著者
高岡 智子
出版者
龍谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

当該年度は、東ドイツのポピュラー音楽に関する「保存」、「普及」、「教育」に焦点を絞り、2月下旬から3月中旬にかけて約1ヶ月間、ベルリン及びクレペリンでインタビュー調査と資料調査を実施した。インタビュー調査は、クレペリンにある東ドイツロック博物館(Ostrockmuseum)、東ドイツ時代にポピュラー音楽専門のミュージシャンを養成していたフリードリヒスハイン・クロイツベルク音楽学校でおこなった。資料調査は、ベルリンの教育史研究図書館(BBF:Bibliothek fuer Bildungsgeschichtliche Forschung)、ベルリン州立文書館、フンボルト大学図書館、フリードリヒスハイン・クロイツベルク音楽学校資料室で実施し、東ドイツ独自の芸術ジャンル「娯楽芸術」に関する資料、東ドイツの音楽教育の歴史研究に関する資料、さらにポピュラー音楽教育の指導要領に関連する一次資料を収集することができた。当該年度の成果は、論文「東ドイツが〈創った〉ポピュラー文化―若者、デーファ(東ドイツ映画)を観に行く」として書籍『地域主権の国 ドイツの文化政策 人格の自由な発展と地方創生のために』(美学出版、2017年9月)に掲載された。さらに、第29回日本ポピュラー音楽学会年次大会(2017年12月2-3日 於関西大学)で「ポピュラー音楽の制度化―冷戦期から 2000 年代までの『教育される』ドイツ・ポップスの成り立ち―」について発表した。また、シンポジウム「芸術家の肖像-文化的記憶・評伝・映画」(2018年2月20日 於神戸大学)では、「ドイツポピュラー音楽と文化的記憶―亡命ユダヤ人作曲家の映画音楽からポップアカデミーによる国家介入型ポップスへ―」について講演し、本研究を文化的記憶という文脈から検討するよい機会になった。
著者
嵯峨山 茂樹 小野 順貴 西本 卓也 齋藤 大輔 堀 玄 中村 和幸 金子 仁美
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

統計的信号処理と音楽理論の数理モデルを融合して、音楽(および音響・音声)の信号処理と情報処理に多面的に取り組んだ。音声認識分野では音響処理と言語処理の融合がキー技術であったように、音楽においては信号処理と音楽理論の融合が必須である。具体的には、A: 数理モデルと統計学習を軸にした音楽信号の解析・変換・加工・分離・検出、B: 音楽理論の数理的定式化を軸にした音楽信号の和音認識・リズム解析・セグメンテーション・構造解析・ジャンル認識、C: 機械学習と最適化を軸にした自動演奏・自動作曲・自動伴奏・自動編曲などを研究・開発した。
著者
松本 明善
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

二ホウ化マグネシウム(MgB_2)は金属系超伝導体として高い超伝導転移温度や上部臨界磁界等のポテンシャルを有しているにもかかわらず、十分な臨界電流密度(J_c)特性が得られていなことについて粒間における電流経路有効断面積(コネクティビティ)を含めた観点から研究を行ってきた。MgB_2超伝導線材において高いJ_c特性を得るためには、線材内部にある空隙を極力少なくすることが重要である。このために我々は不純物添加等を行ってきた。不純物の中には芳香族化合物などのように、結晶粒界の結合性を改善し、コネクティビティーを向上させ、J_c特性を向上させるものが存在することがこれまでの研究でわかった。
著者
篠原 雅尚 村井 芳夫 藤本 博己 日野 亮太 佐藤 利典 平田 直 小原 一成 塩原 肇 飯尾 能久 植平 賢司 宮町 宏樹 金田 義行 小平 秀一 松澤 暢 岡田 知己 八木 勇治 纐纈 一起 山中 佳子 平原 和朗 谷岡 勇市郎 今村 文彦 佐竹 健治 田中 淳 高橋 智幸 岡村 眞 安田 進 壁谷澤 寿海 堀 宗朗 平田 賢治 都司 嘉宣 高橋 良和 後藤 浩之 盛川 仁
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2010

2011年3月11日、東北地方太平洋沖でM9.0の巨大地震が発生し、地震動・津波被害をもたらした。この地震の詳細を明らかにするために、各種観測研究を行った。海底地震観測と陸域地震観測により、余震活動の時空間変化を明らかにした。海底地殻変動観測及び地震波反射法構造調査から、震源断層の位置・形状を求めた。さらに、各種データを用いて、断層面滑り分布を明らかにした。現地調査により、津波の実態を明らかにし、津波発生様式を解明した。構造物被害や地盤災害の状況を明らかにするとともに、防災対策に資するデータを収集した。
著者
室伏 誠
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

平成5・6年度の研究により以下の知見を得ることができた。すなわちイセエビ類を中心とする大型エビ類の染色体解析を行った結果、本邦産イセエビP.japonicus、米国ハワイ産イセエビ(P.marginatus)、インドネシア産イセエビ2種(P.homarus,P.longipes)、ニュージーランド産イセエビ(Jasus edwardsii)、および西アフリカ産イセエビ(J.lalandii)の計6種の染色体数並びに核型は、染色体数がそれぞれ 2n=112、118、150、110、142、136で、核型はそれぞれ38M+16SM+18ST+42A、88M+14SM+16A、64M+20SM+34ST+32A、38M+16SM+8ST+48A、50M+36SM+4ST+52A、100M+14ST+22Aであった。これら6種すべての染色体数並びに核型に種特異性が認められた。世界各水域のイセエビ類の染色体に認められた種特異性から、染色体構造変異に基づく分化の道筋を解析した。各エビ類の染色体構造比較では、イデオグラムからは、染色体構造の差異を生じる構造変異について解析するとともに、各染色体の全腕長、短腕長、長腕長および腕比の比較により、構成染色体の分布に、種ごとに顕著な差があることが明らかとなった。さらに、染色体内部の構造比較に有用な分染法について調査を行った結果、本邦産イセエビP.japonicusの染色体のAg-NOR's分染において、3対のM型染色体に濃染部が確認され分染による染色体構成解析の可能性が示唆された。以上の研究成果は、2つの国際会議(Fourth International Workshop on Lobster(三陸町),Fifthth International Symposium Genetics in Aquaculture(Halifax,Canada))および2つに国内学会(平成6年度日本水産学会秋季大会(津市)、日本甲殻類学会第32回大会(福岡市)において、発表した。なお、これら知見については、近く関係学会誌に発表の予定である。
著者
鳥羽 通久
出版者
(財)日本蛇族学術研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

染色体の研究では、ビルマアオハブのように少し違ったW染色体を持つものはいたが、ヨロイハブのように形態がかなり異なるものでも、同じような核型を持ち、あまり差がでないので、これを使った分類は現状ではまだ難しい。そこで結局頭骨の形態を中心に、鱗表面の微細構造やオスの交尾器の構造などを加えて、系統を推定することにした。まずすべての点で最も他と異なっているのがヨロイハブで、外翼状骨-上顎骨の持続部の構造、毒牙、鱗表面の構造、鼻の小孔の位置など、ハブ類においては他に類縁を求めるものがない。マムシ亜科の中では最も原始的だと言われるマムシ属と比べても、際だった違いを見せることから、かなり初期に他のグループから別れて、独特の進化の道をたどったものと考えられる。インドシナからフィリピンまで広く分布し、現在1種とされているが、島によって色彩が大きく違っており、詳しい分類を行う必要がある。ヨロイハブ属におくのが妥当だろう。次にヒメハブ類が、少し違っており、いろんな点でマムシ属と他のハブ類との中間的な形態を見せる。これもヒメハブ属を設けるのに賛成である。次に問題になるのが、沖縄のハブを含むグループで、トカラハブ、サキシマハブ、タイワンハブが非常によく似ている。ジェルドンハブもおそらくここに入り、現時点でははっきりしないのが中国西部のT.xianchengensisである。この位置づけがはっきりしたら、このグループをProtobothrops属に置くことになるだろう。残りは狭い意味でのハブ属におくほかないが、T.puniceus、T.stejnegeri、T.albolabris、T.purpureomaculatus、T.sumatr anusなど、5つのグループは比較的はっきりしているが、残りの種の位置づけはいまだにはっきりしない。
著者
浦田 あゆち
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

う蝕(むし歯)の原因細菌である Streptococcus mutans は,血液中に侵入し病原性を呈することがあることで知られている.本研究では,マウス腸炎モデルを用いて S. mutans による炎症性腸疾患の悪化のメカニズムを検討した.その結果, S. mutansを取り込んだ肝臓実質細胞は,IFN-γを産生しαAGPおよびアミロイドA1といったタンパクにより炎症反応を増幅させることで免疫機構の不均衡が生じ,腸炎の悪化につながる可能性が示唆された.またマウス腸炎の悪化が抗IFN-γ 中和抗体により緩和されることが示された.
著者
松元 達也
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今年度前半では、前年度からの継続的な実験により実験データの再現性を確認するとともに、直径2、3、4、5及び6mmのアルミナ球形粒子を用い、蒸気流量及び粒子層厚さをパラメータとする粒子層の運動挙動に関する系統的に詳細な実験を行った。ここでは、同一の蒸気流量では粒径が小さい程、粒子層内の流路における蒸気泡の粒子に対する抗力の効果が大きくなり粒子層を流動化するのに対し、粒径が大きくなると蒸気泡は粒子層内の流路をすり抜けるように流れ、粒子に対する抗力の効果が小さくなり流動性は小さくなることを明らかにした。また、二次元矩形体系水槽による粒子層内部の沸騰開始の挙動を可視化し、層内部での沸騰及び運動挙動の詳細を明らかにした。今年度後半では、原子炉の炉心損傷事故時に形成されるデブリが平均数百μmのオーダーにあることから、500μm及び1mmの先に用いた固体粒子に比して小さな粒子の挙動特性に注目し、小径粒子に対応した実験水槽を新たに製作し、また粒子物性の影響を評価するために密度、熱伝導率等が大きく異なるアルミナ及びジルコニアの両粒子による比較実験を行った。ここでは、アルミナの小径粒子は沸騰により大きく流動し、蒸気泡の粒子層内での合体が観察されるが、高比重のジルコニアの小径粒子の場合では、アルミナの場合に比して流動性は小さく、粒子層内における蒸気泡は分散的な挙動であり、両者の挙動には顕著な差異が見られ、密度と表面の濡れ性等の物性の違いが流動挙動に大きく影響することを明らかにした。さらに、粒子形状による流動挙動への影響を評価するために、球形と非球形のアルミナ粒子による同条件の比較実験を行い、球形粒子において早い段階で分散的な沸騰挙動に移行することに対して、非球形粒子では初期段階で粒子層に形成される単一流路での沸騰挙動がある段階で急激に周囲に広がる挙動を示すことを明らかにした。
著者
三谷 恭之 ドアン・ティエン トゥア 今井 昭夫 川口 健一 富田 健次 宇根 祥夫 THUAT Doan Thien
出版者
東京外国語大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

ベトムの少数民族(主に、ムオン族)の言語調査によって得られた基本語彙に関する基礎的資料の分類整理をすすめ、併せてその言語学的分析をある程度行うことができた。しかし、詳細な研究については多くが今後の課題として残されているが、ベトナム語の系統論的研究に関しては以下のことを明らかにすることができた。1.言語系統論的にはベトナム語における優勢な漢語要素にもかかわらず、中国語とは系統を異にすること。2.ベトナム語及びその祖語とされているムオン語からなるベト・ムオン語はシナ・チベット語族に属するシナ・タイ語派の一グル-プではなく、オ-ストロアジア語派に属するモン・クメ-ル系言語のなかの一派であること。3.ベトナム語とムオン語の近親性を十分に確認することができた。これらのことにより、ベトナム語の音韻史究明に向けて具体的な手掛かりが得られたが、その具体的研究は今後の作業として残されている。もう一つのテ-マであるベトナム語における漢越語の問題に関しても、ベトナム側研究者との討議により以下の成果が得られた。漢越語の研究で問題となるのは、ベトナム漢字音の体系がいつ形成されたかについてであるが、ベトナムと中国の地続きの地形的関係のためにベトナム漢字音の時代による分類基準を日本漢字音の形成のように必ずしも明確にすることができないという問題点がある。現代ベトナム語における漢越音の主要な形成はベトナムが10世紀余りに及ぶ中国の直接支配から抜け出る紀元10世紀半ば以降であり、その音体系は中国唐代末期の漢字の読み方から借用された音が基本になっていることはこれまでの研究で明らかにされている。しかし、それとは別に、ベトナム漢越語のなかには、それよりも古い音、すなわち、唐代中期以前の漢字の読音を留める語(古漢越語)が含まれており、これら両者の分類及び越化漢越語を含めた三者の分類については、これまでのところ確たる基準はない。今回の共同研究の初年度に多忙のなか私たちとの意見交換に参加して下さったハノイ総合大学教授グエン・タイ・カン氏はベトナム漢字音の研究に関しては斯界に優れた業績を残しておられるが、彼の提起した規則は説得性と妥当性に富むものである。その説は次のような内容である。漢越語をA類、古漢越語をB類、越化漢越語をC類とする。音節全体を見て、Y、Zという二つの音があって、共に同一の字音Xに起源があるとする。もし、YがZより古い、あるいはZの直接の源になっているものより古いものを源としているとすると、次の二つの概括的規則が得られる。1.ZをA類とするとYはB類2.YをA類とするとZはC類以上のような規則を当てはめることによりベトナム語における漢越語の音韻史的研究に新しい方向性を見い出すことができたと言えよう。ベトナム漢越語及び越化漢越語の個々の単語の音韻論的研究をさらにすすめる作業が残されている。以上が今回の共同研究の成果の概要である。しかし、相手国の研究成果がいろいろな理由により必ずしも十分に公刊されておらず、資料調査に予定よりも多くの時間を割かなければならなくなり、そのために資料の詳細な分析検討の多くはこれからの課題として残されており、上に述べた研究成果は得たものの、より深い研究成果はむしろ今後に期待される。その意味で今回得られた成果はこれまでにない新しい達成を見たものの基本的には基礎的な成果としての域にとどまる。今後はムオン語以外の少数民族の言語調査も実施し、より全体的で総合的なベトナム語祖語の系統論的研究をすすめていきたいと願っている。
著者
齋藤 長行 新垣 円
出版者
ビジネス・ブレークスルー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、「青少年保護バイデザイン」政策理念を念頭に置き、青少年のインターネット利用環境整備の為に、青少年のインターネットのリスクに対する知識や対処能力を可視化し、その評価結果を基にして政策の方向性を示すことを目指した。その為に、「青少年のインターネット・リテラシー指標(ILAS)」の調査で得られたデータを分析・評価し、政策提言を取りまとめた。その政策提言は、学術界のみにとどまらず、国際政策機関を通じて国際社会に共有することができた。
著者
大谷 卓史 村上 祐子 川口 由起子 川口 嘉奈子 永崎 研宣 坪井 雅史 吉永 敦征 芳賀 高洋
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究においては、①最新の社会・技術動向に照らして大学教養課程向けの情報倫理学教科書を改訂して基本的な情報倫理学概念を確認し、②情報倫理学の歴史を整理し、あわせて、③プライバシーと自己決定権に関する議論を概観したうえで、④ソーシャルメディアによる個人をターゲットとした世論操作の可能性や、⑤サーチエンジンの検索結果表示アルゴリズムなどによるプライバシーや自律への影響の問題などの考察を行った。これらの成果を踏まえ、研究成果の一部を書籍として刊行した。同書『情報倫理-技術・プライバシー・著作権』(みすず書房)は、公益財団法人電気通信普及財団第33回(2017年度)テレコム社会科学賞奨励賞を受賞した。
著者
池谷 博
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、 HBV と HCV の2種類の感染症と血液型を同時に判定する DNA チップの開発に成功した.また, 感染病原体が死後相当時間経過しても感染性を有することの証明や,各種体液特異的な mRNA を検出することに成功した。
著者
丸山 茂徳 圦本 尚義 中嶋 悟 礒崎 行雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究を要約すると以下のようになる。(1)一連の記載研究と精密分析(論文数;丸山32、磯崎9、中嶋8、圦本8)。(2)総合化(丸山:Dynamics of plumes and superplumes through time,in Superplumes;Beyond Plate Tectonics,Springer,441-502,2007、磯崎:Plume Winter Scenario for Biosphere Catastrophe,ibid,409-439,Springer)。(3)P/T境界の精密解析(磯崎:掘削試料;6)と化石(太古代1、原生代末1、古生代末5)の記載。(4)35.6億年前(世界最古生命化石)のSIMSスポット分析(δ^<13>C)と化石の認定基準(圦本、発表準備中)。(5)化石認定の新しい指標の開発と応用(中嶋;1、実験結果と認定の新基準(古細菌か真性細菌か)の提案図については投稿準備中)。以上の成果は、これまでの地球史標準モデルを更に精密化し、誕生後徐々に冷却してきた地球システムが起こす物理的必燃として説明しうるが、新たな原因として、銀河内部で起きた3回のスターバーストとの緊密な関係が浮かび上がってきた。これらは日本のみならず世界最前線の研究を更にリードするものである。これらは、地球惑星科学の中の諸分野へ大きな影響を与えるが、地球惑星科学以外の分野である天文学、ゲノム生物学、分子生物学、生命進化学、更に気象学にも大きな影響を与えるだろう。
著者
関根 康正 野村 雅一 小田 亮 鈴木 晋介 和崎 春日 近森 高明 北山 修 南 博文 Teasley Sarah Salzbrunn Monika 阿部 年晴 Gill Thomas 朝日 由実子 村松 彰子 西垣 有 内藤 順子 Subbiah Shanmugampillai 根本 達
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代のネオリベラリズムに抗してストリート人類学を確立することが本研究の目的である。そのためにストリート・ウィズダムとローカリティの生成の実態把握を行った。研究成果のキーポイントは、中心からの徹底した一元化としての「ネオリベ的ストリート化」が作り出す敷居(ストリートエッジやローカルエッジ)での創発行動の解明にあり、そこでは「自己が他者化」するという動的過程が必ず見いだされ、それを「根源的ストリート化」と概念化した。エッジを不安定とともに生きている人々は現代人の生の本質を映す鏡である。その状況は「人が生きるとは何か」という哲学的究極の問いを現実的に問う。その探求にストリート人類学の存在意義がある。
著者
河野 俊行 小島 立 清水 剛 加賀見 一彰 寺本 振透 原 恵美 松下 淳一 JURCYS PAULIUS
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

知財ファイナンスをグローバルな観点から見た場合に関係する制度としての知財担保の適切な扱いのために必要な国際私法ルールと方法論を分析した。実態調査を行うとともに、法と経済学の手法による分析を行った結果、①統一法と国際私法の関係に関する一般的な理解には問題があり、一定条件のもとでは国際私法が優位性を持つことを証明した。②また国際私法の統一及び属地性に関する横断的な考察を通じて、伝統的議論に見直すべき点が少なからずあることを示した。③そして学際的なチームにより知財担保を多角的観点から分析し、新たな提案を行った。英文で公表し反響も確認できた。またイノベーションに向けた研究へのパースペクテイブを開いた。
著者
山崎 文靖 佐藤 隆幸 柿沼 由彦 有川 幹彦
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中高年を好発年齢とする進行性の神経変性疾患では、動脈圧受容器を介した交感神経系による血圧調節機能が廃絶するため、重度の起立性低血圧や失神発作をおこし、末期には寝たきり状態となるが、重症例における治療法はない。そこで本研究では、二年間の実験的臨床研究により、非侵襲的な血圧制御システムを開発する。1.動脈圧反射の開ループ伝達関数の推定:自律神経失調患者と健常成人男性より求めた開ループ伝達関数Hnative(f)はlow-pass特性を示し、0.01Hz以上でゲインが徐々に減少した。定常ゲインは5.3であった。2.圧迫帯圧から動脈圧までの伝達関数HSTM-SAP(f)の推定:自律神経失調患者での平均ステップ応答関数では、圧迫帯圧の上昇に伴い動脈圧は10秒以内に定常状態の90%に達した。定常ゲインは0.7±0.3mmHg/mmHgであった。3.ヒトの血管運動中枢の動作原理の記述:同定した平均的なHSTM-SAP(f)を用いて,ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いをシミュレーションし,比例補償係数Kp=0.4,積分補償係数Ki=0.2で,サーボシステムがもっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償することをみいだした。この係数を用いた制御部Hl(f)を伝達関数として記述し、人工血管運動中枢を製作した。4.非侵襲的人工的圧反射装置の構築と有用性の検証:開発したデバイスは、人工血管運動中枢を搭載したPC、血圧モニタ、電磁弁装置、圧搾空気ボンベ、腹部圧迫帯からなる。3例でその効果を検討した。起立時に平均20mmHg低下した平均血圧は、装置の作動により11mmHgの低下に抑制することが可能であった。5.下肢圧迫による動脈圧制御の可能性:下肢圧迫の効果を検証するために、両下肢に圧迫帯を装着し応答性を検討した。圧迫帯内圧の上昇に対し動脈圧は20秒以内に最大反応値に達した。
著者
青山 謙二郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

砂糖に対しても薬物と類似した強い渇望を伴う“中毒”症状が生じ、健康な食生活の妨げとなると言われている。本研究では、砂糖に対する渇望が増強されるプロセスを、条件づけの観点から検討し、渇望を制御するための手法の開発を目指した。主として以下の3つの成果が得られた。第1に、カロリーの無い人工甘味料についても渇望の増強が生じることが見いだされ、渇望の増強においてカロリーは不要であることが示された。第2に、砂糖の間欠的な剥奪によっても渇望の増強が生じることが見いだされた。第3に、飼育環境の豊富化により、砂糖と結びついた刺激への反応性の増強は抑制されるが、砂糖の摂取量の増強は抑制されなかった。
著者
西出 和彦 初見 学 橋本 都子 込山 敦司 橋本 雅好 高橋 鷹志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

立体的な空間の広がりや形態に特徴がある居住空間において、実際に展開されている生活様態、人間の心理・生理に与える影響を明らかにすることを目的として、居住実態調査、実験室実験、および実際の居住空間での実験を行った。1、天井高や室空間形態に特徴のある居住空間を対象として居住実態調査を行い、実際の居住者の生活様態・意識の把握を行い、空間との関連を3次元的に考察した。(1)立体的にデザインされている住空間を対象とした調査を行い、空間と居住様態の関係を考察し、高さ方向の変化は住まい方に様々な影響を与えること、居住者による能動的な空間への働きかけの実態、天井の高い空間が質の豊かさをもたらす可能性について明らかにした。(2)空間構成に特徴のある住宅における居住者の入居から現在に至る環境移行の実態追跡調査を行い、居住者が自分たちにあった環境を創成してゆく過程を明らかにした。2,天井高や室空間形態に特徴のある実際の居住空間において、空間の容積、天井高、形状がどのような行為を可能にするか、どのような印象を与えるか等について実験を行った。3,室空間の天井高と容積、開口比率等に関するデータを収集し、室の機能、用途、使用人数、時代背景・文化と3次元空間・容積との関係という観点から現況の把握・整理を行った。以上の分析結果は、室空間の計画における容積という視点を取り入れた新たな尺度の提案を行うことを目指し、実践的な計画に向けた天井高や容積からみた室空間のデザイン理論の提案のための基礎となるものである。
著者
西出 和彦 大月 敏雄 大方 潤一郎 小泉 秀樹 羽藤 英二 岡本 和彦 廣瀬 雄一 佐藤 由美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

『超高齢社会に対応した地域建築機能再配置型都市再編システムの社会実験を通した構築』では、さまざまな居住環境を有し日本における多様な都市環境の縮図ともいえる千葉県柏市を主たる研究対象として、各種別の建物が果たす社会的性能を緻密な実態調査を通して抽出し、地域建築機能再配置型都市再編システムを具体化し、社会実験を通して超高齢社会対応型の新たな都市再編システムの構築を目指した。本研究の結果、公共空間には、近隣居住者同志が自然と地域を支えるコミュニティや居場所づくりの重要性が明らかになった。今後の高齢社会の問題を解決するためには、社会学・医学・リハビリ学など分野横断的な取り組みが必要となる。
著者
中嶋 聖雄
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

過去35年間(1979~2013年)に生産された中国映画についての生産データ――どのスタジオが単独あるいは共同で映画を製作したか――に関するデータベースを作成し、ネットワーク分析の方法を用いることによって、スタジオ共同製作のネットワーク構造の変化・不変化を明らかにすることをめざした。パイロット分析の結果、経済社会学的アプローチが予測するような、「繰り返し共同」のかたちをとった市場の「社会的構造化」――社会的権力(例えば、国有スタジオに対する政策上の優遇)や過去の取引の惰性的継続のような社会構造の存在――を示唆する結果が得られた。