著者
浅川 満彦 大沼 学 吉野 智生 相澤 空見子 佐々木 均 前田 秋彦 斉藤 美加 加藤 智子 盛田 徹 村田 浩一 桑名 貴
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-26, 2008-07-20

極東ロシア地域からのウエストナイル熱ウイルスが日本に伝播することが懸念されており,その場合には,野鳥の大量死が発生することが想定されている。酪農学園大学野生動物医学センター(以下,WAMC)では,学外専門家との共同で野生鳥類の普通種を対象にウエストナイルウイルスの簡易診断キットVecTest(米国Medical Analysis Systems, Inc. 社 : 同ウイルスのモノクロ抗体応用)(以下,キット)応用の可能性とこの感染症に関連した調査を行っている。WAMC(担当 : 吉野・浅川)において口腔内スワブを採取し,このスワブをキット用サンプルとした。一部は脳,心臓,腎臓から抽出したRNAをリアルタイムPCR法(担当 : 大沼)および10%脳乳剤Vero細胞接種法によるウイルス分離法(担当 : 前田)による確定診断を実施した。これまでの実績としては658個体(20目123種)(傷病入院個体含む)(吉野ら,2008)が検査され,疑陽性を呈したスズメ(<I>Passer montanus</I>)一個体を除く,すべてが陰性結果を呈した。疑陽性を呈した個体については,同時期・同地域に由来する5個体のスズメと共に,前記確定診断により陰性を確定した。さらに,関連調査として北海道の野鳥(カモ類)および哺乳類(アライグマなど)血清中の抗フラビウイルス中和抗体価測定(担当 : 斉藤),キットを用いた酪農大構内のアカイエカを対象にした予備調査(担当 : 佐々木)および救護鳥類でのキットによる診断(担当 : 加藤,盛田)などを実施している。混合感染で症状を増悪化させる可能性がある原虫類については,血清分離後の血餅およびスライド塗沫標本による<I>Plasmodium</I>属などの分析(担当 : 村田)も予定され,サンプルの有効活用も計る。<BR>今回行ったモニタリング調査の結果も含め,信頼性が高いとされるキットを用いた検査であっても,疑陽性・陽性反応が出た時点における確定診断検査の体制をあらかじめ組み立てておくべきであろう。また,病原体の伝播と混合感染という病原体の生態現象を鑑みた場合,媒介昆虫や寄生虫を含む他の病原体なども対象とした調査としなければ,自然生態系に生息する野鳥の絶滅リスクの増大を予見することは困難である。よってWAMCではより広範囲な動物・病原体を対象とした調査研究を実施しているのでその概要についても触れたい。本研究は環境省地球環境研究総合推進費(F-062 : 渡り鳥によるウエストナイル熱および血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究)および文部科学省科学研究費(18510205)の支援を受けて行われた。
著者
斉藤 和義 河野 公俊 田中 良哉
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

転写因子に対する抗体とリウマチ性疾患の臨床病態との関連につき、その網羅的な解析をこころみた。96種類の細胞増殖周期、恒常性維持などに重要な機能をもつ、種々の核内因子をGST融合蛋白として調整し1枚のDEAEシートにブロッティングした。SLE10例をはじめとした患者血清中の対応抗原の検索を行った。血管炎症候群の血清の一部でHMG1に対する抗体が検出された。一方、SLEではPCNAに対する抗体が2例で検出されたが、その他の多数の抗原にも反応しており、疾患特異性や病態への関与などを示す傾向は認められなかった。抗原をアセチル化、メチル化して翻訳後修飾を受けた核内蛋白への血清の反応も検討したが、翻訳後修飾を行うことで新たに得られた陽性結果や陰性化などの変化は認めなかった。
著者
野村 彰夫 斉藤 保典
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

最終目標を"生活空間圏におけるバイオおよび有機微粒子動態の解明と制御"に置き、(1)太陽背景光の地上到達成分の精密計測(平成16年度に終了)と、(2)バイオ微粒子のレーザー発光スペクトル情報の取得(平成17年度課題)、について検討してきた。主な成果は次の通りである。1)花粉蛍光スペクトルのデータベース作成:バイオ微粒子代表として花粉を選び、蛍光スペクトルのデータベースを作成した。花粉症の主物質であるスギ、ヒノキ、ブタクサの他に、果樹や鑑賞植物等の花粉を含め20品目のデータが入力された。2)発光スペクトル計測システムの製作:励起には波長355nmのパルスYAGレーザを使用した。微弱な蛍光発光を効率良く集光するために、直径25cmの天体望遠鏡を利用した。蛍光発光は分光器でスペクトルに分解された後に、イメージインテンシファイアー付きのCCD検出器で検出された。3)発光スペクトル観測実験:3-1スギ花粉:システムから25m離れた位置にスギ花粉塊を置き、その発光スペクトルを観測した。480nmにピークを持つなだらかなスペクトルが得られた。3-2ヒノキ花粉:440nmにピークを持ち420nmに肩を有するスペクトルが得られた。スペクトル形状の比較により、スギとヒノキの花粉を区別できることが示された。3-3植物葉:40m離れた自生ポプラの葉の蛍光スペクトルを観測した。クロロフィル有機分子に由来する685nmと740nm、光合成の代謝二次産物に由来する460nmと530nmの特徴的なスペクトルが観測された。3-4ごみ焼却排煙:約3km離れた大型ゴミ焼却炉からの排煙の散乱検出実験を行った。廃出源から少なくとも1.6km以上に渡る拡散状況の三次元分布を得た。
著者
井上 中順 斉藤 辰彦 篠田 浩一 古井 貞煕
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J93-D, no.12, pp.2633-2644, 2010-12-01

本研究では,映像の中から「飛行機」や「歌っている人」といった高次特徴を検出するタスクに対し,SIFT特徴とMFCC特徴の混合ガウス分布(GMM)を用いた統計的手法を提案する.検出手法には,話者認識などで用いられてきたゆう度比による検出と,GMM Supervector SVM (GS-SVM)による検出の二つを用いる.ゆう度比による検出では,高次特徴が出現する部分としない部分のGMMをそれぞれ学習し,二つのモデルから得られるゆう度の比をもとに高次特徴を検出する.GS-SVMでは,各ショットに対するGMMを求め,GMM間の距離から定義されるRBFカーネルを用いたSVMで学習・識別を行う.最後に,各手法から対数ゆう度比を求め,その重み付き和により手法の融合を行う.TRECVID2009のデータセットを用いて評価実験を行った結果,Mean Average PrecisionはSIFT特徴とGS-SVMを用いた場合の0.141から,融合手法により0.173まで向上した.
著者
斉藤 昇 島田 清司 塚田 光
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

鳥類の水分代謝機構の基礎的な解明と軟便などの家禽産業での問題点に対する解決策への応用として本研究を始めた。初めに、鳥類の抗利尿ホルモンであるアルギニンバソトシン(AVT)の遺伝子発現の機構を明らかにするために、急速な塩水投与を行い転写因子等の遺伝子発現等を解析した。その結果、AVT mRNAレベルは塩水投与後3時間に意な増加を示した。他に、c-fos mRNAレベルなども3時間後に増加した。それに対し、転写因子TonEBP mRNAレベルは、塩水投与後1時間に有意な増加を示した。この結果をもとに、TonEBPのアンチセンスを作成し、塩水投与前に前処理として脳室内に投与したところ、視床下部AVTの遺伝子発現は増加しなかった。しかし、c-fosの遺伝子発現には影響しなかった。この結果から、TonEBPがAVTの遺伝子発現調節に重要な転写調節因子であることが明らかになった。また、このようなAVT等の遺伝子発現機構が、塩水投与によりブロイラーでは影響が見られなかった。しがたって、ブロイラーで軟便が生じ易い理由が、AVTの遺伝子発現と関係がある可能性が示唆された。次に、腎臓における水の再吸収機構を解明するために、アクアポリンの遺伝子発現を調べた。AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP7、AQP9の6つのタイプで腎臓における発現が観察された。さらに、塩水投与により血中浸透圧が上昇した時における遺伝子発現の変化を調べたところ、AQP1、AQP2、AQP3のタイプのみが上昇し、他のタイプは、変化が見られないか減少した。したがって、ニワトリの腎臓における水の再吸収には、AQP1、AQP2、AQP3が主に関与していることが明らかになった。
著者
横田 誠 斉藤 浩徳 武子 政信
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.187-188, 1997-03-12

パタン化された問題空間を入出力系とする情報的感性対応の人工的システムの進化過程を考えている。一般化パタン系は, 絵画パタン系と考えている。絵画的パタンは, 画素パタンの連鎖パタン系である。又, 絵画パタン系には, 額縁のような, 境界条件の設定の有, 無の系がある。絵画パタン系の基礎系として, 矩形画素の連鎖系である, 抽象画系, モンドリアンパタン系が考えられてている。今回は, 矩形額縁ワク内の矩形画素連鎖系に対して, アルキメデスに由来する, アルベロス円列, すなわち円形額緑ワク内の円形画素の連鎖系の基礎的系について考える。感受や, 変形等の感性対応の人工的システムを考える前提として, その入出カパタン系を線路系と考え, 数理的接続特性を考える必要がある。その上で, 表情とか, 説明・案内効果等を考えることになる。
著者
斉藤 亮治 村木 さおり 宇敷 修一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.2, pp.644-645, 1996-09-18
被引用文献数
3

低ひずみ整流回路方式は、原理的に力率1まで制御可能な回路方式、力卒1までは制御できないが構成の簡単な回路方式の2つの方向で検討されている。後者の方式として2スイッチで構成した3相力率改善回路が提案され電流波形改善の帰還制御なしで良い結果が得られることが報告されている。この回路は*パルス幅制御なしで入力AC電圧のピーク以上の整流電圧で波形改善ができる。*スイッチのピーク電流は大きいが6スイッチ方式に比較し数が1/3なのでスイッチの利用率は高い。などの特徴がある。本稿では、この2スイッチ回路の特徴をもち4スイッチで構成した絶縁出力を得る3相入力低ひずみ整流装置について検討したので、回路方式、動作と特徴、シミュレーション方法と結果について概要を報告する。
著者
安田 喜憲 笠谷 和比古 平尾 良光 宇野 隆夫 竹村 恵二 福澤 仁之 林田 明 斉藤 めぐみ 山田 和芳 外山 秀一 松下 孝幸 藤木 利之 那須 浩郎 森 勇一 篠塚 良司 五反田 克也 赤山 容造 野嶋 洋子 宮塚 翔 LI Xun VOEUM Vuthy PHOEURN Chuch
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

年縞の解析による高精度の気候変動の復元によって、モンスーンアジアの稲作漁撈文明の興亡が、気候変動からいかなる影響を受けたかを解明した。とりわけメコン文明の一つであるカンボジアのクメール文明の興亡については、プンスナイ遺跡の発掘調査を実施し、水の祭壇をはじめ、数々の新事実の発見を行った。稲作漁撈文明は水の文明でありアンコールワットの文明崩壊にも、気候変動が大きな役割を果たしていたことを明らかにした。
著者
土田 知恵子 斉藤 節子
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.11-16, 1980-03-25

北海道十勝地方の衣生活の実態を,帯広市及びその周辺に慟く婦人の協力により調査した結果,前回未報告に終った3項目について考察したのを要約すると,1 衣服を調製する時期は,各年令層を通し季節感に関係なく,経済的・社会的必要性に応じ衣服を調達し,着用する楽しみの中で,四季の変化を取り入れている。2 生活意識の違いから低年令層の方が被服費比率が高い傾向にあるが,著侈的傾向にならないためにも,正確な商品知識,科学的選択態度をやしなう事が,被服費支出の合理化につながる。3 未利用衣服は,友人・知人に利用してもらう,仕立て直して利用するというのが高年令層での傾向であったが,各年令層に於ける被服管理技術,生活経験と価値感の違いからと思われる。4 着用の実態では,職場での体感温度を54%が寒いとするにもかかわらず,特に下半身が薄着の傾向が低年令層に見られ,科学的な着用方法を身につける必要性を感じる。
著者
酒井 昭 斉藤 満
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.244-251, 1967-06-25

3〜4年生のスギを用いて幹の基部の凍害がおこるしくみを明らかにするために, 一連の実験を行ない, つぎの結果をえた。1)スギの幹の基部(3〜4年部位)はその上部にくらべて, 秋から冬にかけての耐凍性のたかまる進度がおくれるし, 冬の耐凍性の最高値もかなり低い。2)耐凍性がかなり高まった時期に10(日中)〜-5℃(夜間), 10(日中)〜-10℃(夜間)の温度変化を11日間与えても, また10℃で約10日間連続処理しても耐凍性はほとんど低下しなかった。しかし, 20(日中)〜-5℃(夜間)の温度変化や約13℃以高の温度で約10日間処理したときには耐凍性はかなり低下したが, まだ-12℃以高の温度での凍結には耐えることができた。以上の事実から耐凍性がかなり高まった厳冬期にはかなり大きり日週温度変化があっても耐凍性は低下しにくい。しかしまだほとんど凍結に耐えないか, 耐凍性が低い12月初旬や中旬に零下数度の冷え込みがあるときには, 幹のうちでもっとも耐凍性が低く, しかも温度が下がりやすい地際近くの幹が凍害を受けやすい。
著者
沢田 健志 須賀 卓 斉藤 正典 池田 哲臣 高橋 泰雄 影山 定司 大野 秀樹 大塚 国明 堀江 力
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.22, no.41, pp.1-6, 1998-08-21
被引用文献数
4

電気通信技術審議会において昨年9月策定された地上デジタルテレビジョン放送暫定方式の原案(伝送部分)の仕様に準拠した伝送実験装置を試作した。地上デジタル放送の標準化に寄与することを目的に、本装置を用いて暫定方式原案の動作検証と性能評価を行っている。ここでは、装置の概要について報告する。
著者
平岡 公一 山井 理恵 斉藤 弥生 大坂 純 志水 田鶴子 菊池 いづみ 秋元 美世 新保 幸男 岡部 耕典
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本における多元的福祉ガバナンスのもとでの福祉サービスの質の確保策の現状と課題、および将来展望について、国際比較的な視点をふまえ総合的に検討した。地方自治体における実施状況、あるいは民間組織の先進的な取り組みの事例の分析に基づいて検討した結果、サービス実施アプローチに適合的な適切な質の確保策を選択すること、さまざまな質の確保策の間の機能分担関係を明確化することなどの課題が明らかになった。
著者
新井 雅隆 斉藤 正浩
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ディーゼル機関から排出される粒子状物質(すす)を除去するために,すすの捕集と燃焼を繰り返すことで連続処理を可能とした電界式すす除去装置(E-DPF)を新たに開発した.この装置の特徴として,E-DPF内に電極を兼ねたステンレス製の多孔板が層状に配置されており,交流電界(0〜260V)あるいは直流電界(0〜350V)を電極間に印加した.E-DPF装置の基本的性能を調べるために,ディーゼル排ガスの模擬ガスとしてアセチレン火炎から発生するすすを用いて実験を行った.その結果,すすは電極を兼ねた多孔板を通過する際に,電界の作用により帯電し,分極したすす粒子が多孔板に付着して電界方向に粒子のブリッジを形成することがわかった.そのブリッジ状すすの捕集量と電極間の電流には相関があり,印加電圧が低い領域では比例関係となるが,印加電圧を高めてブリッジ状すすが再燃焼する領域では,多孔板間のブリッジが局所的に切断されて電流値の増大が抑えられる.ブリッジ状すすの生長速度は電界強度が比較的低い約50kV/mで最大となるが,すすが再燃焼するには至らなかった.また,電界強度が100kV/m以上になるとブリッジ状すすが火花放電あるいは直接通電によるジュール熱ですすの再燃焼が生じ,本実験範囲では150kV/m付近において,すすの再燃焼効率が約30%で最も高くなることがわかった.さらに,電界強度が200kV/m以上では,ブリッジ状のすすの成長が強度の火花放電によって抑制され,これがすすの捕集効率を下げることにつながり,結果として再燃焼効率は低下した.
著者
洞口 敬 斉藤 明義 田中 潔
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.518-530, 1997-10-01
被引用文献数
3
著者
加藤 輝之 栗原 和夫 瀬古 弘 斉藤 和雄 郷田 治稔
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.719-735, 1998-10-25
被引用文献数
6

10km分解能気象研究所非静力学メソスケールモデル(MRI-NHM)が予想した降雨の精度検証を1996年梅雨期について行った。精度検証結果については気象庁の10km分解能静力学領域スペクトルモデル(RSM)の結果とも比較した。MRI-NHMには雲水、雨水を直接予報する暖かい雨タイプの降水スキームを用い、RSMでは2つの対流のパラメタリゼーションスキームを大規模凝結とともに用いている。MRI-NHMは1時間降水量1mm程度の小雨を僅かに過小に予測した一方、降水強度の最大値20mm以上の強雨の面積を相当に過大評価した。統計的なスコアを取ったところ、1時間降水量10mm以上の強雨についてはMRI-NHMの方がRSMより正確に予測していた。ただし、5mm以下の雨についてはMRI-NHMはRSM程成績は良くなかった。MRI-NHMは1時間降水量20mm以上の雨のほぼ半数を予想することができた。降水は九州北部より南部の方が精度良く予想されていた。このことは九州北部と南部とで強雨形成のメカニズムが異なるためだと考えられる。
著者
斉藤 晃 多田 裕
出版者
鶴見大学女子短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6〜9年の3年間で316名の母親(満期産,経膣分娩)にブラゼルトン尺度(NBAS)を依頼し,105名の協力者を得た。この中の48名から家庭訪問の許可が得られ,1,3,6,9,12ヶ月まで家庭訪問を行ったところ,A群5名,B群35名,C群6名,啼泣強く実験中止した児1名であった。A群児はNBASの自律性においてB,C群児と顕著な差を示した。B,C群児の自律性は生後1ヶ月で上昇するが,A群児は生後8日目に一度低下し,その後1ヶ月目に上昇する。自律性は驚愕反射,振戦等から構成されており,A群児は生後1ヶ月間の成熟過程における何らかの一時的停滞を示唆した。アタッチメント形成には母親の敏感性が重要だといわれている(Ainsworth)。本研究では母親の敏感性の一側面であるの啼泣に対する応答性(随伴性)を測定した。その結果,A群児の母親は1年間を通じて他群よりも一貫して応答性が高く,そして児の啼泣時間も短い。Sroufe(1985)は安全性(B群・非B群)は母親の応答性に左右され,A・C群の違いは気質に影響を受ける,と述べた。そしてEgeland and Sroufe(1981)によれば,安全性に影響を与える要因として,肉体的虐待・敵意,無視・養育不足よりも心理的利用不能性(psycological unavailability)の方が大きな影響があったという。しかし我々のA群の母親は他群と比較して明らかに応答的であり,心理的利用性は高い。本研究の被験者は316名中の46名であり,かなり等質な集団,しかも「開放的,肯定的で受容的な母親」にぞくする。従って,アタッチメントパターンは,母親よりも児自身の気質に大きな影響を受けている可能性大である。そうであれば,彼らが見せたアタッチメントパターンは,ある狭い幅の,すなわち児にとって良好な環境において成長した児が見せる気質的特徴を反映したものだと考えられる。
著者
澤登 俊雄 村井 敏邦 前野 育三 福田 雅章 荒木 伸怡 斉藤 豊治 新倉 修
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、主として、アメリカ、イギリス カナダ、ドイツ、フランス、北欧各国の少年司法制度、児童福祉制度における「こどもの権利保障」の内容につき、体系的に整理された詳細な「共同調査項目表」を作成し、それに基づいて調査・分析を行った。この「共同調査項目表」は、少年手続を審判前、審判段階、処分決定と処遇の3段階に分け、それぞれ少年の権利保障、適正手続の観点から有意義と思われる全25項目(さらに細項目は約225項目に分かれる)について調査する質問票であり、各質問番号を各国横断的に比較することで、明確に各国権利保障の状況の比較分析ができるよう工夫されている。これについて、最新の法令、判例、運用等を紹介したことはもちろん、これらでは十分に解明しえない諸点については、外国人研究者への直接質問等により正確を期した。これらの比較の上に立って、各段階、各国毎に、適正手続、国親思想、保護主義、刑罰主義、職権主義、当事者主義等の基本概念を縦軸に、「少年司法運営に関する国連最低基準規則」、「子ともの権利条約」等、子どもの権利保障を重視した諸々の国際準則が各国においてどのような影響を与えているかを横軸に、総括的なまとめを行った。その際、これらの知見が、日本法、とりわけいま問題となっている少年手続の基本構造をめぐる議論にどのような示唆を与えるものかを常に念頭に置いて分析したことはいうまでもない。詳細は今年中に発行を予定されている書物(「少年司法と適正手続」)に譲ることとするが、国際準則の影響下、全般的には子どもの権利保障が進みつつあるものの、各国固有の歴史的、政治的、社会的背景を反映し、各国における問題関心、権利保障の具体的な現れ方には、看過できない大きな相違があることが感じられた。