著者
秋永 一枝 上野 和昭 坂本 清恵 田中 ゆかり 松永 修一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「複合メディアによる東京弁アーカイブの構築と電子的公開」の目的は、旧来の研究では埋もれてしまう可能性のあった東京弁としての貴重な一次資料を、汎く利用できるような形にして蘇らせようとするものである。秋永の聞き取りによるアクセントなどの言語情報が付加した自然度の高い談話資料として、文字化データと音声データをセットで利用できるよう電子化し、談話資料、アクセント資料、東京方言語彙資料のデータベースとしても利用できる基礎資料を完成させることができた。
著者
嵯峨 園子 上野 学 篠原 稔和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.81-88, 2004-09-10

「インタラクティブメディア」とは,文字・画像・音声その他の多様な技術を介して,操作者との相互作用により,情報検索や何らかの生産活動を行うために用いられるシステムを示す.そこでは多くの要素が相互作用を発生させる要因となり,また,操作者に影響を与えることになる.本稿では,インタラクティブメディアをユーザビリティという視点から評価する手法を紹介する.この手法は,評価項目を三層構造で構成し,それぞれの項目間の優先度をパラメーターとして設定する機能をもつことで,汎用性と網羅性,また,高度なノウハウをもつ専門家による評価のメリットを配慮したものである.また,ビジネス上の実用性とその効果も目的とする.
著者
田中 篤 高橋 宏樹 根津 佐江子 上野 義之 菊池 健太郎 渋谷 明隆 大平 弘正 銭谷 幹男 Lorenzo Montali Pietro Invernizzi 滝川 一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.51-59, 2009 (Released:2009-03-02)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

疲労は原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者の主要症状の一つとされており,近年欧米では臨床上の重要な問題としてPBC患者の疲労に関する報告が相次いでいるが,日本人PBC患者における疲労症状の実態は不明である.われわれは疲労症状の評価尺度として頻用されるFisk Fatigue Severity Score(FFSS)の日本語版をback translation法によって作成し,日本人PBC患者166名を対象としてその妥当性を統計学的に検証した.クロンバックのα係数は0.900を超えており,評価尺度の内的整合性は良好であった.SF-36との間にも高い相関が存在し,ことに疲労と関係の深い「活力」「日常役割機能(身体)」との間に最も強い相関がみられた.主因子法による探索的因子分析ではphysical, cognitive, socio-relational, socio-emotionalと推定される4因子が抽出され,これらによって結果全体の66%が説明可能であった.以上より今回作成した日本語版FFSSの妥当性が検証された.今後これを用いて日本人PBC患者の疲労症状について詳細に検討する予定である.
著者
畑山 未央 上野 行一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1-6, 2020-03-21 (Released:2020-03-18)
参考文献数
9

近年, 国内外で注目を集めているSTEAM教育であるが, STEM教育に加えるAの捉え方がArt(芸術)であったり, Art+Designであったり, Arts(リベラル・アーツ)であったりと様々である.そのためSTEAM教育におけるAの役割や位置づけが多様となり, Aの役割や位置づけが不明確なままで行われがちな実践を多く見かける.本研究は, 美術教育の視点から様々なSTEAM教育における異領域の統合原理を整理し,教育課程上の違いや特色を指摘すると共に,STEAMのAの位置づけに焦点化して我が国の初等中等教育における学校現場への普及を目指すものである.
著者
上野山 怜子 西川 俊夫 宮崎 雅雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.435-440, 2021-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
20

蚊は,人類の大敵である.蚊に吸血されると,かゆみが生じるだけでなく,生命を脅かすさまざまな伝染病,たとえば熱帯地域では,マラリアなどに感染する恐れもある.そこで人類は古くから植物からの抽出物を使って蚊を化学防御してきた.このような生存戦略をとった動物は,人類だけではない.たとえばオマキザルやハナジロハナグマなどの動物は柑橘類の果実の皮を身体に擦り付け,その忌避効果を利用していることが知られている(1).つまりヒト以外の動物も進化の過程で病原体を媒介する蚊から身を守る化学防御術を身に着けてきたようである.本稿では,ネコでよく知られたマタタビ反応も実は蚊の攻撃から身を守る重要な行動であるという予想外の知見が得られたので(2),この発見に至った経緯を紹介する.
著者
太田 久裕 山田 浩之 新田 清一 鈴木 大介 本間 大和 和泉 光倫 今村 香菜子 南 隆二 中山 梨絵 上野 真史 若林 毅 島貫 茉莉江 大石 直樹 小澤 宏之
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.556-564, 2022-12-28 (Released:2023-01-18)
参考文献数
14

要旨: 近年, 国民の難聴対策の必要性の増加に伴い, 政府や関連学会より言語聴覚士の活用や雇用の促進が訴えられている。今後は言語聴覚士 (以下 ST) の聴覚医療における貢献や活躍が期待されている。今回, 補聴器外来を医師1名から医師と ST の協力体制に移行する前後を比較し, 患者, 医師, 医療機関にどのような影響を与えたかについて検討した。補聴器購入後の補聴器全体の満足度は医師 1 名体制で平均82点, 医師と ST の協力体制で平均80点と同等の結果で, 高い患者満足度を維持することができた。1週間の最大患者枠数は14人から54人に増えた。1年間の補聴器適合検査数は1回目が2.2倍, 2回目以降が3.2倍に増加した。医師と ST の協力体制に移行しても満足度が維持できたことから, ST の積極的な参加は, 補聴器医療の需要に対応していく上で有効な選択肢で, 今後, より一層の ST の補聴器医療への関与が期待される。
著者
武田 志乃 西村 まゆみ 山田 裕 上野 俊治 島田 義也
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第34回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.5156, 2007 (Released:2007-06-23)

近年、劣化ウラン弾汚染地域やウラン鉱山伏流水を飲用する地域で健康影響についての報告が増加し、子どもへのウランの毒性影響に関心がもたれている。自然界に存在するウラン(天然型ウラン)や劣化ウランは放射線毒性よりも重金属としての化学毒性が優勢とされ、カドミウムや水銀様の腎臓の尿細管障害を引き起こすことが知られている。しかし発達期におけるウランの感受性や体内挙動は十分に理解されていない。その理由の一つは、組織中の微量ウランの測定が困難であったことがあげられる。すなわち、ウランはα線放出核種であるため、β線やγ線核種のように感光フィルムやイメージングプレートによる組織分布が簡便に得られない。 我々はこれまでに、ナノビームを利用した高エネルギー領域シンクロトロン放射光蛍光X線分析(SR-XEF)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による微量元素測定手法に取り組んできた。両手法は微小組織におけるウラン分析に有効であることから、我々はこれらの手法を幼若ラットにおけるウランの挙動解析に応用することを試みた。本研究では、ウランをばく露した生後6日齢および3週齢の雄性ラットにおけるウランの体内挙動、および腎臓中ウラン分布とアポトーシス誘導との関係を報告する。
著者
上野 直樹 ソーヤー りえこ 茂呂 雄二
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.173-186, 2014-03-01 (Released:2015-02-02)
参考文献数
24

According to the viewpoint of this paper, artifacts can be regarded as a socio-technological arrangement. Further, agency is not independent from a socio-technological arrangement but is something emerging from a socio-technological ar-rangement, while agency has traditionally been defined as a human capacity of having needs and preferences and of seeing possible actions. If so, the design of an artifact is not the design of a single artifact but the design of a socio-technological arrangement and of agency. Thus, in this paper, first of all, we attempt concretely to analyze the design of an artifact as that of socio-technological arrangement, based on our field-works concerning the cases of open data and integrated learning. Second, we show how agency emerges from a socio-technological arrangement, also based on our fieldworks. Third, we propose some viewpoints for designing artifacts dependent on the first and the second analysis.
著者
野中 美希 上野 晋 上園 保仁
出版者
Japan Society of Neurovegetative Research
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.87-91, 2023 (Released:2023-06-23)
参考文献数
32

分子標的薬をはじめとする新薬の開発,ならびに医療技術の進歩に伴いがんサバイバーは年々増加している.一方,一部の抗がん剤は心血管機能障害を引き起こすこと,とりわけ免疫チェックポイント阻害薬は致死性の心機能障害を生じることが判明し,がん患者の生命予後やQOLに影響することが懸念されている.加えて,がん自体,およびその進行に伴って生じるがん悪液質によっても心機能障害を起こすことが明らかとなってきたことから,がん悪液質やがん治療がもたらす心機能障害を予防すること,ならびにその治療法を確立することは喫緊の課題となっている.運動療法は,慢性心不全患者において,生命予後を改善すること,加えてがんにおいても再発を防止し抗がん剤治療を完遂することが報告されている.本総説では,がん治療に伴う心機能障害,特にがん悪液質時の心機能障害に対する新しい治療法として,運動療法の治療効果について概説する.
著者
根本 直人 望月 佑樹 上野 真吾
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.250-253, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
16

cDNA display is a robust and versatile in vitro protein selection tool developed on the basis of mRNA display. In this tool, a protein is covalently linked with its coding cDNA via a specially-designed puromycin-linker to improve the stability of the molecule. As a result of the stabilization, cDNA display succeeded in extending the variety of libraries (e.g., modified peptide library) and target molecules (e.g., cell surface molecules). Thus, this technology will enable to design functional proteins and peptides which could not be evolved by the previous in vitro protein selection tools.
著者
高橋 直己 上野 舞夕 浜田 百合 庄司 裕子
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.135-142, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
23

Emojis are extensively used to convey emotional nuances non-verbally in computer-mediated communication. Previous studies have examined how emojis are used and how they change the expression of a sentence, as well as the subsequent impression of the reader. Regarding whether the writer’s emotion is understood correctly by readers, evidence shows that emojis can enhance specific emotions. However, the effects of variation in the kinds of sentence, emotion, and emoji on the shifting emotion conveyed have not been studied. In this study, we examined the various factors that affect the shift in emotions being communicated. Our results demonstrated that positive emotions can be communicated more correctly compared with negative emotions and that smiley emojis (a.k.a. emoticons) can communicate emotions more clearly compared with other kinds of emoji.
著者
上野 光一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.134, no.11, pp.1093-1108, 2014-11-01 (Released:2014-11-01)
参考文献数
77

Histamine was first identified in 1910 as a physiologically active amine. It is now recognized for its multiple regulatory activities in the digestive, neuronal, and immune systems, and new roles are still being elucidated. Histamine exerts its effects through four distinct receptor subtypes. The histamine H4 receptor was identified in 2000 and is the most recently identified of the four histamine receptors. It is expressed primarily in immune cells and is involved in physiologic functions related to inflammation and allergy. Recently, the H4 receptor was highlighted as a promising therapeutic target in atopic dermatitis, asthma, and chronic arthritis. In fact, some H4 receptor antagonists have reached clinical trials for the treatment of asthma, atopic dermatitis, and allergic rhinitis. Based on an initial assessment of its distribution, the H4 receptor has been referred to as the histamine receptor of the hematopoietic system. However, the H4 receptor has also been implicated in the regulation of other non-hematopoietic systems. Here, I review the expression and function of the identified histamine receptors, including the H4 receptor with a focus on articular and dermal tissues. In articular tissue, H4 receptor expression has been detected in synovial cells. Chondrocytes, a major cell source for cartilage tissue engineering, also express the H4 receptor. In skin, the H4 receptor is expressed in both the epidermis and dermis, with stronger receptor expression in the epidermis. Further understanding of the functions of H4 receptors in non-hematopoietic cells might lead to novel treatments for diseases with unmet medical needs.
著者
上野 加代子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.70-86, 2017 (Released:2018-06-30)
参考文献数
71
被引用文献数
2

福祉の領域における社会構築主義の研究は多様であるが, この領域に特有の姿勢を見て取ることができる. それは, 自分たちがクライエントを抑圧してきたという「自身の加害性の認識」と, 「研究結果の実践への反映」である. 本稿では, 福祉の領域に特有のこれらの姿勢に着目し, それに関連する文献を中心にレビューする. 具体的に, ひとつはソーシャルワーカーとクライエントを拘束しているドミナント・ストーリーをクライエントと共同で脱構築しようとするナラティヴ・アプローチの研究の流れである. 本稿で取り上げるもうひとつの構築主義的研究の流れは, ソーシャルワークが専門職として確立, 再確立される過程で, 「トラブルをもつ個人」がどのように創りあげられてきたのかを, 外在的に分析するものである. なお, 「自身の加害性の認識」という点は, 英語圏の文献には顕著であるが, 日本語の文献では弱い. そこで, 英語圏の文献をレビューした後, 日本における構築主義研究ではどうして「自身の加害性の認識」という観点が乏しいのかについて考察する. そして最後には, 近年の英語圏の文献では自身の加害性のみならず, 「被害者性」についても議論されていることを踏まえ, 自分自身の知識や実践に対する構築主義研究が, 「自分は加害者たることを強制された被害者だ」という自己弁護に陥る危険をはらみつつも, 社会制度変革へのコミットにつながることに触れておきたい.