ、ムラの影響はほとんど無く精度良く太陽彩層の速度場が測定できることを示した。最後に、太陽表面上のジェット現象「サージ」や太陽表面に新しい磁束演浮き上がってくる「浮上磁場領域」の観測を行い、速度分布の2次元分布図(ドップラーグラム)を製作した。また、2006年11月9日の水星の日面通過を観測し、そのとき太陽面上に存在した黒点の温度の精密測定を行った。太陽プロミネンスの振動の研究については、本研究期間では充分なデータが蓄積できなかったが、今後とも本望遠鏡で研究を継続しその物理の解明に寄与して行きたい。
著者
眞方 忠道
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

パルメニテスの「存在」概念を明かにする為に挟み撃ち作戦をとった。一つはパルメニデス以前のイオニア派中ピュタゴラス派の根底にある,アルケーやプシューケーの概念を明かにすることにより,パルメニデスが不生不滅,不変不動,不可分であり,完全球によそえられるとした「存在」概念を解明する試みである。他の一つはパルメニデス以後の哲学者達による批判的継承過程を通じて「存在」概念を明かにする試みである。前者については,哲学以前のギリシア人の心情,宗教的感情の中でその核となる,生き生きと同一性を保ち働きつづける何かへの信仰の要素まで溯ることによって,アルケーやプシューケー概念が理解可能となるとの知見を得た。具体的には,人間が生存する為には犠牲となり葬られ,しかも複活再生してくるディオニュソス神に象徴される力への信仰及びアキレウスの怒りに見られる他とは置き換えられぬ自己という考え方が,ギリシア人の根底にあるということである。後者についてはエンペドクレス,アナクサゴラス,デモクリトス達の所謂自然哲学,更にプラトンのイデア論ばかりではなく,ソクラテスか死を賭して示した生き生きとした同一性,特に人格の同一性の問題とつなげることによって,パルメニデス理解が可能になるとの見通しを得た。以上の成果をふまえてパルメニデスの残存断片の整理,編集 一行一行についてに翻訳,註釈の作業を試みた。特にパルメニデスは「真理の道」で恩惟によってとらえられるとした「存在」が「ドクサの道」で感覚世界に如実に働きかけている,その働きかけの様相を明かにすべく努めてること,「序歌」はその「存在」のもつ生き生きとした同一性を保ち働きつづける力を詩を通じて感得させると共に,「存在」理解の連続性と段階性を示すものであり,二つの道をつなぐ要となっていることを示すことに努めた。
著者
石田 修
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,財市場の階層構造が存在すること,そして,この構造が企業の補間構造と階層構造に規定されることが研究される。このような主張を論拠づけるために,まず、財市場の階層構造を財の単価の相違から導きだした。さらに、部品貿易のアジアとヨーロッパとの構造の相違を明確にした。そのうえで、アジア域内の用途別貿易構造を注意深く研究した。とりわけ、日本、韓国・台湾、そして中国という代表的4カ国の貿易財の階層関係、貿易財の多様化と収斂化、貿易の高度化という傾向を指摘した。
著者
井上 高良 井上 由紀子 浅見 淳子 寺川 洋平 江草 早紀 平賀 孔
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、生後間もないマウス大脳皮質の接線軸方向に沿ってユニークな発現様式を示すシナプス・細胞間接着分子カドヘリン遺伝子群に着目し、それら発現制御機構や領野形成に果たす役割を探索することから、これまで不明であった大脳皮質機能領野個々の発生に関わる細胞・分子機序に迫ることを主目的とした。その結果、生後1週間の短期間に視床からの入力やバレルIV層神経細胞自身の活動に依存してカドヘリンサブクラスの発現動態が精妙に調節され、各サブクラスのもつ選択的な接着特異性が動的かつ協同的に神経細胞体の配置や樹状突起の配向性を制御することによってバレル領野特異的な組織構築様式を表出することが明白となった。
著者
田窪 行則 OSTERKAMP Sven
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成22年度には新資料の発見がいくつかあったが、主なものとしては、バチカン図書館蔵『伊呂波』と、シーボルト旧蔵にかかるマンチェスター・ジョンライランズ図書館現蔵『倭語類解』との欧洲所在朝鮮資料2点である。前年度に始めたそれらの調査を平成23年度にも続けた。後者に関しては、Medhurst編『朝鮮偉國語彙』(1835年刊)の前半の底本となったものであるということがわかったが、マンチェスター本『倭語類解』のみならず、『語彙』の後半のもととなった和刻本『朝鮮千字文』(Sturler旧蔵、パリ国立図書館現蔵)などをも調査した結果を2012年1月の教授就任講義で改めて取り上げ、今後『語彙』の成立過程と出典をテーマとした小論としてまとめる予定である。また、平成23年度には新たに、『朝鮮通信考』なる写本(京都大学附属図書館蔵)に「諺文いろは」が載せてあることを発見した。寛永13年(1636年)の朝鮮通信使の際、朝鮮人文弘績が林羅山と筆談する時に記したと見られるものである。とすれば、18世紀のものがほとんどの、先行研究において指摘されてきた「諺文いろは」の諸本よりも一世紀近く早いものということになる。従って、朝鮮資料のみならず一般的に日本語音韻史の研究にとって好資料となると思われる。特に、その原形がこの「諺文いろは」とほぼ同じ年代に遡るとされている原刊本『捷解新語』のハングル音注に矛盾するところが少なくないという点で、示唆に富む資料といえる。平成23年度内に発表した論文としては、まず、管見に入った若干の補遺を加えるとともに西洋の学界に紹介する目的で、2009年刊行の『譯學書文献目録』(遠藤光暁他編)の書評を執筆した。これ以外に、広く朝鮮時代におけるハングルによる外国語表記を扱った小論も平成23年に出たが、朝鮮資料の日本語表記などにも触れている。
著者
岡 夏樹
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

1)言葉の参照的意味の獲得と機能的意味の獲得の両者をモデル化し、計算機シミュレーション結果と人の発達データの比較や、ヒューマン-ロボット・インタラクション実験を実施した。2)認知発達の計算モデルとして提案したニューラルネット・モジュールの組換えを基本演算とする計算機構において、モジュールの機能の学習とその組み合わせ方の学習を並行して実行できることを、障害物回避タスクを用いたシミュレーション実験により示した。
著者
中園 幹生 堤 伸浩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

湛水条件下でイネ種子を播種すると、胚乳内のデンプンが糖に変換される。さらに解糖系・エタノール発酵系を活性化させてATPなどのエネルギーを得ることにより、イネは発芽することができる。しかし、芽生えの形態は好気条件下でのものとは異なり、子葉鞘と呼ばれる器官だけが伸長する。湛水条件下での子葉鞘の伸長に、解糖系・エタノール発酵系が必要であることが知られている。本研究ではさらに、エタノール発酵の中間産物であるアセトアルデヒドを酢酸に変換するアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)と、酢酸をアセチルCoAに変換するアセチルCoA合成酵素(ACS)の経路も重要であることを明らかにした。これらの経路はイネ発芽時の脂肪酸合成・アミノ酸合成に寄与していることが示唆された。ALDH2とACSをコードする遺伝子は、イネゲノム中にそれぞれ2コピーずつ存在しており、そのうちの1つの遺伝子(ALDH2a, ACS1)の発現は、湛水条件下で発芽させたイネ芽生えの子葉鞘で増大していた。湛水条件下におけるイネの発芽・出芽性と,ALDH/ACSの経路の関係について理解を深めるために、DEX誘導性プロモーターの下流にALDH2a, ACS1 cDNAをアンチセンスの向きにつないだプラスミドを導入した形質転換イネを作出した。現在、T2固定系統を作製中である。本研究期間内に形質転換植物の形質を評価できなかったが、今後、湛水条件下におけるイネの発芽・出芽性を詳細に調査する。本研究により、湛水条件下のイネの発芽・出芽性にエタノール発酵から分岐する新しい代謝経路が車要である可能性を示すことができた。
著者
藤井 正明 関谷 博 田原 太平 水谷 泰久
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

平成23年度までの5年間で得られた特定領域研究「分子高次系機能解明のための分子科学-先端計測法の開拓による素過程的理解-」(領域番号477)の研究成果を取りまとめ、新たな研究領域「高次系分子科学」としてのアピールを行うために公開シンポジウムを5月25、26日の2日間、東京工業大学すずかけ台キャンパスにおいて開催した。全ての研究を概観できる様にまとめのポスターセッションを班員にお願いすると共に、本領域研究5年間の中で特に顕著な成果を上げた研究を選んで口頭発表を行った。各研究者には本公開シンポジウム参加の為の旅費が無いため、国内評価委員や遠方からの一般参加者と共に必要に応じて旅費を支援した。その甲斐もあり、100名を大きく上回る参加者を数え、白熱した討論も行うことができ盛況のうちに公開シンポジウムを終えた。なお、公開シンポジウムの運営には、受付、会場設営などにアルバイトを雇用して対応した。さらに、公開シンポジウム開催と合わせて本特定領域研究5年間の成果を取りまとめた全体の終了報告書を日本語と英語で作成し、公開シンポジウム参加者並びに関係する各方面に配布して研究成果の公開を進めた。従来より、研究論文、新聞発表、受賞、国際会議運営などに関しではニュースレターに記事として掲載し、毎月1号のペースでメールマガジンとして配信してきた経緯があり、平成24年度も引き続き、取りまとめられた研究成果をメールマガジンとして配信した。また、ホームページにも従来通りニュースレターを掲載した。ホームページは国際発信の重要な手段でもあるため、成果取りまとめに合わせて更新し、成果集の英文内容を反映させた。
著者
日高 健一郎 石崎 武志 井上 浩一 川西 宏幸 高根 沢均 田村 幸雄 原 隆 堀 賀貴 水嶋 英治 吉田 昭仁
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-04-01

中近東と北アフリカにおいて、ユスティニアヌス1世期(6世紀)の主要な教会堂建築を対象として基礎研究、考古学調査、工学、保存科学、遺産公開の5領域で研究を行う。リビアのトクラ遺跡では「西教会堂」の発掘で、アプシスが出土、ヨルダンのジェラシュ遺跡では「三連教会堂」の詳細実測を終え、アトリウムの一部発掘を実施し、先行建築を確認した。対象国の政情不安と騒乱で一部研究が未完となったが、研究期間後半ではハギア・ソフィア大聖堂(トルコ、イスタンブール)を主対象として、上部構造の形状と微動を計測し、劣化の主因となる壁体への水分浸透を解析した。構造と保存科学の視点から、同大聖堂の保存と公開への基本指針を得た。
著者
菊地 栄治 池田 賢市 亀田 温子 栗原 真孝 白川 優治 高田 研 高橋 亜希子 永田 佳之 仁平 典宏 丸山 英樹 宮古 紀宏 椋本 洋 吉田 敦彦 吉本 圭一 和井田 清司 平塚 眞樹
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究を通じて、私たちは現代日本の若者たちが力を奪われている実態について共通認識を得た。とはいえ、具体的な事例の協働的研究を通して、さまざまな難題に直面しつつも多くの若者たちがエンパワーされていく可能性が明らかになった。総じて、〈一元的操作モデル〉にもとづく施策と実践はかれらの力を奪い取りがちである。これに対して、〈多元的生成モデル〉はかれらをエンパワーできる。多くの事例において、かれらを〈若年市民層〉へと育む実践に共通するのは、相互的主体変容を促しているという特徴であった。〈多元的生成モデル〉は、エンパワメントの実践に共通する本質的特徴であり、今後の教育改革のあり方を示唆している。
著者
遠山 柾雄 岩崎 正美 木下 収 杉本 勝男 竹内 芳親
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

高温乾燥の激しいメキシコ沙漠の海岸砂丘地で、野菜の生産性増大に関する基礎研究を行った。供試野菜は小松菜,廿日大根,ベカナ,チンゲンサイ,レタス,グリーンデビューの6種で、これらの野菜栽培に対して点滴かんがい法,保水剤の利用,かん水頻度とかん水量等による節水技術の確立を行った。また、良質のかんがい水として空中水分を除湿機により採取し、それを育苗床へ利用することを試みた。メキシコ砂漠の地下水のEC1442μs/cmに対し、除湿水は266μs/cmで極めて良質であった。地下水に対する葉重がレタス1.9倍,チンゲンサイ1.6倍となったように、その除湿水は育苗に対して顕著な効果をあげた。また、9種の保水剤を利用した実験においてチンゲンサイの葉重には増収効果が表われたが、その中で最大の効果をあげた保水剤は約60%で、全体的には国内実験に比較して効果があがらなかった。これはかんがい水中の塩分が影響しているためであり、沙漠緑化に対しては耐塩性保水剤の開発が急務であることが示唆された。また、同量のかん水量に対して、かん水頻度の多い方がチンゲンサイの葉重は増加した。
著者
斎藤 憲 ネイサン シドリ
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

数学文献の写本に現れる図版を容易かつ正確に再現するソフトウェアDRaFTの開発をおこなった.これによって次の著作の主要写本における図版を再現し,公開した:エウクレイデス『原論』6, 11, 12, 13巻(12巻について他の伝承と大きく異なり,未刊行であったボローニャ写本の図版を含む),メネラオス『球面論』アラビア語訳のAl-Harawi版.これらの図版とソフトウェアはhttp://www.greekmath.orgに掲載されている.また,異なる写本の図版に異同がある場合の校訂の原則について,提案をおこなった.