著者
杉田 昭栄 八巻 良和 志賀 徹 居城 幸夫 飯郷 雅之 横須賀 誠 青山 真人
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

果実の成熟にともない糖度含量、軟化さらに果色が増加し、酸度は減少し、収穫時以降は軟化のみ増加し、糖度や果色また酸度は平衡状態となった。この収穫前頃から、カラス等が飛来して果実をつついているのが、観察された。鳥が果実の熟成の時期を見分けることができるのは、嗅覚や視覚の発達が考えられる。そこで、まずはカラスとヒヨドリの嗅覚系の特性を調べた。その結果、脳全体に対する嗅球のしめる割合が極めて小さく、一般には左右独立して存在する嗅球が完全に左右癒合していたことから、カラスとヒヨドリの嗅覚はあまり発達していないことが示唆された。次に視覚系の特性を調べた。カラスの神経節細胞は300万個を超えるとともに、神経節細胞の高密度域が2箇所あったこのことは、視覚が極めて発達していることを示していた。また、網膜周辺に進むにつれ少なくなっていた。視細胞の油球は赤、青、黄、緑、透明のものが見られ、その分布割合は均衡していた。ヒヨドリの神経節細胞の分布傾向はカラスのそれと類似していたが、油球は緑・黄緑系の油球が周囲を占めていた。学習行動によってカラスの各種波長への感受性を調べたところ、短波長に対して最も高い感受性を持っていることが示唆された。さらに、カラスの網膜には、4種類の色覚に関わる錐体オプシンがあり、その内のひとつは紫外線に感受性を有していた。鳥が果実の熟成段階を何で判別しているのか調べるため、熟成段階の異なる果物をカラスに提示し、選択された果実に共通する特徴を調べた。その結果、カラスは果実の熟成段階を判別するために糖度や硬度を手がかりにせず、果実の色、すなわち果皮の光反射を手がかりにしていた。
著者
室井 尚 佐藤 守弘 吉田 寛 吉岡 洋 秋庭 史典 島本 浣 安田 昌弘 小松 正史 吉村 和真 前川 修 大久保 美紀 丸山 美佳
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

本研究は5名の研究代表者、分担者を中心とした研究会を複数回開催するとともに、大規模な公開研究集会を年に一回開催し、その成果を映像記録や報告書にまとめることによって、一般からもその成果に対する広い関心を集めることができた。最終年度には報告書として論文集を公刊した。また2014年の国際記号学会においてはラウンドテーブルを組織して、海外の研究者との議論を深めることができた。これらの研究活動によって新しい理論的な枠組の構築に結びつけることができた。本研究はポピュラー文化に関する美学的アプローチの最先端の成果を挙げることができた。
著者
小室 一成 内藤 篤彦 野村 征太郎 野村 征太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、未分化幹細胞が心筋細胞へと分化する過程、心筋細胞の機能が破綻する心不全発症の過程の両者におけるエピゲノム制御機構を解析した。まず分化に伴って活性化するWntシグナルの転写制御因子β-cateninが複数のエピゲノム制御因子と複合体を形成して中胚葉エンハンサーを活性化し下流の遺伝子プログラムを誘導することを明らかにした。さらに1細胞トランスクリプトーム解析とエピゲノム解析を統合することで、心臓への圧負荷によって活性化する転写因子群が心不全遺伝子プログラムを制御するエンハンサーを活性化することを見出した。本研究によりエピゲノムが心筋細胞の分化と破綻の両者を制御していることを明らかにした。
著者
塩川 佳伸 李 徳新 山村 朝雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

劣化ウランは全世界で120万トンを超える膨大な保管量があり、その有効利用法の開発は重要な課題である。ウランはIII価とIV価、V価とVI価の組み合わせにおいて電極反応が可逆であることは、アクチノイド固有の化学的性質である。このことを利用すれば、実用化しているバナジウム電池を超えるエネルギー効率を持つレドックス,フロー電池の構築が期待できる。平成15年度にはエネルギー効率の理論的検討を進め、バナジウム電池では、正極反応VO_2^++4H^++e^-→VO^<2+>+2H_2Oは酸素の脱着を伴う遅い内圏反応であるため、電流密度70mA/cm^2での充放電サイクルにおいてエネルギーの16%が活性化過電圧により失われる。これに対してアクチノイドでは両極反応は高速であり、活性化過電圧によるエネルギー損失はネプツニウムの場合2%にとどまる。実際に、ネプツニウム電池を製作して充放電試験を行い、エネルギー効率の高さを実証した。平成16年度には、ウラン電池セルを実際に構築し、U(V)を正極液、U(IV)を負極液とするウラン電池の動作を確認し、展示用モーターの回転に十分な電圧・電流を得られることが確認できた。その一方で、放電状態におけるウラン(V)錯体、充電状態におけるウラン(III)錯体の濃度は数時間程度の半減期で自然に減少し、ウラン錯体の安定性が十分とは言えないことも明らかとなった。そこで、平成17年度には、ウラン(V)およびウラン(III)錯体の検討を進め、半年を超す半減期をもつウラン(V)錯体溶液を調製することに成功した。また、ジアミドを配位子として有するウラン(III)錯体の調製に成功し、溶液中のIII価状態の半減期11時間の間に、U(IV)/U(III)の電極反応の検討を行うことに成功した。
著者
宮本 一夫 中橋 孝博 田中 良之 小池 裕子 田崎 博之 宇田津 徹朗 辻田 淳一郎 大貫 静夫 岡村 秀典
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、山東半島における先史時代の水田探索調査、膠東半島の石器の実測調査、黒陶の安定同位体比分析、山東半島先史時代古人骨の形質人類学的分析、遼東半島四平山積石塚の分析の5分野から構成されている。これらの調査研究は、研究代表者が提起する東北アジア初期農耕化4段階説における第2段階と第3段階の実体を解明するための研究である。まず第1の水田探索調査では、これまで山東で水田遺跡が発見されていなかったが、楊家圏遺跡と両城鎮遺跡でボーリング調査と試掘調査を行うことにより、楊家圏遺跡では龍山文化期に畦畔水田が存在する可能性が高まった。また膠東半島の趙家荘遺跡では龍山文化期の不定型な畦畔水田が発見されており、水田のような灌漸農耕が山東において始まった可能性が明らかとなった。さらに黒陶の安定同位体比分析により、山東東南部の黄海沿岸では龍山文化期にイネがアワ・キビより主体であることが明らかとなった。これはフローテーションによる出土植物遺体分析と同じ結果を示している。さらにこの分析によってイネであるC3植物が膠東半島、遼東半島と地理勾配的に低くなっていることが確かめられ、このルートでイネが龍山文化期に伝播した可能性が高まった。これは東北アジア農耕化第2段階にあたる。第5の研究テーマで分析した四平山積石塚の分析により、この段階に膠東半島から遼東半島に人が移動し在来民と交配していく過程が明らかとなった。さらに石器の分析により、石器もこの段階から膠東半島から遼東半島への伝播が存在することが証明された。さらに東北アジア農耕化第3段階である岳石文化期には、多様化した加工斧と農具が伝播しており、木製農具などの定型化した農具と水田など灌概農耕が、この段階に人の動きとともに膠東半島から遼東半島へ拡散した可能性が高い。なお、形質人類学的な分析では限られた資料数のため人の系統に関する決定的な証拠を得ることはできなかった。
著者
植田 弘師 松永 隼人 永井 潤 水田 賢志 田中 義正 水谷 龍明 内田 仁司
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

LPAシグナルは神経障害性疼痛、線維筋痛症モデルの形成と維持機構の共通鍵分子である事を明らかにし、創薬標的分子に対する阻害剤探索やin slico解析、最適化合成を行った。慢性疼痛は免疫系を含む複数のフィードフォワード機構により構成されることを見出したので、特異的薬剤処置やLPAプライミングした培養アストロサイト、iPS細胞、T細胞をin vivo疼痛機構に再構成する研究を実施した。その結果、ミクログリアLPA3受容体-サイトカインによる形成・維持機構、アストロサイトLPA1受容体-ケモカインによる維持機構が主な仕組みであることが明らかになった。
著者
高岩 義信 九後 太一 早川 尚男 棚橋 誠治 金谷 和至 五島 敏芳 小沼 通二 伊藤 憲二 伊藤 和行 九後 太一 受川 史彦 平田 光司 小長谷 大介 田中 希生 田中 正 難波 忠清 西谷 正 吉川 直志 坂東 昌子
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日本の素粒子論研究が世界的に評価される礎を築いた湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一の遺した資料を活用してその学問の系譜を研究することを目標とし、その資料の利用環境整備を行った。史料データベースを充実させネットワーク上のサーバーを介して一般に公開している。このサーバで稼働するオープンソフトウェアの検討およびカスタマイズ、さらにその後継ソフトウェアの検討を行った。またこれらの資料を科学史研究に利用するのに有益な史料作成者データのデータベースを、史料カタログと連携するものとして構築することによって、史料の有効利用に資することができるようにすることを検討した。また今後へ向けての課題の検討を行った。
著者
長谷 耕二 河村 由紀 田久保 圭誉 松田 幹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

申請者はこれまで、絶食時にはパイエル板の免疫応答はシャットダウンされ、抗原にまだ暴露されていないナイーブB細胞は骨髄へ移行して再摂食時までリザーブされる事実を見出している。このようなパイエル板の絶食応答は、免疫応答に伴うエネルギーコストを削減する上で重要であるとともに、胚中心細胞の消失による免疫記憶のリセットといった副次的作用をもたらす。本研究では、主に絶食-再摂食モデルを用いて、栄養シグナルによる免疫制御機構や腸管-骨髄連関を担う分子群の同定を試みる。さらに絶食により自己免疫に関わる免疫記憶をリセットすることで、自己免疫疾患における新たな治療法の確立を試みる。
著者
柳澤 幸雄 坂部 貢 熊野 宏昭 熊谷 一清
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

化学物質過敏症患者に対して、呼気中化学物質の測定及びTVOC 曝露濃度と心拍変動のリアルタイムモニタリングを行った。呼気分析では、日常生活での曝露を示す体負荷量がわかり、身体状況との関連が確認された。また、曝露濃度と心拍変動のリアルタイムモニタリングでは、曝露濃度と自律神経機能の関連が示唆され、患者によって異なる傾向が得られたことから、患者個々の病態を客観的に捉え、症状の予防対策を提言するために役立つと考えられた。
著者
中嶋 正道 田中 憲司 酒井 義文 平井 俊朗 柴田 安司
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島県内の阿武隈山地に生息するヤマメにおける放射線被曝の影響を調べた結果以下のことが明らかとなった。1)ヤマメ筋肉中の137Cs濃度が高い個体ほど脾臓で範囲のメラノマクロファージが観察された。同様に鰓における形態異常も観察された。2)血液性状ではヘモグロビン濃度が低下する傾向が見られた。この現象は給餌実験でも観察された。3)真野川で採捕された雌親魚から得られた仔魚におけるmtDNAを調べたところ親魚とは異なる配列が観察された。福島内水試で継代飼育されている系統では観察されなかった。4)アポトーシスに関連する遺伝子の発現低下が観察された。これらの現象には放射線被曝が影響していると考えられる。
著者
海津 亜希子 玉木 宗久
出版者
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究においてはいくつかの下位研究を設定したが中でも本研究の根幹でもある地域協働支援の実現に関しては多大なる成果があげられた。具体的には地域として多層指導モデルMIMの理解・啓発を図りたいとの応募のあった地域を対象にMIM理解・実践セミナーを研究期間中,北海道,宮城,栃木,東京(計2回),山口(計2回),福岡(計3回)で実施することができ,計2,000名以上の参加があり,90%以上の最も高い評価(「有益であった」)が得られた。あわせて教育行政担当者を対象としたMIMサミットは,3年間毎年度実施し,のべ97地域からの参加があり,参加者の95%以上が最も高い評価(「有益であった」)をした。
著者
佐々木 丞平 淺湫 毅 降矢 哲男 末兼 俊彦 浅見 龍介 羽田 聡 上杉 智英 呉 孟晋 福士 雄也 降幡 順子 井並 林太郎 大原 嘉豊 伊藤 嘉章 池田 素子
出版者
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

河内地域は大阪府の南部に位置し、古代より継続的に仏教文化が花開き、由緒ある古寺にもめぐまれている。四天王寺など、聖徳太子にゆかりの寺院も多く、本調査ではそれら聖徳太子ゆかりの寺院の中から、教興寺をえらび本尊弥勒菩薩像を中心に調査をおこなった。また、この地域は、南が和歌山県と境を接することから、高野山金剛峰寺とも近く、弘法大師空海およびその弟子たちによって開かれた真言寺院も多い。その中から、河内長野市の金剛寺と観心寺という二つの大きな寺に焦点をあて、悉皆調査をおこなった。その結果、金剛寺では重要文化財『遊仙屈』と一連のものとみられる未知の作がみつかるなど、多くの成果を上げることができた。
著者
澤井 秀次郎 坂井 真一郎 坂東 信尚 丸 祐介 永田 晴紀 後藤 健 小林 弘明 吉光 徹雄
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-05-31

空気吸込式エンジンを用いるスペースプレーンの実現に向けて,飛行実証を通して基盤となる技術を獲得するために,気球による高高度からの落下と小型ロケットブースターによる加速を組み合わせた高速飛行実証システムの構築を目指した.飛行軌道検討を主としたシステム概念検討を行った.その結果を踏まえ,飛行実験機の試作研究を行った.試作研究を通して,システム統合および飛行制御系技術の実践研究を行った.さらに,スペースプレーンに必要な技術として,空力設計技術の研究を行った.実験オペレーションまで想定した実験計画を検討し,本システムのメリットに加え,課題も整理した.
著者
楠見 孝 子安 増生 道田 泰司 MANALO Emmanuel 林 創 平山 るみ 信原 幸弘 坂上 雅道 原 塑 三浦 麻子 小倉 加奈代 乾 健太郎 田中 優子 沖林 洋平 小口 峰樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,課題1-1「市民リテラシーと批判的思考のアセスメント」では市民リテラシーを支える批判的思考態度を検討し,評価ツールを開発した。課題1-2「批判的思考育成のための教育プログラム作成と授業実践」では,学習者間相互作用を重視した教育実践を高校・大学において行い,効果を分析した。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では,哲学と神経生理学に基づいて推論と情動を検討した。さらに市民主体の科学コミュニケーション活動を検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」では,放射能リスクに関する情報源信頼性評価とリテラシーの関連を調査によって解明し,情報信頼性判断支援技術を開発した。
著者
下山 巌 奥村 雅彦 小暮 敏博 町田 昌彦 馬場 祐治 本田 充紀 岡本 芳浩
出版者
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

H28年度において実施した研究の実績概要は以下の通りである。1.高温低圧環境高速X線回折(XRD)装置及び蛍光X線分析装置(XRF)の導入:複数の候補からリガク製XRD装置SmartLab3を選定し、低圧加熱実験可能な電気炉と2θに対して10°以上の範囲の同時測定可能な高速2次元検出器を併用することで、加熱時及び冷却時の構造変化をその場観察できる装置を導入した。また、XRF装置も導入した。2.アルカリ塩化物試薬におけるカチオン依存性の解明:非放射性Csを収着させた風化黒雲母(WB)をモデル土壌とし、CaCl2とKCl単塩をそれぞれ添加した際のXRD、XRF測定を行った。CaCl2添加により700℃低圧加熱で100%のCs除去率を確認した。一方、KCl添加では約50%のCs除去率となった。また、CaCl2添加時はXRDパターンが大きく変化したのに対し、KCl添加ではWBの構造がほぼ保たれた。これらの結果から同じ塩化物でも1価と2価のカチオンではWBからのCs脱離過程が異なることを明らかにした。また、昇温脱離法(TDS)を用いた分析でもCaCl2添加時にCs脱離が促進されることを確認した。X線吸収分光法(XAFS)を用いた加熱中のその場観察の研究ではNaCl-CaCl2混合塩へのCs溶出が観察された。それと共に、600℃付近より高温側と低温側でCs脱離過程が異なる可能性を見いだした。以上の知見に関しては欧文誌に論文発表すると共に、国内外の学会において報告を行った。3.福島汚染土壌による実証試験:福島の帰還困難区域から粘土質汚染土壌を採取し、加熱処理による放射能変化をNaI検出器により調べた。その結果、KCl、MgCl2試薬では低圧加熱の方が大気加熱よりも高い放射能減衰率が得られたがCaCl2試薬では両者で大きな差が見られず750℃大気加熱で約97%の放射能減衰が得られた。
著者
野村 大成 梁 治子 足立 成基 藤川 和男 本行 忠志 中島 裕夫 奥村 明之進
出版者
独立行政法人医薬基盤研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

N5雄親マウスへの原子炉放射線(中性子0.2Gy+γ線0.2Gy/時間)、0.2、0.4、0.8、1.2 Gy精原細胞期照射により、F1マウスのマイクロサテライト突然変異が対照群に比べほぼ直線的に増加し、突然変異率は、3.5x10^<-2>/Gy/遺伝子座であり、60Coガンマ線と比較し、原子炉中性子線のRBE は約16 になった。変異はメンデル遺伝し、白血病も有意に増加した。遺伝子発現の異常も子孫マウスに見られた。
著者
小畑 弘己 丑野 毅 高瀬 克範 山本 悦世 高宮 広土 宮ノ下 明大 百原 新 那須 浩郎 宇田津 徹朗 中沢 道彦 中山 誠二 川添 和暁 山崎 純男 安 承模 田中 聡一 VOSTETSOV YU. E. SERGUSHEVA E. A. 佐々木 由香 山田 悟郎 椿坂 恭代
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

日本の考古学において、縄文時代の農耕の存否問題は古くから議論され、今でも論争中の課題である。この混乱の根底には、確実な栽培植物が存在しなかったという研究上の制約があった。我々は、この問題を解決するために、土器中に残る植物種子や昆虫の痕跡(土器圧痕)を検出することで解決しようと考えた。研究期間内に、日本列島の縄文時代~弥生時代171遺跡、海外の新石器時代9遺跡において圧痕調査(約400, 000点の土器)を実施し、多種・多様な栽培植物種子や貯蔵食物害虫(総数552点)を検出した。また、圧痕法の学問的定立のための方法論的整備を行った。その結果、まだ問題点は残るものの、縄文時代の栽培植物の実態と問題点を明らかにすることができた。
著者
白石 久二雄 サフー サラタ・クマール 幸 進 木村 真三
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1986年のチェルノブイリ事故は世界に与えた環境汚染程度ならびにその後の放射線被ばくによる健康影響についても大きなインパクトをのこした。多くの研究が実施され結果も報告されているが、本研究では汚染地域を含むウクライナ国民の健康維持の観点から、放射性核種ならびに非放射性核種の摂取量について研究し、他の要因との関連性を、特に"住民の元素摂取量"に関連した健康影響因子に関して調査・解明を現地研究者と共同で行った。食事試料は陰膳方式で約300試料をウクライナ全国(25洲)から収集した。牛乳等の主要食品試料も収集した。試料は化学処理後、微量元素(I, U, Th, Co, Cs, Sr, Rb, Ba, Tl, Bi等)並びに主要、中間元素(Na, K, Ca, Mg, P, Fe, Mn, Cu, Zn等)をICP-MS(誘導結合プラズマ・質量分析法)ないしICP-AES(誘導結合プラズマ・発光分光法)にて定量した。灰化した試料については放射性核種(^<134>Cs, ^<137>Cs, ^<40>K等)の分析をγ-スペクトロメータで測定した。ウクライナ人の一日摂取量はBa O.51mg, Bi O.37μg, Br 3.Omg, Ca O.70g, Cd 8.0μg, Co 9.7μg, Cr 113μg, Cs 3.8μg, Cu O.70mg, Fe 7.9mg, 145μg, K 2.9g, Mg O.25g, Mn 2.3mg, Na 4.1g, P 0.99g, Pb 33μg, Rb 2.2mg, Sr 1.9mg, Tl 0.37μg, Zn 6.6mg, ^<60>Co ND-0.28 Bq, ^<134>Cs N.D.-0.59Bq, ^<137>Cs 0.5-570 Bq, ^<40>K 89 Bq, ^<226>Ra N.D.-11mBq, ^<232>Th 2.1mBq, ^<238>U 12mBqであった。日本人や世界の報告値と比較すると、Br, Cu, I, Mn, Znの摂取量が低い。元素間の相関を調べた所、高い相関を示す物もあり、環境汚染時を含めた食物連鎖における元素挙動の観点から重要である。興味が持てる。ウクライナには克山病やモリブデン毒等の著名な風土病はみあたらないが、特に、ヨウ素摂取量は栄養所要量、100μg以下であり、平素からの欠乏状況とチェルノブイリ事故の甲状腺異常との因果関係があると推察された。これらの精度の高い莫大なデータはウクライナの研究者から重要なデータとして賞賛を受けた。今後の事故対策、栄養・医学研究に役立つ基礎データを本研究で提供することができた。