- 著者
-
佐藤 純
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
1.気象病の病態機構を探るため、日常体験する程度の寒冷(22℃から15℃)、低気圧(大気圧から27hPa減圧)がラットの自律神経パラメータに与える影響を調べた。低気圧により心拍数と血圧は一過性に上昇した。心拍間隔変動値(LF/HF値)も速やかに上昇した。曝露後はすみやかに曝露前値に戻った。低温により血圧・心拍数は徐々に上昇した。LF/HF値は曝露直後に速やかに上昇した。曝露後は曝露前値にゆっくりともどった。以上より、両曝露は血圧・心拍数,交感神経活動を異なった時間経過で上昇させることが分かった。2.坐骨神経損傷により,SD, Wistar, Lewisラットの安静時の平均血圧,心拍数は術後4〜11日に上昇した。一方,副交感神経活動の指標である心拍間隔変動値(HF値)は術後15日以降に上昇した。よって,神経損傷により,早期には交感神経優位,その後は副交感神経優位の自律神経バランスになることが分かった。術後4-19日目において低気圧の効果を繰り返し調べたところ,Lewisラットにおいて特に平均血圧と心拍数が増加が著しかった。慢性痛病態は自律神経系の低気圧反応を変化させるが,その効果には系統差がみられることが明らかになった。3.気圧検出器官が内耳に存在する可能性を実験的内耳破壊ラット用いて検証した。SDラット一側の坐骨神経絞扼手術または脊髄神経(L4)結紮術を施し慢性痛ラットを作成した。両側の中耳腔に鼓膜を介して砒素を注入し前庭破壊を施した。後肢足底に圧刺激を与え逃避行動を観察した。低気圧は、神経損傷群でみられた痛覚過敏行動を増強したが、この効果は前庭破壊によって消失した。一方、低温曝露でみられた痛覚過敏行動の増強は、前庭破壊の影響を受けなかった。以上から、気圧センサーが内耳器官に存在する可能性が示唆された。