著者
山本 大誠 奈良 勲 岡村 仁 藤村 昌彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.55-60, 2003 (Released:2003-05-01)
参考文献数
25
被引用文献数
4 1

現在,国内では統合失調症者を対象としたリハビリテーション医療における理学療法はほとんど確立されていない。理学療法は基本的に身体的健康を回復,維持するために欠かせないものであるが,身体的健康は精神保健に対しても多大な寄与をなし得るものである。本研究の目的は統合失調症者12名に対して毎週1回,12週間の理学療法介入を試み,その有効性について検討することである。この結果,Body Awareness Scale(BAS) の「身体能力に関する項目」とPositive and Negative Syndrome Scale(PANSS)の「陰性尺度」および「総合精神病理尺度」において理学療法介入群に有意な値の変化が認められた。以上の結果より,統合失調症者に対する理学療法は身体面と精神面の両面において有効である可能性が示された。したがって,精神科領域のリハビリテーション部門において理学療法を導入し,他職種と連携して取り組んでいくことが望ましい。
著者
藤村 正司
出版者
広島大学高等教育研究開発センター
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-17, 2020-03

The purpose of this paper is to explore the question: Why do academic professionals and universities surrender their individual and institutional autonomy? This paper looks at the case of National University Corporations (NUCs) in Japan. It traces how they have progressively surrendered their institutional autonomy and acquiesced to the demands of government through the lens of sociological institutionalization and new institutional economics (principal-agent theory). The main findings of the analysis are as follows.Firstly, this paper identifies a principal-agent relationship not only between government and national universities, but also within NUCs. In national universities, president and boards are principals and faculties are their agents. This nested structure of PA relationships is characteristic of NUCs. In this context, the erosion of individual autonomy emerged under reforms to the school education act, which prescribes the function of faculty meetings, constraining its role in academic affairs and educational matters such as admissions and graduation.Secondly, this paper also examines responses to coercive isomorphism in NUCs. The national government, as principal, is identified as a force for coercive isomorphism. Using its role as the provider of contracts, it exerts pressures to conform to the recommendations of University Council and Cabinet Office, and engenders a focus on economic growth and efficiency of management through mid-term plans. As a result of such coerced isomorphism, the mid-term plans of 86 National Universities are virtually identical despite the variable strengths and institutional missions of each national university.Thirdly, the National University Corporation Law as a form of discipline defines only general outlines of university structure and governance. Many finer points such as financial burdens are left to the operational discretion of government. As a result of the incomplete nature of these contracts, the Ministry of Education's status as funder encourages NUCs to exercise self-discipline and conform to the funder's expectations, which further surrenders individual and institutional autonomy of NUCs to the government.
著者
藤村 丞 谷崎 文義
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2016-IOT-35, no.16, pp.1-5, 2016-09-16

福岡大学では日本初の公開用 NTP サーバの運用を 1993 年 10 月から開始し,22 年が経過した.この間にトラフィック量が増え続けていることはもちろんであるが,当時に様々な問題点も生じてきた.本発表では公開用 NTP サービスについての現状分析と課題の取り組み状況について述べる.
著者
大桃 敏行 秋田 喜代美 村上 祐介 勝野 正章 牧野 篤 藤村 宣之 本田 由紀 浅井 幸子 北村 友人 小玉 重夫 恒吉 僚子 小国 喜弘 李 正連 植阪 友理 市川 伸一 福留 東土 新藤 浩伸 齋藤 兆史 藤江 康彦 両角 亜希子 高橋 史子 星野 崇宏 伊藤 秀樹 山本 清 吉良 直 星野 崇宏 伊藤 秀樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本を含めて多くの国で多様化や競争、成果に対するアカウンタビリティを重視するガバナンス改革が行われてきた。また同時に、単なる知識や技能の習得からそれらを活用する力や課題解決力、コミュニケーション能力などの育成に向けた教育の質の転換の必要性に関する議論が展開されてきた。本研究の目的はガバナンス改革と教育の質保証との関係を検討しようとするものであり、成果志向の改革では、広い能力概念に基づく教育において評価がどこまでまたどのように用いられるのかが重要な課題となってきていることなどを示した。
著者
藤村 宣之 太田 慶司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.33-42, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
7 2

本研究では, 算数の授業における他者との相互作用を通じて児童の問題解決方略がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。小学校5年生2クラスを対象に「単位量あたりの大きさ」の導入授業が, 児童の倍数関係の理解に依拠した指導法と従来の三段階指導法のいずれかを用いて同一教師により実施された。授業の前後に実施した速度や濃度などの内包量の比較課題と, 授業時のビデオ記録とワークシートの分析から, 以下の3点が明らかになった。1) 倍数関係の理解に依拠した指導法は従来の指導法に比べて, 授業時と同一領域の課題解決の点で有効性がみられた。2) 授業過程において他者が示した方法を意味理解したうえで自己の方略に利用した者には, 他者の方法を形式的に適用した者に比べて, 洗練された方略である単位あたり方略への変化が授業後に多くみられた。3) 授業時の解法の発表・検討場面における非発言者も, 発言者とほぼ同様に授業を通じて方略を変化させた。それらの結果をふまえて, 教授・学習研究の新しい方向性や方略変化の一般的特質などについて考察した。
著者
木原 一晃 鎌田 理之 松尾 善美 橋田 剛一 川村 知裕 平田 陽彦 藤村 まゆみ 井口 和江 木島 貴志 奥村 明之進
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.267-271, 2015-08-31 (Released:2015-10-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

早期離床は肺癌術後周術期管理の重要な課題の1つである.私たちは肺癌術後患者の早期離床に関連する因子を,栄養指標を含む術前因子や術中因子から検討した.肺癌手術患者で呼吸リハビリテーションを施行した45例に対し,年齢等の背景因子,術前のGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)や呼吸機能,肺切除割合等と術後病棟歩行自立までの日数を調査した.その結果,術後2日以内に病棟歩行が自立した群(24例)は歩行が遅延した群(21例)よりGNRIが有意に高値(102±5/97±8),肺切除割合が低値(14±8%/22±10%)となった.さらに,多重ロジスティック回帰分析でもGNRIと肺切除割合は術後2日以内病棟歩行自立に影響し,ROC曲線によるカットオフ値はGNRIで99,肺切除割合で21%を示した.以上より,術前栄養状態及び手術侵襲の程度が肺癌術後患者の早期離床に影響することが示された.
著者
川崎 賢一 藤村 正之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.601-613, 2005-12-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
9

本稿の目的は, 1992年11月に出版された『社会学の宇宙』 (川崎賢一・藤村正之 (共編), 恒星社厚生閣) という社会学テキストがどのように編集・出版されたのかを, 編者自身がその当時に考えていたことにできる限り忠実に, 紹介することである.その当時は, バブル経済崩壊直後の日本社会にあって, 社会学教育自体にも変革の波が押し寄せようとしていた.その波への1つの回答として, 編者たちが念頭に置いたのは, 大まかにいうと, 従来考えられていた〈教養としての社会学〉から, 〈普通に使える社会学〉あるいは〈DIY (Do It Yourself) の社会学〉へ, 大きくその方向を変えることを目指そうということであった.その意図がうまくいったかどうかはわからないが, 少なくとも, その後の社会学のテキストはさまざまな種類のテキストが出版されるようになった.その意味で, われわれのテキストが果たした何がしかの役割があったのではなかろうか.
著者
藤村 正之
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.1, pp.84-97, 2004-05-31 (Released:2012-09-24)
参考文献数
39

21世紀初頭の現在,20世紀に浸透した福祉国家化の価値のとらえ直しが進行しつつあり,そこに福祉社会学がマクロ社会学あるいは社会理論として取り組むべき課題があると考えられ,本稿ではその論点を整理する.その際福祉に関わる価値を社会学的に対象化・相対化し,諸価値が錯綜し立体的に配置される福祉観としてとらえるべく,福祉の価値空間という視点をもちながら考察を進めていく.本稿では,そのような福祉の価値空間の変容をとらえるため,社会構想,社会制御・社会形成,問題把握という分析上の3点を設定し,各々について論点を整理していく.社会構想の視点としては,自由と拘束をめぐる福祉の規範理論が活発化しているが,それを関係性の4象限として整理しなおしつつ,社会学における共同性への強い関心の自覚化と相対化の必要性を論ずる.社会制御と社会形成の視点からは,福祉国家にひそむ国家中心主義の時代的困難が進みつつあり,再編の可能性としてある福祉社会論福祉政府論福祉世界論の論点を確認したうえで,近年福祉国家と福祉社会の架橋を期待される福祉ガヴァナンス論の動きについてふれる.最後に,問題把握の視点として,必要の議論が再浮上してきているが,同時にリスクや自己決定など新たな視点も錯綜しつつあり,福祉領域の独自性と領域間の連関を確認することが求められている.
著者
佐藤 伊織 戸村 ひかり 藤村 一美 清水 準一 清水 陽一 竹内 文乃 山崎 喜比古
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.39-49, 2004

我々は、不妊治療と出生前診断について、一般市民の知識・信念・態度を、自記式調査票により調査した。東京都N区の住民基本台帳から30代〜50代の者179名を無作為抽出し、そのうち住所の明らかな169名を対象とし、99の有効回答を得た。各調査項目と属性間、一部項目間の二変量の関係についてPearsonのx2検定を行った。不妊治療の知識やそれへの態度については、男女に明確な差は認められなかった。しかし、女性の方が不妊治療をよりシビアにとらえる傾向が見られた。市民の中には、不妊を夫婦双方の問題として取り組む姿勢も見られ、これからは実際に男性からも積極的に不妊治療に参加できる環境を整えることが望まれる。出生前診断や中絶に関する態度は、その人の年代・子どもの有無によって違いが見られた。出生前診断が必ずしも優生思想や障害者差別に結びつくものではないという点について特に、認識の普及が必要である。
著者
大西 裕 品田 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 高橋 百合子 稲継 裕昭 遠藤 貢 川中 豪 浅羽 祐樹 河村 和徳 仙石 学 福島 淑彦 玉井 亮子 建林 正彦 松本 俊太 湯淺 墾道
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、選挙ガバナンスが民主政治に与える影響を、比較政治学的に解明しようとするものである。本研究は、国際比較と日本国内の自治体間比較を通じて、選挙管理という研究上の大きな空白を埋める。調査結果、常識的見解と異なる二つのことが明らかになった。第1に、選挙の公平性、公正性は、国際的に推奨される選挙管理機関の独立性のみでは達成できず、より複雑な扱いが必要である。第2に、日本では選挙管理委員会の業務は画一的で公平、校正であると考えられてきたが、委員会や事務局の構成のあり方によって大きく左右される。それゆえ、市区町村によってバリエーションが発生している。
著者
金子 元久 矢野 眞和 小林 雅之 藤村 正司 小方 直幸 山本 清 濱中 淳子 阿曽沼 明裕 矢野 眞和 小林 雅之 濱中 淳子 小方 直幸 濱中 義隆 大多和 直樹 阿曽沼 明裕 両角 亜希子 佐藤 香 島 一則 橋本 鉱市 苑 復傑 藤墳 智一 藤原 正司 伊藤 彰浩 米澤 彰純 浦田 広朗 加藤 毅 吉川 裕美子 中村 高康 山本 清
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、1)日本の高等教育についての基礎的なデータを大規模調査によって蓄積し、その分析をおこない、2)それをもとに各国の高等教育との比較分析を行うとともに、3)その基礎にたって、日本の高等教育の課題を明らかにすること、を目的とした。とくに大規模調査については、(1)高校生調査(高校3年生4000人を、その後5年間にわたり追跡)、(2)大学生調査(127大学、約4万8千人の大学生について学習行動を調査)、(3)社会人調査(9千事業所、2万5千人に大学教育の経験、評価を調査)、(4)大学教員調査(回答者数約5千人)、(5)大学職員調査(回答者数、約6千人)、を行い、それをデータベース化した。
著者
堀川 将幸 藤村 諒 佐藤 浩一郎 寺内 文雄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.4_45-4_54, 2022-03-31 (Released:2022-04-26)
参考文献数
16

本稿では,精神的充足に向けたデザインを行うための指針を導出することを目指し,習慣化に関する主体的行動を対象とした精神価値の成長要因を明らかにしている。具体的には,まず,ハマるに至るきっかけから定着化するまでの習慣化に関する主体的行動を調査し,その経験価値の変化の特徴を分析し,これらの結果に基づいた経験価値変化モデルを提案している。次に,習慣化,定着化に至った主体的行動の事例を対象として,評価グリッド法とクラスター分析を実行した。その結果から,習慣化に関する主体的行動における精神価値の成長に起因する4つの心理状態「高揚感」「平穏感」「好奇心」「向上心」が,価値実感期,価値成長期,価値定着期の3期において変化し,定着化するプロセスを示している。また,各状態の具体的な成長要因として,価値実感期での感動体験や潤沢な体験,価値成長期での共同体験や上達体験,価値定着期では日常化体験や到達体験を導いている。さらに,これらの成長プロセスの変遷を考察することで指針構築の一助とした。
著者
前田 章光 安藤 仁 浅井 徹 石黒 久晶 梅本 紀夫 志水 清和 伊藤 基博 細畑 圭子 牛島 健太郎 藤村 昭夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.481-485, 2011 (Released:2012-08-30)
参考文献数
10

Recent studies carried out in Western countries have suggested a potential adverse interaction between clopidogrel and proton pump inhibitors (PPIs), which inhibit CYP2C19 activity. The purpose of this study was to examine the influence of individual PPIs and CYP2C19 polymorphism on the antiplatelet effect of clopidogrel in Japan. The platelet aggregations induced by 20 μmol/L ADP and CYP2C19 single nucleotide polymorphisms (*2 and *3) were determined in 118 patients on aspirin plus clopidogrel (75 mg/day) therapy. Twenty-five and 13 patients were treated with lansoprazole and rabeprazole, respectively. The platelet aggregation of extensive metabolizers (EM : *1/*1) treated with lansoprazole tended to be higher than those not given a PPI (21.5 % vs. 17.4 %, respectively, p=0.14). Lansoprazole was observed to have no effect on platelet aggregation in intermediate metabolizers (IM : *1/*2 and *1/*3) and poor metabolizers (PM : *2/*2, *2/*3, and *3/*3). Furthermore, platelet aggregation in IMs and PMs not given lansoprazole was significantly higher than that in EMs taking lansoprazole. Rabeprazole did not affect platelet aggregation in any genotype. These results suggest that the influence of PPIs on the antiplatelet effect of clopidogrel is minimal in Japanese patients.
著者
黄木 景二 井上 宏樹 白石 哲郎 藤村 雅博
出版者
学校法人 金沢工業大学 材料システム研究所
雑誌
材料システム (ISSN:02866013)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.19-28, 2007 (Released:2021-02-17)
参考文献数
11

This paper presents temperature dependence of electric resistance and Joule heat properties in carbon fiber reinforced polyethersulphone (PES) resin composites. The composite specimens were fabricated using recycled CFRP pieces or carbon fibers mixed with PES resin through an injection molding method. First, resistivitytemperature curves of the composites specimens were measured during heat cycles. Next, temperature rise due to Joule heat was measured and plotted against input power. Finally, resistivity of carbon fiber was measured for temperatures up to 473 K. It is found that resistivity of the composites obeys the percolation power law and shows the negative temperature coefficient (NTC) in the temperature range lower than load-deflection temperature of the resin. This NTC is proved to be mainly due to the NTC of carbon fiber. Resistivity at room temperature is reduced after each heat cycle. Temperature rise due to Joule heat is approximately proportional to input power per unit volume.